日本共産党、民主党、社民党、国民新党の野党四党が提出した後期高齢者医療制度廃止法案の質疑が19日、衆院厚生労働委員会で行われました。同法案は、先の通常国会に提出され、6月6日に参院で可決、その後継続審議になっていました。衆院での質疑は初めてです。
四月に始まった同制度は、75歳以上のお年寄りを別建ての医療制度に囲い込み、際限ない保険料負担増と差別医療を強いる内容です。制度導入から半年以上がたち、全国で国民の怒りが広がっています。
質疑では、与党議員が、制度の廃止は「荒唐無稽だ」「とんでもない提案だ」と制度の存続を主張。国民の声に背を向ける立場を鮮明にしました。
法案の発議者として答弁に立った日本共産党の小池晃政策委員長は「制度は、麻生首相が『国民に理解が得られていない』というほど、重大な矛盾を抱えている」と廃止法案の成立を求めました。
“制度を廃止すれば保険料が上がる”などとする与党議員に対して、小池氏は、制度は二年ごとに自動的に保険料が上がっていく仕組みであると述べ、「この制度の延命こそ際限のない負担増になる」と強調しました。
他党の発議者も「後期高齢者医療制度は適切でない。まずは従前の状態に戻して、もう一度しっかり議論すべきだ」などと答弁しました。
高橋議員が質問
野党から質問にたった日本共産党の高橋ちづ子議員は、高齢者の保険証取り上げ問題などを指摘し、制度の廃止を強く求めました。
(2008年11月20日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めに、提案者に伺いたいと思います。
四野党の廃止法案は老人保健制度に戻すことになっておりますが、先ほど来の議論では、緊急避難であるとか、穴があいているけれどもどっちが大きいかみたいな議論が盛んにされております。その先の制度設計については各党さまざまな意見があって当然と思います。
日本共産党は現行老人保健制度についてこのままでいいと考えているのか、伺います。
○小池(晃)参議院議員 老人保健制度は、もともと無料だった老人医療の窓口負担を有料化するときに導入された制度で、日本共産党は導入のときには反対をしております。
また、歴代政府は、この制度を累次にわたって改定し、老人医療に対する国庫負担を削減する一方、現役労働者の保険料負担、それから高齢者の窓口負担、地方自治体負担に転嫁してまいりました。こうした老人保健制度の問題点は当然改革が必要であります。
しかし、老人保健制度は、高齢者を国保などこれまでの医療保険制度から強制的に脱退をさせる制度とは根本的に異なります。今までの制度に加入させたまま現役世代より窓口負担を軽減してきた、そういう制度であります。
穴のあいた船という話がありましたけれども、我々は、穴のあいた船から港に一たん戻れというふうに主張しているのであります。厚生労働省が発表した最近の医療費動向を見ても、ことし四月から六月までの高齢者の入院外一人当たりの医療費は二・三二%のマイナスとなっております。受診抑制、治療中断が現実に始まっております。一たん直ちに戻すべきだと考えます。
私どもの改革の方向としては、持続可能な医療制度とするために、減らし続けた国庫負担をもとに戻して、国保、政管健保、老人医療を立て直す。大企業の人減らし、非正規化、保険料逃れをやめさせて、雇用、賃金、保険料負担への責任を守らせる。そして、高薬価、高額医療機器を是正する。こうした改革によって病気の早期発見、早期治療を進めて、それこそ医療費の膨張を抑え、保険財政を立て直していく道である。こうした抜本的な改革によって、安心できる医療制度をつくっていくべきだと考えております。
○高橋委員 ありがとうございます。
もう一問。後期高齢者医療制度を廃止すると、市町村国保の財政負担がふえ、国保料の引き上げをもたらす危険があるという指摘がございましたので、この点についてもお願いいたします。
○小池(晃)参議院議員 午前中の質疑で、後期高齢者医療制度を廃止して老人保健制度に戻せば、拠出金の負担で国保の財政が悪化するという指摘がございました。提出者としては、後期高齢者医療制度の廃止によって拠出金が増額となる自治体に対しては、国保料の値上げやさらなる財政悪化にならないよう、国が財政支援をすることが必要になると考えております。
そもそも、国保財政がこれほどの危機に陥った最大の原因は、一九八四年の国保法改悪以来、国庫負担が削減されてきたことにあります。日本共産党は、市町村国保に対する国庫負担を計画的に八〇年代の水準に復元することを提案しております。高齢者医療の改悪による小手先の負担転嫁はやめて、国庫負担増による根本的な国保の立て直しを図るべきであり、後期高齢者医療制度の廃止はその第一歩となり得る改革だと考えております。
以上です。
○高橋委員 ありがとうございました。
ここから今度は大臣に伺いたいと思います。
この間の議論を聞いていますと、与党は、後期高齢者医療制度反対の意見について、非常に感情論であるというような御指摘が多いと思います。しかし、感情論といいましょうか、高齢者の皆さんの気持ちを本当に大切にすると同時に、しかし、これこそが制度の本質であるということが私たちの指摘なのであります。
先ほど来、年齢で区別をする別枠の制度をつくるのか否かと。大臣は、先ほど郡委員も指摘をしたとおり、その旨、大臣の描いているのは県単位の一つのバスであるという御指摘がございました。
そこで、改めてはっきりさせたいことは、それはあくまでも大臣の考えであって、一年かけて見直すという麻生総理の頭は、まだ選択肢の一つであるということではないのか。そうすると、大臣は、自分自身はそう思っているというレベルなのか、あるいは自分も迷っているというレベルなのか、お話しください。
○舛添国務大臣 現在の後期高齢者、いわゆる長寿医療制度については、さまざまな利点があります。しかしながら、御高齢の方々の心情に配慮をして、例えば七十五以上で区分けするのをやめる、天引きをやめる、財政負担について世代間の公平を確保する、こういう観点から一年をかけて検討するということで、今検討をしております。
その過程で、検討会の各委員もそれぞれの案をお出しになる、私も私の案を出す。もとより、厚生労働大臣の私案ですからそれなりの重みがあることは当然承知しておりますけれども、しかし、広く議論をした上で一つの案をまとめたい、そういう方向でございます。
○高橋委員 そうすると、やはりこれはあくまでも大臣の思いであるということに尽きると思うんですね。
私は、正直言って、大臣が冒頭かなり早い時期に三つの視点からとお話をされたときには、非常に重要である、踏み込んだ言い方であるし、本来ならば、制度を廃止しようという我々と基本的に同じじゃないかということを考えるわけです。しかし、今のお話は、やはりこれからのいろいろな議論があるということでは、一つの思いであるということではないかということを指摘させていただきます。
それで、根拠法である高齢者の医療の確保に関する法律の第一条には、「目的」として、高齢者の心身の特性に合わせ、「適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進する」ということが書き込まれました。先ほど午前の議論でもあったとおり、この大命題がある。
もう既に都道府県の医療費適正化計画が積み上がってまいっておりますけれども、七千六百億円を実際に超えている。こういう大きな方針を変えない、医療費削減を変えない、そして別枠は変えないとなれば、これはどんな見直しをしたとしても根本的には何ら解決をしない、このことを言わせていただきたい。
そこで、質問は、大臣の私案である国保と一体となった県単位の制度、この県単位の制度というのは今の広域連合が土台ですか。
〔西川(京)委員長代理退席、委員長着席〕
○舛添国務大臣 その前に申し上げておきたいのは、三つの観点から見直しますよというのは麻生内閣の方針であります。その具体的な中身について今議論をしているということをはっきり申し上げておきたいと思います。
それから、広域連合について。これは、県自身がこれだけの事業をやるのは非常にちゅうちょなさったということで広域連合ということをやっていますけれども、悪い面を言えば無責任体制になる危険性があります。したがって、明確に県という単位を持ってくることがいいと思います。
ただし、例えば、今、市町村で保険料率が全部違います。県に統一したからといって一気に同じ料率にすることにはさまざまな問題がありますから、激変緩和措置、そういうきめの細かい点もやりながら県単位の設計をしたい、そういうことであります。
○高橋委員 大臣、私が聞いているのは、県単位ということは広域連合かと言っているんです。広域連合は自治体じゃないんです。はっきり答えてください。
○舛添国務大臣 私が申し上げたように、広域連合だとさまざまな問題がありますから、県が嫌がったんですね。したがって、広域連合という便法をとったわけです。明確に県という単位にするということです。
○高橋委員 県でやるという意味だったんですね、今のは。確認をいたしました。違うんですか。
○舛添国務大臣 財政的な基盤として県でやる、しかしながら、きめの細かいことをやるためには市町村との連携が必要ですから、例えば職員を市町村と県で兼任させるというようなさまざまな工夫はいたします。
○高橋委員 今なぜこういうことを聞いたかといいますと、大臣自身の今のお答えの中に含まれていたように、広域連合にさまざまな問題があるんですね。やはり自治体ではないですので、責任の所在が明らかでありません。今、さまざまなトラブルが全部市町村に来ている。二重の徴収ですとか、さまざまなトラブルがみんな市町村に来ているけれども、実施主体は広域連合である、ここに大きな矛盾が来ている。
しかし、県単位でやることに対しては、市町村と知事会が長々と論争してきた問題であるわけですね。そこに対して、この間、国保でじわりじわりと県の権限を拡大して、国保の負担を一律にしようであるとか平準化をして、県同士を競わせるとか、そういう流れになってきたわけです。
ですから、そこら辺をどういうふうに考えているのかを一回聞きたかったということでありまして、これは次のところでまた出てまいりますので、次の質問に入りたいと思います。
資料の一番なんですけれども、先ほど山井委員が紹介をいたしました青森県の保険医協会がやった国保の滞納率の問題ですね。地元ですので、一言補足をさせていただきたいと思っております。
先ほど、大臣、九月の国保滞納率が一二%というのは大臣から見ても高いとおっしゃいました。でもそれは、制度の変わり目なので一定高く出るのではないかという指摘だったと思うんです。それはそのとおりだと思うんです。
ところが、実は青森県は、四月の調査も同じものを持ってございます。そのときは、国保の滞納世帯のうち七十五歳以上のいる世帯は一四・六%、七千九百五十なんです。ですから、実は国保の段階でこれよりも多いというのが実態です。八・六%、資格証が出ているんですね。その割合でいくと、どれだけの人が資格証の対象になるかということはおのずとわかると思うんです。
そこで、先ほど答弁の中で、本当にお金があるのに払わない人、遊んでいる人、その人にまで保険証を上げるのはいかがかという趣旨の発言があったと思います。しかし、本当にお金のある人、払わない人、遊んでいる人は差し押さえという制度がございます。先般九月の子供の無保険の調査の中でも、口座をしっかり把握して差し押さえしているという自治体の答えがございました。そういう形できっちりと制度は組んだんです。だから、資格証を出して保険証を取り上げる必要はないのです。後期高齢者からは保険証の取り上げをするべきではない。いかがでしょうか。
○舛添国務大臣 データの見方で、一つは、過渡期にあるということではなくて、明確に申し上げましたように、口座振替がそうじゃなくなったことによるデータがあるんじゃないかということでございました。ただ、今委員がそういう数字をお示しになりましたので。
ただ、私は、何のために資格証明書かというと、きめ細かい相談の機会を得るためという大きな一つのポイントがあるということを繰り返し申し上げておきたいと思います。
○高橋委員 直接お答えにならなかったんですけれども、後期高齢者を資格証の対象にしないということは考えていないということなんですかね。これは前向きに考えるということでよろしいでしょうか。
○舛添国務大臣 結果的に本当に困った方に温かい手を差し伸べるにはどういうふうにすればいいか、そういう視点から考えております。
○高橋委員 そこで、少し提案をさせていただきたいと思います。本当に困っている方ということ、実際には生活保護の基準以下で暮らしている方がたくさんいらっしゃる、生活保護に入らず頑張っていらっしゃる、そういう方にもっと救済をするべきではないか。
これは本当は大臣に差し上げて全部見ていただきたいくらいなんですけれども、青森県の不服審査会で不服審査をした方たちの陳述が載ってございます。
年はこれこれ、黒く塗っているんですけれども、年が幾つか過ぎましたけれども、いまだにまだ働き、生活保護をもらっているわけではないし、年金といっても一番安い国民年金で、月に三万ちょっと、三万五千円程度の生活をして暮らしているので、だから、生活保護をもらってもいいと思うんだけれども、それなりに、なるたけそういうのに頼らないで、何とかしてアルバイトで、ちょっと朝早く、使ってくれる人があって掃除をやっているんですと。朝五時に起きて頑張っているけれども、後期高齢者の二千円とか介護保険が四千四百円とか年金から引かれているので、とてもじゃないけれども何とかしてほしいというふうな、こういう訴えがるるあるわけです。
私は以前の委員会で質問したことがあるんですけれども、本来は、こういう保険料の負担をすることによって生活保護基準を超えてしまう、そういう境界層という方には、当然、保険料をゼロにするあるいは減額するという措置がございます。これが、前に指摘したのは、生活保護を一々申請をして却下されるという証明がなければそれの対象にならないという、せっかく受けないで頑張っている人に、わざわざ窓口へ行けというような制度なわけです。
少なくとも、そういうことをなしにして、境界層をうんと拾ってあげる、そういう仕組みはいかがですか。
○水田政府参考人 国民健康保険の保険料、低所得者対策についてでございますけれども、これは御存じのとおり、所得が一定水準以下の場合には保険料軽減制度がございます。所得に応じて最大七割軽減というものがございます。さらに、特別な事情がある場合には、条例に基づいて、市町村の判断で減免を行うことも可能になっているわけでございます。
したがって、御指摘の点は、条例による減免をどう運用するかということになろうかと思います。制度としてはほとんどの市町村で実施しているわけでございますけれども、その基準につきましては、各市町村が実情に応じて定めるものであるということでございまして、国として一律に基準を示すということは困難であると考えております。
ただ、平成十九年四月一日現在で条例を定めている市町村千七百七十九のうち、生活保護基準該当世帯について減免を行うこととしている市町村は六百二十五ございます。それから、所得水準が一定水準以下の世帯について減免を行うこととしている市町村、これは生活保護基準より上のところもあれば下のところもあるわけでございますけれども、おおむね緩い水準でございますが、三百八十三ということになっておりまして、それぞれの自治体でそれぞれ実情に応じた取り組みをされているものと考えております。
○高橋委員 今紹介いただいた最初の数字六百二十五、これは生活保護基準の例えば一・五倍という形で条例を設けて減免をしているということで、大いにこれは紹介をしていただきたいと思うんです、境界層の精神であると。
しかし、条例をうんと持っていただきたいと同時に、現実に今それを個々に、本来の権利として使おうとすれば非常に大きな壁がある。先ほどの不服審査はすべて棄却をされているわけですけれども、これは、保険料額の決定を行った広域連合、それから特別徴収で行うことを決定した青森市、いずれも、法律や条例の規定に基づいて適正に処分したものであるというふうな結論が出ちゃうんです。
これが、先ほど言ったように、責任の所在が明確でないから、何も私たちが独自にやる必要ないでしょうと自治体が突きはねる、広域連合はそこのところだけやる必要がないというふうになっちゃえば、だれもやらないことになってしまうわけです。この点を大いに検討していただいて、前に進んでいただきたいと思います。
そこで、資料の二を見ていただきたいと思います。
これは、生涯医療費、一人の人間が生涯にかかる医療費がどのくらいかというのをことしの白書で出した数字でありますけれども、大体二千三百万円、七十歳未満で五一%でございます。ということは、確かに七十五歳が最大のピークであります、しかし、それまでは、若い時代はほとんど医療費がかかっていないんですね、病院にかかっていない。保険料はいっぱい払っているけれども、病院にはかかっていない。そういう中で高齢者になって、やっと元が取れるというときになってこの負担になっている、ここに非常に怒りがあるということです。
その下の棒グラフは、先ほど小池議員から紹介があった受診抑制の部分ですけれども、全日本民医連の調査であります。ことしの四月から六月の受診数を前年と比較したら、診療所はマイナス七・八四%、外来は一〇・四八%と、受診抑制が始まっているんです。
しかし、本来は、この三枚目を見ていただきたいと思うんです、日本は諸外国と比べて、ほぼ毎日から月に一回くらいまで病院にかかっている割合が五六・八%でトップであります。一番病院にかかっている、だけれども、そのことによって一番健康であるという、この高齢者白書のあれがあります。
つまり、皆保険に支えられて高齢者は健康寿命を伸ばしてきた、そういう大きな成果があるわけです。それが、今現実に受診抑制という形で始まっている、これをやはり大もとに戻すべきではないか。
大臣、一言だけお願いします。
○舛添国務大臣 さまざまな効率化を図って、無駄の排除ということもやらないといけません。そして、治療よりも予防という形で、全体の医療費の抑制ということはやはり政策課題として考えないといけないと思います。そしてまた、今の数字の中で、病院がサロン化しているというような状況についてもこれは深刻に受けとめないといけない。
しかしながら、逆に、今委員がおっしゃったようなさまざまな御指摘もまた当を得ている面もあると思いますから、そういうさまざまな状況をきちんと把握しながら、さらによりよい医療制度に変えていくために全力を尽くしたいと思います。
○高橋委員 終わります。