日本共産党の高橋ちづ子議員は十七日の衆院厚生労働委員会で、年金財源の国庫負担引き上げについて質問しました。
高橋氏は、自民・公明の与党は、年金の国庫負担の段階的引き上げと同時に、「百年安心の年金」として定率減税の廃止(二〇〇六年度)や年金課税の強化を行ってきたことを示し、「これによって国は二兆八千億円の増収になったが、基礎年金の国庫負担引き上げのためにいくら回ったのか」と質問しました。
厚労省の渡辺芳樹年金局長は、〇七年から〇九年度の合計で三千三百二十四億円になると答弁。高橋氏は、「これでは完全に国民だましではないか」と批判しました。
また、自民・公明の与党は〇七年十一月に定率減税廃止分の残額すべて(一兆四千億円)を国庫負担引き上げのために充当する法案を準備していたにもかかわらず、これも実現しなかったことを指摘。「『百年安心の年金』のためといって増税、今度は『百年に一度の不況』のための消費税増税というのか」とただしました。
舛添要一厚労相は、消費税は「広く薄く、社会保障を支えるいいところがある」と述べ「『中期プログラム』では、消費税を目的税的に使うことが明記された」と消費税増税路線を正当化。高橋氏は、日本企業は社会保障費負担が欧米に比べて大幅に低いことを指摘。「消費税増税という前に、大企業に応分の負担を求めるべきだ」と強調しました。
(2009年4月18日(土)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めに、局長に、通告しておりませんが、基本ですので確認させていただきたいと思います。
国民年金法の第一条には、「国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」とあります。
今回、附則に最低保障の機能強化の検討という一項が盛り込まれましたが、もともと、この検討という附則はなくても、国庫負担をきちんと担保することで、保険料を払えない人も免除によって一定の年金は受け取れるという皆年金の考え方があり、そのための二分の一の負担であるということでよろしいですよね。
○渡辺政府参考人 ただいま先生おっしゃいましたように、国民年金の制度創設の目的ということがその第一条に明記されております。そのとおりでございます。
それから、国民年金は、発足当初から税の投入によってその皆年金の基礎を保とうということでさまざまな工夫が講ぜられているという点も、そのとおりでございます。
おっしゃられたような大きな使命を持った制度であるというふうに理解をしております。
○高橋委員 ありがとうございます。
十五年前に国会が決めた国民への約束が今年度でようやく決まったというのは、余りにも遅過ぎたと言わなければなりません。同時に、このことがもっと早くできていれば、次のステップ、いわゆる先ほど来議論されている最低保障年金制度のあり方云々ということにも踏み込んできたのではなかったかということをあえて指摘させていただきました。
さて、きょうは財務省に来ていただいております。ちょっと直球の質問ばかりをさせていただきますけれども。
資料の二ですけれども、二十一年度予算案は、財政投融資特別会計の金利変動準備金から四兆二千億円が一般会計へ繰り入れされ、そのうち二兆三千億円が基礎年金分、今回の法案の分だということであります。残りは六兆五千億円です。
ちなみに、二十年度、これは二次補正が四兆八千億円ありましたけれども、そのうち四兆二千億円を財投から繰り入れました。ところが、ここに来て、二十一年度一次補正予算案が十五兆四千億円の規模だということであります。
昨年十二月六日の共同通信、政府が基礎年金の国庫負担の二分の一を四月からやると決めたという記事と一緒に、景気悪化を受けて「年金の国庫負担上げに使う財源を景気対策に回すべきだといった意見も浮上。」とあります。
与党の中でもすったもんだの上でようやく決めたやさきに、また十五兆円。いよいよ来年度が危うくなるのかという気がいたします。経済危機対策十五兆四千億円のうち、どのくらい財投からの繰り入れを予定しているのか。積立金が底をつくおそれもありますが、来年度も年金への繰り入れは確実に担保されるのですか。
○真砂政府参考人 今般の経済危機対策の財源でございますが、その一部に先生御指摘の財投特会の金利変動準備金を充てるということにいたしておりますけれども、まだ具体的に幾ら充てるかという金額につきましては現在検討中というところでございます。
いずれにいたしましても、先生御指摘のように、平成二十二年度におきましても、基礎年金の二分の一を国庫が負担するための財源といたしまして財投特会の金利変動準備金を活用することが予定されているという点には、私どもも留意していく必要があるというふうに考えております。
○高橋委員 留意していくということは、ちょっと今不安になりましたよ。確実ではないということでしょうか。
○真砂政府参考人 財政運営に関する法律におきまして、平成二十一年度及び平成二十二年度におきまして、基礎年金の国庫負担の追加に伴い、これらの年度において見込まれる歳出の増に充てるための財源を財政投融資から一般会計に繰り入れるという規定になっておりますので、この規定に沿って私ども予算編成をしていきたい、このように思っております。
○高橋委員 はい、確認をいたしました。
しかし、いずれにしても、かなり深刻な状況であるということは言えるのではないかと思います。今回の十五兆円は、経済危機対策といいますけれども、やはり消費税大増税という後世に大きなツケ回しをすることにほかならないと私は思っています。規模をもっと現実的なものに、そして中身を一時的な消費刺激策ではなく恒久的な効果があるものに絞り込むべきだと考えます。これは意見として述べさせていただきます。
さて、来年度は確保したとして、二十三年度以降については、所得税法附則百四条の規定に従って行われる税制の抜本改正により「所要の安定した財源の確保が図られる年度を定める」とあるのみで、確実に確定するとは書いておりません。そして、三年後は多分増税だとだれしもが思っているところであります。
とはいえ、二十三年度にそれが決まっていなければ「臨時の法制上及び財政上の措置を講ずる」と書き込まざるを得ませんでした。いわば見切り発車とも言えるし、あるいは何が何でも消費税増税と言われているようでもあり、いずれにしても賛成できません。
財務省は、仮に後者、臨時の措置をとらざるを得なかった場合、その分を厚労省の予算の枠内で持てとは言わずに、政府全体の予算の見直しの中で当然確保するべきと思いますが、その点、確認してよろしいでしょうか。
○真砂政府参考人 私ども、景気の回復に全力を尽くしまして、経済状況を好転させることを前提に、遅滞なく税制の抜本改革を行うことが基本であるというふうに考えております。
先生御指摘のような、仮に予期せざる経済変動に対応するために平成二十三年度以降も臨時の財源を手当てするというような場合におきましては、その可能性が明らかになった時点で具体的な財源について検討していきたい、このように考えております。
○高橋委員 具体的に答弁されませんでしたが、厚労省にだけツケを回すということはないとお答えいただけますか。
○真砂政府参考人 繰り返しになってまことに恐縮でございますけれども、その時点で具体的な財源については検討してまいりたいということしか、この段階では私としては申し上げられないところでございます。
○高橋委員 最初に述べましたように、国民年金法の本当の目的というのは、これは厚労省だけがひとり負うべきものではないのだろう、やはり国全体で負っていかなければならない。そういうことを考えたときに、財政が足りなくなったら、厚労省の予算をまたどこか削って、要するに福祉、何か削ってやるということはあってはならないということを重ねて指摘をしたいし、大臣にもそれは頑張っていただきたい。
資料の一に戻ります。
十六年度から段階的に引き上げ、二分の一を目指してまいりました。しかし、そもそも百年安心の年金のためだといって、定率減税の廃止や年金課税の強化をやってきた。それが本来使われていたらもっと早くこれは実現できたのではないか、このことは重ねて指摘をしてきたところであります。
定率減税は〇六年度に完全に廃止され、年金課税の見直しと合わせ、国分の収入は二兆八千億円だと聞いております。そのうち、基礎年金の国庫負担引き上げのために回ったのは幾らになるでしょうか。
○渡辺政府参考人 平成十七年度及び平成十八年度税制改正における定率減税の縮減、廃止による増収分のうち、基礎年金国庫負担にどのように充当されたのかということでございます。
それぞれの年度の予算というもので示しておりますけれども、それを合計いたしますと、十七年度から十九年度の各年度において基礎年金国庫負担の引き上げに充当された金額を単純合計した数字で申し上げますと、約三千三百億円、三千三百二十四億円というふうに承知しております。
○高橋委員 本当に、これでは完全に国民だましだ。わずか三千三百二十四億円しか入っていないということをあえて言わなければならないと思います。
ここに、〇七年十一月二十三日の日経新聞を持ってまいりました。「基礎年金の国庫負担上げ」と見出しがあり、「定率減税廃止分を充当」という記事でございます。基礎年金の国庫負担二分の一法案について、与党年金制度改革協議会で所得税の定率減税の廃止分全額を充当する方針を盛り込んだ、そして早期成立を目指したい、このように書いてあります。このままでは多分公約違反になるという公明党さんの強い要請があったということだと思います。
全額とは、一兆四千億円。これは、先ほどお話しした二兆八千億円のうち、地方交付税に回った分を引き、かつ三千三百二十四億円を引くと、大体一兆四千億円くらいの残りになるのかなという計算になります。
〇七年の十一月ですので、残念ながらこの法案は出されておりません。なぜ実現しなかったのでしょうか。
○渡辺政府参考人 ただいま先生御指摘になりましたのは、平成十九年十一月二十二日の与党の関係議員の協議会の意見の取りまとめの一部を御引用いただいたと思います。
二十年度の政府予算編成に当たりまして、こうしたさまざまな、政府内だけではない、与党内での御議論というものも積み上げまして、最終的に、与党とされまして二十年度における基礎年金の国庫負担の割合に関する取り決めが行われ、それを踏まえつつ、政府としても二十年度予算編成を行ったものでございます。
その結果は、その後の法案の扱いは、曲折ございましたけれども、そのときの二十年度予算の編成における政府・与党の決定というのは、現行の国庫負担割合にさらに千三百五十六億円相当の千分の八を加えるというものでございましたので、所要の法案を用意し提出させていただきましたけれども、結果として廃案になった、そういう経緯の一こまであると承知しております。
○高橋委員 大臣にも伺いたいと思います。
先ほどの負担割合の段階的引き上げの道筋は、二十年度はないわけであります。今あったように、審議未了で廃案になったわけですけれども、その法案は、今私が紹介したように、定率減税の廃止分を入れる法案ではなかった。財源は特になかったわけであります。
ですから、本来であれば、こういう立場で厚労省は臨んできたのかと思いますけれども、なぜできなかったのか。もう一度、大臣の立場で。
○舛添国務大臣 それは、それぞれの政治状況、経済状況において、与党の皆さん方がこれが適切であろうという方向でやったことの結果だと思いますので、議院内閣制においては、与党と連携をとりながら、さらにいい政策を続けていきたいと思っております。
○高橋委員 国民は何度も裏切られていると思います。
そもそも消費税が、ことしで二十年目ですけれども、福祉のためといって導入されました。私自身が忘れられないのは、八九年から消費税が導入されまして、当時、反対署名を持って歩くと、高齢者の皆さんは、署名はできません、お国から年金をいただいているから、そういうふうに言って断る方が少なくなかったんですね。そういう気持ちにさせておきながら、結局、その後の二十年間は増税と負担増ばかりではなかったでしょうか。
百年安心の年金のためといって増税をしました。今度は、百年に一度の不況のためにまた増税だというのでしょうか。結局、国民は今も昔も、お国のためにと我慢ばかりさせられてきたと言えないでしょうか。
財源がない、財源がないと言う前に、あるところから取ればいいと思います。国際競争力強化のために総額人件費抑制という大命題のもと、正社員から派遣にして人件費を浮かし、派遣切り、正社員切り、言いかえれば、大企業に減税や規制緩和で大もうけをさせ、一方では税金を払える勤労者を減らしてきた政策の誤りではありませんか。消費税増税を言う前に大企業に応分の負担を求めていく、そのことをきちんと大臣がやるべきではありませんか。
○舛添国務大臣 中期プログラムでは、社会保障財源として消費税、そしてこれを目的税的に使うということが明記をされております。
どの税金がいいか、さまざまな税金、それは議論は尽くせないところでありますけれども、広く薄く皆さんに負担していただいて社会保障を支える、そういう意味では消費税のいい点はたくさんあると思います。
そして、最後になりますが、社会保障は財政にとって負担であるからという発想を捨てて、社会保障、医療であれ介護であれ、そういうものに必要な投資をすることは、日本を明るくし、活力をもたらし、安心を国民にもたらせる、そういう意味での希望への投資である、そういう発想に切りかえて、厚生労働行政をさらに前に進めていきたいと思っております。
○高橋委員 そのためには、やはり国民にきちんと説明をし、信頼される制度をつくらなければならないと思います。
日本の社会保障費に対する企業負担は二五・九%、スウェーデンは四一%、イギリスは三二・四%というように、諸外国に比べて日本は決して高くありません。負担だけを言う前に、まずやるべきことをやるということを重ねて指摘して、終わりたいと思います。