無年金者 広報を親切に
日本共産党の高橋ちづ子議員は八日の衆院厚生労働委員会で、年金加入者に加入履歴などを知らせるために四月から始まった「ねんきん定期便」の改善などを求めました。
高橋氏は、一昨年から全受給者・加入者に送付された「ねんきん特別便」で記録漏れに気づき訂正を求めていたのに、「定期便」に反映されていないという苦情や混乱が相次いでいると指摘しました。
社会保険庁の石井博史運営部長が、苦情に対応する「有効な方法がない」と説明したため、高橋氏は、「訂正を求めたことを記入する欄を作るなど、来月からの定期便で改善を」と提案しました。
舛添要一厚労相は、「一つの手だ。さっそく検討したい」と答弁しました。
高橋氏は、「特別便」も「定期便」も送られない無年金者への対策について質問。石井部長は、無年金者は、介護保険料が年金から天引きされていない「普通徴収」の人の中にいるという考えから、保険料の通知の際に年金加入記録の確認を求めるチラシ約三百二十五万枚を送付し、昨年は七十四人が新たに受給権を得たことを明らかにしました。
高橋氏は、受給資格がないとあきらめている人にも、免除期間や加入が義務でなかった「カラ期間」などを合わせると要件をみたし受給の可能性があると気づかせる親切な広報などが必要だ、と強調。舛添厚労相は、「ぜひやりたい」と答えました。
(2009年4月10日(金)「しんぶん赤旗」より転載)
新年金機構の採用基準、一律の処分許されない
日本共産党の高橋ちづ子議員は八日の衆院厚生労働委員会で、社会保険庁を解体して、二〇一〇年一月から立ち上げる「日本年金機構」の職員採用についてただしました。
高橋氏は、社保庁の定員一万三千七百三十人に対し、二百四十五人の病休などで正規職員が実質千三百人不足していると指摘。社保庁の薄井康紀総務部長は「そのようになる」と認めました。高橋氏は、新機構では不足人員を有期雇用千四百人にふりかえるとしていることをあげ、「人手が足りないことは明白だ」と強調しました。
また、「(社保庁で)懲戒処分を受けた者は(新機構で)採用しない」との基準は、「懲戒、分限(国家公務員の整理解雇)の二重処分にあたらないか」と質問。人事院の尾西雅博人材局長は、「二重処分」かどうかは明言しませんでしたが、一九六〇年以降で分限処分があったのは「六四年の六人」だけで、今回のやり方が異例であることを認めました。
高橋氏は日本弁護士連合会から「労働法制、国家公務員法上重大な疑義がある」との意見が出ていることを紹介し、採用基準を改めるよう強く求めました。
(2009年4月15日(水)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めに、記録問題について伺いたいと思います。
四月三日からねんきん定期便が、加入者でかつ誕生月の方に順次送られるようになりました。テレビ報道もあり、大変関心が高いことだと思っております。
ところが、特別便が来たときに、自分は年金記録の漏れや訂正があると回答した方にも、前と同じ内容の定期便が来ました。自分が申し入れたにもかかわらず何の反映もされていないじゃないかという苦情が来ておりますが、どういうことでしょうか。
○石井政府参考人 お答え申し上げます。
御案内のように、ねんきん特別便は、一昨年の十二月から昨年の十月末まででございますけれども、一億九百万人の方々に送付をした。特に、この過程の中で、昨年の六月から、名寄せを行ったんだけれども、つけ合わなくて、浮かび上がるような可能性のあるものが出なくて、しかし、その方の加入履歴というのを送るべき、現役加入者に対する送付というのが六月から十月末まであったわけでございます。
傾向として、受給者の皆さんと違いまして、回答の状況が反応的に少し悪い状態で推移してきているということも一つはございまして、もちろん、私どもの方の処理体制の問題もございますけれども、そういうようなことで、訂正ありということで御回答いただいた分のうち一定のものがなお調査中という状態にあることは事実でございます。
他方、以前からの予定のとおり、この四月から定期便を送るということ、これはこれで大事なお約束でございます。そういうことでお送りをしておりまして、加入履歴そのものをごらんいただいて、漏れとか間違いがあるというお気づきがあれば、それはそれで回答していただくということを始めているわけでございます。
それで、反映されていないじゃないかということなんでございますけれども、調査中でございますから、それはその反映はできていないわけでございますけれども、その点は幾つか御案内申し上げておりまして、例えば、定期便の様式の最初のページに、あるいは政府広報において、そのように調査を行っている過程にある方は定期便には反映をいたしておりません、特別便への回答に対する調査結果については別途お届けさせていただきますというようなこと、あるいは同封のリーフレットにおいても、漏れや誤り等のお申し入れをいただいている期間については改めて申し入れをいただく必要がないという趣旨のことを朱書きで記載するといった対策を講じさせていただいております。
○高橋委員 九割見つかった、あるいは整理されたといっても、調査中が六百九十八万件あると。その中での今起きている問題だと思うんですね。
だから、まず一点確認しますが、調査中はすなわち未回答と同じ扱いになるのか。定期便には、今おっしゃったように、ただし書きが確かにあります。しかし、わざわざオレンジ色ではなく水色で送ることになるわけですよね。記録訂正があるよというお知らせとか、注意書き、注意喚起だけのものとか、中に入れるものが二種類、封筒が二種類、二掛ける二で四パターンあるわけですね。こんな芸の細かいことをわざわざしておきながら、結局、自分が答えたことに整理がされていないという返事が返ってくるんですよ。そうしたら、無用の混乱を招くだけではありませんか。
○石井政府参考人 今ほどもお答え申し上げましたけれども、特別便を契機としてちょうだいしている訂正ありのお申し入れに関する調査作業と、それから、定期便を発送する作業と、ちょっと時間的に非常に接近、あるいは重なっているものですから発生している状況なわけでございますけれども、ここのところは、さりとてほかに有効な方法もないわけでございまして、そこのところはそういうような事情にあるということを私どももよく伝え、そして、例えば、定期便の最初のページの頭のところに書いてあることとか、あるいはリーフレットに書かせていただくこととか、そういうことを丁寧に皆様にお伝えしていくことによって、混乱というものが生じないような対応で進めていきたいと思います。(高橋委員「最初の質問、未回答と同じ扱いか」と呼ぶ)未回答と同じという扱いではございません。
○高橋委員 同じ扱いにならないんですか。あなたは調査中ですという回答が来るんですか、定期便に。今のはおかしいんじゃないんですか。
○石井政府参考人 こういうことでございます。
繰り返しの答弁で大変恐縮でございますけれども、特別便に対して、訂正ありという御回答をいただいたと。それで済んでいる方はいいわけですが、なお調査中の方については、調査が済むまでは、具体的にお申し越しいただいている記録に関しては調査が完了していないわけですから、とりあえずそれはお預かりという状態になっています。そういう意味で、その方の加入履歴というのは調査が続いている間は従前どおりというのは、それは御指摘のとおりでございます。
だからといって、未回答ということではございません。回答いただいた場合には、私ども一件一件きちんと事跡の管理をしておりまして、この方はこういう回答をいつ幾日いただいているということをきちんと管理しながら、対応しているということでございます。
〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕
○高橋委員 ですから、反映していないという苦情が来るということは、あなたは調査中なんですという一言がないということなんですよ。その一言があるのとないのでは全然違うんです。待っていただきたいと言って、書いていればわかるんですけれども、結局、自分の言ったことは無視されたのかなというふうに思うんですよ。
さっきから言っているように、きめ細かく丁寧に説明をしていますと言っているけれども、肝心なことが抜けているんです。だから、回答票に、例えば、特別便をいついつ送ったということをあえて回答させる欄をつくるとか。ないですよ、この回答欄にはそういうものが一切。差別されておりませんから、そういう工夫をしなさいということを言っているんです。来月からやるんですから、来月からまた次の新しい人に行くんですから、そこは改善してください。時間がないので、ここは要望にいたしたいと思います。
次に、長妻委員もずっとこだわっている無年金の問題、私も以前から大変訴えているところなんですけれども、例えば、一昨年六月十三日の本委員会で、無年金者で受給年齢に達している方は、オンラインデータとマイクロフィルムと突合するにも一方のデータがないがどうするかという質問をいたしました。そのときに、先ほどちょっと大臣が触れましたように、介護保険の普通徴収の保険料通知と一緒に案内をしたいということをおっしゃいました。
きょうの資料の一枚目がそれでございます。これが、介護保険の普通徴収の方、年金がないか月一万五千円未満の方たち、みずから銀行などに行って払う方たちに同封されるものでございます。波線がありまして、「過去に国民年金保険料を納めたことがある方、会社にお勤めになられたことのある方につきましては、年金をお受け取りになれる可能性がございます。」ということで、漏れや間違いがないか御心配の方は御相談くださいということで、通常、役所が出す文書にしては大変字が大きく見やすいわけでございますが、これで実際に成果が上がったのか、この通知がいつ、どのくらい発送され、何らかの実績があったか、伺います。
○石井政府参考人 お答え申し上げます。
今お話がございましたように、社会保険庁におきましては、いわゆる無年金の方の氏名住所、そういった情報を把握してございませんので、そういった方を多く含むと考えられます介護保険料の普通徴収の対象の方々に対しまして、年金記録の確認を呼びかけるチラシというのを送付したところでございます。
具体的には、今し方御紹介がございましたけれども、市町村におきまして、平成二十年度の、ですから昨年度のことでございますけれども、平成二十年度の介護保険料納入告知書を送付する際に、年金記録の確認を呼びかける、今御紹介いただいたチラシを同封させていただくなど、すべての市町村の御協力をいただくもとで、昨年の三月から十月にかけまして実施いたしました。同封に御協力いただいた市区町村の数でございますけれども、一千八百九市区町村、送付枚数は三百二十三万枚に上っております。
ただ、この数字の外でございますけれども、ちょっと同封が技術的に、例えばはがきによるお知らせだったために自分のところではできませんということで御連絡があったのは、別途社会保険庁の方で引き取って、しかし同様に御連絡をしておりまして、これは九市町村分、送付枚数にして二万枚、こういうことでございます。
それで、このチラシをそういう形で送付することで、注意喚起を内容とする一般的な広報をしたということでございますけれども、大変恐縮でございますが、社会保険事務所への相談、当然これはチラシを契機としてあったというふうに思っておりますけれども、そのようなチラシを契機としてなされた相談かどうかというのは個別に調査、把握してございません。
なお、これはあくまでも参考でございますけれども、平成二十年五月から十二月までの八カ月間で、七十四名の方が相談などを契機とした記録訂正によって新たに年金受給権が発生している、そういうことがございます。
○高橋委員 ですから、さっきから、無年金者、つまり、特別便も定期便も来ない方に、可能性があるじゃないかということをどうやって結びつけていくのかということを話しているわけですね。
今、七十四名が新たに受給権者になったと。これは、昨年の通知だと三十三名が普通徴収者ということで見つかったということがあるわけですね。だから、そういう形で国民から協力をいただければもっとできるんじゃないかと提案しているんだけれども、それが効果があったかどうかもよくわからないという中で進んでいくということは、どうしてそうなるのかということが言いたいわけですよ。ですから、これはもう一度検証して、ことし同じようにやっていく必要があるのではないかと思います。
さらに、その際、二枚目に裏面を載せてありますけれども、「基礎年金を受けるためには、原則として、「保険料を納めた期間」と「保険料納付を免除された期間」とを合算して、二十五年以上の期間が必要ですが、様々な方の状況に応じた特例制度なども設けられていますので、」また御相談くださいということになって、これは要するに、特例制度と言っていますけれども、例えば免除があったり、先ほど来話題になっている空期間があれば二十五年をクリアする方もいるんだ。ですから、相談の多いのは、自分はもともと二十五年も払っていないからもう無理なんだろうと、自分から問い合わせようとしない人たちがたくさんいるわけですね。そういう方たちにきちんと自覚を持たせていく、そういう取り組みが必要ではないか。
大臣が何度もおっしゃっているように、住基ネットを回して無年金者も見つけていくんだということも言っているわけですが、一方で国民の協力もいただくと言っているんですから、そういうことをもっと効果的にやるべきだということで、さらにこれを進めるべきと思いますが、いかがでしょうか。
○舛添国務大臣 それはぜひやりたいと思います。
まず、この前、ねんきん特別便が届いていない方で大分そういう方が発見できたので、それは、周りで話していて、ああ、私だけ届いてないわよ、どうしたのかしらと言ってくださって、番号が付されていなかったりとか全く違う住所に行っていたりとかがあるので、ぜひこれは広報体制をさらに進めていきたいというふうに思います。
それから、先ほど最初の方の質問で、オレンジの定期便の中身、ちょっとこれは工夫をさせていただきます。委員御承知のように、最初は受給者から特別便を送ったものですから、定期便は加入者ですね、後ろに送ったのが加入者だったもので、まだ調査中の人がダブってというか、結果が出ないうちに来ているので、それは混乱があり得ると思います。
だから、基本的には、答えが来ていない人はまだ調査中だということなんですが、委員がおっしゃったように、私はもう何月何日に出しましたよというような書く欄をつけるというのも一つの手なので、これは早速検討させていただきたいと思います。
○高橋委員 しっかりとお願いしたいと思います。
次に、きょうは日本年金機構について質問をしたいと思います。
来年一月一日から立ち上がることになるんですけれども、資料の三に「日本年金機構設立時の正規職員の人員数」という資料をつけておきました。ここでは、まず左側を見ていただきたいと思うんですが、二十一年一月ごろ採用内定ということで、社保庁の正規職員が今一万三千百十人程度である。二十二年一月、機構の設立時には、社保庁からの採用数が九千八百八十人である。その差が三千二百三十人ですけれども、その三千二百三十人を外部委託、有期雇用化、そして外部からの採用ということで振りかえるということになると思います。
まず、単純な確認ですが、現在、実際の社保庁の定員数は幾らで、そして、その定員に対してどのくらい不足していることになるでしょうか。
○薄井政府参考人 お答え申し上げます。
社会保険庁の平成二十年度末の定員でございますけれども、一万三千七百三十人でございます。
今お手元に配られております資料でございますが、正規職員一万三千百十と書いてございますけれども、この下に米印で書いてございますように、厚生労働省に年金機構の管理部局等が移りますので、その分等が除かれている数字でございます。
今申し上げました一万三千七百三十人に対しまして、二十年十二月末現在の職員数の数字がございますけれども、一万三千四百八十五人、こういうことでございます。
○高橋委員 一万三千四百八十五人。私は不足数は幾らかというふうに聞いたんですけれども、これを単純に引きますと二百四十五人が不足する。ただし、それプラス病休の方がいらっしゃいますね。
○薄井政府参考人 先ほど申し上げました職員数の中には、これは育児休業とか病気休職者も入っている数字でございます。
○高橋委員 そうすると、もう一回聞きますが、では二百四十五人でよいという意味ですか。
○薄井政府参考人 二百四十五人に加えまして、今申し上げましたような休職者等が欠員となっている、こういうことでございます。
○高橋委員 今おっしゃったように病気休職の方がいる。これは、いただいた数字を私なりに足し算をしていきますと、単純に引いた頭数が二百四十五人、プラス長期病気休暇が三百七十五人になるかと思うんですね。そのほかに、二十二年のときは、外部採用というのは外出しになって九千八百八十人の中には入りませんので、プラス七百人で、実際は、社保庁の正規定員から見て千三百二十人足りていないということになるのかと思いますが、いかがでしょうか。
○薄井政府参考人 年度末時点ではそのような、正確な計算をちょっとしなければいけませんけれども、おおむねそういう数字になろうかと思います。
なお、いわゆる欠員分につきましては、任期つきの職員の採用というのをこの四月一日にも行っておりますので、そういうふうな欠員の補充は行ってきているところでございます。
○高橋委員 次に、実際に採用される九千八百八十人に対し、採用内定名簿登載者数、つまり、そこから選考されることになるわけですよね。その名簿に載った数、それから名簿に載らなかった、懲戒処分の方などもいらっしゃると思うんですが、希望者数というのはさらにその外にあると思いますが、何人でしょうか。
○薄井政府参考人 日本年金機構の職員採用につきましては、この二月の十六日に、社会保険庁長官から日本年金機構設立委員会の委員長に対しまして、職員の採用のいわば候補者の名簿というものを提出したところでございます。
この名簿に登載した人数でございますけれども、これは、日本年金機構の職員の採用審査会におきます採用審査の内容にかかわる事項ということでございまして、設立委員会でも非公表の取り扱いとなっておりますので、審査が進められております現段階におきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと考えております。
○高橋委員 先行しました全国健保協会は、設立後、公表されておりますね。その差を教えてください。
○薄井政府参考人 健保協会につきましては、大きな数字でまとめて申し上げますと、約四千人が応募をいたしまして、千八百人が採用内定というふうに承知をいたしております。
○高橋委員 今の数字ですと、二千二百人がはみ出してしまったということかと思います。
それで、今のこともこれあり、今のこの資料にある、二十一年一月ですと、要対応分二千九百三十人、この中のかなりの人たちが、希望をしたけれども、配置転換などの分限免職回避の努力、この枠に入るのであろう、また、処分者が八百四十八人おりますけれども、それもこの中に入るのであろうかと思っておるんですね。
先ほど来伺ったように、定員から見て千三百人不足をしている中で、一方では千四百人の有期雇用などをするわけですから、もともと人手が不要になった、過剰である、そういう理由がないということはまず今の話から明確にうかがえると思うんです。
そのことをまず指摘をした上で伺いますけれども、日本年金機構の採用基準には、社保庁職員からの採用に当たっては、懲戒処分を受けた者は採用しないと書いております。懲戒という処分を一度受けた者の分限処分、これは二重処分になりませんか。一律にこれを規制することが許されるでしょうか。
〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕
○薄井政府参考人 日本年金機構の基本計画におきましては、今御指摘のございましたように、懲戒処分を受けた者は機構の正規職員または有期雇用職員には採用されない、こういう取り扱いとされております。これは、機構が国民に信頼される組織としてスタートするために、新たに設立される機構には法令遵守等の面で問題のあった者を採用しないという機構の職員採用における取り扱いの話でございまして、二重処分には当たらないと考えているところでございます。
いずれにいたしましても、機構に行かない職員につきましては、分限回避に向けましての努力というのは必要であろうと考えているところでございます。
○高橋委員 日弁連は、昨年十二月十九日、「日本年金機構の職員採用に関する意見」を発表しました。過去一度でも懲戒処分を受けた職員は、処分の理由やその内容、程度のいかんにかかわらず一律不採用にするという絶対的基準を設けていることは、「かかる画一的基準によって社会保険庁職員の意に反してその雇用上の地位を一方的に喪失させることは、我が国の労働法制・国家公務員法上重大な疑義があり、法治主義の観点からも慎重に検討されるべき」と指摘をしています。
きょうは、人事院に来ていただいておりますので、一般論でお聞きします。国家公務員法は、民間で言う整理解雇に当たる分限免職を七十八条四号で定めておりますが、実際にこの分限免職が行われたのは、一九六四年の三名以来、初めてのことであります。省庁再編、独法化、郵政民営化などもこの間やられた中で、こうした分限免職はなかったと思いますが、その理由は何でしょうか。また、本来、二重処分はあり得るのでしょうか。
○尾西政府参考人 まず、一般論としてお答え申し上げますと、懲戒処分と分限処分の関係でございますけれども、懲戒処分といいますのは、公務員関係の秩序を維持するために、非違行為を行った職員に対して行われるものであるのに対しまして、分限処分の方は、職員の責任の有無にかかわりませず、公務能率維持の観点から行われるものでございまして、両者は、制度の趣旨、目的の異なるものでございます。したがいまして、懲戒処分を受けた者が分限処分を受けるということはあり得るところでございます。
それから、もう一点の御質問の方でございますが、確かに、私どもが把握をしているところでは、昭和三十年代後半以降のデータで見ますと、分限処分があったのは、昭和三十九年に合計六人ございました。その後はありませんが、これは、その時々の組織改編の中でいろいろ雇用努力が行われてきたものだろうと思っていますけれども、今回も、昨年七月の閣議決定におきましても、配置転換その他分限回避の努力を行った上でということで書いてある、そういうことでございますので、そういう努力を行われた上で、ただ、それでも仕方ない場合には分限もあり得るというのが今の制度かと思います。
○高橋委員 分限回避の努力を行った上でということは、先ほど来答弁があったんですね。だけれども、問題は、最初から、懲戒があった者は採用としないと一律に書いていることがおかしくはないかと言っているんです。
先ほど伺ったように、年金機構は社会保険庁の承継法人であり、これまでの例とは基本的に変わらないはずなんですね。しかも、さっき指摘をした、先行実施した全国健保協会の採用基準は、懲戒処分を受けた者及び社会保険庁の改革に反する行為を行った者については、その内容などを踏まえ、勤務成績及び改悛の情を考慮して、厳正に判断するものとあり、個別に審査をしていたのではないでしょうか。
○薄井政府参考人 全国健康保険協会の採用について、承知しているところで申し上げますと、昨年の十月の協会設立の段階での採用に当たりましては、今おっしゃられたような形で整理されていたと承知しております。それから、実は、船員保険の関係で今回も健保協会の追加募集が若干ございますけれども、そちらの方は、年金機構の今回の要件と同じような要件が定められているというふうに承知をいたしております。
○高橋委員 全然答えになっていないんですよね。
大臣にぜひ伺いたいと思います。年金機構になれば民間法人ですので、今後、労働法制の適用になると思います。客観的、合理的理由がなければ解雇は無効、今、派遣切りが盛んに行われている中で、厚労省が何度も何度も通知をしている内容であります。所管大臣として、今回の事例は解雇権の濫用になりませんか。
○舛添国務大臣 結論から言えば、解雇権の濫用になりません。それは、新しい組織への採用基準を決めることになるわけです。これは昨年七月二十九日の閣議決定で職員採用についての基本的考え方を定めて、それはさんざん議論をしました。今のような法的側面も含めて議論しました。
しかし、きょう一日議論があったように、ここまでずさんなことをし、国民の大事な年金について記録がずさんである、そして政府や国家に対する信頼を失わせた、そして、特に覚書に象徴されるように、とにかく国民をほったらかしてサボることに全身全霊を捧げるような、そういう連中を新しい機構の職員に採用することはできない。そういう観点から「懲戒処分を受けた者は機構の正規職員及び有期雇用職員には採用されない。」という重い閣議決定を行ったわけでありまして、労働法制上も何ら問題はないと考えております。
○高橋委員 先ほど来お話をしているように、まず、民間法人になったら当然それは解雇権の濫用に当たるのではないか、そこをちゃんとわきまえて。それが、解散して新しい法人になったんだから、ほとんど継承して、退職金まで継承しているけれども、全然関係ないんだ、そんなことが許されるのであったら、国が法律を変えれば国家による首切りが可能になるということになるではありませんか。そういう立場に立って、ちゃんと冷静に考えるべきだと思うんです。
さらに、基準の中には、採用内定後に懲戒処分の対象となる行為が明らかになった場合には内定を取り消すとあります。設立委員会の長である奥田さんに向けて誓約書を書かせ、仮に採用内定後に国家公務員法に基づく、内定を取り消されても異存はありませんと約束させます。処分は承継され、身分は承継されない。絶対におかしいではありませんか。
厚労省は、今、採用内定取り消しを厳しく規制して、「労働契約が成立したと認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定取消しは無効とされる」と通知をしているではありませんか。
大臣は、厚労省の服務違反調査委員会報告書、昨年の十一月四日、やみ専従について、「服務違反と不祥事の因果関係が証拠上必ずしも明白とはいいがたい」、「長年にわたる同種行為を公訴時効で区切り、時効完成前の者のみ刑事罰を問うのは公平性の観点から問題なしとしない。」こういう報告が出ているにもかかわらず、告発をし、二月二十七日、東京地裁は不起訴処分にしたではありませんか。
こういう経緯がありながら、言ってみれば時流に乗って、とにかく一律だという考え方は改めるべきです。一言ありますか。
○舛添国務大臣 虚偽の誓約を行った者は労働契約を解除することがあるということを閣議決定で決めることは、何ら問題がありません。国家に対するこれだけの信頼を失い、国民に対する裏切りを続けてきた連中を看過することはできない。そして、先般も司法の場できちんと、今のやみ専従について言うと、ちゃんとそれは提訴するだけの理由がある、それでやったわけで、最終的に不起訴処分というのは司法の判断ですから、それは私が責任を持ってやったことであり、閣議決定を行ったことで何ら問題はないと思っております。
○高橋委員 不起訴処分であり、かつ、厚労省の報告書にも、大臣はそこからもはみ出ているということを指摘したわけです。誓約書に違反であるとかではなく、そのような誓約書を書かせること自体問題である、このことを指摘して、また次に譲りたいと思います。
終わります。