日本共産党の高橋千鶴子議員は二十四日、衆院災害対策特別委員会で、岩手・宮城内陸地震の対応策について質問しました。宮城県栗原市金沢地区の柱や壁が壊れた人家の写真パネルを示し、「一部報道で建物被害が少ないといわれているが、少ないと見るのは早すぎる。基本的な居住機能に着目して、実態に応じた判断をすること。被災者生活再建支援法を適用すべきだ」と迫りました。
これに泉信也防災担当相は「きちんと現場を見て、本当に人間が住むことができるか、形は整っているが実体的な生活は難しいのかなどの判断をしていきたい」とのべました。
高橋氏は、「合併で広域行政区となった自治体・地域での地震だった」と指摘。被害の大きかった栗原市と岩手県奥州市、一関市は、いずれも東京二十三区より広いことを示し、「各支所では人手も財源も、権限もない。合併の弊害が出ている状況に対応すべきであり、人的体制に対する特別交付税の措置などが必要だ」と強調しました。総務省の津曲俊英・官房審議官は、「特別交付税については被害状況をよく把握し、適切に対応する。被災した自治体の実情や要望をよく聞いて、財政運営に支障がないようにしたい」と答弁しました。
また、高橋氏は、「職員も削減されている。そういう中で災害にどう応えていくのかが問われている」と政府の対応強化を求めました。
(2008年6月25日(水)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
まずもって、このたびの岩手・宮城内陸地震におきまして犠牲になられた方々の御冥福を心からお祈りするとともに、御遺族へのお悔やみを申し上げたいと思います。また、今なお行方不明の皆さんの救出と被災された方々が一日も早くもとの生活や生業を取り戻すことができるように願うとともに、全力で私たちも頑張りたいと思っております。
六月十四日の発災日当日、私は奥州市に入り、十五、十六日と、一関市、栗原市を中心に地元の議員さんたちとともに歩いてまいりました。また、泉大臣もいち早く現地に飛ばれて対策本部の指揮をとられたということも承知をしております。危険な土砂崩れ箇所での救助に当たられている皆さん、また不眠不休で対応されている地元職員の皆さんにも心から敬意を表したいと思います。
今回の地震が、四年前の中越地震でクローズアップされた集落が散在する中山間地域で起こったということが大きな特徴の一つだと思います。
ヘリコプターで救出された孤立集落の一つである一関市厳美町の避難所、本寺小学校に行きました。ここは、きょうにも、新しい避難所である旧山谷小学校跡地に移る準備がされております。ここで七人家族の被災者からお話を伺いました。お孫さんと二人で窓から脱出をしたこと、もともと携帯の通じない場所であること、電話も電気も通じず困ったこと、家の前で観光バスが立ち往生し、バスの乗客が水を下さいとかトイレを貸してくださいと来たんだけれども、水も出ないし何も助けてやることができずに困ったことなど、瞬間の混乱ぶりがうかがえました。
先ほど桝屋委員も紹介されましたけれども、今、中越地震の際孤立した六十の集落、これと同様の地勢を有する集落が全国で約六万に上り、そのうち一万七千が孤立する可能性があると指摘をされています。〇五年八月の中山間地等の集落散在地域における地震防災対策に関する検討会報告書では、こうした事態に着目をし、交通手段が途絶した孤立集落と外部との通信の確保が最重要と指摘をされています。今回も課題が浮き彫りになったと思いますけれども、どのように改善を進めていくのか、伺いたいと思います。
○田中政府参考人 お答え申し上げます。
今先生が御指摘されました十七年八月の検討会の提言についてでございますが、防災関係の通信につきまして、ポイントとして三つのことが言われていたというふうに認識いたしております。
一つは、防災無線、防災行政無線の拡大についてでございます。これにつきましては、全国市町村の同報系防災行政用無線局の整備率が、十六年九月の六七・八五%が直近の二十年三月末には七五・六一%、移動系の防災行政無線につきましては八二・三一%から八四・九七%へ上昇しております。引き続き、防災行政無線の拡大に尽力していきたいと考えております。
二点目でございますが、非常用電源の確保についてうたっております。この点につきましては、私ども、十八年三月に電波法関係審査基準を改正いたしまして、自家用発電装置の設置を義務づける制度改正を行っております。
三点目でございますが、通信手段の多様化ということについて触れられております。この点につきましては、防災行政用無線局以外に、MCAという無線設備がございますけれども、この無線設備を災害用の情報伝達手段として取り入れるというような形での手段の拡充をいたしております。
また、総務省自身といたしましても、あるいは携帯の通信事業者の方々などと連携をいたしまして、災害に遭われて孤立しそうな集落につきましては戸別に携帯電話あるいは衛星携帯電話を搬入してお使いいただくというような形で対応いたしておるところでございます。先生が御指摘されました小学校につきましても、携帯電話十台、衛星携帯電話二台が搬入されておるところでございます。この貸し出し用の備蓄機器の充実といったことについても、私ども、これからさらに取り組んでまいりたいと考えております。
以上でございます。
○高橋委員 引き続いてしっかりとお願いしたいと思います。やはり固定電話の活用などということも、非常電源と同時に、例えば三陸の方などではもう既にNTTと協力をして始められている。それが、それこそ先ほどお話があったように、太平洋側は地震が近いということで着目をして進めていたが、実は今回は内陸で起こったということもございますので、そうした点での総合的な対策を強めていただきたいと思います。
次に、今回の特徴は、被災自治体が合併で広域行政区となった地域での問題であるということが言えるかと思うんです。
お配りした資料をごらんになっていただきたいと思います。これは、岩手県と宮城県の地図の中に、奥州市、一関市、栗原市のところにマークをしておきました。岩手県がもともと四国に匹敵するくらい広いんだということはかねがね言われているわけですけれども、二市三町村が合併した奥州市は九百九十三・三五平方キロ、一市六町村が合併した一関市は千百三十三・一〇平方キロ、そして十町村が合併した栗原市は八百四・九三平方キロということで、いずれも東京二十三区の六百二十一・四九平方キロを上回っているという状況で、これはいかに広いかがおわかりいただけるかと思うんです。行けども行けども、同じ市の中なんだけれども本当に遠いということを実感されたのではないかと思います。
例えば衣川、かつては村だったところですけれども、ここの支所に行ったときに、一人一人の被災者の状況を細かく調査票に落としているんですね。調べた職員の名前も書いている。被災者の名前も書いている。油が流出した、合併浄化槽が破損した、家屋が傾斜して倒壊のおそれがある云々。いわゆる応急危険度判定や災害認定とも違う、もっと前の段階、個々の記録を残しておくことが、被災者の記憶がだんだん薄れていく、そういうこともあって、次の認定や修理、復興に向けての一助になるという考えを区長さんから伺いました。きめ細かな仕事は小さな行政区ならではのものであります。
しかし同時に、ずっと山奥の水源をたどっていく作業は、厚い土砂の壁に阻まれて、支所の体制ではなかなか対応できない。人手も財源も、区長に権限もない、こういう状況がまさに合併の弊害として突きつけられたのではないかと思うんです。
総務省から見解を伺いたいと思います。この合併の弊害についてどう対応していくつもりなのか。同時に、あわせて財政的にも、人的配置などに対して特別交付税措置などが手厚くされる必要があると思いますけれども、財政担当の方にも続けて回答いただきたいと思います。
○門山政府参考人 お答えいたします。
合併市町村の支所の体制についてのお尋ねにつきましてお答え申し上げます。
平成十一年の四月一日から十八年の四月一日までの間に合併いたしました全国五百五十八の合併市町村の実態調査を行いましたところ、合併市町村におきます支所につきましては、やはり大きくなった自治体の中でいかにきめ細かい住民サービスを維持していくかということで、半数近くの市町村におきまして総合支所方式、それから三分の一ぐらいの市町村におきまして分庁方式を採用しております。また、それ以外の市町村でも、窓口サービス中心の支所を設けたり、あるいは出張所を設ける、こういったような対応がとられているところでございます。また、総合支所方式をとります市町村の中でも、例えば支所長に緊急時の避難勧告などの一定の権限を与えたり、あるいは予算枠を付与する、こういった事例もあるところでございます。
一般的なお答えになりますけれども、合併市町村におきましては、やはり支所等の職員数を見直すということはやっているわけでありますけれども、逆に本庁においては専門的な組織を設置するといったようなことで、本庁機能の強化を図っているところでございます。これによりまして、地域の課題に対応して、住民の方々の安全、安心確保の対策などに積極的に取り組んでいただいているというふうに認識しているところでございます。
○津曲政府参考人 今回の地震では、多数の住民が避難生活を余儀なくされるなど甚大な被害が生じており、被災した地方公共団体におきましては、応急対策や復興対策などさまざまな活動が行われ、そのための経費につきまして財政負担が生じることが見込まれております。
特別交付税につきましては、一月一日から十月三十一日までの間に発生した災害につきましては、その年度の十二月分で措置することとしておりまして、今回の地震被害につきましては、その被害状況をよく把握した上で、平成二十年度の十二月分で適切に対応することとしております。
総務省といたしましては、今後、被災した地方公共団体の実情や要望を十分お聞きいたしまして、地方交付税や地方債による地方財政措置を講じまして、その財政運営に支障が生じることがないように適切な算定に努めてまいりたいと思っております。
○高橋委員 先に後半の方ですけれども、実情や要望をよく聞いてとおっしゃっていただきましたので、もともと人手や財政力がない中での災害であるということをよく踏まえた上で特段の措置をしていただきたいということを重ねて要望したいと思っております。
今、総合支所があったりして一定の権限があるというふうなことをおっしゃっていただきました。権限についてはしっかりとお願いしたいと思うんですけれども、しかし同時に、先ほど紹介した報告書の中には、合併によって専門的な人材が確保され、地域防災力が増すと書いてあります。しかし、現実はどうかというと、合併して確かに大きくなったけれども、専門的な人材は依然としていないのだということが指摘をされているんです。そこをちゃんと見ていただきたい。
奥州市はこの二年間で百八十人の職員が削減され、衣川は三十七人減っています。そしてまた、今は総合支所となっているところも、いずれは支所機能が縮小されるということははっきりしているんですね。そういう中で、ますますふえるこうした中山間地での災害にどうこたえていくのかが問われているのではないかということを強く指摘したいと思います。
それで、そのこととも非常に関連するのが、災害の認定の問題なんです。今、応急仮設住宅の建設も始まりましたけれども、やはりいよいよ、もといた場所に戻りたい、再建をしたい、どうすればいいか、一人一人が選択を迫られることになります。
今回、岩手・宮城内陸地震では、建物の応急危険度判定によって、赤紙、つまり危険と判定された家屋が六・五%だ、阪神の一三・九%、中越の一四・五%などと比べると小さいということが報道されて、新聞各紙が、全壊が少ない、建物の被害が小さい、こういうことを重ねて報道しているんですね。それは、一部には確かにあります。伝統工法で、昔ながらの工法でしっかりしている。しかし、それだけではないんです。今から被害が小さいと見るのは早過ぎないかと指摘をしたい。
これは栗原の金沢地域というところで、赤紙が張られておりますが、いまだに認定はされておりません。土台が崩れ、壁が壊れています。実際にこういうところに住めるはずがないんです。このことをしっかり見ていただいて、被害の認定についてはまだ途上であり、今後、支援法適用の可能性は残されているということを確認したい。
同時に、こうした基本的住居の機能が喪失していることにきちんと着目をして、認定をするに当たり、市町村にはなかなかその技術力が伴いません、そこに対しての支援も含めて、実態に応じた判断ができるように国がやるべきだと思いますが、最後ですので、大臣、一言お願いします。
○泉国務大臣 今ここで市町村合併の目的等をお話しするということは差し控えておかなければならないと思いますが、合併をしてまだ時日がたっていない、その中で、集約化する、効率化するということを図っていかなければならないのが現状であると思っております。技術者につきましても、必要な部分を確保していかなきゃならない、こういうことを考えておられるものと思います。
そこで、再建支援法等の被害の実態につきましては、まさに今調査中でございますが、先ほど来申し上げておりますように、きちんと現場を見て、本当に人間が住むことができるところなのか、それとも、これは形は整っておるけれども実態的な生活は難しいということなのか、そうした判断をこれからやっていきたいと思っております。
我々としては、いろいろな手だてを考えてまいります。総理からも、おっしゃいますように、法律は法律として、法律がうまく機能しなくても、全力を挙げて支援をするようにという御指示をいただいておるところでございます。河川の問題もせきとめ湖の問題も、そしてまた農水省でやっていただいております田畑の問題につきましても、そういう総理の意向を受けて現在対処させていただいておると理解をしておるところでございます。
○高橋委員 終わります。しっかりお願いいたします。