日本共産党の高橋ちづ子議員は26日の衆院厚生労働委員会で、肝炎対策基本法案が今国会で成立する見通しになったことを受け、350万人といわれるウイルス性肝炎患者・感染者への支援を強めるよう求めました。
高橋氏は、集団予防接種が原因で肝炎に感染した人は2006年に最高裁が認定したB型肝炎の5人にとどまらず、C型肝炎でもありうると指摘し、「ウイルス性肝炎は国の責任も含め、本人の責めに帰すものではないことを明らかにして、基本法を国による経済支援の根拠としたいという認識は共有するか」と迫りました。
長妻昭厚生労働相は「認定された5名以外も(予防接種が原因の)可能性は否定できない」としつつ、「事実確認が必要だ。予防接種でC型肝炎に感染した人は今の段階では確認されていない」などとのべました。
高橋氏は、肝炎治療の負担軽減は事項要求にとどまり、「金額も内容も明らかでない」と指摘。B型肝炎治療に有効な抗ウイルス薬インターフェロンのさらなる負担軽減や、それが使えない患者の肝庇護(ひご)剤などへの助成を求めました。長妻厚労相は、(1)インターフェロンの自己負担上限引き下げ(2)B型肝炎の核酸アナログ製剤を助成対象に追加―の2点について「実現していく」と答えました。
さらに高橋氏は、キャリアー(感染が続いている人)からいきなり肝がんになる人も多いとして、肝がんや肝硬変への助成を要求。山井和則厚労政務官は「肝炎対策の協議会を設置し、論点にする」とのべました。
351人が提訴している全国B型肝炎訴訟について、山井政務官は「当面見守りたい」とのべるにとどめ、長妻厚労相は「訴訟の中で事実関係を判断する」などと答弁。高橋氏は「国民が新しい政権を選んだ今こそ、政治主導で」と、訴訟解決への国の決断を強く求めました。
(2009年11月27日(金)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
肝炎対策基本法の今国会成立がようやく現実のものになろうとしております。昨年一月、党派を超えた共同と政治判断によって成立をさせた薬害肝炎救済法から丸二年になろうとし、本来ならもっと早く成立するはずだったのに、政局にさまざま翻弄されてまいりました。本日もたくさんの傍聴者がおいでですが、今日まで粘り強く要求活動をされてきた薬害C型肝炎原告団を初め、B型肝炎の皆さん、日肝協の皆さん、弁護団、支援の皆様、多くの関係者の皆さんに心から敬意を表したいと思います。
きょうは、肝炎の問題に絞って質問いたします。
まず、基本法の意義についてであります。
七月八日の本委員会で、私は舛添大臣と何度も押し問答したことがございました。集団予防接種による感染が最高裁で確定した札幌の元原告五人にとどまらないと思うがどうか、この確認でありましたが、すったもんだの末、可能性は否定しないという答弁がございました。昨年三月には、私はC型肝炎の一定の地域における集団感染について取り上げました。これはどう考えても注射の回し打ちしか考えられないなということがあったと思うんですが、やはりC型肝炎にもそうしたことはあり得るということをまず確認したいんです。その上で、基本法は、三百五十万人とも言われるウイルス性肝炎が、国の責任も含め、いずれにしても本人の責めに帰すものではないこと、このことを明らかにして、国による経済支援を行う根拠としたいと思っているわけです。
この認識を共有されるのかどうか、大臣に伺います。
○長妻国務大臣 今、冒頭言われた基本法でございますけれども、本当に関係各位の皆様方あるいは関係各会派の皆様方の御協力があって実を結ぶことになるということでございまして、私どもとしても、それを基本に今後とも行政を進めていきたいというふうに考えております。
そして、B型肝炎ウイルスに感染されたということで、平成十八年の最高裁判決の要件を満たすという方々の今お尋ねだと思いますけれども、この判決では五名の方ということが認定をされた、それ以外おられるのかということでありまして、その可能性は否定できない、こういう政府見解もあるわけでございます。その意味で、訴訟における議論というのが必要であるというふうに考えておりまして、事実確認、認定というのも必要であるという意識を持っているところであります。
そして、予防接種によってC型肝炎に感染された方もいるのではないかというような御質問もありましたけれども、今の段階で予防接種における注射器の連続使用による感染がC型肝炎であったというのは科学的には確認はされていないということでございます。
以上です。
○高橋(千)委員 長妻大臣、舛添さんと、一歩も出ないのでちょっと残念な、しかも最後はちょっと官僚答弁であったなと思われます。ここをやりとりしているともう先に進まないし、ちょっと残念なんですけれども。
可能性は否定はできない、当然なんですね。裁判の中でまた同じ話を何度も何度も国が蒸し返している、そういう説明に、やはりもうそこから一歩出るべきだ、この基本法を制定するに当たって、そういう立場に立っていただきたいということを重ねてお話ししたいと思います。
この話はもう一度聞きますけれども、次に進みたいと思うんですね。
治療費助成の問題ですけれども、現在、インターフェロンの治療費助成に限定をされております。それ以上の負担軽減については、事項要求に盛り込まれて、額も内容も全く明らかにされないばかりか、財務省によってそれらも危うい状況になっているということであります。私たちとしては、基本法成立によって大いに後押しをしていきたいと思っております。
そこで、大臣は、十月十四日には会見で、B型肝炎の核酸アナログ製剤やインターフェロンの負担軽減、一律一万円、このような支援について言及をしておりますが、これらについては要求をしていくのかどうか。また、現実には、インターフェロンが効果がないという方たち、強力ミノファーゲンCやウルソなどの肝庇護剤を使っている方なども多いですし、検査費用ですとか、さまざまな治療費助成というものが必要となっております。当然これらについても検討されるべきと思いますが、いかがでしょうか。
○長妻国務大臣 これにつきましては、厚生労働省として、概算要求、平成二十二年度の事項要求ということで二点、これを実現していきたいということで今取り組んでいるところです。
一点目といたしましてはインターフェロン治療の自己負担額上限の引き下げということ、二点目はB型肝炎の核酸アナログ製剤を助成対象に追加するということで、まずこの要求について財政当局に理解をもらって実現していくということで、今取り組んでいるところであります。
○高橋(千)委員 二点ということでありました。ここについて、まず最低確保できるようにみんなで後押しをしたいと。
そして同時に、やはりずっとこの間議論をされてきたように、政府はすぐ、B型肝炎はそんなに治療費がかからないんだなどということが何度も答弁をされて、そうではない、長時間ずっと治療を続けなければならないためにかかる費用があるのだ、また、そこにかかわるいろいろな、交通費ですとか経済的な損失というものも大きいのだということを指摘してきたわけであります。先ほどお話をした肝庇護剤を初めとして、長い間ずっとかかる治療生活全体を支援していくという視点をぜひ引き続き持って検討していただきたいということを重ねて要望したいと思います。
それで、今回、肝硬変や肝がんについての検討についても特に大事であるということが提案をされております。B型肝炎の原告などのお話を聞いても、キャリアからいきなり肝がんになった、そういう方も多いわけです。ですから、肝炎基本法ではありますが、当然肝がん、肝硬変についても助成措置を検討するべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○山井大臣政務官 高橋委員の御質問にお答え申し上げます。
今回の肝炎対策基本法の中に、肝炎対策の協議会を設置する、そういう条項が入っております。今御質問をいただいたことにつきましても、そういう協議会の中で、今後総合的な肝炎患者の支援のために検討を進めていくべきだと思っております。
○高橋(千)委員 肝がんの方は。
○山井大臣政務官 今御質問されました肝硬変、肝がんに対する対応についても、その協議会で論点の一つになろうかと思います。
○高橋(千)委員 わかりました。
では、引き続いて山井政務官に伺いたいと思います。
肝炎患者救済のために、山井政務官が野党時代に何度も質問に立たれ、尽力されたことは、だれもが周知をしているところだと思います。
例えば、ことし四月一日の本委員会においても、舛添大臣に対して、全国B型肝炎訴訟を和解に持っていく考えはないのかと迫っております。C型薬害肝炎の方々があそこまで頑張ったのは自分たちのためではないんです、三百五十万人もの多くの肝炎患者全体の救済のために頑張ったんですよと。それを、あれとこれとは別だ、B型肝炎は一人一人訴訟してください、これはおかしいんじゃないですかと迫っております。
内閣の立場に立たれて、訴訟を直接担当する側になったわけですけれども、その立場に変わりはないのか。三百五十一名の訴訟が今闘われているわけですけれども、本来であればもうとうに解決の道が開かれているはずだったと多くの皆さんが注目をしております。政務官それから大臣に、それぞれB型肝炎訴訟の解決に向けた決意を伺いたいと思います。
○山井大臣政務官 高橋議員の御質問にお答えを申し上げます。
本日も、C型肝炎の原告の皆さん方、そしてB型肝炎の原告の皆さん方、また日肝協の方々もお越しをいただいております。
日肝協の事務局長の方々も、病を持ちながら肝炎患者の医療費支援ということを頑張ってこられましたけれども、残念ながら、医療費助成や肝炎対策基本法の運動をしながら、志半ばでこの世から去り、天国できょうの法案の成立を楽しみにしておられると思います。このことからもわかりますように、本当に、患者の方々は待ってくれないという思いがいたします。
まずは、本日、与野党の皆さん方の本当に短い会期の中での真摯な御議論の中で肝炎対策基本法案が衆議院を通過する運びになっていることに心より敬意を表したいと思っておりますし、これからまたうまくいけば、参議院の方でもぜひ成立を図っていただきたいと思っております。
これに加えて、先ほど高橋議員が御指摘をされました事項要求、これも非常に厳しい状況でありますので、基本法だけではなく、インターフェロン治療の医療費をさらに安くする、さらにB型肝炎に効果のある抗ウイルス剤の治療費助成というのを何としても実現していきたいというふうに思っております。
その先に、今高橋委員が御指摘のB型肝炎の訴訟があるわけであります。当面、この訴訟の行方を見守りたいとは思っております。
ただ、私たちが肝に銘じなければなりませんのは、きょうもお越しになっております山口代表を初めとする薬害C型肝炎の方々が、昨年、薬害肝炎一括救済法案が成立したときにおっしゃったのは、感染をした被害者が先頭に立って、病を押しながら署名活動をし、国会を回り、そしてその途中で御病気で命を落とされる方がふえていく、こういうことまでしないと救済が行われないということはもう二度としてほしくないということをおっしゃっておられました。その言葉の意味というのは非常に重いと思っております。
このB型肝炎に関しましても、十八年間も最高裁まで訴訟が続いて、予防接種によるB型肝炎について国の責任が平成十八年に十八年たってやっと認められたわけですが、その原告の方々もおっしゃるには、自分たち五人が認められたら、多くのほかの被害者の方々、B型肝炎の方々は数多くおられますから、その方々も救済されるだろうという思いで十八年闘ってきたら、いや五人だけです、今後はまた新たな訴訟をしてくださいということでは、これは本当に、この五人の原告の方のうちでももうお二人が亡くなっておられます。B型肝炎の方、そして原告の三百五十一人の方々の中には、余命一年、余命三年ということをおっしゃりながら裁判をされておられる方々もおられます。そういう意味では、やはりいつまでも訴訟を続けていっていいということではないというふうに思っております。
○長妻国務大臣 今、訴訟のお尋ねがございましたけれども、これは、先ほども言われましたように、最高裁で五名の方が認定をされ、その案件につきましては国としても謝罪を申し上げているところであります。
その中で、それ以外の方々への対応であります。
これにつきましては、先ほども申し上げましたとおり、同じような方がおられるという可能性は否定はできないわけでありますので、訴訟の中で事実関係を認定していただく上で判断をするということがまずは基本になるということであります。
そしてもう一つは、同時に、B型肝炎の治療薬に対する具体的な助成というのも一方では進めているところでありまして、これに関しましては、年末までの予算編成の中で、我々も実現を求めて、それを獲得していきたいということで今努力をしている、こういう段階であります。
○高橋(千)委員 これこそ政治主導で、本当に国民が新しい政権を選んだということの結果を示していただきたいと思います。
今の山井政務官のお話の中にありましたように、〇六年六月の、三年前の最高裁の判決で、ようやっと自分の責任ではないのだということに初めて気がついて、本当にこれで救われると思った方たちが裁判にまた立たなければならなかった、その思いを一番わかっているからこそ、本当に今この政権がB型肝炎訴訟を解決すべきであるということを強く求めて、終わりたいと思います。
ありがとうございました。