国会質問

質問日:2009年 4月 30日 第171国会 厚生労働委員会

新型インフルエンザ対策

 新型インフルエンザ問題で、日本共産党の高橋ちづ子議員が、30日の衆院厚生労働委員会で国が責任を持って対処するよう強く求めました。

 高橋氏は、昨年改正した感染症法と、その後のとりくみが問われると指摘し、検疫による水際と国内対策の両輪による対策強化が重要だと強調。検疫体制の弱さが指摘されていることに触れ、全国の108ヶ所の検疫所に配置される医師数は何人いるか、と質問しました。

 厚労省の石塚正敏食品安全部長は、2009年度の検疫官数は358人で、そのうち医師は63人、看護師は67人いると明らかにしました。

 高橋氏は、「全体の底上げがなんとしても必要だ」と本格的に増員に取り組むようあらためて要求。さらに、発熱相談センターの設置については、待合い場所で間隔を二メートル空けるなど多摩立川保健所(東京)の「運営の手引き」も紹介しながら、「厚労省が国としての詳細な基準を明確にすべきだ」と主張。財政支援も求めました。

 舛添要一厚労相は、「基準を明確にするのは一つの対策だ。それも含めて検討したい」と答弁しました。

 また高橋氏は、新型インフルエンザと特定される前の感染が疑われる人の入院費用についても、「蔓延(まんえん)を防ぐためにも入院費負担がネックになってはならない。公費負担にすべきだ」とただしました。

 上田博三健康局長は「医師が、疑いがあり、疑似症の患者と判断した場合は、公費負担の対象となる」と述べ、疑いがある段階でも公費負担となることを確認しました。

(2009年5月1日(金)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 けさ、メキシコ以外でも死者が発生したこと、感染国が七カ国以上ということで広がってきた、そうしたことを踏まえ、WHOがフェーズ5に移行したことを発表いたしました。世界的大流行の一歩手前まで来ているということで、大変緊張感が高まっているときであります。大連休が既に始まっていること、また深刻な経済不況の中である、こうしたことから、混乱に拍車をかけることにならないかということが危惧をされるところだと思います。

 そこで、大臣に最初に伺いたいと思うんですが、昨年四月、ちょうど今ごろ、感染症法の改正を行いました。そして新型インフルエンザ対策についても議論をいたしました。そのときの議論が生かされているのかということがやはり問われているのではないかと思うんです。

 当初は、鳥インフルエンザから変異して新型になるということが想定されていたこと、あるいはアジアや途上国からの発生ということが念頭に置かれていたこと、この点では違いがあるかと思うんです。ただ、もともと、豚が介在してウイルスが変異するということは言われてきたわけであって、新型インフルエンザ行動計画並びにガイドラインがやはりどれだけ徹底されるか、ここにかかっているのではないかと思います。ことしの二月十七日にこのような改定版も出されました。

 昨年の法改正以来の取り組みと、そして大臣が今認識している課題は何か、端的にお答えください。

○舛添国務大臣 今委員から御指摘がありましたように、新型インフルエンザ対策行動計画を改定した、それから新型インフルエンザ対策ガイドラインの策定を行いました。

 特に現場の方々との連携が必要でございますので、ことしの三月には医師会との意見交換会を行いましたし、一月には地方自治体担当者への説明会とかブロック会議などを行いまして、また、二月から三月にかけて、全国の八会場に赴きまして、自治体の新型インフルエンザ対策担当者等、二千名を超える方々との意見交換を行いました。

 それから個別対策では、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄を国民の約二三%から四五%まで引き上げることとしましたし、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、水際対策用の個人防護服、それからマスクや人工呼吸器の整備など、補正予算などを利用してこれを実施しております。

 ただ、問題は、今回私も陣頭指揮をやっていて思いますのは、どうしても都道府県、市町村との連携、それから現場の医療機関がどこまでやってくれているのかの把握が必ずしも十分でないということで、ここを総務省の力もかりて今強化せぬといかぬというように思っています。

 これは、まさに現在進行形で危機が進んでおりますので、体制が整っていないからというような弁解は政府には許されません。全力を挙げて、中央、地方の政府を総動員し、また国民各位の御協力をいただきながら、まさにオール・ジャパンでこの危機を克服する、そういう思いで今後とも取り組んでまいりたいと思っております。

○高橋委員 ありがとうございました。

 昨年の参考人質疑で、成田検疫所の所長の藤井氏が、水際対策と国内対策を両輪でやる必要があると指摘をいたしました。今日、海外からの入国数が、十六万機、三千万人、日に八万人が入国をしてくるのだ、何としても水際で食いとめたいという決意と同時に、しかし水際だけでは限界がある、こういう指摘があったかと思います。

 私は、そのときの委員会の質問で、先ほど来も出されているわけですけれども、やはり検疫の体制が弱いのではないかということを指摘いたしました。そのときの数字が、百八カ所、三百四十八名の検疫官であると。明確にされていなかったのは、検疫官のうち医師数が幾らかということです。まず、そこをお答えいただいて、現在どうなっているのかを具体的にお話しください。

○石塚政府参考人 お答えいたします。

 全国百八カ所の検疫所等に検疫官を配置しておるところでございますが、今年度には、昨年度と比較しまして十名分増員しました。これで、プロパーの職員数でございますが、三百五十八名としたところでございます。

 また、医師は何名かということでございますが、こうした有症状者の健康を的確に把握して診察を行います検疫担当者として医師が配置されておるわけでありますが、今年度の状況で申しますと、医師は六十三名でございます。ちなみに、看護師資格を持った者が六十七名という状況でございます。

○高橋委員 私、実は昨年、医師数を聞いたそのときの関心事は、機内検疫をしたり、あるいは入管から、もちろんサーモグラフィーをやって通るわけですけれども、十日間以内に関係する国を通ってきた人がいるとなったときにまた検疫所に返される。そういうことをするわけですけれども、そのときに、検疫所の外にきちっと医務室のようなものがあって一定の対応をとるんだということが説明をされていたわけですね。そういう点では、今回、機内検疫もやる、かつ検疫の中、外に出てからそういう体制もとるということでは、非常にまだまだ手薄なのではないか。

 防衛医官の応援体制などがこの間とられてきたということは当然ではあるけれども、しかし、今は絞った対応なわけですね。当初は、中国だけでも日に五十五便が来るんだ、要するにアジアからのことを念頭に置いていましたので、三空港に集約するんだということを言っていたわけですが、今回はもともと三空港しかアメリカとメキシコ便がないのだということで、当初の予定よりは便の数が若干少ないということがあるわけです。

 ですが、先ほど来お話があるように、質問票をすべての海外からの入国者に送るということもあるのですから、集中するだけでは今度は対応できなくなるということになると思います。当然、そういう点での増員体制というのは本格的に取り組む必要があると思いますが、いかがでしょうか。

○石塚政府参考人 今後、現在対応しておりますメキシコ、アメリカ本土、カナダ以外に、どれだけの国に広がりを見せるかということは今後のWHOの判断にゆだねられるところでございますが、仮に今後、対象国が広がっていくという場合には、先ほども大臣が答弁いたしましたように、これは厚生労働省だけでなく、ほかの機関にも応援をお願いするということも考えなくてはならない。そういったことも踏まえまして、私どもも、今後とも検疫体制の強化あるいは充実というものに対して取り組んでまいりたいと考えております。

○高橋委員 一足飛びにはいきませんが、まず、全体の底上げということは何としても必要なのだろうということで、これは大臣にも強く要望しておきたいと思います。

 次に移ります。

 ほかの機関からの応援ということで一定時間はやりますね、そしてそのうち、水際対策よりも国内対策に漸次移っていくということで、水際対策の人が少しずつもとに戻っていって、かつ国内対策ということになるわけですけれども、そこの間にすき間があってはならないということになって、国内の対応も余裕を持って体制が整う必要があるのだろうということをまず指摘していきたいと思うんです。

 そこで、国内に残念ながら侵入をしたとき、検疫の段階ではわからなかったけれども、その後発症するということをまず検討せざるを得ないわけですけれども、できるだけ感染を広げないための時間を稼ぐ必要がある、そしてそのことを、今まだできていないワクチンの問題ですとか、そうしたことにつなげていく必要があるわけです。

 そこで、資料の一にあるように、四月二十八日に、厚労省は、健康局長名で各都道府県知事などに「新型インフルエンザに係る対応について」という通知を発出いたしています。

 五項目あって、四番目に「積極的疫学調査の体制強化」、これも難しいが、非常に大事なことだと思います。五番目に「発熱相談センターの設置及び医療体制の確認」ということが述べられております。これですけれども、二十八日に通知をしたけれども、こうした事態が起こったときに、どこに設置をするのかということはもともと決めておく必要があったと思います。どのくらいの地方自治体で発熱センターの設置場所の特定、あるいは訓練などをやっているでしょうか。

○上田政府参考人 今般の事態に対応しまして、速やかに地方に体制をとらすべく、とりあえず四月二十八日に通知を発出したところでございます。

 各都道府県における発熱外来につきましては、四月二十九日時点で、対応済みの都道府県が三十一カ所、今対応中というところが十六カ所であると承知をしております。

 また、発熱相談センターにつきましては、四月二十九日時点で全都道府県に既に設置をされたと認識をしております。

 このように、各都道府県におきましては早急に医療体制の整備を今行っているところでございますが、引き続き、このような都道府県の医療体制整備の状況把握と、必要に応じた支援を行ってまいる考えでございます。

○高橋委員 発熱相談センターは、看板を上げるだけではうまくいかないということがあると思うんですね、医師、資材、スタッフなどさまざま必要である。

 それで、少しイメージができるものとして、資料の二を見ていただきたいんですけれども、多摩立川保健所が発熱センター運営のための手引きというもので図を示しています。

 これは一人の医師が診察する場合ということで、初期の段階なわけですけれども、要するに、入り口と出口を分けて動線を単純にするということ、医療従事者を介して感染を広げないということが言われていると思います。ですから、呼ばれた人、待っている人たちが二メートル間隔で待機をするということが図によって示されていたり、症状がない人が帰宅をして、その後の診察と一切分けるなどという様子が描かれているわけです。

 さらに、その次をめくっていただきますと、一体どのくらい必要なのかということを書いているわけですね。例えば立川市の場合は、人口十七万一千三百二十五人なので九カ所必要である。昭島の場合は、十一万三百六十八人なので六カ所必要である。こうしたことが細かくされて、また体制についても、資料の四枚目ですけれども、八時間連続勤務というのは非常に無理である、ですから、待機や勤務をきちっとローテーションを組んでやっていく。そうすると、市の職員が十三人必要だし、医師は二人、看護師六人、こういうことも明確にされているわけですね。

 実際、このような相談センターについて、これは東京都の中の取り組みですけれども、国としてはどれほど基準を示しているのか、また、そのための国による財政補助がどうなっているのか伺います。

○上田政府参考人 財政補助について御説明を申し上げます。

 平成十九年度補正予算、平成二十年度補正予算により、新型インフルエンザ発生時に感染者の入院医療を担当する医療機関に対しまして、人工呼吸器及び個人防護具の整備に対する補助を行いました。

 十九年度補正予算では、PPEの整備に約六億円、これは十二・六万セット、それから二十年度補正予算では、個人防護具、約十億円で五十九万セット、それから人工呼吸器については十九億円で、二次医療圏、これは大体保健所の範囲でございますけれども、二次医療圏につき五台、このような補助を行ったところでございます。

 また、本年二月に策定いたしました医療体制ガイドラインにおきましては、既存の医療機関に専用外来を設置する形態が望ましいが、地域の特性に応じて柔軟に対応すること、新型インフルエンザ以外の疾患の患者と接触しないよう、入り口等を分けるなど院内感染対策に十分配慮すること、感染対策が困難な場合には施設外における発熱外来設営などを検討すること、また、実際の運用を確認するため、事前に訓練などを重ねておくことが望ましいこと、このようなことについて、設置に当たって必要になる事項を示したところでございます。

○高橋委員 今のお答えでは、一つは、一般医療機関に対しても院内感染を防ぐための専用外来を設けろというふうなことをおっしゃいましたけれども、今の段階では、実際には指定医療機関に防護服などの補助をしている段階であるというのが一つだと思います。それから、発熱相談センターについては、外にということが当初から言われていたわけですけれども、そういうことも検討せよというだけであって、今私が紹介したような詳細な基準については実は何も決まっていないということでよろしいですか。

○上田政府参考人 これは、大都市であるか過疎地であるか、人口の密集度、あるいは医療機関の配置等々ございますので、私どもとしては、一律にこうすべきというよりは、地域の特性に応じて柔軟に対応してほしい、このようにお願いしているところでございますが、個別に御相談があれば、その点についてはできるだけ支援をしていきたいと考えているところでございます。

○高橋委員 確かに、地域によって、人口密集地とそうじゃないところの違いくらいは当然あると思います。しかし、個別に相談があればということを今言っているのはいかがか。一年前に、地方に対して明確な基準がないじゃないかということを私指摘しましたけれども、しかし、やはりこの段階でそのようなことを言っているのはいかがなものか。もう少し明確な国の姿勢を示すべきだと思いますが、これは大臣に一言お願いいたします。

○舛添国務大臣 そういう基準を明確にするというのも一つの対策だと思いますので、そのことも含めて検討したいと思います。

○高橋委員 次に、入院の問題ですけれども、感染症指定医療機関はまだまだ足りず、また、地方では身近にないわけです。このガイドラインの中でも、一般的な地方の病院でも、例えば一病棟丸ごとそこに充てるなどということで対応することができるように書いているわけですけれども、そういう条件が現実にあるのか、あるいは準備状況を何らか把握されているのか伺います。

○上田政府参考人 今、準備状況については順次調査を進めているところでございますが、政府で策定している新型インフルエンザ対策ガイドライン等におきまして、国民一般に対し、新型インフルエンザの罹患が疑われる症状の方は発熱外来以外の医療機関には直接受診せずに、保健所等に設置される発熱相談センターに電話等でまず問い合わせをしていただき、その指示に従って、指定された医療機関で受診していただくこととしているところでございます。

 また、新型インフルエンザに関する感染防止方法について取りまとめ、周知していくことにより、感染症指定医療機関以外の医療機関においても適切な感染防止策がとれるよう、これから取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

○高橋委員 もともと、病床の削減ですとか財政難ということが言われておりますので、これも非常に急がれる問題だと思います。

 その話をする前にもう一つ伺いたいんですが、残念ながら措置入院となった場合、公費負担となります。しかし、今回の新型インフルエンザであるということを特定される前に感染が疑われる場合、任意の入院をお願いすることになりますけれども、その際は自己負担であるということを聞きました。

 私は、短期間の勝負であり、負担がネックになって蔓延を防ぐことができないということはやはりあってはならないと思いますので、これは一切公費負担ということで検討されたらいかがかと思いますが、どうでしょうか。

○上田政府参考人 新型インフルエンザの患者さんあるいはその疑似症患者さんとなった場合には、これは法的な措置として入院をしていただくことになるため、公費負担の対象となるわけでございます。

 任意ということであれば、これは当然ながら、任意で新型インフルエンザの患者さんということはないわけでございますので、そういう点では、任意の方については公費負担はあり得ないんですが、そういうことで、インフルエンザの疑似症の患者さんであっても、そのように診断された方については患者とみなして入院措置の対象となるため、公費負担の対象となるわけでございます。

○高橋委員 ちょっと今の答えは、任意であるというのは、何も好きこのんで私インフルエンザかしらと思って入院するわけじゃないわけですよ。結果が出るまでわからないから入院してくださいということをお願いするわけでしょう。でも、結果が出ていないから措置はできない。そういう言ってみれば国の都合で、本人が外に出ない方がいいよということでやるわけですから、準措置なわけですよ。これはあいまいにしてはいけませんよ。

○上田政府参考人 医師が、疑いがあり、疑似症の患者と判断した時点で公費負担の対象となります。

○高橋委員 では、そこは徹底して、疑いがあるところも含めて公費負担であるということを確認させていただきたいと思います。私が説明を受けた時点では、要するに確定診断がされてからというふうに受けていますので、そこは整理をしたいと思います。

 時間が来てしまいましたので、例えば、仙台市の日赤病院が来年三月末で結核病棟を閉鎖するという方針を決め、ことしの九月末で新患の受付を終了するということが言われています。不採算が原因ということを言われていますが、もともと結核は不採算であるわけです。それで、病床のことを言ったときに、必ず、結核病床も含めて感染症対応病床を充実させるのだ、そこで対応するのだということを言っておきながら、国がこうした大事なところをどんどん減らしていっているというのが現状である。やはりここを、国がまず責任を持って閉鎖を見直すべきだということを指摘して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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