高橋ちづ子議員は一日の衆院災害対策特別委員会で、被災者生活再建支援法の「長期避難世帯」の認定について政府の見解をただしました。「長期避難世帯」は、避難状態が長く続いている場合、全壊世帯と同等の支援(みなし「全壊」)を行うもの。「避難状態が解消する見通しがなく」、避難先で「新たな生活を開始する必要性が生じている」ことが要件です。
昨年の岩手・宮城内陸地震の被害を受けた宮城県栗原市耕英地区では、十カ月たった現在も避難指示が継続中のため、長期の避難生活を余儀なくされています。高橋氏は「長期避難世帯と認定し、支援金の発動は可能か」と質問しました。内閣府の大森雅夫政策統括官は「県知事が今の基準に基づいてするもの」と認めました。
高橋氏は、災害救助法に基づく住宅の応急修理について今年度から、大規模半壊以上の被害世帯には所得要件が撤廃されたと指摘し、半壊・一部損壊世帯の要件もなくすことを求めました。厚生労働省の坂本森男大臣官房審議官は「検討したい」と答弁しました。
高橋氏は、「岩手・宮城というが秋田県湯沢市も栗駒山を中心とした被災として一体」で、市町村単位である局地激甚災害指定基準について、「同じ地域」と、行政単位にとらわれない基準への見直しを求めました。佐藤勉防災担当相は「考える余地はある」と答弁しました。
(2009年4月3日(水)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
二月の初めに、昨年六月の岩手・宮城内陸地震で被災した栗原市に行ってまいりました。いまだ避難指示も勧告も解除されず、花山地区では七十世帯百八十人、耕英地区では四十一世帯百人が仮設住宅で年を越しました。
くりこま耕英震災復興の会の会長さんからお話がありました。地震があった当初、イチゴが赤くなっている、イワナもいる、温泉もあるのだ、ここで生業がある、そういう気持ちで二日間、山にとどまったといいます。畑に肥料をまいて、収穫できないまま借金だけが残る、いわゆる生活の場と生業を奪われた、そういう声を聞いてきました。ですからこそ、地域の復興と個人の復興の両方が必要なのです。これが被災地の声であります。
私は、生業の道を断たれ、長期避難生活の中、新しく生活を始めなければならない被災者の皆さんに何か支援ができないのか、長期避難世帯として認定をされ、みなし全壊という方法もあるのではないか、このことについて考えていきたいと思っております。
そこで、まず資料の一を見ていただきたいんですけれども、これは「旧制度」「現行制度」というふうに上と下に書いてありますけれども、一昨年の本委員会で全会一致のもとに成立をした被災者生活再建支援法の改正によって見直しがされたという意味の現行制度であります。
旧制度は、(2)にあるんですけれども、「令」という言葉で、新制度は「法」ですから、法律に書かれているということです。「令第二条第二号に定める世帯とは、」ということで、「火砕流等の発生により、住宅に直接被害が及んでいるか、又は被害を受ける恐れがあるなど世帯に属する者の生命又は身体に、著しい危険が切迫していると認められることから当該住宅への居住が不可能な状態が既に継続しており、かつ、その状態が引き続き長期にわたり継続する可能性がある当該世帯等をいうものとすること。」この規定は全く同じであります。
そこで、アンダーラインのところなんですね。旧制度は「概ね六月程度以上の居住不能状態が継続することが見込まれるとともに、世帯の生活及び住宅の実情等から新たな生活を開始する必要性が生じていると判断される場合」、現行制度が「認定時点において、避難状態が解消する見通しがなく、世帯の生活及び住宅の実情等から新たな生活を開始する必要性が生じていると判断される場合」ということで、「概ね六月程度」というものが取られております。
これはどういうことなのか、趣旨は基本的に同じだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○大森政府参考人 お答えをいたします。
先生御提出の資料にございますように、従前の被災者生活再建支援法の施行通知におきましては、長期避難世帯として認定する場合は、「概ね六月程度以上の居住不能状態が継続することが見込まれるとともに、世帯の生活及び住宅の実情等から新たな生活を開始する必要性が生じていると判断される場合」を規定したところでございます。
この考え方でございますけれども、この法律につきましては、制定当初から、長期避難世帯を全壊世帯と同等の被害を受けたと認められる世帯と位置づけてきたわけでございます。こういったところからわかりますように、避難状態が解消する見込みがないことから、新たな生活を開始する必要性が生じていると判断される世帯を従前から同法の支援対象としていたものでございます。
しかしながら、御指摘のように、従前の通知では、六月以上の居住不能状態の継続という文言が入っております。この文言があるために、長期避難世帯の認定対象が六月以上であればなるのではないかというような誤解を与えていた面もございます。したがいまして、今回といいますか、十九年の法改正の施行通知の際にこの文言を見合わせたものでございます。先生御指摘のように、この改正の前後において長期避難世帯の認定についての考え方が変わったわけではございません。
○高橋委員 考え方は変わっていないという御答弁だったと思います。
二枚目に、この間の長期避難世帯適用事例というのをつけておきました。噴火災害だけではなく、皆さんの記憶に新しい中越地震なども含め、このように適用になっていると。
そこで、私は、今の考え方をむしろ非常に前向きにとらえて、結果としては避難は、何年かあるいは十数カ月とか、そういう形で解除をされているわけですが、しかし、その間の、やはり非常に長期に続き、新しい生活が必要だということで適用になっている。そのことは、逆に言うと、六カ月たつのを待つという発想よりも、もう当面、六カ月どころかまだまだかかりそうだよ、見通しはまだないよというときに、もっと早い段階で、こだわらずに適用ということもこれありなのか。それで、これは基本は知事が認定をするものである、ここはよろしいでしょうか。
○大森政府参考人 お答えいたします。
この認定については、御指摘のように都道府県知事が行います。したがいまして、この五件のケースでございますが、五件のケースとも知事が、それぞれの世帯について、避難状態が解消する見通しがなく、世帯の生活及び住宅の実情等から新たな生活を開始する必要性が生じていると判断されたと理解しております。
○高橋委員 栗原のように既に十カ月になっている地域がございます。みなし全壊ということで、少なくとも基礎支援金の発動などがもう既にあってもよいのではないかと思いますけれども、これらも考慮できるでしょうかということを再度伺います。
○大森政府参考人 お答えいたします。
繰り返しになって非常に恐縮でございますが、この岩手・宮城の内陸地震のケースにおいても、宮城県知事が個別の認定を今の基準に基づいてされるものだというように理解をしております。
○高橋委員 ありがとうございます。知事が認定をすれば、国は基本的には認めていただくのだろうということで受けとめたいと思います。
二番目の問題は、これは一昨年の法改正のときにも私がお願いをし、かつその後も何度も取り上げてきた災害救助法に基づく住宅の応急修理についての問題であります。
この住宅の応急修理の基準について、一昨年、被災者生活再建支援法が所得要件を取り払った。当然それに準じて応急修理においても、今まで支援法に準じていたものがあったわけですので、これも取り払っていいのではないかということを指摘したわけです。
それが資料の三枚目ですけれども、ことしの三月二日、社会・援護局関係主管課長会議、この中で、災害救助基準について、アンダーラインが引いてあります。これは私が引いたのではなくて、局の方でもう既に強調して引いてある。「平成二十一年度より、大規模半壊以上の被害世帯については、住宅の応急修理に係る資力要件の見直しを行い、従来の所得要件を撤廃することとしたので、実施にあたっては留意されたい。」こういうふうにある。
そうすると、私が前から言っていた支援法の見直し、所得要件の撤廃、これに準じたものである、このように受けとめてよろしいでしょうか。
○坂本政府参考人 お答えいたします。
通常、発災直後には、被災者の多くは避難所等に避難をすることとなりまして、不自由な生活を余儀なくされることとなります。災害救助法に基づく住宅の応急修理として、そのまま住みなれた自宅で生活が送れる被災者につきましては、この制度を活用してもらうことで、被災後の避難所等で生活することに比べて物心両面においてよりよい生活環境の確保が図れるものと考えております。
このような考え方に基づきまして、今般、さらなる応急修理の活用を促進するため、大規模な補修を行わなければ当該住家に居住することが困難である程度に半壊したもの、すなわち大規模半壊世帯については、応急修理制度を活用し、当該住家での生活を希望する人には所得要件を課さないこととしたところでございます。
なお、被災者生活再建支援法は、生活再建を支援するものとしまして、資力要件等を撤廃し、支援金の給付をすることに改正されたところでありますが、一方、災害救助法の応急修理は、被災地域の当面の住まいをどのように確保するのかという観点からの応急対策としての性格を有しているところでありまして、その内容を異にしているものと考えております。
厚生労働省としましては、今後とも、実態に即しまして、応急修理の適切な実施に努めてまいる所存でございます。
○高橋委員 今のお答えは、支援法とは内容を異にしているという答弁でありました。内容のことを聞いているのではございません。
そもそも、住宅の応急修理というものには、いわゆる所得要件ですとかあるいは年齢要件ですとかというものは本来なかったはずであります。これが、二〇〇四年のあの中越地震のときに、県単事業とともに応急修理を活用するということで、新潟県が、半壊以上であって、年収要件、五百万以下の世帯云々ということの要件をつけ、それが全国バージョンになったというのが経緯だったと思います。
そのときの経緯は、何らかの基準があった方が早期に、また必要な人に対応できるのだということで、支援法の所得要件に合わせてこうなったという経緯があった、それは事実ですよね。そうであれば、その合わせた先の支援法が見直しをしたのだから、当然これも見直していいのではないかということが言いたいんです。
ですから、内容ではなくて、基準の考え方は支援法に準じたということは事実ですね、それが一つ。それと、ではなぜ半壊の方は取り残されたのでしょうか。
○坂本政府参考人 御指摘のとおり、平成十六年の新潟中越地震を契機といたしましてその基準の明確を図ったことによりまして、応急対策をとることができる対象物件がはっきりいたしまして、応急修理がスピードアップするとともに、その実績も上がってきているところでございます。それは御指摘のとおりでございます。ただ、そういったものの制度の改善というものにつきましては、そういった実績も踏まえながら見直していくことが必要だと考えております。
この応急修理制度につきましては、何度も申し上げますが、被災者生活再建支援法とは内容、性格を異にいたしておりますので、今後とも、さらなる応急修理の活用を促進するためにいろいろと検討いたしていきたいと考えております。
○高橋委員 だから、内容じゃなくて、所得要件などの基準は支援法に合わせたんですよね、ただそれだけを聞いているんですよ。
○坂本政府参考人 御承知のとおり、被災者生活再建支援法は、生活再建を支援するということで、使途の要件をなくすとともに、資力要件を撤廃し、支援金の給付をすることに改正いたされました。
一方、災害救助法の応急修理は、資力のない本人にかわって行政が行うものという前提で現在構成されておりまして、被災地域の当面の住まいをどのように確保するかという観点から、応急対策としての性格を有しているものでございます。そういうことで対応いたしておるところでございます。
○高橋委員 おかしいじゃないですか、何で聞いていることに答えないんですか。これは何回も私は聞いていますよ。質問したときに答弁もしていますよ。単純なことを聞いているんです。内容じゃないです。
所得要件を設ける際に、単純にその基準、では、なぜ六百万じゃなく五百万なのか。ただ単にそのことですよ。それは支援法に準じた、それだけじゃないですか。
○坂本政府参考人 そういった基準がそこにあるということを前提といたしまして、予算要求の段階でいろいろと検討したところでございます。
○高橋委員 何でそれっぽっちのことをちゃんと言わないのか。要するに、その先のことを気にしているからそういう答弁になるんだと思うんですね。
まず、理屈は、スタートはとにかく所得要件、何らかの基準を設けようと思ったと。思ったときに、支援法に準ずるのがいいよねということでやったわけですよ。これは、幾らお認めにならなくても事実ははっきりしております。これは、資料も手元にあります。
その中で、さっきから言っているように、半壊であってといったところのうち、大規模半壊だけは所得要件は取り払った、残る半壊のところは残ったのだということなわけですね。それで、先ほど、実績が上がってきているので云々というお話があって、これは多分、財政上のさまざまな圧力というか障害があってそれができなかったのであろうということだと思うんです。
そこで、支援法の見直しの議論などを積み重ねてきた私たちの、本院の意思として、本当にこれがよろしいのであろうかと。当面の住まいの確保である、スピードアップを、急ぐのである、そういうことであった場合に、そうすると、半壊という、本来は応急修理の趣旨に一番沿っていて、修理さえすれば住める人、あくまでも、わずか五十万ですよ、五十万使い切らなくてもいいわけです、三十万で済んだらそれでいいわけなんです。最もスピードアップに適した方法ではないか。ここを取り払うというのが、当然やるべきだ、次の課題として検討するということでよろしいのではないでしょうか。もう一度。
○坂本政府参考人 そのことも踏まえまして、十分検討してまいりたいと考えております。
○高橋委員 よろしくお願いします。また、本委員会の委員各位にもぜひ御協力をお願いしたいと思います。
最後に、局地激甚災害のことでお伺いをいたします。
三月十三日の閣議決定で、岩手・宮城内陸地震の局地激甚災害の追加指定が決まりました。これだけ間があって、しかし、査定額が積み上がっていって事実上追加になったんだよということで、この中には秋田県の東成瀬村が公共土木で新たに指定をされたということで、非常に喜んでいるところであります。
昨年、ちょうど、私、六月の末に現地に伺って、東成瀬村、またその隣の湯沢市などに視察に参りました。資料の四枚目、4を見ていただきたいと思うんですが、この太い線が県境でございます。
秋田、岩手、宮城、その真ん中が栗駒山であります。震源地が星印で、話題の胆沢ダムがございますけれども、祭畤大橋、荒砥沢ダム、花山ダムという形で、被害が大きかったところが見事に一直線になっているというのがよくわかるかと思うんですね。
今回指定があったのが東成瀬村、ちょうど県境でありますが、わかるように湯沢市もこれは国道でつながっておりまして、栗原にも一関市にも相互乗り入れということで、栗駒山を中心として観光産業が、大きくこれまで取り組んできたんだけれども、痛手を受けたということであります。
現地に行ったときに、私が、名前が岩手・宮城内陸地震である、その名前からして秋田県が外されているということで、ほとんどニュースにもならないし、余り秋田県の被害というのが認識されていないんですねと、私自身も一番最後に行ってしまったということもあって、そういうことをおわびかたがたお話ししましたら、それは、村長さんも市長さんもそういう大変悔しい思いをしているということだったわけなんです。そういう中で東成瀬が今回適用になったわけです。
そこで、これからの激甚災害の指定について、新たな考え方があってもいいのではないかということなんです。この地図を見ていただいて、今は行政区、市町村単位の指定であります。しかし、被災地は県境であり、震源地周辺が一様に被災しているわけです。一本の国道をつないで、一つの栗駒山山系という形で、いわゆる一体化したものである、そういうふうな単位。例えば栗駒山、国定公園でございますが、そういう一定の意味がある行政区のまとまり、県境とは別にそういう単位で局地激甚災害指定をしていく、こういう考え方があってもいいのではないか。検討する余地があるのではないか。このことを大臣に伺いたいと思います。
○佐藤国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。
局地激甚災害制度は、これまで、いわゆる本激が全国に被害を及ぼす大規模な災害を対象としたものに加えまして、局地的に甚大な被害をもたらした災害を対象として、昭和四十三年に創設されたものというふうに承知をしております。
局地激甚災害が市町村の区域を単位として指定される理由、大変恐縮でございますけれども、災害対策基本法では、市町村が基礎的な地方公共団体として住民の生命、身体、財産を災害から保護する旨が規定をされておりまして、特に応急対応、対策につきましては、まず一義的に災害に対応する市町村の役割を重視しております。また、市町村長に広範な権限を付与していること、激甚災害指定で国庫補助のかさ上げの対象となるのは一般の災害復旧事業法に基づき地方公共団体が行う災害復旧事業等であることを踏まえまして、市町村の区域を単位として指定することが合理的であるとされたものというふうに考えます。
こうしたことから、委員御指摘の市町村の区域外の線引きによる局地激甚災害の指定につきましては、公平で合理的な方法を新たに見出すことができるかどうかといった問題がございまして、慎重な対応が必要と考えておりますが、とはいえ、やはり現場に合ったものということに関しましては考える余地があるのではないかなというふうに思います。
○高橋委員 ありがとうございます。
今、基礎的な地方公共団体とおっしゃいましたけれども、合併をして五年間は特例ということで、旧町の単位で今指定をしていますよね。でも、これからはその五年がとれちゃった自治体ばかりになっていくわけですよね。そうしたときに幅広い市町村という見方ではそぐわない見方が当然出てくるという点では、まさに考えるときに来ているのではないかということで提起をさせていただきました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。
ありがとうございました。