日本共産党の高橋ちづ子議員は8日の衆院厚生労働委員会で、肝炎患者の総合的な支援策を求めるとともに肝炎対策基本法制定を急ぐよう求めました。
高橋氏は、B型肝炎ウイルス感染をめぐる訴訟の最高裁判決(2006年)で、北海道の原告5人について集団予防接種の注射器の回し打ちが原因であることを認め、国の責任を明らかにしたことを示し、「予防接種による感染は元原告5人以外にもいることを認めるのか」とただしました。舛添要一厚労相は、「可能性は否定しない」と述べ、医療行為による感染の可能性を認めました。
高橋氏は、注射の回し打ちなあど医療行為による感染の可能性はC型肝炎患者にもあると指摘。「大部分が国の責任だとの認識に立ち、責任を明確にした根拠法を成立させ、医療費助成や検査の促進など総合的な対策を進めるべきだ」と強調しました。
高橋氏は、「患者には生活面での支援が必要だ」と述べ、政府が検討中の身体障害者福祉法による内部障害認定の進ちょく状況を質問。厚労省の木倉敬之障害保健福祉部長は、肝機能障害の認定は「一定のものは対象とすることは可能」だとし、夏には最終的結果を出す考えを示しました。
高橋氏が、「根拠法を作って支援に乗り出すべきだ」と迫ったのに対し、舛添厚労相は、「国会の場で、きちんと議論していい法案をつくりたい」と表明しました。
(2009年7月9日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めに、肝炎対策について伺いたいと思います。
先月十六日、B型肝炎訴訟最高裁判決からちょうど三周年の日に、元原告らと舛添厚労大臣との面会そして謝罪が初めて実現をしました。提訴してから十七年、勝利判決から三年と、丸二十年目のことであり、既に二名の方が他界をされております。
元原告は、〇六年最高裁判決後、繰り返し大臣への面会を求めていました。また舛添大臣になってからも、原告団長だった木村伸一さんが昨年一月八日の本委員会で参考人に立ち、最高裁判決があったにもかかわらず、いまだに国からの謝罪もないのだ、このような発言をされております。
それからもう一年半たっておる。なぜ今日までおくれてしまったのでしょうか。面会に当たって、大臣はどのような意思、決意を表明されたのか、お答えください。
○舛添国務大臣 これはできるだけ早くお会いしたいということで、先般、ちょうど平成十八年の最高裁判決の三年目になりますので、お会いして、これは厚生労働省を代表しまして心からおわびをする、それから、二度とこういうことが起こらないような対策をきちんと講じたい、こういうことで、皆さん方の御意見もいただきましたし、それからお亡くなりになった御遺族の御意見も賜りましたので、そういう思いを政策の上で実現できるように努力をしてまいりたいと思っております。
○高橋委員 二度とこのようなことが起こらないようにと大臣がおっしゃったということでありますけれども、それがどのような意味なのか。つまり、とても狭く言われては困るんだ、本当に二十年かけてその一言、たった十分でしたけれども、聞いた五名の方だけが国の責任があるのだというのであれば、またこれから長く長く、もう今三百三十人もの方が新たに提訴に踏み切っています。またそれを繰り返さなければならないのか、このことがやはり問われているのだと思うんです。
大臣もきっとその場でいただいたのではないかなと思うんですけれども、B型肝炎の原告団の皆さんがこのような「もう待てない」という陳述集を作成されて、もうごらんになったかなと思うんですけれども、改めて読み返してみて、直接伺った皆さんの思いというのが、本当に心に突き刺さるものがございます。
例えば東京原告の坂岡さん。九九年に、三十二歳の若さで息子さんをB型肝炎で失っている。職場から吐血をしたという知らせを受けて、翌日には、息子さんはB型肝炎で肝硬変どころか肝臓の三分の二が肝がんになり、腹水もたまり、静脈瘤がいつ破裂するかわかりません、あと一週間の命と言われる。翌日にもう命の宣告をされて、頭の中は真っ白になったとおっしゃっています。一週間のところを、親子で本当に向き合って、密度の濃い、二十五日間生き抜いてくれたと言っています。しかし、両親とも血液検査はマイナスであり、なぜ息子さんが発病したのかがわからなかったし、息子さん自身も、なぜこのようなことが突然自分の身に降りかかったのかと思いながら亡くなっていったのではないかと思います。
九州原告の二十番の女性。三十九歳のときにB型肝炎に感染していることを知りました。十一歳の息子さんと九歳の娘さんがいずれも感染をしていた。自分のせいで子供たちを大変な病気にしてしまったと自分を責めていたということ。その中で特に、高校生になった息子さんがベッドの上でにらみつけるような目で、お母さんのせいで僕はB型肝炎になったと言われたこと。あるいは娘さんも、お母さんは肝炎がおさまっているから、これから発症する私の怖さがわからぬやろと大きな声で言われた。
やはり多くの皆さんに共通されるのは、自分自身が病気で苦しむ、そのことと同時に、あるいはそれ以上に、子供さんに先立たれたり、子供さんが普通なら結婚、出産という道を歩むであろうということをあきらめさせなければならない、そういうことに対して、親がどれほどつらいのかということだと思うんです。
私は、多くの原告の皆さんが自分のせいだと責めていた、もう全く出口の見つからない中で、この〇六年の最高裁判決が、決してそうではなかったんだ、私の責任ではなかったんだ、国の責任だったと気づかせてくれた、そのことに本当に大きな意味があったのではないか、この趣旨を本当に生かすべきだと思うのです。
まず、その点に立って確認をさせていただきますが、まさか集団予防接種による感染が北海道の元原告五人だけだなどとは考えていない、ほかにも当然いるということを認めますか。
○舛添国務大臣 今、全国の地裁で三百三十人の方が提訴をされております。
基本的には最高裁の判決の趣旨をよく体してこれは対応しないといけないと思いますが、問題は、最高裁判決の要件があります。その要件の判定をだれが行うのか。これをやはり訴訟の場で行う、司法の場で行うしかないというのが今のシステムでありますので、そういう形で前向きに解決を考えていきたいと思っております。
○高橋委員 私が聞いているのは五人だけではないということ。それはもしかしたら個々に、私は割合的には極めて少ないかと思いますが、あるかもしれません、いろいろな事情が。だけれども、基本的にはやはりそれ以外に考えられないということを皆さんがおっしゃっているわけです。
いずれにしても、八〇年代の半ばまで注射の回し打ちが行われていた、国がそれを認める態度をとっていた。それがたった五人だけであったはずはないのだ、それはもう認めるということでよろしいですね。
○舛添国務大臣 何人いるかというのは私はわかりません。ただ、先ほど言ったように、事実として三百三十人の方が提訴をされている。それ以外にどれだけいるのか。いるともいないとも、何人いるというのも、それは私は一人一人数えたわけではありませんからわかりませんけれども、今申し上げられる事実はそういうことであります。
○高橋委員 答弁を逃げないでください。何人いるかなんて聞いていません。五人だけで終わりとは絶対言えないでしょう。そのことだけを聞いているんです。
○舛添国務大臣 ですから、三百三十人の方々が提訴されているということもありますから、それについて最高裁判決の趣旨にのっとって認めていく。そうすると、それは当然ふえるわけであります。
今、絶対にないとか絶対にあるとかそういう形の御質問をなさったので、私は神様じゃありませんから、絶対に何人いる、何人いないということは、医学者でもないしそういう形でのお答えはできないので、非常に正直に、誠意を持って答えたつもりであります。
○高橋委員 では、絶対にを取りましょう。可能性は当然否定できない。そうでしょう。三百三十人と大臣がおっしゃっているのも、その中の、まだまだ私は微々たるものだと思いますよ。だけれども、いずれにしても、あれだけの長い時代、そういう背景があったんですから、それは五人で終わりだとは言い切れないだろう、そういう立場に立つのが当然ではありませんか。
○舛添国務大臣 最初からそう質問していただければ、可能性は否定いたしません。
○高橋委員 わかりました。ここを確認させていただきたいと思います。
この問題は、C型肝炎についても同じように、血液製剤だけではなくて注射の回し打ちなどということもあったと思います。ですから、大きく言って、やはり医療行為によるものであるということを認めて、大部分が国の責任であるんだ、そのことを明確にして、根拠法の成立、先ほど来議論にされている医療費助成、検査の促進などの総合的な対策、これが求められるのであろうと思います。
そこで、少し具体的な話をいたします。
医療費助成についてですが、昨年からの予算措置で始まった一万、三万、五万のインターフェロン助成について、十万人の治療を目指すと言っていたものの、二十年度、九カ月間での実績は申請ベースで三万八千人にとどまっております。
早期治療の推進の観点からと政府が銘打っていることを考えれば、自己負担ゼロの階層をつくる、中間の刻みをふやすなど、使い勝手のよいものにする考えはないでしょうか。これは予算措置でやっているものですので、別に法改正はなくてもすぐにできることかと思いますが、いかがですか。
○上田政府参考人 当初の目標を下回っている原因についてはいろいろあると考えておりますが、開始初年度の周知不足の影響のほか、これまでも述べておりますけれども、多くの方が肝炎患者であることを知らないこと、あるいは知っておられても、その治療の必要性についての認識が薄く、通院をされていないこと、また通院はしているけれども、地域の診療体制の整備のおくれにより適切な医療機関にかかることができない、こういうことも考えられます。
これも既に申し上げておりますが、昨年十月から十二月にかけて行いました調査によりますと、患者さんがインターフェロン治療を選択しなかった主な理由は、忙しくて入院や通院ができないからが三五%、副作用が心配だからが二八%、こういうようなこともございます。
平成二十一年度におきましては、このような調査結果も踏まえながら、引き続き、一人でも多くの方が助成制度を利用できるよう、幅広い取り組みを進めてまいります。
また、B型肝炎に対する抗ウイルス薬の治療については、今さまざまな議論がございまして、こういうものの研究をしっかりやりながら、根治可能な治療法の開発を進めてまいりたいと考えているところでございます。
○高橋委員 まず、今の答弁、もう前にも私質問していますし、また患者の皆さん、原告の皆さんがみずから集めたアンケートで、やはり経済的負担が大きいのだということを言っているわけですから、解決済みの問題を今さらるる答弁をされるということは時間の無駄ですので、おやめになっていただきたいと思います。
あわせて二つ目の質問に対しても、聞いてもいないうちにもう答弁をされたということなわけで、ちょっとまず話を戻しますけれども、昨年の三月の本委員会で、私、福島県平田村の集団感染のお話をいたしました。ぜひこれは調査をしてほしい、全国のあちこちにそういう地域特性があるようだということをお話をいたしました。その後、政府のやった助成制度において申し込みに行ったんだけれども、結局、自己負担がネックでインターフェロンの助成を受けられなかったと、私がお会いした平田村の患者の方がおっしゃって、非常に残念な思いをいたしました。
ただ、この村はことし、つい最近ですけれども、村独自の助成制度、七割助成を決めました。私は、こうして自治体が目の前にいる患者さんを見たら、やはり支援をしなくちゃというふうになっているんだ、そのことを国がしっかり受けとめるべきではないかということで、重ねて要望をしたいと思います。
二つ目の問題なんですけれども、抗ウイルス薬を対象にすべきではないかという質問をしたときに、インターフェロンほど高額ではないのだという答弁があったかと思います。しかし、抗ウイルス薬はやめるとウイルスの増殖があるということで、一度服用を始めると本当に長期にわたり、一生にわたって服用をしなければならないという方もいらっしゃいます。毎月の検査代と合わせて一万数千円から二万数千円、これをトータルしますと、結局インターフェロンの治療費を上回ることになるわけです。そのことを考えれば、やはりこれも採用していくべきではないか。
昨年三月二十九日の毎日新聞の中で、治療のガイドラインをつくった虎の門病院の分院長さん、熊田博光先生が、インターフェロン治療の助成は合理的だと評価をしつつ、「訴訟の早期解決に向けた政治判断で、助成対象を広げる選択肢はあっていい」、このように述べていらっしゃいます。今回、二十年度のガイドラインの研究報告書、同じ熊田先生の報告書のまとめには、将来的に我が国の肝発がん例が減少することを目的とするというふうに明確に述べられています。そういう立場に立って医療費助成の対象を広げるべきではないか、重ねて質問いたします。
○上田政府参考人 B型肝炎に対する抗ウイルス薬の治療についてのお尋ねだと思います。
まず、ウイルスの増殖抑制が目的であり、この治療法は今のところ根治療法ではない。それから、インターフェロン治療による自己負担額が一月当たり七万円程度と高額であるのに比べまして、B型肝炎に対する抗ウイルス薬の治療は相対的に低額であることなどから、現時点では、他の疾患の患者への施策との公平上、助成の対象とすることは難しい問題がいろいろあると考えております。
なお、B型肝炎は根治可能な治療法の開発が今進んでいるということも、今御指摘がございました。こういうことも念頭に置きながら、今後とも新たな治療法や副作用抑制のための研究の推進に取り組むとともに、対策をいろいろ考えていきたいと考えているところでございます。
○高橋委員 同じ答弁をしないでくださいよ。
今、いろいろな新薬や治療法が研究開発されているとおっしゃいました。幾ら研究開発されても、自己負担が高くて治療に入れなかったら意味がないじゃありませんか。本当の目的を達するためには、それは一刻も早く治療に入れる、専念できる体制が必要なんです。この点について、大臣、いかがですか。
○舛添国務大臣 総合的な肝炎対策ということで、たしか今年度も二百億超の予算を組みました。その中には新薬や新しい治療方法の開発ということも含まれておりますし、治療費の補助ということも含まれております。
先ほど申し上げましたように、新しい施策をやったときにその結果について検証し、例えばアンケート調査でも、役所が出したものと患者の皆さんがやったものは違います。こういうことについてよく検証し、改善すべき点があれば改善していく、そして法的な整備の必要があれば、これはまたこの委員会の皆さん方の御支援もいただく、そういう方向で取り組んでまいりたいと思っております。
○高橋委員 重ねてこれは要望したいと思うんです。
あわせて、私も何度もお願いをしていますけれども、医療費助成の枠では救えない、交通費や仕事ができないなどの生活面をどう支えるかということについて、先ほど大臣が言ったような、社会保障全体で考えるというと大変時間のかかるお話であります。そうではなくて、日肝協などが以前から指摘をしてきた身体障害者福祉法による内部障害として認定する件について、既に検討されているわけですから、その見通しについて伺いたいと思います。
○木倉政府参考人 御指摘の、肝機能障害について身体障害者福祉法に基づきます対象とするかどうかの点でございますが、昨年夏に、肝炎全国原告団、弁護団と大臣との定期協議で御指摘を受けまして、これを踏まえまして、昨年十月から肝機能障害の評価に関する検討会で専門家の方々の御議論をいただいております。
今月また予定はしておりますけれども、これまで五回の中で、これまで認定をされております障害とのバランスも踏まえながら、どのようなものが位置づけられるかということについての考え方の整理をいただいておるところでございまして、さらに今月の検討会も踏まえまして、何とかこの夏には最終的な考え方を整理をいただきたいというふうに考えておるところでございます。
○高橋委員 この夏には整理ができて、これは前向きな回答が出るということで期待してよろしいでしょうね。
○木倉政府参考人 前回のこの検討会におきましても、他の障害とのバランスを踏まえながらでありますが、一定のものについて身体障害の対象とすることも可能な点があるのではないかという御指摘はいただいておるという段階でございます。
○高橋委員 最後に、大臣にもう一度伺います。
薬害原告団とB型原告団が共同で行った国会議員に対するアンケートがございます。二百十二名から回答があり、そのうち、政府・与党である自民党と公明党が六十三名答えていただきました。肝炎対策基本法制定に賛成ですか。はいが百九十名で、反対はゼロであります。それから、B型、C型ともに国は責任があることを明記することに対して、賛成は百五十五名、いいえは十名しかございません、自民五、公明五。要するに、圧倒的に与党の中からも肯定されているということであるかと思います。
最初の原告らが二十年でやっと謝罪をされた。日に百二十名もが亡くなっていくと言われているこの肝炎の問題で、この先延々と裁判を続けることよりも、やはり根拠法をつくって支援に乗り出すべきだと思いますが、大臣の決意をもう一度伺います。
○舛添国務大臣 これは両筆頭間で今御議論もなさっているというお話も、先ほどどなたかからお伺いいたしましたけれども、国権の最高機関の国会の場で、我々国会議員がきちんと議論をして、いい法律をつくりたいと思っております。
○高橋委員 本委員会の皆さんに重ねて強く要望をし、大臣にもその意思をしっかり表明していただきたいということをお願いして、終わりたいと思います。
ありがとうございました。