日本共産党の高橋ちづ子議員は8日の衆院予算委員会で、汚染された外米を輸入してきた政府の責任を厳しく追及し、抜本対策を迫りました。
政府は1995年度以降、3万トン以上の輸入汚染米を国内に流通させました。そのうち、農林水産省が食用などに不正流通されたと公表しているのは7400トン(うち輸入汚染米は5285トン)にすぎません。
高橋氏は「今、判明している(汚染米の)実態は氷山の一角」と告発し、全容解明を強く要求。不正流通の背景には「(政府が)04年の『コメ改革』で、届け出さえすれば、どんな業者でも米の販売ができるようにしたことがある」として、不正転売を行った大阪の「三笠フーズ」も米粉加工業者の実体がほとんどなかったことを明らかにしました。
高橋氏は、「ゆきすぎた規制緩和が安全・安心を置き去りにした」と追及。石破茂農水相は「(売買業者の)実態を了知しなかったことは重い責任を感じる」「(売買業者も)届出制のままでいいか議論していかなくては」と答えざるを得ませんでした。
高橋氏は「必要のない外米を輸入してきたことと規制緩和は表裏一体の関係にある」と指摘。食の安全よりも外米の在庫処理を優先する政府の姿勢を厳しく批判し、「ミニマムアクセス米はきっぱり中止せよ」と強調しました。
(2008年10月9日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
農水省が九月に発表した〇七年産の米生産費調査結果によれば、一日八時間当たりの家族労働報酬は全国平均で千四百三十円、時間給にするとわずか百七十九円にすぎません。罰則つきの生産調整、資材、飼料、肥料、燃油の高騰という中で、もう農業は続けられない、そう悲鳴が上がっているときに、キロ五円から十円で買った輸入汚染米がめぐりめぐって三百七十円にもなったり、老人ホームなどで食べられていたとは、まじめに良質の米をつくっている生産者の誇りが踏みにじられました。
そして、消費者はもはや何を信用したらよいのでしょうか。一部の悪質な業者と一部の農水省官僚の癒着、不十分な対応、そういう問題に矮小すべきではありません。
さて、一体全容はどうなっているでしょうか。この間大臣が答弁されている、汚染米は国内流通をしないようにするとか、トレーサビリティーの問題、あるいは原産地表示の問題、いずれも全部やるべきだと思います。私たちが求めてきた問題であります。肝心なことは、これまでのこと、どこでどうなっていったかがほとんどわかっていないということであります。
パネルを見ていただきたいと思います。
今回、輸入外米の中で事故米と言われているもので今流通の経路がはっきりしているのは五千二百八十五トンであります。ところが、今ちょうど原口委員のお話にも少しありましたけれども、会計検査院が平成七年から十七年まで報告をとっておりまして、その合計では輸入事故米の売り渡し総量は二万七百六十七トンであります。一方、政府の手にはもう渡らない、検疫の時点で違反となったもの、これが同じく平成七年から十九年までで一万七百二十八トンございます。合わせると三万トン以上これまで事故米が出ている。そのうち、経路がわかっている、まあ全容ではないにしても、政府が発表しているのはわずか五千二百八十五トンにすぎないということなんです。
この内訳を資料の二枚目と三枚目につけておきました。二枚目は、会計検査院の報告の内訳であります。報告のうち、農水省が公表した分というのが分かれていて、二つ目が食品衛生法による違反数量。これを見ると、例えば二〇〇三年、これは合わせて六千トン以上事故米が出ているんです。ところが、わかっているのは六十八トンにすぎません。この年は不作で、中国からモチ米が五千トン輸入された年であります。〇五年、残留農薬規制が厳しくなった最初の年ですが、五千六百二十九トン、それでもわかっているのは二十九トンのみであります。
大臣、今判明しているのは氷山の一角にすぎない、このことをまずお認めになりますか。
○町田政府参考人 お答え申し上げます。
今委員御指摘のとおり、この事故米穀でございますが、水際で発見されたもの、また、水際で問題がなく国内に入りまして倉庫保管時で見つかったもの、こういったものがあるわけでございます。その中で、現在私どもは、この五年間、販売先等がわかっている七千四百トンでございますが、この分析、調査、解明に全力を挙げているところでございます。
○高橋委員 何で大臣が答えないんでしょうか。
要するに、氷山の一角にすぎない、そこで全容解明を当然するということで、一言お願いいたします。
○石破国務大臣 今局長から答弁を申し上げたとおりでございますが、平成十五年度以降の七千四百トンについて今全力を挙げて調査をやっておる。これは、本当に全件調査みたいな話で、非常に時間がかかります。時間がかかるからといって逃げはしませんが、正確を期するためにも、ある程度の時間はちょうだいをしなければなりません。
残留農薬基準超過米、アフラトキシン検出米等の流通ルートの解明、これを最優先しなければいけないということでございます。したがいまして、今のような答弁をいたさせました。一般カビも含めまして、十月末を目途として全体像を解明したいと思っております。氷山の一角かどうかは別といたしまして、全体像は解明をいたします。
○高橋委員 あいまいにしないことをあわせて求めていきたいと思います。
さてそこで、大変素朴な疑問を差し上げます。
まず、三笠フーズは一体何の会社なんでしょうか。フーズ、食品と名のつく会社がなぜ工業用のりの原料を買ったのでしょうか。
○石破国務大臣 それは、登記簿を見たわけではございませんが、これは食品を扱うということもやっておったわけでございます。したがいましてフーズということになっておるわけでございますが、そういうふうに名乗ったからといって、そういうような工業用の米を取り扱ってはならないということには相なりません。
これは登記簿を確認してはおりませんので、正確なお答えは後ほど登記簿を確認してから申し上げます。
○高橋委員 この間も一定指摘をされていることではあるんですけれども、ここのところに実は非常に問題があるのではないか。
〇四年度米改革で、わずかな要件をクリアし、いわゆる届け出さえすればどんな業者でも米の売買ができるようになりました。当時、日本共産党は、流通の規制緩和は大企業の参入機会を許し、中小の米穀店を淘汰するとして反対しました。その後、平成六年、三万四千軒あった町の米屋さんは、十九年には一万七千軒と半減をしました。食管法の廃止後、丸紅、伊藤忠、ニチメン、三菱商事、住友商事など、次々に卸売資格を取得しました。このことを九八年九月八日付の日経流通新聞は、「コメ三兆円市場を狙え、完全自由化へ関連業界走る」と題して、米流通業界の淘汰、再編を報じました。
大臣、この〇三年五月の新食糧法提出に当たって、農水省は、「消費者が求める安全、安心な米など多様な要請にこたえ得る生産体制づくりや流通改革の推進」と述べております。しかし、今回の事件を通せば、行き過ぎた規制緩和が安全、安心を置き去りにしたとは言えないでしょうか。
○石破国務大臣 それは、統制経済というものを頭に置いて、戦時にどのようにして国民にきちんとした食糧を配るかということが食管法でございました。食管法のそもそもの成り立ち、その後の経緯は委員よく御案内のことだと思います。それを、食管法は本当に必要とするか、委員がおっしゃいますようにかつての食管法の時代に戻したとするならば一体どのようなことになるのか。今、米が非常に余っている、過剰である。昔、処理するときに三兆円ぐらい使ったことは委員御案内のとおりだと思います。どうやって消費者の方々に安全で安心で安い米をお届けするかという考えのもとに食糧法はできております。
ですから、食糧法が悪い、自由化されたから悪いということではなくて、そういう業者というもの、そういうやり口というものをいかにしてはじくかということの制度の手当て、それはこれからやっていかねばなりません。本当に届け出制のままでいいかという議論もしていかねばなりません。
しかしながら、食糧法があって、自由化になったのでこういうことが起こったというふうにストレートになるとは私は全く考えておりません。
○高橋委員 私は、食管法に戻せとかそういう議論をしたのではありません。行き過ぎた規制緩和が安全、安心を置き去りにしたのではないかと、行き過ぎたという指摘をいたしました。
先ほど大臣が後で見ますと言いました三笠フーズの履歴事項全部証明書が私の手元にございます。この中に「目的」というものがございます。工業用のりの原材料の製造、加工、販売並びに輸出入業とあります。確かにあります。ただし、それは十二番目であります。その前に何が書いてあるか。農畜産物の販売並びにその加工、処理及び同加工品の販売並びに輸出入業。肥飼料、有機化学製品及び無機化学製品。三、化学工業薬品、木材、酒類、食品全般。四、産業機械、建設機械、繊維機械、事務機械及びそれらの部品の販売並びに輸出入業。五、自動車、自転車、産業用運搬車、構内作業車及びその他の車両。六、不動産の取得云々。七、損害保険代理業云々。八、有価証券。九、古物品。そういうものが並んだ後に、総菜の加工販売、飲食店などというのも来ています。
この中に、十四項目ある中に、のりというものがあったがために認めた、事故米穀買い受け資格というものが認められるんだそうです。しかし、これはもう何でもありですよね。要するに、社長は商社出身だということを言われていますけれども、この書類だけで判断したと。
実は、ここに書かれている北区梅田一丁目の本店の住所には電話すらありません。実体がないということは、もう農政事務所が認めていることです。書類だけで資格を認める、このこと自体に問題があったと言えませんか。
○石破国務大臣 会社の目的というのは、公序良俗に反するもの以外は何を書いてもいいということに一応なっておるわけでございます。ですから、本当に社名とやっていることが全然違うねというのは、別に三笠フーズに限ったことではございません。多くあります。
ただ、委員御指摘のように、その会社がどういう会社であったのか。それは、やはり私どもとして事故米を買い取ってくれる業者として提示もしてきたわけでございます。そうしますと、食の安全ということを考えましたときに、目的がいかなるものであるにしても、その会社がどのような会社であるのかという認識は、食の安全にかかわる役所として持っておらねばならぬことであったというふうに思っております。そういうような実態をきちんと了知をしないまま、事が、その推移というものが起こったということについては、当省として重い責任を感じておるところでございます。
○高橋委員 今、責任を感じておるというお言葉がございました。この後にも続く幾つもの会社がペーパーカンパニーであったということが指摘をされているし、先ほど示した、まだ全容がわかっていない、その中にもいろいろなこういう問題が隠されているんだろう。ここを本当に恐れず改革をするという立場に立っていただきたいと思います。
次に、今回の事件の主役であるミニマムアクセス米について伺いたいと思います。
必要のない外米を輸入してきたことと規制緩和は表裏一体だと私は考えています。
パネルを見ていただきたいと思います。九五年の四十万トンから始まり、だんだんふえて、今は毎年七十七万トン輸入されてきました。三月末で輸入数量は八百六十五万トン、現在在庫が百二十九万トンと聞いております。三年以上保管が、この赤いところ、印をつけておりますが、三割を超えている。赤字にもなるしカビも生える、こういう実態であります。倉庫代が一トン当たり一万円かかるということが既に表明されていますが、十一年間の倉庫代の累計と売買差益がどうなっているか伺います。
○町田政府参考人 委員御指摘のとおり、本年三月末現在の在庫数量は百二十九万トンでございます。平成七年から本年三月までのこの間の保管費用の累計額は一千二百五十三億円でございます。
また、直近におけますミニマムアクセス米の十九年度の損失額は二百十六億円となっているところでございます。
○高橋委員 これも国民の税金であります。こうして倉庫代が圧迫をし、そして必要のないミニマムアクセス米が積み上がっているという現状の一端をまず紹介しました。
実は、全国農民連が二〇〇三年にミニマムアクセス米の加工原材料仕向け先、購入業者名及び業者別販売数量の情報公開を請求したことがございました。一部開示決定となり、不服審査をしましたけれども拒否されたという経緯がございます。
これは、なぜこういう請求をしたのかというと、申立人は、前年、中国東北部に視察をして、現場で、湖畔に化学工場が建っておりまして、現地の担当者が重金属汚染の危険性を述べていた、そういうことを考えたときに、国民にとっては原産地表示すら何もない中で選ぶ権利がないのだ、そういうことを考えれば、国民の生命、健康を維持するためには必要なことではないか、こういう立場で開示を求めたわけです。それが不開示になったわけですけれども、大事なことは、私が何を言いたいかというと、なぜ開示できないかというその理由のところなんです。
一部紹介をしたいと思います。
前段に、ミニマムアクセスがこんなに積み上がっているという話をしております。九三年十二月十七日の閣議了解もあり、在庫に係るMA米の保管経費が食糧管理特別会計の健全な運営を圧迫しており、政府はこの在庫処理の対応に苦慮している、このような状況のもとで開示をすると、みずから獲得し蓄積した各種ノウハウ、つまり、業者の皆さんがMA米をどこからどれだけ購入してどれだけブレンドするかというふうなことを言っているんだと思うのですが、その外部流出を恐れる購入業者などを中心に政府への信頼が失われ、MA米の購入取りやめが相次ぐことが予想される、こういうふうに書いているのですね。
そうすると、もはやだれのため、何のためのミニマムアクセス米の受け入れなのかな、こういうことを考えてしまうわけです。それでも、七月のジュネーブで行われたWTO交渉では、アメリカの強い圧力もあり、約百万トンのミニマムアクセスを受け入れる、そういうこともできていたと聞いております。
最後に総理に伺いたいと思います。必要のないミニマムアクセス米はきっぱりとやめるべきと考えますが、どうでしょうか。
○石破国務大臣 それは、これだけお米が余って、何でミニマムアクセス米を入れなきゃいかぬのということは、それはだれしも思っています。入れないで済めばこれにこしたことはないのです。
しかしながら、何で七八〇という高い関税を張って、消費者の負担によって入れないようにしているか、そこの議論もきちんとしなければいかぬでしょう。
そして、このミニマムアクセスというのは枠だからいいのだと言いますけれども、それはやはり入れていかねばならないもので、どうすれば国内でつくった米を、おいしくて安全で安い米を日本人が食べられるようになるかということ。そして、世界の貿易ルール、そして農業保護というのは一体だれの負担で行うべきものなのか。あちらのいいこと、こちらのいいことばかりつなぎ合わせても政策はできないわけで、トータルで考えてどうすべきなのかという議論をきちんとさせていただきたいと思います。
ミニマムアクセス米を入れなくても済むような農業の体制というのはどういうものなのか、そのためにはどういう障害があって、それをどうやって乗り越えていかなければいけないのか、その議論をせずしてミニマムアクセス米をやめるという話にはすぐなりません。ぜひ、共産党としてもこうすべきだというお話をしていただき、私どもも議論を展開させていただきたいと思います。
国内でつくった安全でおいしい米をみんなが食べられる、そのことはみんなの願うところであり、そこは考えは共通であります。
○高橋委員 ミニマムアクセス米はWTOの協定上は義務ではないということは、この間の国会の議論で既にされてきたこと、それを踏まえて多分おっしゃっている、閣議決定の中身であるということだと思うんですね。そのために何を努力するのかというお話がございました。それで、昨年米でも実際には全量は輸入できていないわけですよね、国際価格が高くなったという背景の中で。しかし、それでも別に責められないという関係がございます。そういう中で日本が判断できることがあるんだろうということです。
九月五日、この事件の問題が発覚した日に、政府は、〇八年の第一回ミニマムアクセス米の入札を強行し、トン当たり十万を超す最高値で落札をしました。国際米価が三倍とも言われる中で、ミニマムアクセス輸入が国際価格をつり上げる影響があることも言われている中です。
一方、生産調整の目標を達成できなかった農家には、今、厳しいペナルティー、各種補助事業の補助金を出さないということが言われております。そのうちの一つ、千葉県の匝瑳市では、一俵一万三千円する新米、先ほどおっしゃいましたおいしいお米、これを泣く泣く三千円、キロ五十円でえさ米に回しました。国民には汚染米、家畜には新米、この不合理に全会一致で意見書を出しました。このような農政は日本農業を崩壊に導くのではないでしょうかと訴え、主食を輸入しなくてもよい農政のため、全容解明と、輸入義務ではないミニマムアクセス米の輸入中止をきっぱり求めています。
こういう立場に立って見直しをするべきと思いますが、総理、一言お願いいたします。
○麻生内閣総理大臣 今、石破大臣からももう既にお話があっておると思いますので、十分わかった上で聞いておられるんだと存じますが、これは、ミニマムアクセス米を入れざるを得ない背景というのは、日本のお米に関しましては輸入関税というものが六〇〇%か五百何十%がかかっておる、ここが問題なんだ。
だから、五百何十%がゼロでいい、何もなしでいいぞというのが共産党の御意見というのであれば、それは、一挙に安いお米が入ってきてもいいんだというお話になりますと、七七八%か、こういったものがかかってきますと、これはそれだから今守られている部分がありますから、それなしにすればミニマムアクセス米はないですよ、入ってこなくなります。しかし、それだと今度は、こちらの方の農政、農業生産者としては、七七〇%がなくなったらもちますかといえば、それはなかなかもたないんじゃないかというので、そこのところのせめぎ合いが今一番難しいところなんだ、私はそういうぐあいに理解しております。
僕はそんなに農業に詳しいわけでは正直言ってありません。しかし、基本的には、その点を考えますと、これは各国皆同じような問題を抱えておられますので、ガット・ウルグアイ・ラウンド等々で何回も何回もやってきて今の段階になってきておると理解をしております。したがって、これを、最初にミニマムアクセス米を決められた細川内閣のときですけれども、いろいろ苦悩の上に最終決断をされたんだ、私どももそう思っておりますよ。思っておりますけれども、しかし、私どもとしては、これは世界じゅうで合意した上でやっておりますので、日本だけそれから別にというわけにはなかなかいかない。
基本的には、事故米とか汚染米とか言われたものが入ってこないようにするところが、きちんと管理するところが一番肝心なところなのではないか。私も基本的に、先ほど大臣の言われたのと同じ考えであります。
○高橋委員 最後の一言でそこまで言われると、反論の時間がないのにちょっと困ってしまいますね。
今、細川内閣でとおっしゃいましたけれども、共産党を除くすべての政党が賛成をいたしました。そのときに、その前のときに農水政務次官だった石破大臣は、三度の輸入自由化反対の決議があったにもかかわらず決定をしてしまった、この責めは次の選挙で審判が下るだろうということを当時書いていらっしゃいますね。そういうことがまた起こるのではないかということを指摘して、終わりたいと思います。