日本共産党の高橋千鶴子議員は二十六日の衆院厚生労働委員会で、薬害肝炎被害者救済に向け厚労省が責任を持つとともに、政府による企業の責任追及を求めました。舛添要一厚労相は「救済法の対象となる方が必要な手続きをとって救済を受けられるよう制度の周知徹底に取り組む」と答えました。
厚労省は十四日、薬害C型肝炎の感染源となったフィブリノゲンが納入された医療機関に対する追加調査結果を公表。投与時期がわかる元患者数が9,301人にのぼることを明らかにしました。
高橋氏は、9,301人については「投与の事実を争う必要はない」と強調。救済措置を求めている患者と試料を持っている医療機関のつきあわせや情報提供など、同省が責任を持って救済を進めるよう求めました。
厚労省の高橋直人医薬食品局長は「過去のフィブリノゲン製剤投与によるものが確認されたら救済法の対象になる」と答弁しました。
さらに高橋氏は、ウィルス性肝炎患者に対する恒久対策の早期実現を主張。高額な医療費がかかり、副作用も強いインターフェロンによる肝炎治療の実態を紹介し、医療費助成の一層の拡充とともに、投薬治療や検査、心のケアなど総合的な対策への助成を求めました。
舛添氏は「インターフェロン以外の治療の研究開発に対する予算措置をとる。精神的なケアなど総合的な肝炎対策として取り組む」と答えました。
(2008年3月27日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、肝炎問題について質問をさせていただきます。
薬害肝炎救済法が成立をしたのは、ことしの一月十一日でした。私は、局面が大きく動くときの運動と政治の力というものを強く実感することができました。
しかし、これに先立つ一月八日の本委員会の質疑では、特定血液製剤の投与の事実を証明できない方あるいはそれ以外の原因によるウイルス性肝炎の方をどう救済するのかが問われました。私は、原告の皆さん自身がそのことを強く望んでいただけに、与野党の協議が進んで恒久法が成立することを期待しておりました。委員会の意思として、「約三百五十万人と推計されているウイルス性肝炎患者・感染者が最良の治療体制と安心して暮らせる環境を確保するため、医療費助成措置等の早期実現を図ること。」などという決議を行っており、一刻も早く実行に移されることを求めたいと思います。
そこで、まず質問の第一は、薬害肝炎救済法の成立を受けて、新たに提訴の件数、内容などはどうなっているでしょうか。
〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕
○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
救済法が施行された一月十六日以降、昨日の三月二十五日までの時点で、十四カ所の裁判所から九十二名の方々について訴状等の送達を受けたところでございます。
○高橋委員 この間、私自身も、各地を歩いていて、何十年も前の母子手帳を持ってきて、自分も血液製剤を投与された、どうしたらいいのかということ、あるいは、カルテがないけれどもどうしたらいいのか、そういう相談を受けました。あるいは、肝友会の皆さんなどのところに電話相談が殺到している、そういう事実もございますから、この提訴の数が今後もふえていくだろうということは非常に予想されるわけです。
問題は、現場では、あれほどの委員会の確認があったにもかかわらず、やはり、では投薬証明書を持ってきなさいなど、厚労省が何らかの資料を持っているにもかかわらずそういう対応がされるという問題が起こっております。私は、やはり厚労省が全面的に協力すること、また、企業に責任を求めることも含めて厚労省の役割が大事だと思いますが、この点での大臣の決意を伺いたいと思います。
○舛添国務大臣 これは、今委員おっしゃったとおりで、ことしの一月に、医療機関に対しまして、元患者の方々へ、投与の事実のお知らせと検査の勧奨、それから、今保有しているカルテは保存しておいてくださいということを依頼しております。
それから、製薬企業に対しましても、製剤投与の事実に関する資料を持っているのであれば、これを積極的に医療機関に情報提供するよう指示をしたところでありまして、救済法の対象となる方が必要な手続をとって救済を受けられるように、この制度の周知徹底を今後とも続けて行ってまいります。
○高橋委員 三月十四日に、医薬食品局血液対策課が追加調査について発表しております。そこでは、医療機関六千六百九施設に追加調査を行ったうち、五千百二十八施設、九五%から回答があり、投与の年月について、九千三百一人について具体的な回答があったということであります。
そうすると、今大臣、お知らせと勧奨を進めているとおっしゃいましたけれども、この九千三百一人は少なくとも名前がわかっている。当然これらの方たちは争う必要がないのだということをまず確認をしたい。
それから、この三月の発表の時点でも、投与の事実のお知らせの状況は、五九%がお知らせをしていないと答えております、医療機関。これを急速に進める必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○高橋政府参考人 お答え申し上げます。
今委員御指摘の資料、私どもが三月十四日に公表いたしましたフィブリノゲン製剤納入先の医療機関の追加調査の結果でございますが、今お話しのとおり、これは六百四十四医療機関において九千三百一人の元患者の方々の記録が残っているということでございます。
ただ、これは記録が残っているということでございまして、まさにそこに、かかった方々が医療機関に照会されて、現実その方が肝炎に罹患されていて、それがまさにそういった過去のフィブリノゲン製剤の投与によるということで確認されれば、これは当然救済法の対象になるということだと思います。
それから、第二点の御指摘の、お知らせしていない方々、約六割ほどいらっしゃいますが、これらの方々については、投与後にすぐに死亡されているという方が約二割ほどいらっしゃいます。あるいは連絡がつかないという方もいらっしゃいますが、こうした方々については、今後、医療機関を、私どもの方で今研究事業を進めておりますが、そういった中でこういった方々の投与の事実のお知らせを進めていきたい、かように考えております。
○高橋委員 今、五九%のうち投与後に死亡した方が千八百四人いらっしゃると。そのこと自体がこの間の問題の解決がおくれたことの非常に重大な結果であるということを指摘させていただきたいと思います。
今、少なくとも、この方たちが当然救済されるべきであるという答弁をいただきました。しかし、あて先がよくわからないですとか、求めている患者さんと資料を持っている医療機関とのマッチングというんですか、そこに対してもっと厚労省の力は必要なんだろう、あるいはアナウンスが必要なんだろうと思っております。一言でよろしいので、大臣、そのことを確認させてください。
○舛添国務大臣 この一月の基本的な和解以来、全力を挙げてこの残された課題について取り組もうということでございますから、そういう点も含めて、きちんと厚生労働省として取り組みたいと思います。
○高橋委員 よろしくお願いします。
そこで、来年度予算案が成立をすれば、法案としては成立はしていないけれども、与党の基本法、これによる枠組みの医療費助成が具体的に動くことになると理解してよろしいでしょうか。その内容について、また、自治体負担がどうなるのかについて、具体的にお答えください。
○西山政府参考人 お答え申し上げます。
肝炎については、もう御存じのとおり、我が国最大の感染症であります。また、インターフェロン治療が奏功して、肝硬変や肝がんに移行することが少なくなるわけですけれども、この議会でも議論がありましたように、インターフェロンは非常に高額でございます。具体的には、B型及びC型肝炎のインターフェロン治療について、患者の負担額をその所得に応じて月一万円から五万円までに軽減するというようなことで、平成二十年度予算に必要額百二十九億円を計上したところであります。
お尋ねの地方財政措置についても、もちろん都道府県の負担についても、二分の一でありますけれども講じております。
四月実施に向けて、円滑な制度開始というようなことで取り組んでいるところでございます。
○高橋委員 直接お答えにならなかったんですけれども、与党の枠組みでということでよろしいですよね、今予算が決まっているのは。よろしいですか。
○西山政府参考人 基本的には、与党PTの御意見を受けて予算案に反映したものというふうに考えております。
○高橋委員 私たちは、一万、三万、五万というこの分け方について、もっと負担を軽減するべきだと思っております。引き続いてここは検討を続けていただきたい、予算が成立した後も、補正も含めて対応を検討していただきたい、このことをまず最初に言っておきたいと思うんです。
医療費助成の拡充を本当に待っていらっしゃる方はたくさんいるんです。拡充といいますか、今まで助成がそもそもなかったということで、そのことをきょうはお話ししたいと思うんです。
先般、福島県の平田村というところに行ってきました。昭和の時代から、村の中の特定の地域に、肝機能検査で異常値の割合が極めて高いということが注目されて、平成三年、四年とC型肝炎検査を行ったところ、四十歳の総合健診時検査で陰性が三百五十八人中百八十一人、四九%の高率だったんですね。これは非常に驚く数字でありまして、十九歳から三十九歳でも、千百九人中八百八十二人、二割の確率で判明をいたしました。
その後、村は、肝炎対策会議などを持ち、四十歳の総合健診の際に必ずウイルス検査を組み入れること、また、保健指導を徹底してまいりました。ですから、今後は四十歳以降にはほとんどない、今ゼロではありませんけれども。それと、妊婦健診などでも一切出ていないというところまでたどり着いているということです。
問題は、この患者さんたちが今非常につらい治療と闘っていらっしゃいます。患者さんに集まっていただいて、少しお話を聞く機会がございました。皆さんも本当にこういうことはいろいろな形で原告の皆さんなどからもお話を伺っていると思うんですけれども、改めてそのつらさに私自身も非常に衝撃を受けたんです。やはり、インターフェロンの治療そのものが、つらい副作用との闘いであると同時に、仕事や家族を犠牲にせざるを得ない、そうした状況に追い込まれているということです。
六十三歳の女性は、一年間インターフェロンをやり、それで次にペグインターフェロンをやったと。頭痛、目まい、吐き気、うつ、寒けがひど過ぎて、雪の中に裸でほうり投げられるような状態、布団がわさわさと震えるような状態だったと言いました。それでもよくならないで、三回目のインターフェロンを勧められたけれども、さすがに断って、今は薬の治療であると。その方も、その隣にいた方も、死んだ方がよかったと思うくらいつらかったというふうにお話をされました。
五十一歳の女性は、一月からインターフェロンの治療を始めて、週一回、朝六時に家を車で出て九時に病院にたどり着く、その三時間、冬の雪道も自分が病気を抱えながら運転している。ただ、驚くことは、この方は両親も祖母もC型肝炎、夫は三年前インターフェロンで治癒をしたけれども、実家のお嫁さんもC型肝炎、家族そろってC型肝炎である。そういう状況があった。
また、インターフェロンが効かず、強力ミノファーゲンCを週三回、十八年続けている方、もう針が腕に入らず、穴のあいた腕も見せられました。行くたびに血液検査や血圧の薬を必要とするので、そのための治療費が非常にかかっているということも言われました。
大臣にまず伺いたいんですけれども、こういうつらく苦しい治療経験を聞く機会があったと思います。高額のインターフェロンが中心になるということは非常に大事なことではありますけれども、それだけではなく、やはり総合的な対策が必要だと思います。投薬治療あるいはそのたびに使われる検査、心のケアなど、総合的な対策に助成をする考えはないか、伺います。
○舛添国務大臣 これは、インターフェロン以外の治療法はないか、そういう新たな治癒、治療法の研究開発、こういうことにも予算の措置をとる、しかるべき措置をとる、今、精神的なケアとかいろいろなことをおっしゃいましたけれども、これはまさに総合的な肝炎対策として取り組んでまいりたいと思います。
〔吉野委員長代理退席、委員長着席〕
○高橋委員 そこがもう少し具体的に、今度は数字で出てくるようにお願いをしたいと思うんですね。
次に、今の平田村に関連して伺いますけれども、実際このように肝炎患者が集中しているような地域について、全国でどのくらいあるのか、その地域について何らかの研究をしたことがあるのか、伺います。
○西山政府参考人 通告を受けてから調べてみましたけれども、これまでに国が計画的なそのような調査を行ったというようなことはなかったと記憶しております。
○高橋委員 調べてみましたがなかったと言われたのはちょっと残念なお答えでありました。
九三年三月に日本消化器病学会総会の記録をまとめた臨時増刊号の中に平田村も載っておりますし、また、透析患者のC型肝炎ですとか、高齢者のC型肝炎ですとか、さまざまな研究論文が載っておりました。ここでは、研究に参加した病院で、平田村の場合ですけれども、HCV抗体陽性者が百四十六名、一四・三%であるのに対し、そのうち五十七名、三九%が平田村の在住者であり、そのうちの八割が特定のある地域にあるという研究の成果を述べておる。それで、この地域での今後の肝炎、肝硬変の増加が予想され、厳重に観察していきたいというふうなことを研究で述べられているんですね。
その半年後に、資料の二枚目でありますけれども、朝日新聞で「特定地域で多発」という記事が載っております。「「注射器が原因」濃厚」と書いておりますが、この問題、きょうは原因については争うつもりはありません。問題は、ここを読みますと、真ん中の段に「多発地域は少なくとも二十五カ所、北海道から鹿児島県まで全国にまたがっている」と書いているんですね。配っていませんけれども、もう一面のところには、氷山の一角ではないか、まだまだこういう地域はあるんだというふうな指摘を朝日新聞はしております。
それに対して、左側に書いている厚生省の結核・感染症対策室長、「医原病との特定困難」というふうなコメントが載っており、「地域によって肝炎の発生率が高いという研究があることは聞いている。しかし、感染の時期などがはっきりしておらず、医原病と特定するのは難しいのではないか。C型肝炎は、輸血以外の感染経路がまだはっきりしていない。まずそれをきちんとすべきだと考えている。」その次です。「現段階で厚生省として実態調査することに、どんな意義があるか判断しかねる。」と。
私は、どんな意味があるか判断しかねる、やる気がないと言っているわけですけれども、本当にこれでよかったんだろうか、今でもそういう考えでいいんだろうかということを伺いたいと思います。
○西山政府参考人 御紹介の新聞記事ですけれども、C型ウイルスが発見されたのは一九八九年ということで、その四年後の日本肝臓学会等の各地の調査でありまして、これは私も当時非常にショッキングにこの新聞記事を見ました。公衆衛生学上の大きなトピックスであるというふうに考えております。
これからの問題ですけれども、調査を国がしたらどうかというような御意見ですけれども、実はこの調査には、問診だけではなく、採血によって血中のウイルス抗体価を測定するという手間とか費用、あるいは本人の同意が必要であるというようなことから、現時点で実施するというのはかなり難しいのではないかと考えております。また一方で、御案内のように無料検査を実施しておりまして、多くの方に受診を呼びかけているところでございます。
こうした検査結果からも、ある程度でありますけれども、議員の指摘する地域特性の把握は可能ではないだろうか、かように考えているところでございます。
○高橋委員 その検査を始めるまで十年近くかかっておりますよね。そこに、今局長が、調べたけれどもなかったと最初にお答えになって、その後、この記事はよく覚えているとおっしゃったので、非常に残念だな、そうであればもう少し手当てができたのではないかと思っております。
きょう持ってきたのは、長野県の原村、C型肝炎対策事業十年間のまとめということで、一九九三年から二〇〇二年まで、平成十四年の冊子であります。大変感動的な中身であります。厚労省がウイルス検査を位置づけたのは平成十四年から、原村のこの十年間の取り組みがあってからのことであるということをまず指摘しておきたいと思います。
原村は、悪性新生物による死亡者数のうち肝がんの割合が、昭和六十一年には他の市町村が三から一二%のときに二七%、平成四年、ほかの市町村が八から一五%のときに三八%という非常に高率な発生だった。そういうところでC型肝炎という病名にたどり着くまで、原因不明の原肝だとか、水が悪いんじゃないかとか、さまざまな誤解があった。しかし、医原性の病気ということがはっきりしたことによって、これは知るよりも知らぬが怖いC型肝炎なんだ、これを克服していくんだというもとでこうした取り組みを始めたわけですね。
資料の三枚目にありますけれども、三十歳の健康診査のお勧めという形で、三十歳のときに、働き盛りのときにこれを発見しておけばその後の人生にとって大きくプラスになるということでお勧めをしている。あるいは、中学生が卒業して村を出ていって、そのときに、ずっとたってからわかるよりも、卒業する時点で検査をしようということを実施して、そのときはゼロだったんですね、陰性。そういう結果になっている。そういう取り組みをずっと続けて、資料にあるように、今は陽性率がゼロというところまでたどり着いている。
これは、検査と同時に、県と原村独自の医療費助成がある、ここに貢献をしていて、結局、最初の検査と医療費助成が早期に手当てをされることによってその後の重篤化を防いで、結果として医療費適正化に結びつく、こういう教訓にもっと学ぶべきではないかと思いますが、一言最後にお願いして終わりたいと思います。
○茂木委員長 西山健康局長、持ち時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。
○西山政府参考人 今のは長野県の原村の例でありますけれども、先生おっしゃるように、確かに先駆的な取り組みというようなことで、今回の私どもの措置がこの村に対しましても助成という形で機能していくのではないかと思っております。
以上でございます。
○高橋委員 終わります。
引き続いてよろしくお願いします。