日本共産党の高橋ちづ子議員は27日の衆院災害対策特別委員会で、災害救助法に基づく応急修理制度について質問しました。
厚生労働省は、改正前の被災者生活再建支援法の年収、年齢要件に準じた基準を応急修理制度に新たに持ち込む内容の連絡文書を、2004年の中越地震の際に出し、その後も運用しています。
高橋氏は、応急修理制度に年収、年齢要件を持ち込む根拠とされてきた支援法が、昨年の改正でこれらの要件をなくしたことをふまえ、「支援法に準じて、(応急修理制度の)要件を取り払うべきだ」と求めました。
佐藤勉防災担当相は、「支援法、災害救助法両制度の在り方について、被災者の立場に立って総合的に検討していく」と答えました。
また高橋氏は、家屋の被害認定基準について、中越地震の際に、再調査の結果「一部損壊」から一気に「全壊」に認定が変わり、公的支援が何十倍にもなった事例を紹介。「(被害認定の点数が)一点の違うだけで天と地の差だ」として、現在内閣府ですすめられている被害認定基準の見直しについて、再調査に建築関係部局を配置すること、建築家のアドバイスをもらって本人が不服申し立てをする際も認めるなど、被災者の納得が得られる方向で見直しがすすめられるよう求めました。
(2008年11月30日(日)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
昨年の被災者生活再建支援法の改正は、いわゆるねじれ国会と呼ばれる国会の中の最初の成立法案であり、多くの国民、関係団体を励ます成果だったと思っております。ちょうど一年、制度がどう生かされ、また次なる課題が何なのか、少し考えてみたいと思います。
まず、改正支援法が遡及適用になった災害がどの程度活用されるようになったのでしょうか。例えば能登半島地震、中越沖地震において、半壊以上の世帯数、支援法による支援金支給世帯数、また災害救助法による住宅の応急修理件数がそれぞれ幾らなのかをまずお答えください。
それで、改正前は対象世帯の五割が支援金を受けられるというのが一つの目安であったと思います。改正によって、対象世帯数のうち、カバー率がどのぐらいになったのか伺います。
○大森政府参考人 お答え申し上げます。
まず、能登半島地震による半壊以上の住宅被害は二千四百十七棟でございます。そのうち、被災者生活再建支援金の支給を受けた世帯は八百四十世帯、これは平成二十年十月三十一日現在でございますけれども、また、応急修理を受けた世帯は九百二十世帯でございます。
中越沖地震による半壊以上の住宅被害は六千九百四十棟でございまして、そのうち、被災者生活再建支援金の支給を受けた世帯は二千五百五十二世帯、これも同様、平成二十年十月三十一日現在でございます。応急修理を受けた世帯は二千八百六十二世帯というようになっております。
次に、カバー率の問題でございますけれども、被災者生活再建支援金と応急修理による支援、それぞれの支援を受けた世帯数の合計と被害のあった棟数を単純に比較いたしますと、能登半島地震におきましては約七割、新潟県中越沖地震においては約八割となっております。
ただ、この数字でございますが、世帯数を単純に棟数で割っているものでございます。また、両方の支援を受けている世帯が考えられますので、実際にいずれかの支援を受けることができた世帯はこれよりも少ないものになるのではないかと考えられます。
以上でございます。
〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕
○高橋委員 今お話あったように、若干ダブりがある問題などで厳密には見えないということであります。
そこで、一つ、参考になんですけれども、七月九日付の読売新聞の新潟版によりますと、柏崎市で被災住宅の八割が被災者生活再建支援制度を申請していることがわかった、法改正で使い勝手が向上したのではないか、このような指摘がございます。つまり、中越地震と中越沖地震の地震発生後十一カ月の比較。件数の単純比較でいきますと中越地震の一・五倍である。しかし、中越沖の場合は全壊または大規模半壊した住宅の数が中越地震の半分以下、それを考慮すると、さらに円滑に支給が進んでいるという指摘で、要するに、件数でいうと一・五倍、住宅の被災の割合を勘案しますと大体三倍の効果ということが読み取れるのではないかと思うんです。
ですから、この十一カ月の比較でこうであるということは、スピードの問題、それから規模、つまり対象要件が広がったということの規模の問題ですね、この点について、まず内閣府の受けとめを伺いたいと思います。
○大森政府参考人 お答えを申し上げます。
先生の今の御指摘のように、昨年、議員立法によりまして再建支援法を変えていただいたわけでございますが、年収要件の撤廃等々、渡し切りの制度に変わりまして随分使い勝手がよくなったのではないかというように考えております。
○高橋委員 今紹介した記事のように、具体的に使うことができる世帯がふえたということは、この委員会としてみんなの努力で実らせたものでありますけれども、やはり非常に大きな意味があったのではないかということを思っております。
そこで、今、先ほど紹介された数字を聞いていて感じたかと思うんですが、支援法で受けられた規模と同じくらいの規模で住宅の応急修理制度が活用されている。例えば、能登半島でいうと八百四十の支援法に対し応急修理が九百二十ということ、中越沖ですと二千五百五十二に対し二千八百六十二ということで、応急修理制度というのがかなり活用されているということが一つまた言えると思うんですね。
私、この制度に対しては、二〇〇四年の新潟・福井豪雨災害の問題を指摘したこの委員会から、うんと活用してほしいということで訴えてきたつもりであります。その当時の豪雨災害は、半壊以上が二百件以上に対して応急修理が六件だった。このことから見ると、今本当に活用されていると言えるのではないかと思っているんです。
ただ、大きな問題がございます。それで、資料の1を見てください。この活用のきっかけになったのが、平成十六年十一月二日付の厚生労働省社会・援護局保護課長から新潟県にあてた連絡文書であります。「新潟県中越地震における災害救助法の住宅の応急修理の円滑な実施について」、この通知は新潟県に向けた文書ではありますけれども、全国に一般化されているのかどうか、まず伺います。
○坂本政府参考人 ただいまの応急修理の実施でございますけれども、新潟県中越地震の際に、みずからの資力で応急修理ができない者の資力要件について基準の明確化を図ったところでございます。
こうした取り扱いにつきましては、災害が発生した地方自治体に助言を行うのはもちろんのこと、毎年開催いたしております災害救助担当者全国会議におきましても、各都道府県に対しまして事務取扱要領を配付するなど、その内容について周知しているところでございます。
厚生労働省としましては、今後とも都道府県に対しまして十分周知を図ってまいりたいと考えております。
○高橋委員 今お話がありましたように、応急修理制度に新たな基準が設けられたということになると思うんです。資料にありますように、対象が半壊であることや仮設住宅を利用しないことという条件がついている。それから、所得などの要件がついている。この所得の要件は、当時の被災者生活再建支援法に準じたものであるということが確認をされているんですね。
ちょっと二枚目の表を見ていただきたいと思うんです。かつては、被災者生活再建支援法がこういう階段式の様子になっておりました。今回の法改正で所得要件と年齢要件がなくなったので、大規模半壊以上はすべて対象になる。ところが、半壊という条件つきで、世帯主が四十五歳未満は年収五百万円以下というように、まだ要件がつけられている。これは、根拠法である支援法が今取っ払ったわけですから、この際、支援法に準じて取り払っていいのではないか。いかがですか。
〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕
○坂本政府参考人 御指摘の資力要件の明確化をいたしたことによりまして応急対策をとることのできる対象物件がはっきりいたしまして、応急修理がスピードアップをするとともに、その実績も上がってきているところは事実でございます。
被災者生活再建支援法は、生活再建を支援するものといたしまして、使途の要件をなくすとともに、資力要件を撤廃し、支援金の給付をすることに改正されました。一方、災害救助法の応急修理は、資力のない本人にかわって行政が行うものでございまして、被災地域の当面の住まいをどのように確保するかという観点から、まさに喫緊の応急対策としての性格を有しているところでございます。ということで、内容を異にしているものと考えております。
厚生労働省としましては、今後とも実態に即して応急修理の適切な運営に努めてまいりたいと考えております。
○高橋委員 スピードアップを図るということを言うのであれば、今も定額給付金の所得制限でもめておりますけれども、それがないのが一番いいわけであります。災害救助法というのは、本来、所得要件を持たないものである、急ぐものであるからこそ持たないものであるということを言われてきたと思うんですね。まして、応急修理というのは五十万円と限られておりますし、しかも五十万円を使い切る必要はないわけで、現物給付でありますから必要以上に使う危険性はないわけですね。そうすれば、本当に法の趣旨である必要な者に必要な程度を使うということに沿うものではないか。
それから、もう一つ言われた、資力のない者ということを明確にしたのだというお答えであったけれども、そうすると、何で年齢で分ける必要があるのか。
○坂本政府参考人 確かにそのような指摘はあるわけでございますが、災害救助法の応急修理につきましては、居室、炊事場、便所など日常生活に必要最小限度の部分について現物で行うということで、応急修理を必要な範囲ということで対応しようということでございます。したがいまして、その場面でどういうふうな住まいの対策をとるかということを、限りある資源を使いましてどのように対応するかという観点から、要件を定めて運営しているところでございます。
○高橋委員 日常生活に最低限度必要なものを見直すとするのであれば、一部損壊というのはまさにそこに当たるわけですよ。ここを区別する必要はなくなるわけです。それから、先ほど言った年齢制限の問題は結局解決されない、今の答弁を聞いていても解決をされない。
つまり、当時は、中越地震で、非常に大量にスピードアップを図る必要があったからこうした基準を決めたけれども、準拠した支援法を見直しした。そういうことからいっても、今は応急修理制度そのものも、本来は、日常生活に最低限度のものを修理すれば住めるのだ、その趣旨をうんと尊重したらどうなるのだろうか、要件はもっと見直してもいいのではないか、このことを検討するときに来ていると思います。
大臣に、このことを通告しておりますので、調整役として考えを伺いたいと思います。
○佐藤国務大臣 被災者生活再建支援法は、自然災害によりましてその生活基盤に著しい被害を受けた方に対し、その生活の再建を支援し、もって住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的としております。同法による支援金については、昨年の法改正によりまして、見舞金的な性格を有するものとされまして、年収要件が撤廃されたものであります。
一方、災害救助法における住宅の応急修理は、災害によって住宅が半壊以上の被害を受け、そのままでは住むことができないが、その破損箇所に手を加えれば何とか日常生活を営むことのできるような場合を対象としております。このような場合には、その応急修理を行う資力がない方に対して、行政が必要最低限の修理を行うことで被災者を保護しようとするものであるというふうに思います。
災害の担当大臣といたしましては、今後、必要に応じて厚生労働省と連携をしつつ、両制度のあり方について、その運用実態を踏まえて、被災者の立場に立った総合的な検討を加えていくことが必要と考えております。
○高橋委員 ここはあと指摘にとどめます。何度も言っているように、私は、救助法と支援法と性格が違うということを踏まえた上で言っているんです。資力のない者といいながら所得制限をし、しかも、最低限といいながら一部損壊はだめよと。そうやって基準を設けたことが非常に現実に合わなくなっているんだということをしっかり踏まえて検討していただきたいということを訴えたいと思います。
そこで、やはり被害認定というものが、この応急修理の問題でも支援法の問題でも大きくかかわってくるわけですね。
それで、ちょっと資料の4を見ていただきたいと思うんですね。一部損壊から全壊認定にと見出しが書いております。見舞金五万円から公的支援最大四百万円になった事例でございます。大変ショッキングなわけですけれども、中越大震災における被害認定で一部損壊になった小千谷市の女性が、再調査を受けて一部損壊から一気に全壊認定になったわけです。そうすると、これは自治体の補助でありますけれども見舞金五万円しかもらえなかったものが、一気に四百万円になった。つまり、認定というのは、一点の違いでも天国と地獄の、これだけの境目になってしまう。だからこそ、厳密でなければならないし、被災者が納得できるやり方でなければなりません。
簡潔にお願いいたします。内閣府は、被害の実態に即した適切な住家被害認定の運用確保方策に関する検討会を今立ち上げて、来年六月にも運用指針改訂を目指していると聞いていますが、このような指摘を踏まえてどのように進めていくのか、当事者の声を聞く仕組み、公聴会など検討するべきと思いますが、伺います。
○大森政府参考人 お答えいたします。
先生御指摘のように、内閣府といたしましては、これまでのさまざまな指摘を踏まえまして、学識経験者などにより構成する検討会を設けているところでございます。地震だけでなく、竜巻、水害の際の被害認定についての検討を進めまして、来年の六月ごろをめどに、必要に応じて被害認定の調査・判定方法の見直しを行うことといたしているところでございます。
そして、質問の中で、もっと現場の声を聞くべきではないかというようなお話もございましたが、この今の検討会のメンバーの中には、被害認定業務に従事した自治体職員の方や、また、被害認定調査に現場で協力された学識経験者の方に委員として参加いただくなど、現場の声を聞くための体制をつくって検討を進めているところでございます。
また同時に、被害認定を実施したことがある市町村の担当者を対象としてアンケートやヒアリングを実施するとともに、被災者にヒアリングを行うなどによりまして、被害認定調査の実態把握に努めております。
これらによりまして、これらの現場の声を踏まえて検討をしていきたいと思っております。
○高橋委員 公聴会もお願いいたします。
検討会で出された資料を見ますと、被害認定において税務当局と建設部局以外の方がやっているというのが五割を超えているわけですね。これに対して意見が現場から上がっているんです。例えば、岩手・宮城内陸地震の被災者は、三回調査をやったけれども、同じ人が来て、評価が変わらないし、三回やったから打ちどめだと、これでは再調査の意味がないじゃないかと訴えているわけです。
最初に言ったとおり、点数の積み上げで、一点の違いが天と地の差を分ける、命運を分けることになるわけですね。基本的住居の機能を喪失しているという点を本当に評価するということを大臣はこれまで何度も答えてきた。だけれども、それは結局点数の積み上げになっている。そこをどう盛り込むかといったときに、例えば、提案です、再調査には建築関係部局を配置すること、あるいは、主治医の意見書ではありませんが、本人が建築家などのアドバイスをもらって不服を申し立てする場合、これをきちんと評価してあげる、こういう仕組みを考えたらいかがですか。
○大森政府参考人 お答え申し上げます。
住家被害の認定に当たりましては、市町村の職員がこれを行うことを基本と考えております。実際、多くは建築・税務関係部局職員などを中心として業務に当たっているところでございます。その他の専門家の活用についても、現行の被害認定基準運用指針におきまして、大規模地震災害等において、応急危険度判定士、また地元建築士会などの支援の重要性を指摘しているところでございます。
ただし、各自治体におきまして、いろいろな財政面また実施体制面での制約もございますので、これらの制約を考慮に入れながら、今後、被害認定の実施体制についてはさまざまな観点から検討を行いまして、運用の改善に努力してまいりたいと思います。
○高橋委員 時間なんですけれども、最後の質問に答えていないんです。本人が建築家のアドバイスをもらった場合、評価してくれということ。答えていないのでお願いします。
○大森政府参考人 先ほど申し上げましたように、多くは建築そして税務関係部局職員などを中心として業務に当たっているわけでございます。その他専門家の活用も、我々、重要性を指摘しているところでございます。
また、市町村の中では、さまざまな建築そして税務関係からの固定資産の評価、そういったことを事前にいろいろ研修を行いながら、そういう知識を身につけて被害認定に当たっているというように伺っているところでございます。
○高橋委員 重ねて要望して、時間が来たので終わります。