国会質問

質問日:2008年 11月 18日 第170国会 厚生労働委員会

労働基準法改正案に対する反対討論

 残業割増賃金を引き上げる労働基準法の改定案が18日、衆院厚生労働委員会で自民、公明、民主、国民新の各党の賛成で可決されました。日本共産党、社民党は極めて不十分として反対しました。

 政府案は、過労死ラインである月80時間を超える残業について割増賃金率を現行の25%から50%に改定するというもの。規制に程遠いとの批判が高まるなか、自民、民主、公明の三党は80時間を60時間にする修正案を共同提出し、日本共産党、社民党以外の賛成多数で可決しました。

 これに先立って反対討論にたった日本共産党の高橋ちづ子議員は残業時間の上限を法律で規制するとともに、長時間労働の改善のためには、すべての残業時間の割増率を50%にし、連続休息時間を11時間確保することなどが求められていると指摘し、改定案は極めて不十分と述べました。

 政府案について、(1)80時間を超えなければ割増率が50%にならず、過労死を生み出すような長時間労働を固定化する、(2)割増賃金の代わりに有給休暇を与えることができ、繁忙期に長時間労働が集中する恐れがある、(3)割増率の引き上げを「中小企業には当分の間、適用としない」としており、労働者に異なる労働基準を持ち込むことになる-の三点をあげて反対。修正案についても原案の問題点を抜本的に改善するものでないとして反対しました。

(2008年11月19日(水)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 私は、日本共産党を代表し、内閣提出の労働基準法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論します。

 この数年来、総実労働時間は二千時間を超えたまま横ばいとなっており、有給休暇の取得率も年々低下をしています。昨年度、長時間労働や仕事のストレスなど、過労が原因の自殺で労災認定を受けた人が八十一人と過去最多となり、長時間労働は一向に改善されていないのが実態です。

 こうした実態を抜本的に改善するためには、残業時間の割り増し率を均衡割り増し賃金率に相当する五〇%に引き上げること、残業時間の上限を法律で規制すること、日々の長時間労働を規制するため、EU諸国と同様に連続休息時間を二十四時間のうち十一時間は確保すること等がどうしても必要であり、そうした法改正こそ求められています。この点で本改正案は極めて不十分と言わなければなりません。

 反対理由の第一は、過労死ラインと言われている月八十時間超でなければ、割り増し賃金率が五〇%にならない点です。これでは、国が過労死ラインまでは残業させても構わないとお墨つきを与えるようなものであり、過労死を生み出すような長時間労働を固定化することにつながりかねません。

 第二は、月八十時間を超える残業となった労働者に、引き上げ分の割り増し賃金の支払いのかわりに年休でない有給休暇を与えることを可能としている点です。

 労働者の健康にとって一日の労働時間そのものを短縮することが必要です。残業時間分を休暇で代替する方法では、業務の繁忙期に長時間労働が集中するおそれがあります。そもそも、年次有給休暇の取得率さえ低下し続けているもとで代替休暇だけ保障するといっても実効性がありません。

 第三は、割り増し賃金率の引き上げについて、中小企業には当分の間、適用しないとしている点です。そもそも、労働条件の最低基準を刑事罰をもって守らせるための労働基準法に、大企業と中小企業の労働者で異なる基準を持ち込むことには問題があります。また、大企業の割り増し賃金率が引き上げられることが傘下の下請中小企業の長時間労働を招くというおそれもあります。

 なお、提案された修正案についてですが、割り増し賃金率を五〇%に引き上げる時間外労働時間を六十時間超とすることで、時間外労働の抑制に一定の効果は期待されるものの、本法案の問題点を抜本的に改善するものではないため、反対することを述べ、討論とします。


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