舛添要一厚生労働相は二十六日の衆院予算委員会で、“医療崩壊”といわれる事態が各地で進んでいることについて、「今の医師(数)で十分だと思っていない」と述べ、同相のもとに、医療をめぐる長期ビジョン研究会を立ち上げ、対策を検討することを表明しました。日本共産党の高橋千鶴子議員への答弁です。
厚労省は、これまで「地域や診療科ごとの偏在はあるが、全体として医師は不足していない」との見解を一貫して示してきました。高橋氏は、政府が医師不足を認めてこなかった背景に、医学部の定員削減・抑制を決めた一九八二年、九七年の閣議決定があると指摘。「同閣議決定を撤回すべきだ」と迫りました。
舛添厚労相は、「新しい状況で新しい対策を立てていく。医師不足の問題に全面的に取り組む」と述べ、閣議決定を含め、検討していくことを表明しました。
高橋氏は、勤務医、看護師の過酷な労働実態を示し、早期に医師不足対策を示すよう要求。総務省がガイドラインをつくって、公立病院の再編などを迫っていることを批判し、「まず、やるべきことは公立病院に対する交付税総額を増額することだ」と提起しました。
増田寛也総務相は、「改革すべき点は努力しつつ、へき地にある公立病院などへの交付税措置は、来年度、充実・強化させなければならない」と答弁しました。
高橋氏が「医師不足という根本原因を解決しないまま、(公立病院に)経営努力をいっても地域医療は再建できない」と主張したのに対し、増田総務相は「医師不足ということも公立病院の経営に大きな問題になっている」と述べ、医師不足の解消に国が精力的に取り組む必要があるとの認識を示しました。
(2008年2月27日(水)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、医師不足と地域医療の問題について質問をしたいと思います。
今、全国で医師不足、お産ができない、救急の受け入れ先がないなど、深刻な悲鳴が上がっています。東北のどこを歩いていても、必ず、公立病院の医師不足、病院がなくなる、何とかしてほしいと訴えられます。
厚労省は、一貫して、地域や診療科ごとの偏在は認めるけれども、全体としての医師不足を認めてきませんでした。その背景に、八二年、九七年と、閣議決定によって医学部の定員削減、抑制を進めてきたことがあったと思います。しかし、全国の深刻な実態と増員を求める声に押されてか、今国会で、そして先ほども、何度も舛添大臣は、医師は不足していると答弁をし、また内閣総理大臣名の答弁書も、二月十二日、「総数としても充足している状況にはない」と正式に出されました。
そうであるならば、医学部の定員を削減すべしとした閣議決定は撤回されますか。
○舛添国務大臣 今委員から御指摘ありましたように、偏在の問題、地域の格差の問題、たくさんございますけれども、総体的に、私は、今の医師で十分だとは思っておりませんですから、御指摘の閣議決定を含めまして、さまざまな条件を勘案し、考えながら、必要な対策を講じてまいりたいというふうに思います。
〔委員長退席、遠藤(利)委員長代理着席〕
○高橋委員 今のは、閣議決定を含めましてさまざまなというので、ちょっとわかりにくいんですけれども、要するに閣議決定撤回でよろしいですね。
○舛添国務大臣 新しい状況に応じて新しい対策を立てていく、そして、国民の目線でこの医師不足の問題に全面的に取り組む、そういうことでございます。
○高橋委員 はい、理解しました。
次に、文部科学大臣に伺います。来年度、増員になるのはわずか百六十八名です。決して効果が期待できる数字とは言えません。
ことし一月、東奥日報で、元弘前大学学長の吉田豊氏が、当時の文部科学省とのやりとりを証言しています。全国の学長会議や学部長会議で堂々と国は医師が余ると説明していた、減らすということを国で決めて、あんたところは何ぼ、あんたところは何ぼというぐあいに割り当てられたと。しかも、当時、弘前大学は百二十名の定員を百名まで絞っていました。それなのに、国は八十名にせよと迫ったのだそうです。今は百名で頑張ったわけですけれども、いろいろな資料を示して説明し、医師は過剰になると信じ込ませた、ある種の洗脳であった、こういう証言であります。
医師は余るとして定員削減を決めた当時の国の見通しが甘かった、今日の医師不足の要因となったことを認めますか。
○渡海国務大臣 先ほど舛添厚生労働大臣がお答えになったとおりだと思います。そして、いろいろな意味での状況の変化というものも起こっておると思います。研修制度等がその一つでありますけれども、そういったことも踏まえて、総合的に、厚労省ともよく連携をとりながら、今後の定員問題に対応していきたいというふうに考えております。
○高橋委員 これも、要するに見通しが甘かったという意味だと確認してよろしいですね。
○渡海国務大臣 全体の医師数をどう見るか。これは、我々は養成ということを担っているわけでありますが、養成ということは、中長期的な観点に立たないとなかなか判断ができないわけでありますね。それは、医療制度とかそういった全体の見通しというものを政府として、特に厚労省を中心に立てていくわけでありますから、そういう中で我々はやはり対応していくということであろうと思います。
見通しという点については、先ほど厚生労働大臣がお答えになったとおりでございまして、そういったことをしっかりと踏まえ、そしてやはり今起こっている問題にきっちり対応できるように、我々の方も、これは、養成という意味では中長期でございますから今すぐ結果が出ないわけでありますけれども、例えば、先ほども松本委員からも御質問をいただきました、中核医療としてどういう役割を果たすか、また病院勤務医にどのように地域に貢献していただくか、そういった観点から、しっかりと国民の要望にこたえていきたいというふうに考えているところでございます。
○高橋委員 当時の見通しが甘かったということと、閣議決定を撤回するということ、このことは、確かに、今定員をふやしてもすぐには結果が出ないかもしれません。しかし、そのことを医療関係者の皆さんがどれほど待ち望んでいたか。どこまで頑張れば見通しが見えるんだと。そのことを国に認めてほしかったし、これまでの過ちをしっかり認めてほしかった、そこで頑張ることができるんだ、そういう意味での大きなメッセージを期待しているわけです。次の質問の中で、総理からもぜひそういうメッセージをいただきたいと思います。
その前に一言言っておきますけれども、舛添大臣は、一月十九日に長野県の飯田市で開かれた医師確保対策をテーマにした対話集会で、仮に今足りないからと医師をふやすと、十年後には医師のホームレスが生まれるかもしれない、こういう発言をされました。全く厚労大臣として不見識きわまりないと言えるのではないでしょうか。
さっき紹介したように、二十年前からやってきたことの積み重ねでこういう実態が起こっているときに、またそういうことを繰り返すのか。同じことを繰り返してはならない。
これは質問しません、指摘をするだけです。(発言する者あり)では、後で答えてください。
○舛添国務大臣 発言に誤解があるといけないので。
そのときに、今歯医者さんが余っていて、歯医者のホームレスが生まれるという言葉があったんです。私は、十年、二十年という長期計画を立てて、今ふやすべきだと思ってやっていますけれども、十年後に、逆にふえ過ぎだということもあり得る、したがって不断にこの計画を見直していくということが重要だ、そういうことで申し上げましたので、不見識な発言として申し上げたことではございません。どうか御理解を賜りたいと思います。
○高橋委員 会場から出た言葉にあったとしても、それを受け取ってホームレスという言葉をお使いになったことは事実だと思います。またしかも、そのために、それだけふやすということであればその半分は国民にお願いしたいということで負担についても大臣が触れている、このことも指摘をさせていただきたいと思います。
続けます。
総理、このグラフをごらんになっていただきたいと思います。お手元の資料の二枚目です。病院勤務医男性の週の平均労働時間です。
先ほど舛添大臣がちょっと紹介していた平均六十三・三時間ということになっておりますけれども、これは三種類あるんですね、滞在時間、従業時間、診療時間と。当然、二十代というふうにだんだん年齢が若いほど勤務時間が長いということがわかると思います。二十代は病院の滞在時間が七十四・九時間、診療時間だけで見ても五十一・三時間にもなっています。
総理に伺いたいのは、毎年医師数そのものはふえていても不足していると言われる背景には、医師、とりわけ勤務医の過重労働があると思います。私は、人の命を預かる医師が人間らしく働ける条件、まさに、ゆっくり休めて家族の顔も見られる、そういう条件を整えなければ解決にはならないと思いますが、見解を伺います。
○舛添国務大臣 そういう過酷な労働条件を緩和するためにも、勤務医のために診療報酬の配分ということを今回決めましたし、また、例えば女性医師に対して、院内で保育をする、さまざまな対策をとって、この過重な労働条件を緩和したいというふうに思っております。
○高橋委員 総理に通告してありますので、一言お願いします。
○福田内閣総理大臣 せっかくの質問でございますので、お答えを申し上げます。
来年度予算案におきまして、今の委員の御指摘に対応するような形でもって、医師確保対策の予算を大幅に増額しました。一・七倍でございます。病院勤務医の職場環境の整備などの対策を盛り込む、こういうことになっております。
○高橋委員 実は、一昨年の需給検討会で問題にしたのは、このグラフの真ん中の部分なんですね。さっき、大臣は六十三・三時間とおっしゃいましたけれども、滞在時間は、最初から検討会では勤務の時間とは見ていないわけです。週四十八時間になるには、二〇〇四年ベースでは九千人不足だと。何か二年たてば、これで埋まりそうな計算をしているわけですよね。
でも、従業時間というのは、診療のほかに、他のスタッフへの教育とか会議などを指します。では、滞在時間とは何か。検討会によれば、休憩、自己研修、研究といった時間を指します。この時間を週四十八時間までに下げるには六万一千人ふやす必要がある、これが検討会の報告でありました。しかし、これらをすべて勤務時間と考えることは適切ではないとただし書きがあって、そこまでやるつもりはないと言っているんですね。
日々進歩する医学の場で研修や研究に取り組むこと、緊張が続き、いつ呼び出されるかもわからない状態で仮眠をとることが勤務ではないのでしょうか。医師の実態から目を背けず、労働基準法がしっかり守れる、人間らしく働ける体制のためには、どれだけふやす必要があるのか、数字で示してほしい。
○舛添国務大臣 そういうことも含めまして、私の長期ビジョンの研究会の中で今検討をさせていただいております。
○高橋委員 明確に、これだけ必要なんだということを打ち出していただきたいと思います。
昨年三月に行政訴訟が確定した小児科医の四十四歳の中原利郎医師の過労自殺事件では、この宿日直勤務を労働時間と見るかが争点となりました。新宿労基署が労災を認定しなかった言い分は、仮眠室があり、患者さんが来ない間はそこで寝ていたはずだ、月八回の宿直があっても睡眠はとれただろうと、大変非現実的なものでした。
医療機関が宿日直の許可を出せば、割り増し賃金も三六協定の締結も必要ない、そういう通知を二〇〇二年に基準局長名で出しております。ほとんどが許可の範囲を超えて働かされている。実質、医師は労基法とは無縁になっています。
日本病院会の二〇〇六年の調査では、七五%が職場をやめたいと、時々あるいはいつも考えている。今手を打たなければ完全に医療が崩壊する。実態に合った目標を示して対策をとるべきだと指摘をしたいと思います。
時間がないので、次に進みます。
過重労働と絶対数の不足を解決しなければならないのは、看護職員も切実であります。超過密労働に燃え尽きてリタイアする。日本看護協会の〇五年の調査では、新人看護師の十人に一人が就職後一年以内に職場を去っています。
一昨年、国が、患者七人に看護師一人という看護配置基準の改正を十八年ぶりに行いました。そのこと自体は運動の成果でもありますが、ここに絶対数の不足で追いつかないために、看護師争奪戦があちこちで起こり、地域医療をますます困難にしています。
国は、看護師確保法において、看護職員の確保や処遇の改善に対する責任を負っているはずです。一刻も早く看護職員需給見通しを見直し、必要な看護職員の確保を財政措置も含めて行うべきと考えますが、見解を伺います。
○舛添国務大臣 スウェーデンのような北欧諸国を見ると、例えばこの七対一の今おっしゃった比率よりはるかに厚く手当てをしてあります。それだけに財政負担はあるわけですけれども、そういうことも含めまして、看護職のあり方というのもきちんと検討したい。
その中に、お医者さんと看護師の人たちの役割分担をどうするか、これも一つの大きな問題でありまして、アメリカなんかだと、看護職の中で医療行為がかなりできるようになっている。こういうことも含めて、全体的に看護職のあり方、そして、どれだけの定員にすべきかということも、これも先ほど申し上げた医療ビジョンの研究会の中で検討課題とさせていただいております。
○高橋委員 医療ビジョンはよろしいのですけれども、いつこれを出すかということなんですね。
医師不足の対策の中で、やはりスタッフとの連携も非常に重要視をされているわけですね。そういう中で、特に看護職員の場合は、需給見通しを発表した後に七対一看護の方針が出された。ですから、全く実態に合っていないわけですよ。一刻も早く見直しをしなければなりません。いかがですか。
○舛添国務大臣 これは平成十七年に調査をして、その結果に基づいて平成十八年ということでありますので、こういう策定計画というのは毎年毎年ということよりも、何年かに一度やっていく、そういうことであると思いますけれども、しかし、現実にどうなっているのか。
それで、私は実は、単に需給見通しというよりも、例えばお産や子育てで一遍職場から離れられた方々がもう一度看護職として帰ってこられる、こういうことに対して今政策を予算もつけて行っている、再訓練というようなことを行っているわけでありますから、潜在的な供給源はたくさんあると思います。
こういうことを活用していって、現実に医療の現場で看護職の皆様方が過重な労働にならないように、そして患者の皆様方のケアができるように、そういう方向で努力をしたいと思います。
○高橋委員 今お話しされたようなあらゆる努力をとることは大事だと思います。
ただ、先ほど私がお話ししたように、燃え尽きてリタイアしている方にもう一度看護の現場に戻りたいですかと言うと、さすがにそれはできないと言っているんです。ですから、若い人がどんどん先にやめていってしまう、その実態に歯どめをかけるという点で、国としてはやはり責任を持って財政措置もするということを強く要望しておきたいと思います。
次に、地域医療の問題で質問したいと思いますが、これもやはり、地域医療の崩壊ということがあちこちで言われるのも医師不足が最大の要因であるということもまず間違いないと思うんですね。
その中で、全国約九千の病院の一割以上を占め、離島、僻地のみならず、地域医療を担い、不採算医療など重要な役割を果たしてきた自治体病院が今深刻な危機に瀕しています。骨太方針の二〇〇七に基づき、総務省が昨年十二月に公立病院改革ガイドラインを発表し、各自治体は二〇〇八年度中に、三つの視点、再編・ネットワーク化や経営形態の見直しなどの計画を策定することを求められています。
昨年八月二十九日に、このガイドラインをつくる過程での懇談会、この第二回の会合で、小山田恵全国自治体病院協議会の会長が参考人として出席し、次のような指摘をしています。経済第一主義、経営の合理化あるいは効率化が先行するような改革は自治体病院の設立の趣旨からしてそぐわない、このたびの改革が、自治体病院の医師あるいは病院を管理している職員にとっては、自治体病院の将来に対して希望を失う、倒産に追い込むのではないかと。
私は、官から民へのかけ声のもと、自治体病院も例外ではないとの経済界の圧力が強まる中、これは大変重要な指摘だと思います。
増田大臣は、かつて、岩手県コンビで小山田先生ともに自治体病院の全国組織の代表を務めていらっしゃいますが、公立病院改革ガイドラインは自治体病院と地域医療を再建することができるでしょうか。
○増田国務大臣 昨年暮れ、私どもの方でガイドラインを出したわけですが、これは背景として、今委員お話ありましたように、自治体病院の経営状況が悪化している、これは診療報酬等の問題があると思いますけれども、あと、医師不足の深刻化など、幾つかの要因が複合的に重なっている。
一方で、それぞれの地域に置かれている自治体病院、僻地医療等を担当していますので、欠くことのできない病院が大変多いんですが、その経営実態を見ると、他の周辺の民間病院に比べて人件費が高かったり、利用率、空きベッドの数が多くなっているものもあったり、それから、周辺の病院と診療科目が重複していて、そこに医療資源の適切な配分に欠けている部分があったり、それから、経営形態としてどうしても、開設者が素人なものですから、きちんとした経営ができていないというところがございます。
そこで、こうした公立病院の役割は十分に私ども認識をしながら、しかし一方で、経営効率化、それから再編・ネットワーク化、医師を集約するということですが、あと、経営形態の見直し、この三つの視点に立った改革をぜひ実行していただきたいということでガイドラインをお示しして、二十年度中に改革プランをそれぞれでつくっていただきたいと思っています。
今、小山田先生のお話がございました。岩手の県立中央病院の院長をしておられましたし、私も、全国の自治体病院開設者協議会の会長をずっとしていました。小山田先生は自治体病院の協議会の会長で、二人でいろいろこの問題は話をしながら行ってきて、昨年の八月の先生の御指摘も、実は、そういった視点で経営の効率化のみを追求することになっては自治体病院の役割を見失うことになってしまう、そういう危機感も持っておりましたので、決してそういう観点に走らないように、しかし一方で、効率化すべきところ、地域の実態に合わせて経営改革をすべきところは経営改革を促す、こういう視点でガイドラインをおつくりしたものでございまして、自治体病院の再建といいましょうか、こうした経営状況を改革して地域に十分な機能を発揮していただくということは、これは必ずなし遂げていかなければならない、こういうふうに思っております。
○高橋委員 確かに、指摘されたようないろいろな経営上の問題点があり、それを見直すことは必要だと思います。ただ、増田大臣が何も有識者と同じような発言をされなくてもいいのではないかなと。私は、もう少し公立病院の側に立ってお話しされてもいいのではないかなと思うんですね。
一昨年の五月八日に福島での地方公聴会において、佐藤力国見町長の意見陳述が、自治体病院の経営悪化について端的に証言をしていたと思います。
公立藤田病院という三町の組合立病院ですが、三百三十五床、二十一の診療科を持つ総合病院です。これは、近くに病院があるということで、病気の軽いうちに医療を受けることができ大病になる人が少ないということで、国保料も比較的低く抑えられ、数年前までは健全経営だったとおっしゃっているんですね。しかし、さっきちょっと話にもありましたが、近年の診療報酬のマイナス改定、患者負担増、そうしたことが続いて経営が非常に大変になる中、医師は朝七時前から夜七時、八時までの勤務、日直、当直、救急と激務が続く中、相次いで勤務医が開業、退職、総合病院でありながらお産を断らなければならない実態になったと。
ですから、ガイドラインで自治体に迫っていることは、こうした根本原因、さっき大臣もおっしゃいましたけれども、解決できない、もっと政策的に大きな問題がありますからね、できないのに経営努力して黒字化しなさいということは、何を起こすかということですよね。首を切るとか病院を縮小するとかいうことしかできなくなっちゃうわけです。
ですから、まずその前段として、総務省は、病院に対する交付税措置、これに対しては維持ではなくきちんと拡充していくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○増田国務大臣 決して経営効率だけを私は言っておりませんで、病院の改革をすべき点については努力をしつつ、一方で、地域の問題でございますので交付税で、特に、僻地にあるこうした公立病院、それはもうそれ以外の民間の病院や診療所がないようなところで、地域唯一の病院として維持されているようなものでございますので、そこには交付税措置を来年度は充実強化させる方向で検討しなければいけない。今、いろいろ案を考えているところでございます。
したがいまして、そうした重点化ということを今後図っていくと同時に、やはり医師不足ということが公立病院の経営に大変大きな問題になってきていますので、これなしに単に公立病院側で改革を進めてもこれは貫徹できませんから、一方で大きな国の政策として、医師不足の問題の解消などに同時並行的に精力的に取り組む。
その中で、自治体病院は待ったなしの、あすからの地域医療を担っている。お医者さん不足については、やはりある程度の年月をかけていかないとこの問題は解決できませんので、そういう中で、そちらもにらみつつ、自治体病院の置かれている現状にかんがみて、あしたの医療を守るという点から、交付税措置の拡充、充実強化なども今検討しているところでございます。
○高橋委員 しっかりお願いします。
次に、支え手はどうでしょうか。
今、北秋田市が、来年から指定管理者制度を導入して三百二十床、二十一診療科の総合病院を新設するということを準備しています。これが周辺の二次医療圏の中の病院、四つありますが、診療所や、縮小するという形でいわゆるネットワークをつくるということなんですけれども、公立米内沢病院が、病床縮小に伴って早期退職者を募り、さらに職員を四十六人削減したいと言っているんです。
これは、確かに米内沢病院で見ると病床の削減をするということなんですけれども、いずれ新病院がオープンすれば、移行して、必要な人員なわけですね。そういうことを考えれば、地域住民の不安を取り除き、円滑な移行ということを考えたときに、職員の処遇をきちんと確保しておくべきではないかと思うんです。
このようなガイドラインに基づく再編や民営化などの経営移譲がこれからもいろいろ出てくるわけですけれども、職員の処遇についてどのようにお考えでしょうか。
○増田国務大臣 公立病院の再編を考えるときに、職員の問題をどう考えるかはやはり大変大きな問題になってきます。私も地元で、岩手でこうした問題を経験してまいりました。
まず、やはり任命権者側として、雇う側として、今までそういった当該業務に携わっていた公務員の皆さん方に適切な配置転換に努めていただく。そして、仮に経営形態を大きく変えるといった形で職員の希望退職を募集する場合にも、求職活動についてきちんとした支援を行う。
要は、こうした問題は地域から理解を得られないと解決はなかなか難しいわけでございますので、新しい体制、それはどういう形になるか、指定管理者になるのか何になるのか、いろいろ形態はあると思いますが、新体制への円滑な移行が図られるように配慮するということは大変重要な要素でありますし、そのために、そうしたきめ細かな対策をとらないと、現実には、例えば県立病院と市立病院を一緒にしたり、あるいは指定管理者、民営化といったことは難しいというのは各地域の現状でございますので、任命権者側としてそうした適切な努力をしていただく、これはもう大前提だろうと思います。
○高橋委員 そこで、再編・ネットワークの問題。総務省は、山形の公立置賜病院をイメージしているんだということで、こういう図を描いているわけですよね。今お話しした米内沢病院も、そのうちの、周辺のある病院の一つなわけです。
危惧されているのは、拠点病院がある、そしてここに急性期に特化をするんだということによって何が起きるかということなんです。そのことによって、中長期の入院患者を受け入れることが不可能になるのではないか。すき間が生まれないか。これは実は、さっき紹介した米内沢病院の新しい整備構想の中にも出ているんです。ベッドが、療養病床、受け皿が四十床足りなくなる、米内沢病院のほかにどこにもないということが書かれている。そういうすき間は必ず出てきます。
そしてもう一つ、二十四時間の勤務、救急体制が求められます。当然、集約化された先の拠点病院には医師をふやす必要が出てきますが、いかがですか。
○増田国務大臣 山形の置賜病院、先生も東北でございますので大変お詳しいと思います。私もこの病院の再編については大変関心を持ってずっと見てまいりましたけれども、基幹病院にお医者さんを集めて、あの周辺で初めてだったと思いますが、ここに書いてありますが、救急救命センターをつくったり、全体としての医療水準が大変上がった部分はあるんですよね、ここの限られた資源の中で。
したがって、基幹病院の患者さんの数もふえて大変喜ばれたと思っていますが、一方で、周辺のいわゆるサテライト病院の方のお医者さんの数がその後やはり減ったりなんなりということがございまして、そういうことが原因で、周辺の皆さん方からもその後しばらくしてからいろいろ御意見が出てきたかというふうに思っていました。私がちょうどやめたあたりにも、聞いたときにそんな話がございました。
それで、こうした真ん中の基幹病院が二次、三次の高次医療、それからかなり専門的なところ、周辺のところはどうしても初期医療ということになりますと、周辺に病院があるかどうか、診療所があるかどうかということにもよってきますが、やはり都道府県が定めている医療計画などによって、そこのあたりの調整をよくしておくといったようなことが大事になると思います。それから、周辺のサテライトの方をもっと思い切って縮小して、診療科をもっと大胆に集約化するといったような、そんな決断も必要な場合もあろうかと思います。
対応は多々あると思うんですが、ただ、気になっておりますのは、従来のままでありますと、どうしても共倒れになる危険性が高い。それに対して、限られた医療資源をどのように有効に活用していくか、あるいは、こういった救急救命センターのようなものの機能を付加していくかという観点で考えておりますので、もちろん十分に地域の皆さん方、あるいは、やはり県の役割が大事だと思いますが、そうした皆さん方の意見を十分に酌み入れるということが大事だと思いますが、やはりこうした地域に合った再編・ネットワーク化のイメージというものを持っていただいて、改革プランにぜひ反映させていただきたい、こういうふうに思っております。
○高橋委員 増田大臣も舛添大臣も、ぜひ置賜病院にもう一度行かれたらよろしいかと思います。サテライト病院が深刻になっているのもそうです。それと同時に、救急指定病院、拠点病院に患者が集中し、一年間で五名の医師が処分を受ける、このような深刻な状態になり、この構想は失敗だということが公言されている実態であります。
確かに、共倒れにはなってはならない、そういうこともあると思います。その際に、先ほど大臣がお話しされたように、本当に、では何ができるか、どうすればいいのかということを住民参加できちんと話し合って解決の道を探るべきだ、そのことは実はガイドラインの中に明確にされていないんですね。そのことを指摘して、時間が来たので終わりたいと思います。