七月二十四日の未明に最大震度6強を記録した岩手県北部地震では、公立学校施設にも被害が出ました。学校耐震化が急がれる中、1981年以前に作られた旧耐震基準の建物で耐震化が図られたのは38.8%に過ぎないことが三十一日、わかりました。
日本共産党の高橋ちづ子衆院議員が、衆院災害対策特別委員会で明らかにしたもの。高橋氏は、国の責任で学校耐震化を早急に進めるよう求めました。
文部科学省は六月二十日、全国公立小中学校施設の耐震調査の結果を発表しました。これによると、小中学校の耐震診断実施率は93.8%、耐震化率は62.3%、大規模地震で倒壊する危険性の高い小中学校施設は約一万棟でした。文科省は今後五年間で約一万棟の耐震化を進めるとしています。
高橋議員は、耐震診断実施率93.8%は、十万~二十万円で実施できる優先度調査を含めたもので、耐震化工事に必要な二次診断実施率は62.8%に過ぎないと指摘。文科省の岡誠一文教施設企画部技術参事官は、1981年以前の建物では耐震化率が38.8%にしか達していないことを明らかにしました。
高橋議員は、「二次診断にかかる二百万~三百万円の費用が自治体の足かせになっている。耐震化を義務づけするなら、ふさわしい予算措置をとるべきではないか」と追及しました。
泉信也防災担当相は「耐震化をすすめ、子どもたちが安全に過ごし、被災地の手助けになる場所として使えるよう努力したい」と答弁しました。
学校耐震化をめぐっては六月、日本共産党をはじめとする与野党の共同提案で改正地震防災対策特別措置法案が提出されて可決、施行され、国庫補助率の引き上げなどが実現しました。
高橋議員は、被災地が同改正を歓迎していると紹介。一方で、七月二十六日に視察した築四十七年の青森県八戸市の吹上小学校が未診断であり、岩手県洋野町の体育館は耐震診断を発注した矢先だったことを例に挙げ、「国の施策が遅すぎたといわざるを得ない。これを重く受け止めて、耐震化を一気に進めるべきだ」と迫りました。
(2008年8月1日(金)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
先月、今月と続いて地震がありました。また、二十九日の豪雨でも大きな犠牲、被害が出ました。亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された皆さんに心からお見舞いを申し上げたいと思います。
私は、八戸市と岩手県洋野町に視察に入りました。今回、住家の被害が小さかったのに比べ、学校や体育館など文教施設の被災が多かったように思います。
二百五十九の公立学校のうち、ガラス破損などの軽微なものもありますけれども、先ほど田名部委員が御紹介いただいた八戸市の吹上小学校などは、紹介された体育館は平成十五年築ですが、本体の校舎の方は昭和三十五年築であります。もちろん旧耐震基準で、まだ診断がされていません。建物の継ぎ目にひび割れ、教室の黒板の壁が盛り上がって崩れている、あるいは校舎をぐるりと一周する地割れができております。また、洋野町の、震源に近い旧大野、ここの第一中の体育館は昭和五十八年築ですけれども、六本の鉄骨がすべてゆがんでおります。しかも、体育館裏手の土手はやはりぐるりと地割れができておりました。
これらの事業が災害復旧事業の対象になると聞いておりますが、基本が原状復旧である。とはいえ、耐震化も備えた復旧がどうしても必要である。そのことを十分考慮するべきだと考えますが、見解を伺います。
○岡政府参考人 災害によって被害を受けた公立学校施設等の復旧に要する経費の一部は国が負担することとしておりまして、その経費の算出に当たっては、委員御指摘のように、被害を受けた施設を原形に復旧することを原則としております。
しかしながら、地震等によりまして全壊または半壊した建物を災害復旧事業により改築する場合等につきましては、現行耐震基準に基づく建物に改良して復旧することが認められております。
また、柱でありますとかはりなどの主要な構造部材が著しく損傷した場合は、耐震性の向上を図るための復旧についても災害復旧事業の対象としているところでございます。
なお、被害の復旧と同時に、別途、公立学校施設整備事業により耐震補強事業を申請することも可能になっているところでございます。
○高橋委員 そうしたセット、あるいは耐震化を備えた改良ということを十分、また同じことが繰り返されないように、御指導、御援助をいただきたいと思います。
それで、さきの国会で、全会派による議員立法で地震防災対策特別措置法の改正が実現しました。耐震化工事に対する補助率のかさ上げなどが実現、措置されることになったわけです。学校の耐震問題はかねてから我が党としても訴え続けてきたところですし、私自身も、〇四年の本委員会での初質問がこの耐震問題でありました。前進が見られたということを率直に喜び、また、法改正に御尽力された各会派の皆さんに敬意を表したいと思っております。
被災地である八戸市も、今回の措置によって大いにテンポアップを図りたいんだ、そういう期待の声が寄せられておりました。しかし同時に、真夜中であり、また八戸市は夏休みに入っていたということが幸いして負傷者がいなかったけれども、現状を見ると、使用中であれば大変だったとやはり言わざるを得ないのです。
市内には、先ほど紹介した昭和三十五年築よりもさらに古い校舎も残されております。耐震化率は三九%にとどまっています。洋野町の大野体育館、さっき紹介した第一中とは別です、体育館は昭和五十五年築ですが、耐震診断の発注をしたやさきの地震だった。間に合わなかったわけであります。このことをしっかり受けとめ、一気に進めるべきだと思います。
そこで、公立学校施設の耐震改修状況調査について、六月二十日の文部科学省の発表では、小中学校の耐震化率は六二・三%で、耐震診断実施率は九三・八%だ。そのことと、大規模な地震によって倒壊する危険性の高い小中学校は約一万棟だ。つまり、六割の耐震化と九割の診断と一万棟、この数字が全体いっているわけですね。
しかし、旧耐震基準という中で見ると耐震化率というのはぐっと落ちると思いますが、どうなっていますか。
○岡政府参考人 二十年の四月一日現在、一九八一年、いわゆる新耐震以前の建物に限った場合の耐震化率は三八・八%となっております。
○高橋委員 ありがとうございます。
つまり、今御報告いただいたように、旧耐震基準の建物のうち耐震化は四割にも届いていないのだ、そのこと自体を見るべきだと思います。しかも、小中学校だけで今言っておりますけれども、旧基準の建物の方が六割で多いわけですよね。その中でも耐震化率は四割にもなっていないんだ。ここは、しっかり現状をあからさまに見て、まだまだ非常におくれているんだというふうに認識をすべきではないかと思います。
さっき田名部委員も紹介いただいたように、耐震診断実施率そのものが九三・八%で、しかも、これは統合の見込みなどを入れますと九七・一%だということで、何か診断そのものはほぼ終わりますよみたいに響くわけです。しかし、実際は、十万から二十万程度の予算でできる優先度調査をやっただけのものを入れている数字である。実際には、一次、二次診断が必要ですが、二次診断の費用は二百万から三百万、自治体が二の足を踏んでいるということを指摘したわけです。
私は通告してありますので、実際の二次診断の実施率は幾らですか。
○岡政府参考人 二十年四月一日現在の第二次診断等に限った場合の耐震診断実施率につきましては、六二・八%となっております。
○高橋委員 耐震性がない建物のうち二次診断がやられたのは四三・六%である。文科省の資料を見て言いました。それで、全体で言うと六二・八%である。そういう到達である。
つまり、実際の耐震診断が終わったのは九割台ではなく六割台なんだということをしっかりと受けとめていただきたい。数字だけがひとり歩きして深刻さが見えてこないということはあってはいけないと思います。
そこで、質問は、少なくとも優先度調査はすべてが終わっているべきだと思いますが、どうかというのが一つです。
それから、五年間で一万棟を耐震化すると言います。しかし、〇・六以上が耐震化だと言われるにもかかわらず、Is値〇・三未満の建物がその対象と言います。例えば、青森県の耐震性が不足の小中学校は百二十六校ありますけれども、〇・三未満の小中学校でいうと二十六校にすぎません。八戸市は一つもありません。まあ、これは診断がおくれているということがあるんですけれども。あわせて、〇四年の中越地震でも、旧耐震基準の小中学校のうち大破した建物十四棟はすべて診断未実施でありました。同じことを繰り返していると言えるのではないでしょうか。
財政的な事情から優先順位をつけざるを得ないのは理解できます。しかし、耐震診断については、もっと短期間に終わり、〇・三から〇・六のところが早期に視野に入るようにならなければならないと思います。診断をいつまでにやり、全体像はいつまでに把握できるのか、目標を持ち、そこにふさわしい予算措置をするべきと思いますが、いかがですか。
○岡政府参考人 二点御質問がありましたので、お答えさせていただきます。
まず、本年六月に改正されました地震防災対策特別法におきまして、地方公共団体に対して、公立小中学校等について耐震診断の実施が義務づけられたところでございます。義務づけの耐震診断の中身は、耐震化優先度調査、一次診断、二次診断等とされております。
このため、文部科学省としましては、未診断の地方公共団体があれば、少なくとも耐震化優先度調査を実施するよう、個別に指導しているところでございます。
また、二つ目の二次診断等の完了の時期というお話ですけれども、公立学校施設の耐震化を速やかに進めるためには、当然のことながら詳細な耐震性能を確認することが望ましいということになっておりまして、文部科学省としましては、地方公共団体に対しまして、通知等によりまして耐震化優先度調査等を実施した建物について早急に二次診断を実施するよう強く要請するとともに、関係省庁と連携しつつ必要な財源措置を講じているところでございます。
しかしながら、第二次診断等の完了時期につきましては、学校の設置者である市町村の取り組み状況に負うところが大きく、現時点におきまして時期というのをお示しするのは困難な状況でございます。
○高橋委員 義務づけはするけれども、今御自身がおっしゃったように、自治体の財政は厳しい、だからなかなかいかないんだと。それだったら、義務づけをして、後は自治体の責任よ、それではやはり進むはずがないわけですね。
一万棟を五年を目途に耐震化すると。しかし、特別措置法は三年という期限がございます。三年たって、耐震診断、とりあえず一次までようやっといったわ程度でいいのか。法律で区切っている以上、そこはもっと見通しを示さなくちゃいけないんですよ。そこが一つです。
それから、改修では間に合わないということでやむを得ず改築となった場合、補助率は二分の一である。しかも耐震診断の費用も二分の一になるわけです。こうなると、自治体にとって大きな障害であります。最も危険で改築を急ぐべき建物が財政上の理由で後回しになる。これじゃ全然子供たちの安全を守るという趣旨と逆ではありませんか。どのように考えますか。
○岡政府参考人 学校施設の耐震化の手法としては、いわゆる改築、建てかえというものと、補強と大規模改造をあわせて行います改修という方式がございますけれども、改修方式によりまして長寿命化を図るという方向が、コストと時間をかけずに耐震化と老朽化の両方に対応できるなど、一般的にはより効率的、効果的な手法であると考えられております。
今回の地震防災対策特別措置法の改正による補助率の引き上げでございますけれども、委員の御指摘のような引き上げ率になっておりますけれども、危険性の高い学校施設の耐震化を加速するという趣旨であります。このことから、改修方式が有効であるという点も踏まえ、改築事業につきましては、Is値が〇・三未満であって、かつ、やむを得ない理由により補強が困難なものについてかさ上げ措置が講じられているというような法案の趣旨になっている、そう理解しているところでございます。
○高橋委員 だったら、せめて耐震診断だけでも補助率を同じにするとか、やりようがあると思うんですよ。だって、改築というのは一定時間がかかりますからね。そういう中で、やむを得ないということがあるだろうと。しかし、それでは済まないわけですよ。もっと危険だということが判明してしまうわけですから。そのことは大いに検討されていただきたいと思います。
本当は最後に大臣に質問するつもりでしたが、時間が来ましたので、要望だけ届けたいと思います。
昨年の十二月に泉防災担当大臣名で提言を発表されて、「自然災害の「犠牲者ゼロ」を目指すために早急に取り組むべき施策」ということを提案され、その中でも、耐震診断を早急に進めることや、危険性の高い一万棟についての五年を目途に耐震化を図ることを提案されました。このことを、大臣、いや、文科省や国土交通省がと言うだけではなくて、災害の連絡調整であり、責任者として、全体として進むように大いにリーダーシップを果たしていただきたいということ、また、自治体が独自でその分カバーして頑張るところには必要な財政補助をしてあげるなど、そういうことも検討していただきたいということを要望して、終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○泉国務大臣 一言だけ私の立場からお答えを申し上げておきたいと思います。
先日、各都道府県のこの問題の担当者を文科省、国土交通省がお集めになって御説明等がありました際に、私もあえて出席をお許しいただきまして、ごあいさつをさせていただき、耐震化を一層進めてほしいということをお願い申し上げました。
内閣府の防災担当といたしましても、御指摘の数々の問題を踏まえながら、そして、子供たちがより安全に、場合によっては被災地の一つの手助けになる場所として使っていただけるように、これからも努力してまいりたいと思います。