国会質問

質問日:2009年 3月 10日 第171国会 本会議

雇用保険法改正案

 衆院本会議で10日、政府提出の雇用保険法「改正」案と民主党などが提出した雇用対策関連法案についての趣旨説明と質疑が行われました。質問にたった日本共産党の高橋ちづ子議員は、深刻な雇用情勢のもと、「今必要なことは、国民の期待に真にこたえるよりよい法改正の実現だ」とのべ、与野党がそのために努力することを求めました。

 政府の雇用保険法「改正」案は、雇用保険の非正規社員への適用「拡大」や失業手当の給付「拡充」を柱としたもの。現行では「一年以上の雇用見込み」としている非正規社員の雇用保険への加入要件を「半年」に短縮すること等を盛り込んでいます。

 民主党などが提出した雇用関連三法案は雇用保険の適用対象の大幅拡大や求職者支援、内定取り消し規制などを盛り込んでいます。

 高橋氏は、「新たな解雇・雇い止めをくい止めることなしに、問題の根本解決はない」と強調。「雇用破壊」をすすめる大企業へ政府が指導・監督を強めるよう迫りました。

 舛添要一厚生労働相は、雇用、生活の安定を確保することが「何よりも重要」との見解を示し、「失業を予防する対策にも全力を尽くす」と答えました。

 また高橋氏は、現行雇用保険法には離職理由による給付日数などの格差がある問題を取り上げ、その見直しを求めました。

(2009年3月11日(水)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、政府提出の雇用保険法改正案及び野党提出の雇用対策関連三法案について質問をします。(拍手)

 一月の自殺者が二千六百四十五人にもなったといいます。派遣切りされ、窓から飛びおりたいと思った女性がテレビで映し出されたように、今日の雇用、経済情勢の悪化が背景にあることは否定できません。今月末までに十五万八千人の非正規労働者が解雇、雇いどめされ、さらに正社員にも首切りが及ぶなど、悲観的な数字が連日報道されています。

 さまざまな雇用・失業対策が打たれてきましたが、このまま失業者がふえ続ければ対応し切れないと現場から悲鳴も上がっています。新たな解雇、雇いどめを食いとめることなしに、問題の根本解決はありません。政府はこの立場に本気で立つ決意があるのか、お答えください。

 厚労省は、昨年十一月二十八日に、偽装請負や派遣受け入れ期間三年を超えて働かせていた場合、派遣先に対して対象労働者の直接雇用を推奨するとの通達を出しました。大臣は、法違反の場合には厳正に対処すると繰り返し答弁していますが、では具体的に、昨年の秋以降、労働者からの直接雇用を求める申告件数はどのくらいですか。そのうち指導件数と解決件数を伺います。

 我が党は、労働者派遣法を九九年の原則自由化以前に戻せと主張してきました。派遣法の抜本改正は待ったなしですが、今国会でどこまで踏み込むのか、政府と民主党にそれぞれお伺いします。

 次に、法案について質問します。

 現在の雇用保険は、失業したのに給付を受けられない人が八割にも及び、その機能を十分に発揮しているとは到底言えません。

 その責任は、政府が財界の意向に沿って、労働法制の規制緩和と雇用保険の改悪を進めてきたことにあります。とりわけ二〇〇〇年の改悪では、離職理由による給付日数の格差が持ち込まれました。自己都合離職は、三カ月も給付を待たなければなりません。職を失い、日々の生活もままならない失業者の実情に全くそぐわないではありませんか。自己都合離職といっても、その実態は、会社から強制され、退職を受け入れざるを得なかった方たちが多いのです。自己都合とそうでない人を明確に区別することができますか。この際、離職理由で給付日数に差をつけることを見直すつもりはないのか、伺います。

 また、施行期日は四月一日となっていますが、これでは、三月までに職を奪われる失業者に改正内容が及びません。少なくとも、昨年秋からの急激な悪化に対応できるよう遡及するべきではありませんか。

 雇用保険は、強制加入であるとともに、失業給付に対する国庫負担が明記されています。失業は、政府の経済政策、雇用対策と無縁ではないからです。憲法の言う生存権と勤労権を保障するため、政府も責任を担うことが義務づけられています。

 ところが、昨年の財政制度審議会建議では、公然と国庫負担の削減や廃止が言及されています。見過ごしできません。政府は国庫負担を堅持するつもりがありますか。今回引き下げが予定されている保険料率についても、雇用情勢の悪化による給付増が見込まれるもとでは、むしろ維持すべきではありませんか。大臣の見解を伺います。

 最後に、政府案とこの間の経済対策や野党案には多くの共通点があり、我が党も積極的に提案をしてきたところです。今必要なことは、国民の期待に真にこたえ得る、よりよい法改正を実現することではないでしょうか。そのために努力することを心から呼びかけ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣舛添要一君登壇〕

○国務大臣(舛添要一君) 高橋議員から、まず、解雇、雇いどめへの対応についてのお尋ねがございました。

 雇用失業情勢が厳しい状況にある中で、雇用、生活の安定を確保することを通して、暮らしの不安を取り除くことが、今何よりも重要なものであると認識しております。

 こうした状況に対応するため、厚生労働省といたしましては、各都道府県労働局、ハローワーク、労働基準監督署における事業主指導、再就職支援を含め、総力を挙げた取り組みを行ってまいります。

 また、労働者に休業や訓練などを行わせながら雇用を維持する企業への助成措置の拡充などにより、失業を予防する対策にも全力を尽くしてまいります。

 次に、労働者派遣法に基づく申告件数についてお尋ねがございました。

 労働者からの具体的な申告内容については、年度ごとに取りまとめることとしており、直接雇用を求める申告件数や指導件数もその中で把握することとしておるため、現時点では集計していないところでございます。

 なお、平成二十年四月から平成二十一年一月末までに受理した申告の件数は百九十二件となっており、すべての事案について調査を行い、法違反が確認された場合には厳正に是正指導を行ってまいります。

 続きまして、労働者派遣法の改正についてお尋ねがございました。

 現在、登録型派遣は二百八十万人もの方に利用されており、その中には自由度の高い派遣労働を望む者もおり、これを禁止することはかえって労働者の不利益になるため、平成十一年の原則自由化以前に戻すことは適切でないと考えております。

 他方、政府としても、労働者の保護を強化する観点から、労働者派遣法の見直しが必要と考えております。そのために、日雇い派遣を原則禁止するとともに、派遣元に対し、登録型の派遣労働者の常用化に努めるよう義務を課す、違法派遣を行った派遣先に対し、その労働者の雇用を勧告する制度を創設するなどの改正法案を提出しており、まずはこれについて御審議いただくことが最優先であると考えております。

 続きまして、失業等給付の離職理由による給付日数の違いについてお尋ねがありました。

 雇用保険制度においては、倒産、解雇など、あらかじめ再就職の準備をする余裕がなく離職を余儀なくされた場合には、給付日数の面で手厚い取り扱いをすることとしており、再就職の困難度を勘案して給付日数の重点化を行うことには合理性があると考えております。

 ハローワークにおいては、離職理由の判定は慎重に行っており、離職理由等について離職者が異議を唱えた場合には、離職者と事業主双方の主張を聴取した上で、実態を見きわめ、適切に判断しております。

 続きまして、施行の遡及適用についてお尋ねがございました。

 施行日よりもさかのぼって改正法を適用することにつきましては、既に受給中の人について、労使双方に労働者が更新を希望したか等を確認しながら改めて受給資格決定をやり直す必要があるとともに、手続に来た人だけを救うとすれば公平性の観点から問題があるなど、さまざまな困難がありまして、これは不可能であると考えております。

 なお、雇用対策全体といたしましては、雇用保険が受給できない者をも対象として、既に住居・生活支援の資金貸し付けや、訓練期間中の生活保障給付の拡充などの施策を既に実施しているところでございます。

 最後に、国庫負担及び雇用保険料率の引き下げについてお尋ねがございました。

 雇用保険の国庫負担は、保険事故である失業が政府の経済政策、雇用対策と関係が深く、政府もその責任を担うという考え方によるものであり、堅持することといたします。

 また、雇用保険料率引き下げにつきましては、雇用保険財政の安定的な運営が確保できることを前提とし、特例的に二十一年度の一年間に限り保険料率を引き下げることとしたもので、雇用失業情勢が悪化する中で、雇用の創出とセーフティーネットを両立させていくために必要な対策であるものと考えております。(拍手)

    〔細川律夫君登壇〕

○細川律夫君 高橋千鶴子議員から、民主党は労働者派遣制度の見直しについて、どうすべきか、どのように考えているかというお尋ねがございました。

 民主党は、雇用の原則は、期間の定めのない雇用、直接雇用であるべきと考えております。

 昨年来、世界的な景気後退に入って以来、派遣切り、雇いどめがふえているなど、多くの派遣労働者が雇用の調整弁として扱われるという実態が浮き彫りとなっております。改めて、期間の定めのある雇用が多く、間接雇用である労働者派遣の構造的な問題を直視して、見直すべきであると考えております。

 私どもは、既に二年近く党内論議を重ねまして、労働者派遣法の改正案も準備もいたしているところでございます。

 その内容は、日雇い派遣などの短期の労働者派遣の禁止だけではありません。派遣先の企業が一定の違法行為をした場合には、派遣労働者が派遣先に対して雇用主であることを通告できる直接雇用みなし規定の創設、また、労働者の就業形態にかかわらず、就業の実態に応じた均等待遇の原則の確保、さらに、派遣先での不利益扱いの禁止や未払い賃金、社会保険未払いについての派遣先の連帯責任を求めるなど、派遣先の責任強化等を柱とした改正案でございます。

 今のままの法改正が行われない状態ですと、現在の労働者派遣法が悪法のまま残ることになってまいります。私どもといたしましては、民主党の改正案策定はいたしておりますけれども、他の野党の皆さん方とヒアリングやあるいは意見交換を今行っておりまして、労働者派遣法の見直しに向けて鋭意努力を重ねているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

    〔阿部知子君登壇〕

○阿部知子君 高橋議員にお答え申し上げます。

 自己都合退職と解雇等による離職により給付に差があることの問題点の御指摘がございました。

 私どもも、実際の労働現場において、解雇を自己都合退職と言いかえて離職を強要している実態が少なくないと認識しております。のみならず、会社都合の離職者が多いと国の助成金を受けられなくなる、あるいはイメージダウンなどを恐れて、労働者を上手にやめさせて、自己都合退職として取り扱う事業所すらあると聞いております。

 本来ならば解雇という範疇に入るべき労働者が自己都合と認定されれば、現行法におきましても、また政府案におきましても、離職前二年間に一年間の保険料納付という二重のハードルが課せられることにもなります。

 私どもは、労働者が雇用のセーフティーネットからこぼれ落ちる事態は何としてでも防ぐべきであると考えます。本来は会社都合なのに自己都合扱いされてしまう事例については、労働者が泣き寝入りすることのないよう、政府にはきちんとした運用と指導をさらに要請したいと思います。

 その上で、本改正案におきましては、自己都合離職における基本手当の受給資格につきましては、離職前二年間に一年間の保険料納付という現行の要件を、離職前一年間に六カ月の納付に短縮をいたしました。

 また、御指摘のとおり、自己都合離職における基本手当の給付日数の変更や給付開始時期については言及しておりませんが、別途提案させていただきました求職者支援法におきまして、自己都合、会社都合にかかわらず、雇用保険の求職者給付の受給が終了した方が能力開発訓練を受ける場合に、その受けている期間中、日額五千円、扶養家族がいる場合は日額六千円、月にして最高十二万円程度を支給し、受給資格者の能力開発、職種転換等を積極的に支援することといたしております。

 ぜひ共産党の皆さんにも御賛同いただきたいと思います。

 以上です。(拍手)

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