国会質問

質問日:2008年 6月 4日 第169国会 厚生労働委員会

障害者雇用促進法改正案

 日本共産党の高橋千鶴子議員は四日の衆院厚生労働委員会で、精神障害者への対応が遅れている問題を取り上げました。

 精神障害は、2005年の障害者自立支援法によって、身体障害、知的障害とともに制度的に一元化されました。にもかかわらず、身体障害や知的障害には交通機関の運賃割引制度が普及している一方、精神障害は一部に留まっています。

 高橋氏が「身体、知的と同じ扱いにすべきだ」と求めたのに対し、国土交通省の北村隆志総合制作局次長は、割引は各事業者の自主的判断とし、「関係者の理解と協力を求めていく」と答弁しました。

 高橋氏は、宮城県で県当局やバス事業者にくり返し要望している当事者の取組を紹介し、国交省と厚労省が互いに責任を曖昧にしないよう迫りました。

 舛添要一厚労相は、「三障害は同じ取扱をすべきだ。国交相をはじめ関係閣僚と議論して制度全体として前に進めたい」と表明しました。

(2008年6月6日(金)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 それで、次に法律に入りたいと思うんですけれども、きょうは、まず障害者の交通機関における運賃割引制度について伺いたいと思います。

 資料の一枚目におつけしましたが、これは国土交通省がまとめている現行の運賃割引制度がどのようになっているかを示したものであります。JRの本人と介護者は五割引きを初め、バス、タクシー、船、飛行機、それぞれ条件はあるものの、割引制度が確立をしています。

 では、精神障害者についてはどうか。めくっていただきますと、二枚目にこれもまとめたものがございますけれども、平成十三年と十九年との比較があります。これを見ると、確かにふえていることはわかります。しかし、鉄道関係三十九者、乗り合いバス百七十四者、旅客船十五者と、数えるほどしかありません。

 障害者団体が繰り返し求めている内容ですけれども、障害者自立支援法でも三障害が統一されました。身体、知的と同じ扱いにするべきと考えますが、まず国土交通省に伺います。

    〔委員長退席、吉野委員長代理着席〕

○北村政府参考人 お答えをいたします。

 現在、障害者の方々に対する公共交通機関の運賃割引でございますけれども、基本的には各事業者の自主的な判断に基づきまして、今先生がおっしゃいました身体障害者だとか知的障害者の方に対して実施されております。これはなぜかと申しますと、割引によります減収を他の利用者の負担によって賄うという形で行われているものでございます。

 それで、割引対象を御指摘のような精神障害者やその他の障害者の方に対しても拡充するということにつきましては、先ほど申しましたように、割引による減収を他の利用者の負担によって賄うという形ですので、基本的には各事業者の自主的な判断に係る問題でございますけれども、国土交通省としては、従来から各事業者や事業者団体などの関係者に対して、機会をとらえて、割引に関する要望を踏まえて検討することにつきまして理解と協力を求めてきたところでございます。

 特に、今先生もおっしゃいましたように、精神障害者の方につきましては、障害者基本法において精神障害者が他の障害と区別なく取り扱われているということとか、障害者自立支援法におきましても身体、知的、精神の三障害の制度格差が解消されたというようなことでございますので、我々としましては、先ほど申しましたように、関係者に理解と協力を求めてきたところでございます。

 さらに、二年前になりますが、十八年の十月に、精神障害者保健福祉手帳制度におきまして、この手帳に本人の写真を貼付するという制度改正が行われましたことを機会に、交通事業者の方に対しては、手帳制度の改正の内容を周知しますとともに、精神障害者に対する一層の支援策を講じること等、さらに理解と協力を求めてきたところでございます。

 今先生から御紹介ありましたように、今現在、交通事業者が自主的に割引をしているのが、平成十九年四月現在ですけれども千四百十八者でございます。これはまたさらに増加傾向にありますので、国土交通省としては、今後とも引き続き関係者の理解と協力を求めていきたいと考えております。

○高橋委員 ありがとうございました。

 確かに自主的な判断ということがこの資料にも書かれているわけですけれども、自主的な判断ではあるけれども、JRはJR、バスはバスという形で統一した対応がとられているわけですよね。やはりそこにきちんとした行政の指導なり援助なり、そして統一した対応というものが当然あられたのであろう。

 そうすると、ここをもって精神だけは違いますよというふうにはいかないし、減収という点であれば身体も知的も同じなわけで、ここに来て精神だけが入れると減収になるよという議論にはならないんだろうと思います。

 そういう点で、一番大もとになるJRさんなどにぜひ踏み切っていただいて、全体が回るような形でイニシアチブを発揮していただければと思います。これは要望にとどめたいと思います。

 そこで、私は、やはり厚労省が障害部局の中でこの問題を、国土交通省任せにせず、取り組みをするべきだと考えています。一つは、三障害が同じでない現状をどう考えているのか。そのために必要な手だてを検討するべきではないか。さまざまなことがあると思います、例えば減税措置とか、何かあるのではないか。三つ目は、各自治体で独自の助成制度をやっていると思いますけれども、調査をすべきではないか。

 以上、どうでしょうか。

○中村政府参考人 お答えいたします。

 まず、地方自治体についての調査の件についてお話をさせていただきます。

 厚生労働省におきましては、毎年度、都道府県及び指定都市におきます精神障害者保健福祉手帳に基づく各種の援助施策のうちで、公共交通機関の運賃の割引でありますとか公共施設の利用料の減免などにつきまして御報告をいただきまして、整理をした上でホームページで公表をしたり、あるいは全国会議の資料として配付をして、先生御指摘がありましたように、三障害できるだけ同じような扱いにするように進めてくださいというような要請を行っておるところでございます。

○高橋委員 最初の、問題意識についてお答えになりましたか。

○中村政府参考人 お答えいたします。

 従来、精神障害者保健福祉手帳につきましては、写真の貼付を求めておりませんで、本人確認が困難であったことなどを背景としまして、他の障害者手帳と異なり、公共交通機関の運賃に対する割引等の支援の協力を得にくいという実態がございました。

 こうした課題に対応するために、先ほどの国土交通省からのお話にもございましたように、平成十八年の十月から手帳の様式を改正いたしまして、これを機に各事業者に協力をしてもらうよう、国土交通省にも私どもから協力要請をしたところでございます。それを受けまして、国土交通省の方で各事業者に対しまして協力措置をいただいておるということでございます。

 そういうことでございますので、私どもといたしましても、精神障害者保健福祉手帳に基づきます各種の援助施策についてより一層の支援が得られるように、事業者等に働きかけを続けてまいりたいと考えております。

○高橋委員 ちょっと実務的なお話だったかなと思うんですけれども、大臣、ちょっとそのことも含めて御答弁をいただければいいかなと思うんです。やはりもう三障害にこの点で区別があってはならないのだということをはっきり言っていただきたいんですね。

 宮城県でこの間、交通費の問題で県当局やバス会社に何度も要望活動をしている青年からメールをいただいているんですけれども、バス会社の方も、やはり障害者基本法の定義、先ほど紹介があったように、十分理解していますと。国及び地方公共団体の責任として社会参加を支援することがうたわれておりますと答えていただいたそうです。それで、県内のバス事業者と当局と十分協議をして判断をしたいと言ってくださっている。県も、精神障害者だけおくれていることを申しわけなく思っていると。そういう意味では、とても誠意ある回答だと思うんですね。

 これはぜひ実現してもらいたいなと思うんですけれども、やはり出発点はそこをきちんと認識していただきたいんです。その上で、どっちの責任だという話にしないで、国土交通大臣とも話し合ってしっかり責任を果たしていただきたいと思いますが、大臣の見解を伺います。

○舛添国務大臣 身体障害者、知的障害者、精神障害者、これはもう全く三障害同じであるということで、同じ取り扱いをすべきであるというのは基本だと思います。

 公共交通機関の場合、最初の二つに比べて精神障害者は外見からわかりにくいというようなことで、写真の貼付ということがあると思います。

 それからもう一つ大事なのは、これは、各バスとか電車とかにステッカーを張ってもらうようなこともやろうかなと考えているのは、やはりほかの乗客の皆さん方の御理解がないといけない。ちょうど妊娠している女性たちに対してそういう手を差し伸べるようにマークをつくりましたね、マタニティーの。あれと同じようなものをつくって、三障害ですよということを、私は、やはり広く国民の皆に知らせるという啓発活動も必要だと思いますので、国土交通大臣を初め関係閣僚ときちんとこれは議論をして、政府全体として前に進めたいと思っております。

○高橋委員 よろしくお願いいたします。

 さっき紹介するのを忘れましたが、三枚目に国土交通省がまとめている地方公共団体の取り組み状況がございます。地域におりるともっといろいろなことがあるのではないかと思いますので、ぜひ調べていただきたいと思います。

 やはり、今話し合っている法案は、障害者の雇用機会を拡充しようというために促進法をやっているわけですし、先ほど大臣は障害者の権利条約の早期批准に向けて決意も披瀝をされたところであります。そういう点では、やはり自立や社会参加の前提として、そして権利条約にある障害のある人がない人と平等に生きるための条件整備、その前提としてこの問題は当然整備されるべきだというふうに思いますので、重ねてお願いをしておきたいと思います。

 次に行きます。

 障害者雇用促進法の中で、精神障害、ちょっと続けて精神障害のお話をさせていただきますけれども、実雇用率に含まれるけれども義務化されなかったのはなぜか。これは何度か議論がありますけれども、整理の都合上、一度伺いたいと思います。

○岡崎政府参考人 精神障害の方をどうするかという問題につきましては、前回の法改正の際に随分議論していただきました。そういう中で、精神障害の方の現在におきます雇用の状況、職域の開発の状況、そういったものを考えた上で、当面は実雇用率の算定に精神障害者の手帳を持っている方をカウントする、こういう整理をされたわけでございます。

 その後、施行されてから二回把握する機会、六月一日の把握する機会があったわけでございますが、昨年の六月一日の段階では、五十六人以上の法定雇用率の対象企業では四千人という程度にとどまっているという状況でございます。

 こういう状況のもとで、次のステップというのはなかなか難しいのではないかということもありまして、今回も審議会では議論いたしましたけれども、むしろ、もう少し企業の理解の促進でありますとか、さまざまな支援施策を充実強化して、そういう中で精神障害者の雇用の促進状況をさらに進める、条件整備を進めて、その状況を見きわめながら雇用義務の対象とするかどうかを検討する、こういうことになったわけでございます。

 したがいまして、私どもとしては、そういう形で精神障害者の方の雇用を進める中で検討が進められるように努力していきたい、こういうふうに考えております。

○高橋委員 今のお答えは、なぜ義務化しなかったのかというのに対して、実態がまだまだ追いついていないということですよね。それで、理解の促進もいろいろ必要だしと。

 そうすると、精神障害者の雇用がふえれば義務化を考えるという意味ですか。

○岡崎政府参考人 数字的な意味だけではなくて、企業におきます精神障害者の雇用受け入れのノウハウでありますとか、そういったものを含め総合的に考えて、企業や障害者団体の皆様方に参加していただいて議論を進めていくということにしていきたいと考えております。

○高橋委員 議論を進めていくということで、検討しているという意味ですよね、今おっしゃっているのは。私は、実態が低いからやらないと言えば多分実態は引き上がらないだろうという問題意識を持って、今質問させていただきました。

 昨年、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の委託事業として、社団法人全国重度障害者雇用事業所協会が平成四年以降行っている重度障害者多数雇用事業所の定点観測調査、これは平成四年からずっとやっておりますが、それに加えて、精神障害者の雇用を中心的に採用方針を調査しております。

 それが発表されておりますけれども、これを見ますと、今後精神障害者の雇用について前向きに考えたいが二二・三%、条件が整えば検討したいが三二・二%となっており、五割を超えています。特にその理由として、他の障害者に比べて雇用が進んでいないからが三二・六%で、おくれていることを自覚して実は前向きなんだということが読み取れると思うんですね。

 その前向きに考えていきたいと答えた理由。国の方針だからが二四・一%、関係機関、施設や病院などの依頼があればが二四・一%、同じだけあります。そして、向いた仕事があるというのが二九・六%で、私は、これは精神障害者の場合は特に、一定のキャリアを積んで、その途中で障害を持つという方が大変多いですので、もともと能力を持っている、それが発揮できる場所なんだということを理解して、向いた仕事があるという指摘もあるし、そこを生かしたいということも答えの中に出てくるわけですね。それで、あとは、前向きに考えるための条件のトップが、精神障害者の雇用管理について勉強し、自信が持てるようになったらが六五・四%であると。

 私は、言いたいことは、企業は、今調査をしたのは既に重度障害者を雇っている企業という条件がございますが、前向きであるということと、平成十七年の障害者雇用促進法の改正で雇用率の算定対象にしたこと、納付金制度の対象にした、やはりこうした国の制度が変わった影響が絶対大きいんだと。実際に、その一年以内に新たに精神障害者をあえて雇用したという方が半分なんですね、国の制度が変わったことを受けて。

 そうすると、やはりこの問題では、国のイニシアチブと援助が決定的だと言えるのではないでしょうか。

○岡崎政府参考人 今おっしゃっていただきましたような意味におきまして、私どもは、精神障害者の雇用をまず進めていく、現実を進めていくことで条件整備を図りたいと思っておるわけでございます。そういう中で、新たな助成金の制度もつくりましたし、それから医療機関との連携をした形での復職支援等のスキームもつくったりしております。

 したがいまして、私どもとしては、できるだけ精神障害者の方の雇用を進め、職域を広め、あるいは企業におきます雇用管理のノウハウを普及させる中で、現在でも実雇用率としては算定するという中で進んできている部分もありますけれども、さらに完全な意味でインプットする形での条件を整えて議論を進めていきたい、こういうふうに考えているということでございます。

○高橋委員 同じ質問を大臣に伺いたいと思います。

○舛添国務大臣 今部長が答えましたように、今後、そういう方向で努力を重ねてまいりたいと思います。

○高橋委員 先ほど紹介したように、国のイニシアチブと援助が絶対必要であるということを重ねてお願いしたいと思います。

 先ほど紹介した中に、障害者の雇用管理について勉強し、自信が持てるようになったらという声があったことや、国が決めたというのが、何か嫌々決められたということではなくて、やはり、病院や施設など関係機関との連携が本当によくとられていれば十分にそこが発揮できるんだ、企業の中にも相談者を置くという義務もございますし、そうしたところのフォローアップ、援助がよくよくとれていればもっといいのではないか、このように思います。

 それで、もう一つ、そうした点で、先ほど来、精神障害者の皆さんの、義務化なり雇用率を算定するに当たって掘り起こしがあるのではないかとか、いろいろな指摘がございましたけれども、その点で、「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要」ということで、厚労省が事業主にこうしたものを出しているわけで、配慮について、必要のない情報の取得を行ってはいけない、ほかに使ってはいけないだとか、さまざまなことが言われていて、これはとても大事なものだと思うんです。

 同時に、せっかく最初は配慮するんだけれども、部署が変わってしまって、そのためにそれが全然伝わっていかないですとか、本人が我慢しているがために、病院のために休まなきゃいけないことに理解が全然進まないですとか、やはりそうした面でのもう一工夫が本当は必要なんだろう。

 一言お願いして、終わります。

○岡崎政府参考人 おっしゃっていただきましたように、精神障害者の場合、周りのサポートが非常に重要な部分がございます。そういう中で、人事部門とかだけではなくて、現実に働いている中でどういうふうなサポートをするか。

 ただ、一方では、精神障害に対するいろいろな世間的な見方というのもありますので、そういうことがないような形の中でどうやってうまくサポートしていくか。これは我々もノウハウを開発しながら、企業にもそういったことを学んでいただきながら進めていきたい、こういうふうに考えております。

○高橋委員 もう一歩前へ進めたいと思いますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。

 

 


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