国会質問

質問日:2009年 3月 13日 第171国会 厚生労働委員会

雇用保険法改正案

給付拡充を求める

 日本共産党の高橋ちづ子議員は13日、衆院厚生労働委員会で雇用保険法等の改正をめぐって質問しました。
 1995年から2007年までに完全失業者の数は47万人増加したのに対し、保険の受給率は17%も落ち込んでいます。
 高橋氏は、その背景に、「再就職支援」を名目に、安定所の職業紹介を拒めば給付制限することを求める「職安局長通達」(02年9月2日)など、給付を制限する運用があると指摘。「大量失業が出るから給付も短期にして保険の外に出せということだ。非正規雇用へのおきかえと同時進行で雇用保険会計が6兆円もたまった」と批判しました。
 また、給付制限の「理由」とされた「再就職支援」について、ハローワークの紹介で就職できた雇用保険受給者は2007年度の実績で二割に満たないことを示し、「『再就職支援』は給付制限の理由にならない」と強調。「給付制限の在り方を見直し、給付日数を延長する全国延長給付の発動基準の引き下げも考えるとともに、ハローワークの増員も検討せよ」と主張しました。
 舛添要一厚労相は「最大限努力する」と述べました。
(2009年3月14日(土)「しんぶん赤旗」より転載)

雇用保険法改正 差別なく給付して

 日本共産党の高橋ちづ子議員は13日、衆院厚生労働委員会で雇用保険法等の改正をめぐって質問しました。
 高橋氏は「自己都合退職」とされ、三ヶ月間の給付制限を受けている人の実態について福島県労連などの調査も紹介。「能力以上の仕事を命じられ、精神的に追いつめられた」など、精神疾患や無言の圧力を受けた末に退職している実例を指摘し、「背景に様々な要因があり、『自ら』(自己都合退職)というだけで要件も給付も差を付けられるのはひどすぎる」とただしました。
 厚労省の太田俊明職業安定局長は「離職理由証明書について離職者の実情も聴取するなど的確に判断していく」と答弁。高橋氏は「『的確』と強調するより、病気で仕事を続けられないなどの実情を考慮し、柔軟に判断して欲しい」と強く求めました。
 高橋氏は、「病気で退職し、働けないと失業給付は受けられない」と指摘。健康保険法の2006年改定で任意継続被保険者が除外された傷病手当を復活せよとただしました。「何らかの制度で対応する」という舛添要一厚労相にたいし、高橋氏は「今後大量の無保険者が出る医療制度をどうするのかも大きな課題」と述べ、検討を求めました。
(2009年3月16日(月)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 一月の予算委員会のときに、私は、三月までに解雇、雇いどめを予定されている非正規労働者のうち、厚労省の調査では九九%が雇用保険加入要件を満たしているけれども、実際に受給できるのはどのくらいかという質問をいたしました。それで、二月度の報告の中でこの調査がされたようで、把握できた離職者三万六千百四十六人のうち、受給資格ありと推定できるのが三万一千六百八十人、八七・六%というものでありました。

 これは、先ほど山井委員が示した資料にもあったように、いわゆる解雇が圧倒的であったことなどが率を上げたということもあるかなということや、あるいは、この一〇%の差は何なんだろう。年末に契約をされて二月に切られたという人もたくさんいます。そうしたこと、さまざまあると思いますが、どのように分析をされているでしょうか。

○太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話ございましたように、今回は、雇用保険の適用だけでなくて、受給状況についても調査をしたものでございます。四万人のうちの離職者が三万六千百四十六人ということでございまして、それで、受給資格決定している者、あるいは就職している者等々ございますけれども、被保険者であった期間等から受給資格ありと推定した者が八七・六%でございます。

 残りの一二、三%につきましては、やはり受給資格の被保険者期間、自己都合の者につきましては離職前二年に十二月、それから会社都合で離職した者につきましては原則離職前一年に六カ月以上、これを満たさない方がおられるのではないかと考えております。

 特に今回は、期間満了で更新を希望した者につきましては受給資格の要件緩和をしておりますので、こういう今回の法改正で、さらにカバー率を上げることができるのではないかというふうに考えているところでございます。

○高橋委員 カバー率が上がるであろうということは間違いなくあると思うんです。ただ同時に、今お話があったように、短い期間で雇用されている方たちが対象にならないということが先ほど来議論されてきた。さらに、今資格があるだろうと、実はこれは想定の話でございますので、実際に給付に結びついたかどうかはその後の検証が少し必要ではないかという点で、もっともっとこれは議論を深めていく必要があるだろうということを指摘しておきたいと思います。

 次に、本会議でも質問した自己都合離職について少し伺いたいと思うんです。

 先ほど内山委員からの指摘もございました。再就職の準備期間がない解雇などと、あらかじめ想定できる自己都合とは区別が必要だ、これが区別している趣旨なんだというのが答弁の内容ではなかったかなと思うんです。私は、理論上は自己都合に当たるけれども、区別する必要がないと思う事例が実は多いのではないか、ここをどうするかということを考えたいと思います。

 同じ答弁はしなくていいですから。要するに、会社が離職の理由を書いたときに、本人が納得するかしないかというのを書くところがあります。それをハローワークがちゃんと見るということを皆さんは今までおっしゃいました。しかし、問題は、確かに自分で書いた、でもそれがどういう中身なのかということ。

 例えば、福島県労連などが二月にハローワーク前で行った調査では、三割、自己都合の方がいました。出社が嫌で嫌で精神も壊れてしまった、有休もなく給料も上がらず、ボーナスもなくなり、休日出勤、時間外もただ働き、やりがいがなくなり、思い出すのも嫌だと。嫌だからやめたかもしれません、しかし、その背景があるというお話。

 本当はやめたくなかったが、結婚したらやめなきゃいけないという無言の圧力があった。上司がかわり、能力以上の仕事を命じられ、精神的に追い詰められ、やめざるを得なかった。あるいは、北海道ではこんな話がありました。企業から自己都合の方が再就職のときに有利だよ、こう言われたので、そうかなと思って書いてしまった。後で後悔している。こういう話もたくさんあるんです。わかっているはずです。

 みずから決意してやめたといっても、背景にさまざまな要因があり、みずからというだけで要件も給付も差をつけられるのはひど過ぎるのではないでしょうか。

○太田政府参考人 お答え申し上げます。

 一般的には、正当な理由のない自己都合離職につきましては、いわば自発的な失業でございまして、安易な離職により循環的に基本手当を受給することを防止し、再就職促進を図る観点から給付制限を設けているところでございまして、雇用保険制度の趣旨にかんがみれば、今後ともこういう仕組みは必要なものと考えているところでございます。

 ただ一方で、こうした給付制限や受給資格など雇用保険に係る取り扱いにつきましては、離職理由によって異なることとなるために、この離職理由の判定を的確に行うことが非常に重要であると認識しているところでございます。

 このため、事業主がハローワークに提出する離職証明書につきましては、離職者本人が記載内容について確認し、署名または捺印することになっているとともに、事後に離職者が離職理由等に異議を唱えた場合には、ハローワークにおきまして、離職者と事業主の双方の主張を十分聴取した上で、実態に即して判断しているところでありまして、今後とも、御指摘いただきましたように、離職理由につきましては的確に判断するべく取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

○高橋委員 今の的確な判断ということを、今私がお話ししたような事例にかんがみて、逆に、的確というよりも柔軟に対応、そういう立場で指導を徹底していただけますか。

○太田政府参考人 離職者の方の主張を十分聴取した上で、的確かつ柔軟に判断をしていきたいというふうに考えているところでございます。

○高橋委員 どうしても的確というのが出てきて、的確というと、どうしても渋る方向に行かざるを得ないような響きがあるんですね。ここをちょっと言っておきたいと思うんです。

 私は、入り口のところでぎりぎりと絞らなくても、その後のところで十分給付制限ということがございますので、意図的に離職をして循環的にとか、そういう方たちはおのずと排除されていくのだ、だからそこで間口を狭くしなくてもいいのだということを重ねて指摘をしたいと思います。

 病気になってやめる人も大変多いんです。特に、派遣先を転々とさせられた若い人が心を病んで働けなくなってしまう、そういう相談も多いです。そうしたときも、やはり自己都合だということで待期をさせられます。それどころか、働けなければ失業者にもなれません。今日のとりわけ非正規労働者の置かれている状態から見れば、これも厳し過ぎるのではありませんか。

○太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話ししたように、例えば病気で働けないような場合には失業者でございますので、その点につきましては、雇用保険の受給資格等も判断しまして必要な給付を行うとともに、再就職の支援を的確にやっていきたいというふうに考えているところでございます。

○高橋委員 そんなことを言わないでくださいよ。受給資格者のしおりを見ながら聞いているんですよ。「「積極的に就職しようとする気持ち」と「いつでも就職できる能力(環境・健康状態)」があり、「積極的に就職活動を行っているにもかかわらず、職業に就くことができない状態」」これが失業の状態なんだと。つまり、失業だと認定されるまでに大変なハードルがあるんです。

 そして、「次のような状態であるときは、失業給付を受けることはできません。」その一番目が、「病気やけがのため、すぐには就職できないとき。」と書いてある。

 心を病んで仕事をやめざるを得なくなって、そして入院やあるいは治療に専念したいというときに失業給付を出せないという、それが実態じゃないですか。そこを指摘しているんです。

 ちょっと時間がないので続けますよ。

 そこで、私、少し提案をさせていただきたいんです。例えば三野党の提案では、任意継続被保険者の保険料減免を提案されています。ただ、保険料を減免されただけでも、治療生活に専念できるかというとやはりなかなか難しい。そこで、〇六年の医療制度改革のときに、任意継続の被保険者の中で傷病手当が受けられていたのに、これが除外されました。これを前に戻して、減免制度とあわせて、やはり安心して治療できる、これを考えるべきではありませんか。

○水田政府参考人 傷病手当金についてのお尋ねでございますけれども、この給付は、健康保険の被保険者が傷病によりまして労務に服さなかったことによる所得の喪失または減少を補いまして、生活の保障を行うことを目的としたものでございます。

 御指摘の平成十八年の健康保険法の改正におきましては、傷病手当金の支給水準につきまして、賃金の六割相当額から三分の二相当額へ充実を図ったわけでございますが、その際、その本来の目的に照らしまして、そもそも労務に服していない任意継続被保険者に対する支給についてはこれを廃止したものでございまして、御指摘のようにこれを復活させるということは、考えてございません。

 なお、一年以上被保険者であった方でありまして、在職中に傷病手当金を受けていた方が退職した場合につきましては、任意継続被保険者となるかどうかを問わず、退職後も継続して、支給開始から最大一年半の間、傷病手当金を受給できることとされております。

○高橋委員 一度やめたものを復活せよといって、一回でいい答弁が来るはずはありませんので、これはぜひ検討していただきたい。

 そして、大臣にこの点で少し御感想をいただきたいんですね。

 病気になってやめたら失業給付が受けられない。これは、病気であって無理やり求職活動をしていれば一定の手当が出ますけれども、しかし、入院したりとかすれば当面は出ないわけですよね。こういう状態の中で、今言ったような任意継続も切られた。しかし、今は、首切りされ、住まいの確保もできないような方たちが国保にすぐ加入して保険料を払って、そういうことは考えにくいわけですよね。大量に無保険者が出るだろう。何らかの形で医療制度についても手当てが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○舛添国務大臣 基本的に、雇用保険ということがどこまでセーフティーネットとしてカバーするかという問題に尽きるというふうに思いますので、一定の制限はある、しかしそれ以外でさまざまなセーフティーネットがあるわけですから、そういうものを重層的に張りめぐらして、困っている人を救うということが必要だというふうに思っております。

○高橋委員 一定の期間休んだらちゃんと仕事をしたい、そう思っている人たちにもやはりチャンスを与えるべきだと思います。再就職が雇用保険の目的である、その観点に立って、早く再就職するんだと非常に追い立てられてきた、そうした中で、なかなかそういう気持ちも受け入れていただけないことがあるのではないでしょうか。

 やっと失業給付の資格があると認めてもらってからも、さらに認定というハードルがございます。月一回認定日があるわけですけれども、月二回以上求職活動をしていることを証明することや、アルバイトなど仕事をすれば手当を受けられません。

 この資料を見ていただきたいと思います。これは、九五年から二〇〇七年までの完全失業者の数が、二百十万人から二百五十七万人と四十七万人もふえているのに、失業保険の受給者は八十二万五千人から五十六万七千人と減っており、率にすると一七%も受給率が落ち込んでいます。

 その大きな節目となったのが、二〇〇二年の九月二日、失業認定のあり方の見直し及び雇用保険受給資格者の早期再就職の支援の促進などについてと題する職安局長の通達であります。

 例えば、法三十二条の給付制限の一層的確な運用について。受給資格者が基本手当の受給のみに依存することを防止する、そう言って、例えば職業紹介を拒めば給付制限だ、求職活動計画は所定給付日数の半分で終了するのを目標にせよなどということを強く求められている。

 そのころは大失業時代だったと思います。それなのに、「倒産・解雇等の非自発的理由による離職者が増加傾向にある中では、雇用のセーフティ・ネットとしての雇用保険制度の安定的運営を確保しつつ、その十分な機能発揮を図ることが極めて重要」ということを言って、要するに、大量失業者が出るから雇用保険の給付も短期にして、早く保険の外に出せと。結局、非正規雇用への置きかえと同時進行でこうした給付制限がやられてきたからこそ、雇用保険会計が六兆円もたまったのではないですか。

 伺いますが、そこまでして再就職促進を命題にしてやってきて、ハローワークの紹介で就職できた雇用保険受給者はどのくらいですか。

○太田政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用保険受給資格者のうち、ハローワークの紹介により就職した者は、平成十九年度実績で三十七万六千九百四十四人でございます。

○高橋委員 そうやって数字だけ言って、みんながどういうことかわからないじゃないですか。これ、就職率が二割いかないわけですよね、再就職しろ、しろと言っておきながら。残り八割はどうなったんですか。

○太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げたとおり、三十七万六千九百四十四人でございまして、受給資格者に占める割合が一九・九%、約二割でございます。

 残り八割でございますけれども、ハローワークの紹介だけでなく、いろいろな形での求人、民間の求人あるいは広告等、あるいは知人の紹介等によって就職された方もかなりおるというふうに考えているところでございます。

○高橋委員 そうした追跡調査が明確にされていないんですよ。実際には、給付期限切れでまだ未就職の方、あるいは再就職に一年以上かかっている方、それが半分以上じゃないですか。そういう実態はわかっていますよね。そうであれば、単に再就職だと言いながら、まともな仕事も紹介できないのに給付だけ制限する、こんなことができますか。

○太田政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用保険の基本手当は、被保険者が離職して、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業につくことができない失業状態にある場合に支給されるものでございます。このため、意思、能力の確認は離職理由にかかわらず適正に行うことが必要でございまして、失業認定のために四週間に一度出頭していただくということをお願いしているところでございます。

 そういう中で、職業紹介、職業相談を行いまして、再就職の支援に最大限努力をしてまいりたいということでございます。

○高橋委員 今回、再就職が困難な方に、最大で六十日延長するわけですね。ただ、そうはいっても、大体平均九十日くらいですから、百五十日で本当に再就職に結びつくのか。しかも、その間もし安定所の紹介を断れば、それがまた給付制限にもつながるわけですよね。それだったら、なかなかはい上がれないじゃないですか。

 ここはやはり、給付の期間をもっと延長することを考えなきゃいけない。制限のあり方を見直さなきゃいけない。あるいは基準を引き下げて、全国延長給付の発動も考えるべきだと思います。この提案をさせていただきます。この答えについては、次の質問にあわせて答えていただきたいと思います。

 先ほども議論がありましたけれども、ハローワークの体制の問題なんですね。まさに今の事態はハローワークの存在がかかっている問題だと思うんです。一次、二次の補正で相談員を千三百二十二人ふやしました。しかし、本当に頑張って求職活動している人が、年齢制限で面接までもたどり着けない実態なんです。そういうときに、ただ求人票を受け付けるのではなくて、企業といろいろ交渉をしたり、あるいは本当にこれが自己都合なんだろうかということをちゃんと見てあげたり、先ほど来言っている、百倍にもなった雇用調整助成金の給付に至るまで、非常勤にできる業務には限界があるはずです。ハローワークの職員はこの五年間で二百三十四人削減されてきました。特別な情勢にかんがみ、定員増を求めるつもりはないか、大臣に伺います。

○舛添国務大臣 すべての日本国民は勤労の義務があります。そして、働くことのインセンティブをきちんとやることも政府の重要な仕事だと考えております。

 そして、ハローワークは大変今、仕事が本当に満杯で、人手不足という状況であります。こういう状況について、相談員をふやしましたけれども、先ほど申し上げましたように行革という大きな枠があります。そういう中で、体制をさらに拡充するように今後とも努力をしていきたいと思っております。

○高橋委員 ここは、思い切って打ち破っていただきたいということを重ねて指摘して、終わります。

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