国会質問

質問日:2009年 5月 11日 第171国会 予算委員会

新型インフルエンザ対策

新型インフル、体制抜本強化求める

 日本共産党の高橋ちづ子議員は十一日、衆院予算委員会で新型インフルエンザ対策に関し、空港などの「水際」での検疫体制とともに国内対策として保健所体制の抜本的強化を求めました。

 高橋氏は、各地の保健所は、今回の新型インフルエンザ発生を受け、感染の可能性がある人への追跡調査(疫学調査)や発熱相談などに「フル回転」していると指摘。公衆衛生部門と保健福祉部門の統合などで職員が九百六十九人(二〇〇五―〇七年の三年間)減らされる一方、「やるべき業務はどんどんふえている」と強調し、保健所の「体制を抜本的に強化すべきだ」と迫りました。

 舛添要一厚生労働相は、保健所での人員確保については、地方交付税措置で地方の対応を求めるとともに、国としても「必要な危機管理拠点としての機能を維持していきたい」と表明しました。

 高橋氏は、国内で発生した場合には「前線は地方自治体になる」とし、政府の財政支援を要求。また、国も地方も必要な人員を確保するよう求めました。

 鳩山邦夫総務相は、検疫官の定員について「増やしていく必要があるとの認識で定員管理を行う」と答弁。地方への追加財政支援を行う意向を表明しました。

 高橋氏は、国内対応では、特定感染症指定医療機関の約七割を占める公的医療機関と自治体病院の役割の重要性を指摘。結核病棟の廃止・統合を進める政府に対し、「むしろ見直し、今こそ必要な整備をすべきだ」と力説しました。

 舛添厚労相は、「ご指摘の点も含め、不採算であっても必要な医療機関に対する支援を総務相とも協力しながら行う。地域医療の確保に全力を尽くしたい」と述べました。

社会保障費2200億円削減の撤回要求

 日本共産党の高橋ちづ子議員は十一日、衆院予算委員会での質問で「(二〇〇九年度補正予算案で)十五兆円も出てくるなら、いままでの削減はなんだったのか」と述べ、社会保障費の自然増分を毎年二千二百億円削減する路線を撤回し、これまでの削減分を元に戻すよう求めました。

 〇二年度から始まった削減路線のもと、社会保障費は一兆六千二百億円も削り込まれました(〇八年度)。診療報酬や介護報酬が相次いで引き下げられ、生活保護の母子加算と老齢加算も廃止されました。

 高橋氏は、たび重なる診療報酬の引き下げで現場では医師不足の悲鳴が上がり、新型インフルエンザ対策も成り立たないのが実態だと指摘。医師不足の大きな要因の一つが社会保障費削減にあることを認めるよう求めました。

 舛添要一厚生労働相は、「同じような問題意識をもっている」と述べました。

 高橋氏は、「(減らしてきた一兆六千二百億円は)今回の補正予算案の十分の一だ」と指摘。元に戻す方が「たった一回きり、三年限りの中身(の補正予算)より、ずっと国民を喜ばせ、景気対策につながる」と主張しました。

 与謝野馨財務相は「歳出改革の基本的方向性を維持しつつ、メリハリのある予算配分を行う」と述べ、二千二百億円削減の撤回を拒んだものの、与党からも強い要望があると認めました。

 高橋氏は、これまでの政策の失敗が噴き出していると批判。社会保障抑制政策を大本から転換するよう求めました。

(2009年5月12日(火)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 九日、国内で初めての新型インフルエンザ感染が確認をされました。けさまでの集計で、世界三十カ国、四千四百人を超える感染者、五十三名が死亡に至るという、急速な広がりを示しております。

 この間、ずっと二十四時間体制で対応されてきた関係省庁、また検疫所を初めとする関係者の皆さんの御苦労には、まず心から敬意を表したいと思います。

 同時に、今回、検疫で発見できたことは奇跡的とも言えるタイミングでした。水際対策の限界も指摘され、今後は国内体制の充実と長期化を見据えた対応が求められると思います。

 これまで政府は、新型インフルエンザウイルスは、鳥インフルエンザウイルスが鳥や人への感染を繰り返すうちに変異をして出現すると想定されていました。高病原性鳥インフルエンザは、鳥から人への感染が世界で既に三百三十三人、二百四名が亡くなっております。致死率も非常に高いです。この鳥インフルエンザが、人から人に感染する新型インフルエンザウイルスに変異する可能性が最も高いと想定され、国民の四人に一人が感染する、最大六十四万人が亡くなる、こうしたシナリオのもとに、新型インフルエンザ対策ガイドラインや行動計画もつくられてきました。

 今回は、豚由来のH1N1であり、弱毒らしいということ、一方、豚由来は、重症度は低いけれども感染力が非常に強いということも言われています。今、何がわかり、何がわかっていないのか。

 また、毒性の強い新型インフルエンザ対策のガイドラインや行動計画を丸々実行する必要があるのか。例えば、どの程度から蔓延期と言うのか、学校は、企業は、集会は。大臣自身が、弾力的にという発言をされておりますけれども、その中身、仕切りについて、まず政府の立場を明確にお答えください。

○舛添国務大臣 今、高橋委員おっしゃったように、幸いなことにというか、高病原性ではなくて、いわゆる弱毒と言われている低病原性であるということでありますから、あれはH5N1を前提にした行動計画でした。ですから、今、このウイルスの特性についてさまざまな研究が世界じゅうから寄せられていますので、これを見ながら具体的にどうするか考えます。というのは、例えば臨時休校、これをやるのかやらないのか、それから企業の経済活動の自粛もそうです。

 今喫緊の課題は、成田で今四名ほど出ていますけれども、濃厚接触者、そのそばの座席にいた方々、これは十日間の停留というのをやっていますけれども、今専門家の皆さん方に診察をし検討していただいて、先ほど申し上げましたように、九日でも八日でも、一日でも短くした方がいいわけですから、そういうことも含めてやりたいと思いますので、ウイルスの属性を見ながら、世界じゅうの研究成果を入れながら、柔軟かつ弾力的に、しかしながら、やはり国民の命と健康を守る、この原点を忘れずに対応してまいりたいと思っております。

○高橋委員 その点については明確に示していただきたいと思うんですね。

 私が非常に印象に残っているのは、一番最初に感染が疑われた横浜の高校生が実は新型ではなかったということがわかったときに、テレビで、校長先生が会見で一筋の涙を流しましたよね。まさに、極限まで追い詰められていたのではないか。つまり、最初の一人にはなりたくないという思い、自分のところから出したくないという思い、日々絶えず報道がされてきますから、恐ろしさと責められる思いと、そういう中で極限まで行ってあの涙になったのではないのかな、こう思うんです。

 ですから、非常に過剰になって、国民が逆に萎縮して、ぐあいが悪いということを届け出しにくい状況がつくられたり、既に散見されている、医療機関が診療を拒否する、これは一番まずいパターンなわけですね。まずは、きちんと治療すれば治るんだ、日々の予防が効果のあることをしっかり国民に周知することが大事だと思うんです。それをまずやっていただきたい。

 また同時に、医療機関の診療拒否の問題で、大臣は、医師法違反であるということをコメントされました。それはもう十分わかっていると思うんですよ、当事者は。だけれども、万一の、例えば持病のある患者さんにまじって、うつってしまったらどうしよう、自分たちのところで責任をとれない、そういういろいろな思いがあることはやはりわかる気がするわけですよ。

 昨年の一月の読売新聞の調査で、新型インフルエンザが大流行した場合、医療従事者の二六%、特に看護師の三一%が転職を考えると答えています。そうなったら本当に困ってしまうわけですよ。絶対そんなことがあってはならない。いずれは、一般の病院、医療従事者にも当然協力をお願いしなければならなくなるはずなんです。

 そういうことを考えれば、行政として、医療従事者の安全確保は十分留意する、その上で協力してもらいたい、そういう真摯な立場というんですか、それが非常に求められていると思うんですが、いかがですか。

○舛添国務大臣 いつも思うんですけれども、メディアの方も、私がAからZまで言ったら、全部とってほしいんですね。

 要するに、海外渡航も何にもない、そういう方がちょっと熱があると言ったのは拒否しちゃいけませんよ、拒否しないでくださいよと。応招義務があるわけです。だけれども、メキシコから帰ってきたよ、そういうような方が来たら拒否していいですよ、発熱センターに行きなさいと言いなさいと。そこまでちゃんと言って、見ている人はわかっているのに、見ていない人は、新聞がいいかげんに、舛添大臣、医師法違反と言った、そこだけ見て、わけのわからぬコメンテーターがワイドショーでぎゃあぎゃあ文句を言っている。

 こういう危機管理体制はよくないと思いますよ。高橋さんが時間をくれたら、今から三時間でも五時間でも、いかにひどい状況かを説明したいぐらいです。

 そして、私が申し上げたことと全く同じことを日本医師会が、お医者さんからお医者さんに、そうしなさいということを言っているわけですから、ぜひ、正しいというか、中途半端じゃなくて、私が言ったことを正確にメディアの方もお伝えいただければ幸いに存じます。

○高橋委員 私も、いっぱい時間をもらえれば幾らでもやりたいと思っております。

 ぜひ、医師法の周知だけではなく、本当に医療機関の思いに沿った対応を、メディアだけではなく、直接通知するということもできますので、対応を求めたいと思います。

 そこで、麻生首相も、国内発生を受けて検疫体制の強化について発言をされております。本当ならば、連休を乗り切り、やっと一息つける、そう思いたかった。でも、そもそも三空港で通常百五十三人のところを、最大三百七十八人までふやした体制が一気に戻っちゃったわけですね。そういう中で、やはり忙しい。そこに今回の発生であり、これでは現場がもちません。

 現在、全国の検疫所は、出張所まで含めますと、港湾が八十一、空港が二十七カ所、計百八カ所あります。アジアと直結する地方空港や港湾の対応も重要です。今後は、三百五十八名の検疫官をどう充実させ、対応していくのか、また、無人の検疫所が全国に何カ所あり、その対応はどのように行うのか、あわせてお答えください。

○舛添国務大臣 本当に不眠不休で頑張ってくれている検疫官の皆さんに感謝申し上げたいと思いますし、また、自衛隊初め支援していただいている方にも感謝をしたいと思います。

 八十七名の検疫官のところを、五月六日の五万六千人帰ってきた日には二百名程度でやりました。ただ、無人のところというのはどういうところかというと、チャーター便しか来ていないようなところにずっと一人張りつけておくわけにいきません。定期便がいるところには必ず検疫官がいますけれども、チャーター便が来るような地方の空港にはおりません。ですから、今後さらに蔓延したときにどうするかということで、一応、基本的な方針は、成田、関空、中部、福岡に限定するとか、港も特定の港に限定するとありますけれども、ただ、これについても具体的にどうするか。

 つまり、検疫も、水際もしっかりやりたい。国内体制もしっかりやりたい。しかし、お医者さんの数や検疫官の数が限られているときに、上手な資源配分を考えないといけないので、私は、少しずつ国内体制強化の方に移っていく必要があるのかなというように感じていますので、それは、各省庁、そして総理とも御相談しながら、一番いい方法での資源配分を考えてみたいと思っております。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

○高橋委員 効率的なやり方と同時に、体制の強化というのをあわせてうまく、あんばいよくやっていただきたいと思うんです。

 例えば、〇七年の十一月に千葉県で行った新型インフルエンザ対策総合訓練、ここでは成田検疫所の実動訓練も行われております。検疫所の訓練参加者十八名に後でアンケートをとったところ、検疫の応援業務に連続何日対応が適当ですかという問いに対して、一カ月という方も二人だけいらっしゃったんですけれども、二日から三日が三人、五日から七日が七人で一番多く、それが最大限度ですよということだと思うんです。非常に緊張し、負担の多い業務であるという意味だと思うんですね。十分これは配慮をお願いしたいと思うんです。

 そこで、一つ伺いたいのは、検疫所と航空会社との連携の問題です。ガイドラインでは、機内でせきなどの症状があった場合、検疫法に基づいて、到着前に機長から連絡を受けて、機内検疫のスタンバイをしておくということが想定されていたと思います。これまでそういう事前通報があったのか、そして、そうしたことがうまくできていけば、機内検疫ももう少しスムーズにいくのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○石塚政府参考人 今お尋ねの件につきましては、いわゆる無線検疫ということで、客室乗務員等が、乗客の中に何か疾病あるいはぐあいの悪いといったような状況をお持ちかどうかということを事前に検疫所の方にお知らせいただくという制度でございますが、今回のインフルエンザのように、熱があるかどうかということを測定することもできませんし、または、軽いせき等であれば、とりたてて無線検疫の対象となるという慣行はございません。

 したがいまして、今回、特に機内検疫をやるということが前提となっております場合には、航空会社にどういう御協力をいただくかということにつきましては、これは国交省の方とも十分連携をとりまして、例えば健康質問紙ですね、これを事前に飛行機に積み込んで、記載をしていただいております。ここには、国内に戻ってきたときの自宅の連絡先であるとか、あるいは、旅行者であればどのホテルに泊まるとかといった情報を書き込んでいただいておりますが、これを、後になって健康観察を行うときに、そこにもし記載漏れがあったりしますと、後で保健所等から追跡していただくときに大変支障を来しますので、必ずそういうことを書き込んでいただけるように、そういう指導をしていただくということを航空会社にはお願いをしているところでございます。

 したがいまして、無線検疫で具体的に事前に通報があったかどうかということにつきましては、現在、この件については特段のものはなかったということでございます。

○高橋委員 疑いがあった方たちが実はたくさんいて、そのほとんどがA香港型であったということがあったわけですよね。そうすれば、機内で症状があったりもしたのではないかと率直に思うわけです。今回の方たちだって、乗る前から本当は熱があったということがありますよね。

 正確に、サーモグラフィーとか機材をそろえていなくても、本来なら検疫法でもともとそういうことが義務づけられているわけですから、そういう連携がきちんとできていれば、もう少し、今みたいなどかどかと防護服を着てびっくりさせるということもなく、そして、今後の体制ももう少しスムーズにいくのではないか。一考をお願いしたいと思いますが、舛添大臣、いかがですか。

○舛添国務大臣 そのことを含めて、例えば調査票も機内で最初に書いてもらうとか、いろいろあるんですけれども、これも、実効性、効果というのはさまざまな問題があるので、今高橋委員がおっしゃったようなことも配慮に入れながら、さらにいい方法を考えてみたいと思っています。

○高橋委員 次に、国土交通省に伺いたい。

 この点について、航空会社との連携、相談などをどのようにやってきたのでしょうか。

 航空会社の乗務員は、例えば感染の疑いのある今回のような乗客が出た場合、サービス担当だった乗務員は濃厚接触者として停留などの扱いを受けることになります。しかし、そうじゃない場合、現在、保健所が、一般の乗客でも対象国から帰ってきたときは十日間の追跡調査を行うことになっています。でも、いろいろな国を飛び回っている客室乗務員の健康管理、追跡調査にだれが責任を持つのかということなんです。

 例えば、日航の乗務員などは、メキシコの便を今停止している中国などでは、これまで、途中でメキシコを経由してきたという、それがあっただけで七日間とめ置かれたとか、三十七度の熱があっただけで病院に強制搬送されたとか、国によってやはりいろいろな検疫があって、そのたびに対応が違うけれども受けざるを得ないということになるわけですね。

 そうすると、私、ぜひ国土交通省に言いたいのは、やはり、もともと客室乗務員というのは、ふだんでも乗客の安全を守る保安要員としての役割が位置づけられていると思うんですね。その上で、乗客全体の様子にも配慮しつつ、かつ、場合によっては検疫の仕組みによって長くとめ置かれる、あるいは濃厚接触者と言われるということでは、大変な労働強化になるであろうということを思うんです。

 そういう航空会社のいろいろな事情をよく聞いて、そして、体制、例えば必要な便の、何というんですか、増員なども配慮することも含めて、航空会社にちゃんと協力をお願いするということが必要だと思いますが、どのようにお考えでしょうか。

○金子国務大臣 御指摘のように、航空会社が、ある意味、可能性のある乗客に一番接する、狭い場所で接する客室乗務員でありますから、その健康管理については非常に厳しく、あるいは責任を持って取り組んでいただくということ、これは乗客のみならず、客室乗務員について安全にきちんと配慮するように、国土交通省として航空会社には御依頼をしております。

 客室乗務員についても、手洗い、うがいの励行ですとか、あるいは、こういう予防マスク着用。これは、初めのうち全員マスク着用というのをさせていなかったようでありますけれども、やはり非常に危険性も、伝播力も高まっているということで、メキシコ便のみならず、アメリカ、カナダ便についてもマスク着用、それから手袋も着用してもらうようになったところであります。

 それから、疑いがあるというようなことで、停留ということでホテルで一時待機してもらうというようなとき、これはやはり、勤務の一環でありますので当然でありますけれども、通常の有給休暇とは別に会社の業務としてきちんと休暇という対応をとれるような、それぞれの措置を今講じてもらっているところであります。

○高橋委員 ありがとうございます。

 航空会社にもいろいろありまして、外国の会社などもいますし、派遣で、派遣切りに遭って、本当に、日本語の通訳ができる乗務員が自分たちだけなのに派遣切りをして、外国人の乗務員で不安な体制をとっているですとか、さまざまなことが今あるわけですね。そういうことにしっかり着目してもらいたいという意味で、あえてきょうは指摘をさせていただきましたので、今後の体制についてしっかりとお願いをしたいと思います。

 さて、次に、国内対策の問題をお話ししたいと思うんです。

 まず、簡潔にお答えいただきたいと思うんですが、季節型のインフルエンザと同じ程度の症状だからという楽観的な観測もある一方で、流行時期が重なればタミフルなどの抗ウイルス薬が間に合わなくなるのではないか、こういう指摘もあるわけです。とはいえ、季節型インフルエンザでも毎年一千万人が罹患し、死亡者も一万人を優に超えているということで、決して軽視すべきではないと思います。

 ここ数年のいわゆる季節型の流行状況、罹患者数、死亡者数について伺いたい。その上で、日ごろのインフルエンザ対策の経験の積み重ねが大事だと思いますが、見解を伺いたいと思います。

○舛添国務大臣 今おっしゃったように、普通のインフルエンザに毎年一千万人ぐらいの人がかかる。十九年度ですと、直接インフルエンザで亡くなったというのは六百九十六人。ただ、ほかの病気とか、体が弱っていて、間接的ながらインフルエンザを死因とする方も数えようによっては一万人を超えるということでありますので、一つは、ワクチンを、今度の新型ワクチンと、やがて来るであろう、冬になればはやる季節性のワクチンをどれぐらいの配合比率でつくるかということが問題であります。

 ただ、基本的に、今回の新型ワクチンは、手洗いの励行とか、うがいの励行、人込みを避ける、マスクをきちんとする、それから体を休めて抵抗力をつけておく、こういうことは全く変わらないと思いますので、その二本立てというか、両方に対して有効な対策、そしてタミフルやリレンザについても十分な備蓄を行っていきたいと思っております。

○高橋委員 決して軽視をすべきではないし、また、この積み重ねを生かしていくべきであると思うんですね。

 そこで、資料の一枚目を見ていただきたいと思うんですけれども、「各都道府県における定期予防接種の費用について」ということで、これは二類疾病と書いている方がいわゆるインフルエンザの予防接種であります。全額公費負担をしているのは、全国で七十五自治体でしかありません。

 やはり、国の補助を復活してほしいという要望が非常に強い、自治体努力をしているけれども、個人負担をお願いしているという中で、非常に要望が多いわけです。この点をどう見るかということと、新型インフルエンザワクチン、今製造に着手したわけですけれども、当然自己負担なしになると思いますけれども、確認をしたい。

○舛添国務大臣 今委員が表でお示しくださったように、インフルエンザの予防接種というのは、これは二類の疾病としておりますので、基本的に自治体が接種対象者から実費を徴収できるとされております。その中で、この表にありますように、費用の一部を負担している自治体が九四%、全額自治体が負担しているところが四%です。

 新型インフルエンザについてどうするか、これは、安全性、有効性を検証して、コストなんかも検証した上で、費用負担をどうするかはまだ検討しておりません、今後検討して決めたいと思っております。

○高橋委員 鳥インフルエンザ関係では既に検討を始めていたと思いますが、それと連動するのではありませんか。

○舛添国務大臣 鳥インフルエンザ、つまりH5N1のときにどうするか、これは高病原性ですから、それと今回のいわゆる低病原性の場合はまた違いますし、それから実際にワクチンの製造にかかったときのコスト、先ほど私申し上げたように、何対何の比率で季節ワクチンと配合するかということがありますので、そういうことをすべて勘案して検討したいと思っております。

○高橋委員 現在の検討状況が、公費負担ということで検討されているようだということを伺っていましたので、当然そういう答弁が来るのかなと思っていましたが、弱毒だからということなのかもしれません。しかし、当然、弱毒だと叫んでいる専門家の方たちも、決して警戒は解いていないわけですね。それは、スペイン風邪のように第二波があるかもしれない。そうした中でありますので、ぜひこの点は、自己負担なしということで検討されていただきたいと思います。

 それで、保健所の問題なんですね。発熱したとき、医療機関に行く前に、電話相談をして指示を仰ぐことをまず徹底すべきなんですけれども、今は相談、調整そして疫学調査など、保健所のフル回転がこの間注目をされています。

 資料の二を見ていただきたいんですけれども、保健所の数が設置主体別で下の方に書いてありますが、〇五年から〇八年までの間に、五百四十九から五百十七と、三十二カ所も減ってしまいました。職員はその上ですが、〇五年から〇七年のたった三年間で九百六十九人、医師は九十三人も減っております。

 この間、公衆衛生部門と保健福祉部門の統合などスリム化が進む一方、国の法律改正などに対応して、保健所のやるべき業務はどんどんふえてきたはずではなかったでしょうか。この際、体制を抜本的に強化すべきと思いますが、いかがでしょうか。

○舛添国務大臣 まず、各地の保健所の職員の皆さんが今一生懸命頑張ってくださって、例えば航空機に乗っていた乗客のフォロー、これは本当に、十日間毎日のように電話してくださる、大変ありがたいことだと思いまして、この場をかりて感謝をいたしたいと思います。

 そういう中で、集約化、効率化ということで、今、保健所は数が減っております。ただ、基本的には、危機管理の拠点としての保健所の機能は維持ができているというふうに思っております。

 それで、都道府県に対しまして、今、医師、歯科医師、薬剤師、その他保健師初め、その人員の確保、これは地方交付税によって措置をされていますので、その措置の方をしっかりやっていただきたいということを申し上げておりますし、我々も国において、国立保健医療科学院において、所長の研修をやる、そして保健所の職員の資質の向上のためにいろいろなセミナーをやるというようなことをやっておりますので、全力を挙げてこの資質の確保、必要な危機管理拠点としての機能を維持してまいりたいと思っております。

○高橋委員 きょうはぜひ総務大臣に伺いたいんですけれども、検疫官はこの間若干増員をいたしました。しかし、輸入食品の対応も必要に迫られたという事情もありますので、今の検疫がそんなにふえたわけではありません。また、今、保健所のお話もいたしました。

 国も地方も、人が足りないというと、総定員法の縛りがあるとか、臨時、非常勤で対応するということがこの間ずっとやられてきました。しかし、本当に必要なところ、国民の安全、安心を守る大事な分野には思い切って人をつけることが今必要だと思うんですが、削減ありきではなく、必要な人はふやすんだということをお答えいただきたいんですが。

○鳩山国務大臣 国も地方も行政改革というのはずっと進めてきておりまして、五年間で五・七%減らすんだ、これは数字的には国も地方も同じでございまして、地方の方がより進んでおります。そういう行政改革というのは当然スクラップ・アンド・ビルドでなければいけないわけで、不要なところから削減をして必要なところにはつけていく、こういうことだろうと思っております。

 ですから、いわゆる安全、安心の部門、つまり、検疫所あるいは入国管理、刑務所、消費者行政などは行政需要が増大してくるのがわかっておりますので、国の定員管理でもめり張りのある定員配置をしてきたわけでございます。

 したがって、新しいインフルエンザが発生をする可能性というのを予期しておりまして、二十一年度の査定においても、新型インフルエンザ対策関係として、検疫所に二十三人増員をして、定員が八百六十四人になったわけでございます。それは、おっしゃるように、職員の方の問題もあります。そして、舛添厚生労働大臣の方で、さらに検疫所については省内の振りかえで十二人振りかえておりますから、したがって、検疫所全体では平成二十一年度は三十五人ふえているわけでございますので、これからもそういう部門はふやしていく必要があるという認識のもとで定員管理を行ってまいります。

○高橋委員 ぜひふやしていただきたい。

 ただ、ここがふえたよと思ったら、どこかに物すごいひずみが来ているということではまずいんですね。この間はやはり削減ありきという数値目標があったわけですから、めり張りだけで済むかということがございますので、ここはしっかりと要望しておきたいと思います。

 もう一点、総務大臣に伺いたいんですが、私は、国内発生が起きているという以上、前線はやはり地方自治体になると思います。各県の行動計画も急速に整備をされまして、補正予算などで資機材の補助などもされてまいりました。

 私、地元が青森県ですけれども、四月二十五日の発表以来、二十四時間体制で対応しております。相談センターが七カ所、発熱外来は三十カ所の指定病院と協力病院に設置が決まった。しかし、夜間の相談体制をすべてとる必要があるだろうかということで悩んでいるわけですね。どこまで頑張るかということもあります。

 また、今後起こり得る特別の体制あるいは特別の支出に対して、やはり総務省としても財政的に支援していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○鳩山国務大臣 新型インフルエンザに関しても、地方自治体の役割は、まさに最前線として一番重要でございます。

 前に舛添厚労大臣から、中央と地方の連絡が本当にうまくいっているのか、地方に徹底しているんだろうかという御指摘をいただいたこともありますし、きょうも政府・与党の連絡会議がございまして、同様に、地方によって対応が違っていたりしはしないかというようなことがございますので、国と地方の連絡というのを一層密にしていかなければならないだろう、こう思っております。

 先ほどの人員の問題と同じように、やはり新型インフルエンザというものが予測されておりましたから、例えばタミフルとかリレンザという薬については、十八年、十九年に百二十億円ずつ、それから、二十一、二十二、二十三年、この三年間は百三十億円ずつということで交付税措置をしてまいったわけでございます。

 そういう形では物事は進めてきたわけでございますが、これからいろいろな、不測の事態が起きないことを望みますが、地方の負担が大きくふえるような場合は、当然、特別交付税で措置をするとか、地方財政計画でも、いわゆる予備費に当たるようなお金が五千七百億ほど計上されております。追加財政需要額という名前で五千七百億円予備費的に積んでありますから、そういうお金も使っていかなければならない。あるいは、今度の補正予算に計上されておりますいわゆる一兆円、経済危機対策の一兆円も、これも自治体によっては使うことは十分可能と思っております。

○高橋委員 しっかりと手当てをお願いしたいと思います。

 そこで、さっき、例えば三十病院とお話ししたんですけれども、そのうち、民間の病院は二つしかないんですね。いざというとき、やはり自治体病院に頼らざるを得ないなということが当局の声でありました。

 ちょっと時間がないので二つを一つにまとめて伺いますけれども、今、特定感染症医療機関というのは国内で三病院、今の成田などを合わせて八床しかないわけです。もちろん、わっと発生しちゃえばもうそんなものは言っていられなくなりますけれども、やはりまだ指定病床でしっかりと食いとめたいという思いが当然あると思うんですね。

 今、それがどの程度手のひらに乗っているのか、指定医療機関と協力機関です。そのうち公立病院というのはどのくらいの割合なのか、舛添大臣に伺います。

○舛添国務大臣 この三月末現在で、感染症指定医療機関というのは五百九十あります。そのうち、国立が八十一、公立が二百七十七、日赤、厚生連など公的な医療機関が百三十二、私立が百でございます。

○高橋委員 割合で言ってくださると思ったんですが。しかし、断然公立の方が多いと。

 そこで、国立病院機構、日赤病院、労災、社会保険、厚生年金病院などの役割が非常に重要だと思うんですね。例えば、指定病床というときに、必ず、結核病床を持つ医療機関ということを非常に大事に言われます。約一万三千弱あるわけですけれども、ここに大きく頼らざるを得ない。また、結核自体がいまだに、人口十万人中二十人以上が発生する中蔓延国であります。

 そうした中で、例えば仙台の日赤病院は、結核病床は不採算だから来年三月でやめます、九月で新患受け付けをやめると言っています。この結核病床を維持するというのは、もともと不採算というのはわかっているわけですよね。財政措置も含めて、これ以上の結核病床の廃止、統合をむしろ見直し、今こそ必要な整備をするべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○舛添国務大臣 今御指摘の点も含めまして、不採算であっても、必要な医療、救急医療とか周産期医療もそうですけれども、二十一年度予算におきまして、こういう感染症指定機関、病院への支援、それから、救急医療に対して管制塔機能を備えた医療機関に対する支援、それから、医師を派遣したらそこは逸失利益が生じますから、そういう医療機関に対する支援ということをやっておりますので、これは総務大臣や都道府県ともまた協力しながら、地域の医療の確保に全力を尽くしたいと思っております。

○高橋委員 本当に、いざというときは頼りにせざるを得ないと思うんですね。だけれども、今は真っ先に撤退をしていくという状態になっているわけですから、ここを本当にしっかりと維持して、地域の医療を守っていただきたいということを重ねて訴えたいと思います。

 ここまで、新型インフルエンザ対策に関連して質問してきたんですけれども、やはりこの問題だけでも、今までの改革のツケがいろいろ噴き出しているんじゃないかな、こう思うんです。

 例えば、はっきり言って、医師不足で全国から悲鳴が上がっていて、もう今でさえ大変なんだと。こんなときに、インフルエンザ対策というのは今以上の対応、対策が求められる。本当に大変です。例えば、テレビでも紹介されていました。ある感染症指定病院で新型インフルエンザの訓練をしようにも、人手がなくて計画がどうやっても成り立たない、これをテレビで放映していました。

 財政がない、ないといって、毎年社会保障費を二千二百億円も削減し、そのたびに制度をいろいろ直してきたのは何だったんだろうと思うんですね。今十五兆円出てくるんだったら何とかなったんじゃないのかと思っちゃうわけですよ。

 資料の三番目に一覧表を出しました。〇二年から〇八年、社会保障費の削減の合計、一兆六千二百億円。医療費はそのうち九千億円なんですね。診療報酬がこの間四回も引き下げられてきた。医師不足の大きな要因の一つだと思いますが、率直に認めていただけますか。

○舛添国務大臣 診療報酬というのは、その時々の賃金や物価の動向を見ながら中医協において決められていくわけですけれども、私も、この医師不足を含めて、高橋委員と同じような問題意識を持っておりますので、二十年度については〇・四二%のプラスということで、八年ぶりにプラスに切りかえたところであります。今後ともです。

 それから、例えばハイリスク分娩加算というのを入れたんです。このことによって、産科の中でも非常に今その分野は赤字が黒字に変わってきていますので、やはり診療報酬というのを機動的に使うということは重要だと思っております。

 今後とも、めり張りのきいた形で、お医者さんの不足につながらないように全力を挙げてまいりたいと思っております。

○高橋委員 今、診療報酬をちょっとだけ上げた話をされましたけれども、ほんのちょっとですよね、全体の中では。しかし、それがやはり原因だということをお認めになるからそう言ったのかなということを指摘したいんです。

 ちょっと時間がなくなるから、もう一問聞けませんので、与謝野大臣にもきょうはどうしても伺いたいと思いまして、今の私がお話しした一兆六千二百億円、これをパネルにしてみたわけですけれども、言いたいことは、もう何度も言っていますけれども、この毎年二千二百億円減らすということをやめたらどうかと思うんです。

 この間減らしてきた一兆六千二百億円の制度をもとに戻したらいいのではないか。今回の補正の十分の一です。この厚生労働予算、四兆六千七百十八億円、今回の補正で。これから見ても、わずか三分の一にすぎません。

 しかし、中身が違うんですね。これは、今まで削られてきたのは、診療報酬や介護報酬の改定、あるいは年金です。あるいは、生活保護の老齢加算や母子加算などです。これらが復活すれば、恒常的になって喜んでもらえる。しかし、今回の補正の中身は、たった一回きり、あるいは三年限りのものです。

 先ほど大臣、がん検診で女性に喜ばれますよなんという話をしていましたが、二十歳、二十五歳、三十歳など区切りのいい年齢の人じゃなければがん検診を受けられませんので、そういうこともちゃんと言っておかなければいけないわけです。

 そういうことを考えたときに、こういう一年限り、三年程度の中身のものよりも、たとえその十分の一であっても、これまで削ってきた一兆六千二百億円をもとに戻す方がずっと国民を喜ばせ、景気対策につながるのではないか。いかがですか。

○与謝野国務大臣 社会保障については、今後の高齢化による急増への対応に加えまして、国民の安心強化に向けた機能強化が必要であります。したがいまして、社会保障費の抑制については、コスト縮減や給付の重点化等の効率化を進めるとともに、安定財源の確保を図ることが重要であると考えております。

 なお、骨太二〇〇六では、経済が大きく減速する場合には、財政健全化のペースを抑えるなど、柔軟性を持った対応を行うこととされており、現下の経済情勢を踏まえ、当面は、大胆な景気対策を講じ、景気回復を図る一方で、これまでの歳出改革の基本的方向性を維持しつつ、めり張りのある予算配分を行うこととしております。

○高橋委員 原稿から一回も目をお離しにならなかったので、大臣、もう少し気持ちの入った答弁をしていただきたいなと思うんですね。

 だって、十分の一なわけですから、これを十年間やってみて、その後、全体の景気がよくなってきて、必要なくなるかとか、そういうことを考えるということだってあっていいじゃないですか。

 このわずかだけれども本当に喜ばれる政策なんだということを、やはり今そのことが、本当に矛盾が突き出していると思うんですよ。介護報酬だって三%上げて、だけれども、それが全然労働者の賃金に行かないから、また今回補正で組むわけでしょう。だったら、基本を上げればよかったじゃないですか。

 手を挙げているので、一言。

○与謝野国務大臣 先生以上に、自民党の中で同じことを言う方が多くて、私は実は困っております。

○高橋委員 よろしくお願いします。

 終わります。

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