国会質問

質問日:2009年 3月 18日 第171国会 厚生労働委員会

雇用保険法改正案・採決

 日本共産党の高橋ちづ子議員は18日の衆院厚生労働委員会で、「失業給付が切れた後二ヶ月以内で五割の人が再就職している」とする厚労省の見解の根拠を追及しました。

 高橋氏が示したのは、昨年11月の労働政策審議会雇用保険部会に示された「2004年度の受給資格者の07年3月末時点での再就職状況の調査結果」。同資料では、「未就職」の人42%をあらかじめ除いて計算しています。

 高橋氏は、未就職者を含めて計算すると、二ヶ月以内で再就職した人の割合は28.1%煮すぎないと指摘しました。

 厚労省の太田俊明職業安定局長は、高橋氏の試算を認めながら、「未就職者の中には仕事を探さない人も含まれる」と答えました。

 高橋氏は「失業が長期化しているのが実態だ。まして今年は就職難。雇用情勢が悪化しているという視点に立ち、思い切った手当を」と求めました。

 高橋氏は、内定取り消しも含め、今春に就職を見つけられない新規学卒者が約五万人に登ることを示し、卒業延期や留年を余儀なくされる学生への授業料減免などを支援せよと求めました。

(2009年3月19日(木)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、新規学卒者の就職内定問題について伺いたいと思います。

 高校生は、既に卒業式を終えました。間もなく四月が来るにもかかわらず、企業の採用内定取り消しや、あるいは現在の雇用失業情勢の急激な悪化の波に巻き込まれ、この春まだ仕事を見つけられていない学生、高校生はどのくらいに上るでしょうか。

○太田政府参考人 お答え申し上げます。

 本年三月の大学卒業予定者の二月一日現在の就職内定率が八六・三%でございまして、前年同期を二・四ポイント下回って、五年ぶりの低下でございます。

 同じく、高校卒業予定者につきましての一月末現在の就職内定率が八七・五%でございまして、これも前年同期を一・九ポイント下回って、六年ぶりの低下でございます。

 ことし三月の新卒者の就職内定率につきましては、学卒求人の伸び悩み等から、昨年十一月末現在の調査以降、前年を下回る状況が続いているところでございまして、景気後退に伴います雇用情勢の悪化が新規学卒者の就職内定状況に与える影響は、就職できないで卒業する方もかなり出てくるのではないかということで懸念しておりますし、十分な注視が必要と考えているところでございます。

○高橋委員 通告したのは、どのくらいですかということであります。

 厚労省が発表した今の数字ですね、就職内定率。これは、就職希望者から内定者を引きますと、大学と高校合わせて十一万七千百人、私の計算ですとそうなります。そのくらいですか。

○太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今後の就職内定の状況によっても変わりますが、一定の数値を置いて試算いたしますと、大学生の場合が約四万二千人ぐらい、高校卒業者の場合が八千三百人ぐらいではないかというふうな試算をしているところでございます。

○高橋委員 そうすると、今私が述べた数字は、三月十三日の厚労省が発表したデータに基づいて述べておりますので、当然、その後の改善があるだろう。それにしても、五万人という方たちが、学生、新卒者がこの春仕事を見つけられていないのだということからまずスタートしたいと思うんですね。それを本当にどう手当てをしていくかということを考えなければならない。

 文科省に伺いますが、次年度の新卒採用を目指して大学に残る学生がどのくらいで、その際、当然授業料免除などがあってしかるべきと思いますが、どのようになるでしょうか。

○戸谷政府参考人 お答えいたします。

 文部科学省といたしましては、一たん、一月五日現在ということで就職内定取り消しの状況についての調査を行いまして、その後、そのフォローアップといたしまして、三月一日現在の就職内定の取り消し状況についての調査を今しておるところでございます。

 そういったことでございまして、全体の数につきましては、今現在どの程度になるかということについてはいまだ把握はしておらないということではございます。

 ただ、私どもの調査の観点といいますのは、内定取り消しの方の数がどうかということだけではなく、むしろ、そういう支援を必要とする学生がどういうふうになっているのかということで、具体的に大学がどのように取り組んでいるのか、そういったようなことについても調査をいたしておりまして、今、一部集計中でございますけれども、そういった中では、各大学におきまして、例えば就職内定取り消しに伴いまして留年等をする、あるいは卒業延期をする、そういった方々に、授業料減免あるいは相当授業料を割り引くといったような措置をとっている大学もあるといったような実情については一部把握をしておるところでございます。

 文部科学省といたしましては、例えば私立大学におきまして、そういう内定取り消しに伴いまして留年あるいは卒業延期という学生さんがいらした場合に私立大学がそういう経済的な支援を行うといった場合におきましては、私立大学の経常費助成といった中におきまして、私立大学が行った授業料減免等に対しまして一部助成を行う、そういったような措置も今とっているというところでございます。

○高橋委員 一月五日現在の文科省の調査だけでも、内定取り消しを受けた学生のうち留年する予定の者が三十三人でしたね。ですから、これは非常に限定的な調査でございますので、実際は、おっしゃるように、取り消しではなく、先ほど郡委員の指摘もあったように、取り消しにまでは至らないけれども実際は待機よとか、さまざまな形で実質仕事に至らない、あるいはもともと仕事が見つからない人たちを考えると、もっとけたが大きくなるのであろうということは当然予想されるわけなんです。

 そのときに、今おっしゃったように、私立大学が個々に授業料免除をやっている、卒業延期などもやっています。それで、そこに行って、補助しますよ、二分の一補助ですね、五億円増額をいたしました。それはいいんですけれども、当然やるべきなんですけれども、もっと主体的に文科省がどうするのかということが大事なんだと思うんです。

 昨年度の授業料減免の実績が、国立大学八十五万人、私立大学は二万三千人。今年度は、経済状況の悪化によってさらにふえているのは容易に想像できるわけです。増額とはいえ、まだ二分の一補助である。まして、国立大学は運営費交付金において減免予定があるというのを一定考慮するというだけでありますから、実際は、大学は、学生の状況を考えれば減免は必要だと当然わかっている、でも、それは大学の自腹を切る、そういうことになるわけですね。そこでもう悲鳴が上がっているわけです。

 文科省の二月二十五日付、高等教育局長通知では、制度があることを周知徹底せよとあるのみであります。これは、周知徹底せよではなくて、減免を大いに活用しましょう、そのための財政支援は考慮する、そういう立場に立つべきではありませんか。

○戸谷政府参考人 先生に御指摘いただきました今ある財政的な措置につきましては、二十年度の予算あるいは二十一年度の予算案に今計上しているところにおいてはそういったことになっているということでございますけれども、当然、先ほど申し上げましたように、ともかく、三月一日現在で本当にどういうふうになっているのかといったような実情を見て、そういった中で、文部科学省として何をどこまでできるのかということについてさらに具体的に検討していきたいというふうに考えております。

○高橋委員 その後の調査も踏まえて、必要であれば拡充をして、主体的に取り組んでいただきたいということを重ねて要望したいと思います。

 厚労省に戻りますけれども、新規学卒者も三月までは各自の大学や高校で進路相談を受けておりましたが、今後はハローワークに一般の求職者と一緒に並ばなければならないわけです。もともと、一月には一般用求人に高校生が応募してもいいよというふうにサイクルというものはあったわけですけれども、今は、ハローワーク自体がもう大変な混雑であるわけです。就職も就職活動も経験がない新規学卒者にとって大変つらい体験だと思いますけれども、新卒者向け就職相談体制がどのようになっているのか。

○太田政府参考人 お答え申し上げます。

 就職が決まらないまま卒業した新規学卒者につきましては、一般のハローワークとは違う形での特別な支援をさせていただきたいと思っております。

 具体的には、例えば未就職のまま高校を卒業した生徒に対しましては、これはハローワークにおきまして高卒者専門の職員等が支援を行うということ、また、未就職のまま大学等を卒業しました学生に対しましては、学生職業センター等において支援をさせていただくということでございます。

 さらに、具体的には、例えば就職面接会の開催、あるいは求人情報の提供、あるいは職業相談等、個別の就職支援の実施等々特別の対策を実施しているところでございまして、こうした取り組みを行いまして、一人でも多くの未就職卒業者が速やかに就職できるように、これは学校とも連携する中で十分な支援を行ってまいりたいということでございます。

○高橋委員 大臣に一言伺いたいと思うんです。

 先般の委員会で、採用内定取り消しの学生などに対しては特別相談窓口を設けてやるのだというお話がありました。私は、四月になれば、内定取り消しだけではなく、五万人とも言われる新卒者が仕事を求めなければならないのだということを今問題にしているわけですが、就職相談員のようなことをやるのだという答弁でございました。

 実際には、大阪、愛知、静岡、宮城、京都、姫路などの、例えばジョブステーションや若者サポートステーション、こういったところに事務所から聞き取りをしてみました。そうすると、特に新卒者向けの窓口をつくっているわけではない、若年者向け正規雇用化特別奨励金の活用を呼びかけて、活用している企業に就職をあっせんするのが中心である、これが学生職業相談室の答えであります。

 その中で出ているのは、例えば、会社から、採用はするけれども仕事がないから待機してもらう、それでもよければと本人に連絡があり、本人が、それでは先が見えないから別のところを探したいと相談に訪れた、こういう企業が奨励金を使ってくれないので歯がゆい。あるいは、この時期は新卒者向けの新規求人も来ない、新卒者向け求人も少なくなり、内定取り消しを受けた学生に対してはハローワークの一般求人で探してもらわざるを得ず気の毒である。あるいは、就職がなかなか決まらず、本人が挫折してしまい、就職活動そのものをしなくなってしまったために、心配した親が相談に来る、そういう事例があると。

 ですから、例えば今回、雇用調整助成金を新卒者向けにとの案もありますけれども、初めての仕事が待機では、やはりそれは、次善の策とはいえども、今紹介したように、挫折する、希望を失ってしまう、就職活動をやる意欲を失ってしまう、そういうこともあるわけですよ。ですから、なるべくそれはしない方がいい。やはり特別な開拓が必要なんだと思うんです。新しい人を入れていくということが必ず企業の将来にとってもつながるものだという立場で、やはり特別な体制をとるべきだということを重ねて提案したいんですが、一言お願いします。

○舛添国務大臣 高卒の方、大卒の方専門の窓口へ人を手当てするということは既にやっております。

 ただ、中小企業を含めて経営者の方で誤解があったりするのでこれは周知徹底させたいんですけれども、今のようなケースで、人をとりたい、しかし待機してくれというようなことがあれば、そうじゃなくて、とって採用してください、雇用調整助成金を使って。どっちにしても新卒者というのはきょうからすぐ働けるわけじゃなくて、どこの企業も半年ぐらいは訓練しないと普通だめです。だから、それを雇調金を使ってやってくださいと。この仕組みもやはり活用していただきたいと思っています。

○高橋委員 それが、本当に実践に結びつく訓練であればいいですよね。これは後でお話ししますけれども、雇調金の訓練というのが、従来の訓練でなければいいのだということで、かなり幅広くとっておりますので、事実上待機に近いものであればやはり見直すべきではないか。繰り返しますけれども、そういう観点の開拓ということはやはり特別に取り組んでいただきたいと重ねて述べたいと思います。

 時間が限られておりますので、二つ重ねて質問をいたします。

 失業の長期化ということが非常に懸念をされるわけですけれども、今、完全失業率が四・一%、若干改善したという声も聞かれるわけですが、御存じのように、少しでも仕事やアルバイトなどをしていたりすると完全失業者からも除かれているわけで、実際失業状態にあるというのはどのくらいいるのかというのが一つです。

 それから、今回の法改正では、再就職が困難な地域や離職者に対して最大六十日の延長を設けている。その理由として、給付が切れた後二カ月で再就職している人が多いと答えてきました。この二カ月の根拠を伺いたい。

○太田政府参考人 まず一点目の失業者でございますけれども、総務省の労働力調査によりますと、平成二十一年一月の完全失業者数、これは原数値でございますけれども、二百七十七万人ということでございます。

 二点目でございますけれども、雇用保険受給資格の決定者でありまして支給終了後に就職した者のうち二カ月以内に就職した者の割合が五割ということでございます。これは、平成十六年度の受給資格決定者のうち支給終了後に就職した者の就職時期につきまして、平成十九年三月末の時点でその状況を特別に調査したものでございます。

○高橋委員 最初の答弁、ちょっとおかしくないですか。完全失業者の数ではなくて、失業状態にある者と。

 労働力調査でいけば倍近くなるんじゃないですか。

○太田政府参考人 これは、完全失業者数ということで申し上げたわけでございまして、労働力調査の完全失業者数ということでは二百七十七万人でございます。

○高橋委員 なぜ答弁を避けるのですか。

 最初から通告しています。完全失業者で聞いたのではありません。

○田村委員長 質問の趣旨、わかりますか。

○太田政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの聞いている通告としましては、現在失業者数が何人いるのかということでお聞きしておりますので、総務省の労働力調査の完全失業者数二百七十七万人をお答えしたものでございます。

○高橋委員 委員長、これは要望にしたいと思います。この問題は非常に重大です。

 失業者が一体どのくらいあるのか。完全失業者というのはどういうものかというのは最初に私述べたじゃないですか。しかも、通告しています。どれだけ失業の状態にあるかということをきちんとまず認めることによって、その対策がとられるわけですよ。八百万人、九百万人という数字もありますよね。

 大臣、どうですか。

○舛添国務大臣 何をもって失業状態と言うのか、統計学的に何を基準とするのか、そういう難しい問題があるから完全失業率という数字が出ているのだと思いますから、これは、さらに具体的なことをもっと検討しないと、即答はできないと思います。

○高橋委員 あえてきょう総務省を呼ばなかったのは、そこで時間をとりたくなかったからなんです。こんなことで時間をとるとは夢にも思っていませんでした。理事会で諮っていただきたいと思います。

○田村委員長 理事会で協議をいたします。

○高橋委員 その上で、ちょっとその分、今の時間を考慮していただきたいと思うんですが、二つ目の答えなんですね。二カ月の根拠を聞きたいと述べたときにお答えになった資料が三。皆さんのところにつけてございます。

 平成十六年度の受給資格決定者のうち支給終了後に就職した者の就職時期、これは平成十九年三月末時点の状況を見たものであると。そうすると、就職者のうち七二%が六カ月以内に就職している。二カ月以内というのは四九・五%、過半に足らないということで、一年以上でさえも一二・八%もいるんですね。

 ところが、これは、下に書いてあるように、未就職者は八三万人、四二%となっているんです。ですから、もともと就職していない人をはじいて、就職した人の中で計算をするとこのくらいだという計算なんですよ。そうすると、実際にどうかというと、二八・一%、二カ月以内で就職に結びついた人は三割にも満たない。これを認めますか。

○太田政府参考人 お答え申し上げます。

 今のような計算をいたしますと、そのとおりだと思いますが、この未就職者の中には、もう仕事を探さないで、労働市場から退出されたという方も含まれているというふうには考えております。

○高橋委員 ちょっと待ってくださいよ。八十三万人、四二%。それはいますよ、労働市場から退出された人。だけれども、それがほとんどみんななわけではないわけですよ。そういうのを、ちゃんとしたデータも示さずに、これで了解してくださいと。大臣、何度も答弁していますよ、失業給付が切れた後大体二カ月で再就職していますからと。こんな話がありますか。

 これも、昨年十一月二十六日の労政審の雇用保険部会で、この資料が配付をされて、支給終了後六カ月以内で大体七割程度が再就職しております、こう説明をしているんですよ。でも、実態はこうじゃないですか。だったら、もっと失業が長引いているんだということをちゃんと認めて、まして、ことしは就職難である、もっと悪化をする、こういう立場に立つべきではありませんか。

 大臣に伺います。

○舛添国務大臣 統計の問題は、それは御指摘の点もあると思いますけれども、一日も早く就職してもらう、再就職してもらう、これが最大の眼目ですから、そのためのインセンティブをふやす、そうならないための、それを阻止するような障害要因があればこれは排除するということですから、そういう全体のバランスを考えて、六十日の延長というのはちょうどバランスのとれた数字だと思っております。

○高橋委員 六十日がいいか悪いかを議論する以前の問題だと思うんです。つまり、失業の長期化が現実にあるということ。このデータだけで見ても、一年を超えている人が一二・八%、だけれども、実際には未就職四割もいるんだ、そういうことが十九年三月の時点ですので、今はもっと深刻じゃないか、そのために必要な対策はどうなのか。あるいは、一カ月のうちに一定仕事はしているけれども、ほとんど求職活動、求職、働くつもりがある人たち、求職、失業状態にある人たちはもっといるんじゃないか、やはりそういう視点に立って思い切った手当てをしなければならないと思うんです。

 きょうは、時間がなくて、雇調金の話ができませんでしたけれども、八十八万人の雇用の維持ができたと言います。でも、それは、ある意味、離職者予備軍でもあるわけなんですね。一年や三年の給付期間を過ぎて、それが本当に雇用の維持、企業が盛り返して、雇用の維持になったかどうかの調査がないわけなんですよね。そういう中では、失業予備軍でもあるのだという点では、やはり、短期就労を繰り返すような今の緊急雇用対策ではなく、思い切った、公的就労も含めた対策が必要であろうということを提案して、終わりたいと思います。

 以上です。

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