日本共産党の高橋ちづ子議員は衆院厚生労働委員会で11日、肝炎治療費助成のための支援法について政府の対応をただしました。
高橋氏は「350万人といわれるウイルス性肝炎患者の救済のために、一日も早い支援法の成立が待たれている」と強調。政府・自治体広報による現行助成制度の周知が全体の7.1%に過ぎないことや、年間110万円を超える治療費に、年金とわずかな退職金を食いつぶしている女性を紹介し、「治療に専念できる環境の整備と、治療費全体を軽減させる体制作りを」と提起しました。
舛添要一厚労相は、周知徹底について「反省して取り組みたい」と答え、治療費の軽減については「与野党の議論をふまえて考えていきたい」と答弁しました。
また高橋氏は、介護保険制度で四月から介護報酬が3%引き上がっても、一人月額3,500円や7,500円くらいしか上がらない事業所があること、人件費割合を低めたことから人手不足で困っている事業所などは報酬が下がることを指摘。厚労省担当者は「報酬が下がる例もある」と認めました。
高橋氏は、介護従事者の養成校の定員割れが深刻(一番多い大学で充足率67.1%)であることや、介護職員の賃金が一般派遣労働者の賃金よりも低いことを指摘し、「人間の最も弱い姿を支え、尊厳を守る仕事(の賃金)がこんなに低くて良いのか。必要な財源を確保して(賃金の)全体の底上げを」と求めました。舛添厚労相は「限られた財源の中でそういう方向で努力したい」と述べました。
(2009年3月12日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めに、肝炎対策について伺います。
B型肝炎を初め三百五十万人と言われるウイルス性肝炎患者の救済へ、支援法の成立が待たれています。先ほど藤村委員の質問で、治療費負担が重いという実態調査もあることが紹介され、さらに、負担を軽減する点でも与野党の議論を踏まえたいという趣旨の答弁があったと思います。ぜひこれは一日も早く治療に専念できるよう整えるべきだと私からもお願いしたいと思います。
そこで、先ほど紹介のあった国立病院機構長崎医療センターの八橋先生が主任研究員となって発表された調査では、大事なことがございます。今後の課題として、従来の治療法に比して治療効果が高く副作用が軽減された画期的な新たな治療法の開発、これが課題の一つ目に挙げられています。
つまりは、インターフェロンにのみ特化した現行助成政策だけでは不十分だということにほかならないのではないでしょうか。
○中尾政府参考人 肝炎対策につきまして、新たな治療法の開発、特に副作用が少ない治療方法、これの開発ということにつきましては重要な課題であるというふうに認識をしておりまして、肝炎対策の推進の中で、肝炎研究七カ年戦略ということで十九億円の予算を計上しておりまして、肝疾患の新たな治療方法等の研究開発を推進してまいりたいと考えております。
○高橋委員 研究開発は存じておりますが、それが負担軽減という形で実際に治療に向かっている方たちにやはり手当てされるべきだという趣旨で質問をしております。
重ねますけれども、興味深いのは、もう一つ、助成制度があることを七三%の方が知っていたけれども、何によって知ったかは、四七・一%が医師、看護師からであり、次が報道、政府や自治体広報によって知ったのは七・一%にすぎません。つまりは、政府の周知徹底が足りなかったことを意味するのではないでしょうか。
また、義務づけられている特定健診にウイルス検査を入れるなど、もっとアクセスしやすい環境をつくるべきだと思います。全国各圏域に総合的な相談窓口もつくるべきだと思いますが、見解を伺います。
○中尾政府参考人 肝炎対策の助成対象の一つといたしまして、現在行っておりますインターフェロンに加えて、抗ウイルス薬を加えるべきではないかとの点につきましてでございます。
B型肝炎に対する核酸アナログ製剤による治療につきましては、ウイルスの増殖抑制が目的で根治療法ではないこと、また、インターフェロン治療の自己負担額が一月当たり七万円程度と高額であるのに対しまして、この核酸アナログ製剤の場合にはこれよりも相対的に低い額であることなどから、助成の対象として現在考えておりません。B型肝炎の新たな治療法につきましては、研究の推進に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
また、この助成制度についての認識が十分でないのではないかというようなことにつきましては、都道府県や関係団体の協力も得まして、検査勧奨や診療体制の整備、助成制度の周知等の取り組みを進めているところでございます。
とりわけ、日本医師会にお願いをいたしまして、肝疾患以外で医療機関に来院された方に対しましても医師から受診勧奨をするなどのお願いもしているところでございまして、今後とも検査あるいは治療助成についての周知に取り組んでまいりたいと考えております。
○高橋委員 特定健診との関係はどうですか。
○中尾政府参考人 特定健診につきましては、御承知のとおり、生活習慣病対策ということで行われているものでございますけれども、実は肝炎についての検査につきましても、例えば健康増進法に基づく市町村の検査でありますとか、あるいは健康保険者の検査の中で取り組んでいる部分がございます。
しかしながら、これらの検査では全体を必ずしも網羅することができませんので、保健所における検査を行っておりまして、またさらに、二十年より委託医療機関における無料検査も行われるように措置をしたところでございまして、現在、保健所における無料検査は九一%の自治体で、それから委託医療機関における無料検査は六六%の自治体で行われるということで、自治体の検査とそれから委託機関の無料検査いずれかは必ず、どこに住んでおられても受けられるという体制となっているところでございます。
○高橋委員 余りここでは時間をとりたくなかったんですけれども、大臣に一言伺いたいと思うんですね。
やはり、周知徹底が非常に低いんだという立場に立てば、アクセスしやすい環境をつくるのは当然のことだと思うんです。今、政府が義務づけている特定健診でやれた方がいいじゃないですか。だって、わざわざそれだけの、一つのために保健所に行くというのはなかなか大変です。仕事が忙しいというのが二つ目の理由だったと調査の結果にもあるわけです。
そういうことを具体的に提案しているのに対してどうか、そして総合的な窓口をどうかということを答えていただきたいんです。
せっかくですので一言だけ紹介したいと思うんですけれども、先ほど抗ウイルス薬の話がありましたけれども、やはり、残念ながら、抗ウイルス薬もそうだし、インターフェロン以外の治療に頼っている方たちがまだたくさんいらっしゃる。その方たちをどう救うかという問題です。
群馬県のある女性は、C型肝炎から肝細胞がんに進行し、ラジオ波焼灼治療を受けています。一回治療すると、またがん細胞ができて、また治療しても、またがん細胞ができるの繰り返しなんですね。一月以上の入院を要し、昨年の治療代は五十二万円強。これは保険がきいていても、その残りの部分の自己負担です。さらに肝庇護薬、免疫療法で六十万円。合わせて一年間に百十万円を超えています。年金とわずかな退職金を食いつぶしながら、いつ再発がまた起きるかということを恐れている、そういう訴えなんです。
既に命の期限を宣告されたという方もたくさんいらっしゃいます。そういうことを考えると、今できることは、こうした方たちの苦しみを少しでも取り除くために、治療生活全般を軽減させる体制が必要ではありませんか。
○舛添国務大臣 まず、検査ですけれども、年に一遍、働いている者は義務的に検査があるわけで、そういう中でやるのはどうかというのは私も考えてみました。
ただ、一つは、どうしてもプライバシーの問題ということがございますので、特定健診との絡みも含めてそれは検討し、検討するときにその点を配慮せぬといかぬということです。
それから、確かに政府広報を含めて周知徹底体制が非常に欠けている。この点についても、反省するところは反省した上で、さらに展開したいというように思っております。
本当に、仕事が休めないというのと、副作用がきつい。それから、もちろん経済的な事情もあります。それぞれに対して、これは経団連に対しても私は直接申し上げましたし、そして、新しい薬の開発、さらには経済的なことについても、これは与野党の議論も踏まえてさらに検討を進めていきたいと思っております。
○高橋委員 そのためにも一日も早く支援法をぜひ成立させたいと思います。
次に、介護報酬の問題について絞って伺いたいと思います。
まず、今回の介護報酬三%の引き上げによって、実際どのくらい、どれだけの人に賃金報酬が上がるでしょうか。
○宮島政府参考人 お答えいたします。
介護従事者の給与、これは事業主と介護従事者の個々の契約で決まるものですから、一律に幾ら上がるというようなことはなかなか断言できません。
ただ、常勤換算で約八十万、非常勤を入れれば百十七万というふうに言われている介護職員、この処遇の改善は大事だということですので、今回の介護報酬の改定では、キャリアアップや職場定着を促進するための加算、これが過半をかなり上回る事業者が取得できるというふうに思っておりまして、このようなことを通じて処遇の改善を図っていきたいというふうに思っているところでございます。
○高橋委員 今ごろ大事だなんて言われたら、ちょっと遅いんですよ。大事だという議論をずっと積み重ねてきて、今、三%が出たわけでしょう。それの期待が、全然そうじゃなかった。今控え目におっしゃいましたが、過半の事業所がようやっと上がるであろう、しかもそれが二万円とはほど遠いものであるということは、もう本当にお認めになっていることだと思うんです。
私も宮城や福島の事業所で試算をしてもらいました。かなり頑張っているところであり、加算が目いっぱいとれるんです。でこぼこあっても、通所とか施設とか総合的にやっていると、例えば八百万円を超える増収のところもございます。ところが、それを全部人件費に回したとして月額七千五百円あるいは三千五百円とか、非常勤を引き上げるということは非常に厳しい。もともと赤字がある、建物等の補修がある、そうすると、事業所にとっては、上がるはずでしょうと期待されているわけですから、厳しい選択が迫られるわけです。これは結局、加算だけで、全体を、基本をいじっていないというところに問題があるんですね。
報酬で考慮されたことは、勤続年数、資格者の配置、常勤者割合など、これでは今現に人手不足で困っている事業所がますます困るのではありませんか。さらに、人件費割合を低めたことで報酬が下がるところもありますね。簡潔にお答えください。
○宮島政府参考人 基本報酬に充当すべきではないかという議論は、介護給付費分科会の議論の中でも出てまいりました。ただ、こういう加算ではなくて基本報酬で介護報酬を払うとなると、処遇改善を行っていないところも介護報酬が支払われるというようなことがありますので、それは基本の人員配置とかそういうものの見直しとともにやるべきではないかということで、今回は、処遇改善を効果的に行うために、加算というような方式で、常勤職員が多いところを評価するとか、あるいは勤続年数が長い人を雇っているところは評価する、あるいは介護福祉士を雇っているところは評価するということで、多くの事業主に対してその処遇改善に努めていただくようにお願いしているというものを行ったところでございます。(高橋委員「二つ目。報酬が下がる話」と呼ぶ)
三%の報酬を、何らかの形で、加算だけではなくて、いろんな評価をしておりますので、報酬が下がるというのは、ちょっと私も今初めて聞いたようなお話でございます。
○高橋委員 人件費の割合によって下がるところがあるでしょう。
○宮島政府参考人 失礼いたしました。
人件費の割合を、地域加算、これを都市部であるとか地方であるとかいうことで、その地域加算を人件費の割合に応じて見直したところがございます。その中で、グループホームの特定の地域については、実際の人件費比率が低かったので、それに応じて報酬の改定を行っておりますので、そこは下がったというような例はございます。
○高橋委員 一律に上がらないどころか下がるところもある。このことは本当に重要なんですよ。それも、非常に回りくどい説明で、そこはしっかりお認めになった。とんでもないですよ。これまで、これほど介護報酬を上げるんだ上げるんだと言ってきて、実はどさくさに紛れて下がるところもある。このことは本当に指摘をしたい。
そして、人員配置と一緒にやるべきだとおっしゃいましたけれども、そもそも人員配置をなぜやらないのかということがあるわけですよ。三対一だと、もうとっくに二対一、あるいはそれ以下で頑張っているところがあるということはもう御承知のはずなんです。それに一切手をつけないで、それをやらないと今はまだやるつもりがないと言っているわけです。これでは一層格差を広げることになりませんか。
これは大臣に伺います。格差を広げることにならないか。それから、再評価すると何度も言っていますよね。これでもし効果が上がっていないなと思った場合どうしますか。介護報酬、三年後の見直しを待っていられないと思います。いかがですか。
○舛添国務大臣 介護に従事して働いている方々の待遇が悪い、それは給与を含めて。これは何とかせぬといかぬということで、補正で三・〇%手当てをしたわけでありますから、全体的に見れば、先ほどのようなちいちゃなグループホームについての例外はありますけれども、底上げをするということでありますので、さらに検証をしていって、見直す必要があればそれは適切に見直していきたいと思っておりますが、まずはこの一歩をきちんと踏んでいきたいと思っております。
○高橋委員 小さなところと言いましたが、そういうところが今支えているわけですよね、地域の介護を。それが一つ二つではないのは御存じです。
それで、格差が広がるというのは、そこだけが下がる、格差が広がるという意味ではなくて、今募集しても人が集まらない、改善できないと言っているところが、手厚くやっているところにだけ加算がされるということで、格差が広がるじゃないかということを言っているんです。
○舛添国務大臣 事業者の方々から、そういう手厚い配置をしたのを正当に評価してほしいということでありますので、そういうことをやる。加算という形で、その加算した部分は、ほとんどこれは賃上げに向かっていますから。どういう形でこれから介護の施設を経営していくか。これは一つの経営モデルのようなことも提示するということをやっておりますから。
例えば、小規模のグループホームはグループホームで、非常にこれは意義を持っています。大きなところのできないこともやれることもありますので、これを今後どういう形で経営を健全化していくか、経営モデルの提示も含めて、さらなる総合的な形での対応をしていきたいと思っております。
○高橋委員 加算を否定していないんですよ、私は。加算は大事だけれども、しかし基本を上げて、その上で評価してほしいということを言っています。
資料にあるように、全労働者に比べて、やはり入ってくる人も多いけれども出ていく人も多いわけですよね、二割を超えている。この実態の中で、二枚目の介護福祉士養成施設の充足率の推移、一番多くて大学で六七・一%、専修学校では四一・三%。たった二年間でここまで落ち込んでいるんですね。これ、どう対処しますか。
○阿曽沼政府参考人 お答えを申し上げます。
御指摘のように、介護福祉士の養成校の充足状況でございますけれども、平成十九年度で六四%でございましたが、二十年度に四五・八%ということになっております。
大変厳しい状況にございますので、私どもといたしましては、今回の補正予算、あるいは当初予算におきましても、養成校の学生に対する月額五万円の修学資金の貸し付けでございますとか、あるいは養成校に専門員を設置いたしまして、中学とか高校の進路指導者、あるいは地域住民の方々に対して介護の仕事の魅力を伝達するといったような相談、助言の仕事を新たに提案しております。
そういうようなことにあわせまして、介護分野で働いておられる方々の処遇改善あるいは雇用管理ということも徹底いたしまして、この職場を魅力的なものにしていくことによって介護養成校の定員充足もよくなっていくのではないかというふうに思っております。
○高橋委員 今お話しされたことは全部やるべきだと思います。しかし、それでも解決にはまだまだ足りないだろう。なぜか。これは、例えば一月二十五日の高齢者住宅新聞によれば、この一年間で福祉専門の学校が四分の一減ったという大阪の法人の声を紹介しています。新聞の記事を見て、高校の先生や親から介護系は本当に大丈夫かという問い合わせがあった。先生や親が不安に思えば、子供は進路先として介護業界に進みづらくなる。まさにそのとおりだと思うんです。幾ら学校に奨学金やりますよといったって、その先で介護の実態が変わらなければどうしようもないではありませんか。
資料の三枚目にあるように、これは、全労働者と比べても施設介護職員の給料は本当に低いです。しかし、一般労働者の派遣よりも低いのが今の実態なんですね。
そういうときに、大臣、最後にどうしても伺いたいんですが、今、片や介護は人手不足だ、片や失業者が出ているからマッチングをするんだ、ただ、そう簡単ではないのは多分わかっていらっしゃると思うんですね。不況のときだけ介護を受け皿のように言うな、そういう現場の怒り、悔しさがあるんです。人間の最も弱い姿を支え、尊厳を守る仕事です。暮らしや家族、経済状態、全部受け入れて、みとりまでやらなければならない、そういう介護の仕事そのものを評価して全体の底上げを行う、そういうことが絶対必要だと思いますが、一言だけ伺います。
○舛添国務大臣 私も高橋委員と全く同じ考えであります。限られた財源の中でさらにそういう方向を目指して努力をしたいと思います。
○高橋委員 終わります。