国会質問

質問日:2010年 2月 22日 第174国会 予算委員会

後期高齢者医療制度について

 民主党自身がかつて「病院追い出しにつながる」と批判していた高齢者の差別医療の仕組みを全年齢に拡大するのか―。日本共産党の高橋ちづ子議員は22日の衆院予算委員会で、75歳以上の患者が90日を超えて入院すると病院の収入が激減する後期高齢者特定入院基本料について、政府が廃止するどころか4月からの診療報酬改定で全年齢に拡大しようとしている問題を厳しく追及しました。

 高橋氏は、長妻昭厚生労働相が野党時代にこの仕組みを批判していたことを指摘し、「あなたが『早期退院を迫るものだ』と指摘していたこの基本料を全年齢に拡大することが、差別的扱いをなくすという意味なのか」と迫りました。

 長妻氏は、病院が退院支援状況報告書を出せば診療報酬は下がらないと弁明しつつ、「限られた病床数の中で急性期・亜急性期の方に入っていただくという趣旨」などと、全年齢にわたって早期退院を迫る狙いであることを認めました。

 退院支援状況報告書は、退院や転院へ向けての努力を毎月示せというものです。高橋氏は、「結局、病院ではみ出す人は介護へ行けということだ」と批判。介護分野では特別養護老人ホームの入所待機者が42万人にのぼる中、「さらに多数の医療難民、介護難民が生まれることになる。特定入院基本料はやめ、(介護療養病床全廃などの)療養病床削減計画もやめるべきだ」と迫りました。

 長妻氏は特定入院基本料については弁明を繰り返し、療養病床削減計画についても「(計画の)猶予(ゆうよ)も含めて練り直す」と述べるにとどまり、中止を明言しませんでした。

 高橋氏は、民主党政権がやめるといってきた社会保障の2200億円削減路線と、本当に決別できるかどうかは、この問題でこそ試されていると力説し、後期高齢者医療制度そのものの即時廃止を強く求めました。

 後期高齢者特定入院基本料 75歳以上の患者が一般病棟に90日を超えて入院すると、高密度の医療を必要とする12の場合を除き、医療機関への診療報酬が大幅に減額される仕組み。1998年に導入されましたが、2008年の後期高齢者医療制度創設に伴い、認知症や脳卒中の後遺症のある患者にまで対象が拡大されました。診療報酬改定を議論する中央社会保険医療協議会(中医協)は12日、この仕組みを全年齢に拡大することを長妻厚労相に答申しました。

(2010年2月23日(火)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 私は、一昨年の一月にこの場で、後期高齢者医療制度について福田元総理に質問をしました。冒頭「長生きは喜んでいいことですか。」と。この言葉には、私自身が各地で懇談や調査を重ねる中で寄せられた怒りの声を凝縮したものでありました。

 長妻大臣は、ともに衆議院に廃止法案を提出した仲間であります。全国で一千万人もの署名が集まり、昨年の総選挙で自民、公明政権を退場させる大きな力になったと言えるのではないでしょうか。それだけに、まさかの当面制度を維持するという大臣の発表は、大きく国民を失望させました。後期高齢者と言われることに生きることを否定されたような気がする、社会の厄介者扱いされている、そういう声は今も絶えることがありません。

 総理に最初に伺います。

 後期高齢者医療制度、廃止をすると期待をし裏切られたと感じている国民に対し、どうこたえていきますか。本当に後期高齢者医療制度を廃止するのですか。

○鳩山内閣総理大臣 高橋委員にお答えをいたします。

 私ども、マニフェストあるいは連立政権の合意の中にありますように、後期高齢者医療制度は必ず廃止をいたします。その廃止をするというのも、廃止だけでも時間がかかる。コンピューターの問題、その他があります。ならば、私どもとすれば、一緒に議論をしてその先も決めていこうではないかということでございまして、来年には法案というものも提出をする予定にしておりますが、今、高齢者医療制度改革会議というものを設置して、そこで準備を進めているところでございまして、国民の皆さんにお約束をした、後期高齢者医療制度、これは一期四年の中で、私どもの政権の中で必ず廃止をいたします。

○高橋(千)委員 必ず廃止をするとおっしゃってくださいましたが、しかし、一期四年ということで時間がかかるということでありました。

 大臣にまず伺いますけれども、廃止まで四年もかかるという根拠は何でしょうか。端的にお答えください。

○長妻国務大臣 まずは、これは工程表も公表をさせていただいているところでありまして、来年法案を提出して、一期四年の中で実施をするということでありますけれども、基本的に、これを直ちに例えば老健に戻して、その後また老健じゃない新しい制度に戻すというと、これは大変な現場の御負担、あるいは事務作業の増大、コンピューターシステム改修費等々の問題も発生する。あるいは、データの振り分け、今七十五以上の方は後期高齢者広域連合のコンピューターに全部一人ずつ入っておりますけれども、一たんそれをまた戻していくとなると、そこでミスがどの程度発生するのか、発生しないような手だてはどうなのかと。

 その後にまた新しい制度というのが目まぐるしく変わるというようなこともあり、利用者の皆様方の混乱等々も最小限に抑えて、そして、一方では、国民の皆さんがこの制度は一刻も早く廃止してほしいという願いもあるのも我々十分受けとめておりますので、その勘案の中で、このスケジュールということでぎりぎり提示をさせていただいているところであります。

 これは、制度は今申し上げたところでありますが、これに付随した案件というのもいっぱいあります。後期高齢者の方だけに限定された診療報酬、終末期相談費とかマルメの問題とか、そこはことしの四月からは廃止する、あるいは、資格証明書、保険証を取り上げる措置や人間ドックの助成が打ち切られるとか、健康診断が義務でなくなるとか。それについては速やかに実施をしていく、こういうことで考えております。

○高橋(千)委員 まず、四年も待てないんだ、それまでに死んじゃうよ、そういう声が聞こえてこないでしょうか。そもそも、本当に四年で終わるのかどうか、あるいは、さらに四年後につくるという新しい制度が今よりいい制度かということに何の保証もないではありませんか。そこに国民が白紙委任をしたのではありません。国民が選んだのは、後期高齢者医療制度を廃止するということで民主党を選んだのであります。ここをしっかりと押さえていただきたいと思います。

 今お話しされたスケジュールの問題、資料の二枚目にありますが、ちょっと見ていただきたい。

 四年間でやるということでのスケジュール表ですけれども、来年の今ごろには既に新しい法案が提出をされ、そして、春には成立の見込みといいます。そもそも、こんなに早く法案ができるのだろうか。さらに、その後、施行まで二年もかかると言っています。

 最初、もとに戻すのにシステム云々で二年かかるということを長妻大臣は盛んにおっしゃったと思います。施行までに二年もかかるんですから、それなら、一たんもとに戻す方が早いではありませんか。各都道府県の広域連合の多くは県や市町村から出向しています。経験もあり、また名簿の保存期限ということからいっても、早く取りかかる方が楽なはずです。

 昨年十一月二十一日付の朝日新聞にこういう投書が載っておりました。熊本市の五十三歳の男性です。

  私はシステムエンジニアとして「後期高齢者医療制度」のシステムを手がけているが、元のシステムに戻すのは、新しいシステムを構築するより時間もリスクも少なくて済む。新しいシステムに移行する方がはるかに煩雑で、システム構築からテスト期間を含めると、おそらく二年では不可能だし、現場の混乱は避けられないと思う。

  この制度は廃止して、いったん元の制度に戻すべきだと思う。

システムを手がけている人からの意見であります。

 NECの出身である大臣なら、なるほどと思うのではないでしょうか。改めて伺います。

○長妻国務大臣 まず、根本的な考え方として、前の老健制度でずっといく必要があるというお考えの方もいらっしゃると思いますけれども、私としては、老健制度で続けるということでは、これは医療費の分担の問題等々で、これではもたないというふうに思っておりますので、そういう意味では、一気に新しい制度に移行をして国民の皆さんに御理解いただくということです。そういう意味で、ことしの夏前後、夏をめどに中間報告ということで、中間取りまとめ、そこに書いてございますけれども、そこで我々は一つの取りまとめ案をお見せして、そして国民的大議論の中でそれを取りまとめるということです。

 そして、二年といいますのは、我々もぎりぎり細かく詰めに詰めて、やはり二年、準備も含め、怠りがあってはならない、あるいはデータの振り分け、システムだけではありませんで、個々人のデータをきちっとしかるべきところに振り分けていく、そういう作業がございますので、こういう工程表をつくらせていただいて、怠りなきよう取り組んでいくということであります。

○高橋(千)委員 初めに、老健でずっといくなどということを、我が党は主張したことは一度もございません。既にこのことは、一昨年の議論の中でされていることではないですか。一たん老健に戻すと言っただけであります。そこから先は、みんな、提出した野党四党、さまざまな意見がございました。国民的議論をするべきだというのが本来の立場であります。もともと老健法が成立したときに我が党は反対した、そのことも明確に議論をしたはずであります。そのことをまずお断りしておきたいと思います。

 そこで、スケジュール表どおりに四年だとすれば、ことしの二年後に、今、済みませんが、吹き出しでつけさせていただきましたが、もう一度保険料の改定がございます。後期高齢者が現在約千三百万人、毎月約三万二千人が七十五歳のお誕生日を迎えます。七十五歳以上の高齢者を一くくりにし、かかった医療費で保険料が決まるという仕組みにしたために、必ず保険料は上がり、財政はやがて破綻するだろうということは、法制定当時から指摘をされてきたところです。

 では、来年度、保険料についてはどの程度の改定率になるのでしょうか。一月十四日から十五日に行われた全国厚生労働関係部局長会議で中園高齢者医療課長補佐は、各都道府県の剰余金を充当してもなお保険料が増加するところは三十三都道府県の見込みと報告しておりますが、どうでしょうか。

○長妻国務大臣 今おっしゃられたように、この後期高齢者医療制度の最大の問題の一つが、七十五歳以上のお医者さんにかかりやすい方を一くくりにして保険をつくれば、これはだれでもわかることでありますけれども、保険料の上昇スピードはほかの年代に比べてはるかに高くなる、こういう問題点があるということであります。

 そして、実際、来年度、ことしの四月以降の保険料の上昇というのは、後期高齢者の保険料については全国平均で約一四%も上昇する、こういう見込みになっております。

 そこで、私どもとしては、これは措置を講じなければならないということで、各広域連合にあります財政安定化基金、これから拠出をしたり、あるいは、この基金を積み増して取り崩すという措置も必要な県もございますので、このときに国も都道府県と同額を拠出するということで、一四%の上昇を三%の上昇に抑える、一一%分マイナスにする、こういう措置をぎりぎりの中で我々は決断をさせていただいて、そういうことで御理解を得ていきたいというところであります。

○高橋(千)委員 平均すると三%程度であるというお話と、それから、財政安定化基金の取り崩しを検討する上での前提のお話だったと思います。

 各都道府県の地元紙などを参考にいたしますと、財政安定化基金から百十億円取り崩すという大阪で、三千八百九十五円値上がりし、五・〇七%の増であります。剰余金から二億九千万円、基金から七億二千万円入れても、七・七%の増になるというのが徳島県。また長野では、三十億六千万円の剰余金と、基金から七億円取り崩しても、四・九%の増だといいます。据え置きを表明しているところもある一方、やはり初回の保険料改定で大きく基金の取り崩しを余儀なくされているということがわかるのではないでしょうか。

 そうすると、制度が長引けば広域連合の財政が逼迫することを意味していると思います。ある新聞で、二〇一二年に政府が制度を廃止すると言っているから、保険料を下げるために剰余金は使い切ってほしいなどという議論もあったと報道をされております。これまで我が党が何度か指摘をしてきたように、十月二十六日の通達で国庫補助を検討していると言いながら、結局、事項要求の位置づけだったために、予算を確保しなかったことがまず指摘されると思います。

 この四年間、どの程度の財政措置が必要になりますか。あるいは、自治体負担はこれ以上ふやすべきではないと考えますが、毎年措置できる保証があるでしょうか。

○長妻国務大臣 まず一つは、この後期高齢者医療制度で、自己負担の軽減ということで一割負担にしていこう、この措置は継続をいたします。これについても予算計上をさせていただいているということで、御負担はふえることはございません。

 それで、今の全国の保険料の上昇のお話でございますけれども、これは全国平均で三%にとどめるということでありますが、今、医療費が全般的に増大をしていくという中で、協会けんぽの保険料も上がるということになっており、健保組合の保険料も上がり、市町村国保の保険料も上がるということで、これについてもいろいろな手だてをできる限り我々考えておりますけれども、今、社会保障費が国費だけで毎年一兆円ずつ自然増という形でふえるという中で、ぎりぎりの御理解をいただくべく、その上昇スピードを抑えるということにしているところです。

 具体的に国費を幾ら上昇抑制に使うのかということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、財政安定化基金がもうかなりなくなってしまうようなところは、そこに積み増しをしてまいります。それは、国も都道府県と同額を拠出するということで国費を使わせていただくわけでございますけれども、それについて今具体的な金額等々を検討しているところであります。

 先ほど申し上げた二次補正予算では、保険料の軽減のために約二千九百億円の措置をしておりますけれども、それに加える措置ということになるということであります。

○高橋(千)委員 今お答えになった二千九百億円、この資料三につけておきましたけれども、これは自民・公明政権時代に高齢者医療制度の一部見直しということで予算措置されたものを延長しただけであるということでありまして、国自身が新たに負担の軽減のために上昇分を抑えたものではないということを改めて指摘しておきたいなと思います。

 やはり私が言いたいのは、今紹介した二千九百億円くらい、これをもしも毎年毎年やるとなっていくとしたときに、本当にそれが財政的に担保できるのだろうかということが見えないんですね。平成二十四年度以降については全く見えないというのが実態ではないか。そうすると、何かそこだけが目立ってしまって、やはりちょっと事業仕分けかななどということになっては困るわけです。だから、制度をいつまでも維持するべきではないということを言いたいと思うわけです。

 もともと、先ほど大臣もお答えになったとおり、高齢者をねらい撃ちにした制度であり、だからこそ、保険料がこれ以上上がるのが嫌ならなるべく病院に行くなと言わんばかりの制度設計になっている。一昨年、いろいろなところで紹介された厚労省の課長補佐の発言、医療費が際限なく上がっていく痛みを後期高齢者がみずから自分の感覚で感じ取っていただく、この言葉はまさに制度の核心に触れていると思うんですね。問題は、新政権になってその根っこの部分がまだ残っているのではないかということを今の議論をしていて思うわけであります。

 ちょっと総理にぜひ伺いたい、感想ですので伺いたいと思います。

 このパネル、資料の四枚目にも同じものをつけておりますけれども、これは厚労省の資料であります。人間が生涯に使う医療費が平均で約二千二百万円だということであります。厚労省が〇七年度の年齢階級別国民医療費をもとに、簡易生命表による人口を適用して推計したものであります。

 これを見ますと、七十五歳は確かに医療費を一番使っています。ピークであります。しかし、それがずっと上がるわけではありません。その後ぐっと下がっていきます。若いころは、ごらんのように、やはり医療費も余り使っておりません。働き盛りのころはやはり余り医療費も使わず、頑張って保険料や税金を納めている、こういうことがこの生涯医療費では見えると思うんですね。

 ですから、何か現役世代と高齢者世代みたいに言われるけれども、これまで頑張ってきて保険料の分を、医療を余り使ってこなかったんだから、これから七十歳、七十五歳ということで、安心して今度は元を取る、医療を使える、病院にかかれるというようにするのが本来の国の仕事ではないかと思うんですが、いかがでしょう。

○長妻国務大臣 これは高橋委員が誤解されてはおられないと思いますけれども、この表が、百歳以上の方が一年間八万円しか使っていない、どんどん年とともに年間の医療費が下がるという表ではございませんで、これは生涯医療費、日本国は一人当たり一生涯で二千二百万円使うという中で、百歳まで生きられない方も含めて、あるいは不幸にして四十歳でお亡くなりになった方も含めて、それぞれの年代の数字でありまして、これを全部足すと二千二百万円になるということです。

 そういう意味では、別に資料がございますので、年齢が上がるとともに、当然、一年間の医療費は一人当たり上がっていく、七十から七十四歳は五十九万円、七十五歳以上は七十九万円ということで上がってまいりますので、よろしくお願いします。

○鳩山内閣総理大臣 今長妻大臣がお答えをしたので、私は実は疑問に感じておりまして、なぜお年をとられて九十五歳、百歳になるとこんなに医療費が安いのかなと、一瞬勘違いをしておりましたが、そうではないということがわかりました。

 今、ここでも……(高橋(千)委員「若いころ安いのは同じですよね」と呼ぶ)おっしゃるとおりだと思います。若いときには余りかからない、だから、保険料を若いときに一生懸命払ってこられて、お年をとられて、ある意味で病気になりがちなお年寄りの医療費は、当然、今まで払った中で賄ってもらいたいなというお年をとられた方々のお気持ちはそのとおりだと思っておりまして、だからこそ、私たちも、このような年齢で区分をしてお年寄りだけをまた別扱いにするような医療保険制度というものは間違っている、その認識は共有させていただきたいと思います。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。認識は共有していただけるというお話だったと思います。

 大臣が説明されたのは、確かに改革会議の資料でございます。私も見ております。ただ、これは白書に載せられたものを新しい数字をさらに厚労省がつくっていると。当然、先ほど私が簡易生命表というふうに説明をしましたように、ちゃんと寿命を入れながら計算するとやはり生涯医療費はこうなるんだよということで、いずれにしても若いときに医療費を使っていないということで、ここで元を取りたいよねという話は一致できるのではないかなと思っております。

 さて、そこで、制度が始まって二年たちました。後期高齢者の受診抑制は起きていないんでしょうか。病院になかなか行けなくなるということもあると思いますが、この点、大臣に伺います。

○長妻国務大臣 この後期高齢者医療制度が施行されて、高齢者の受診抑制が生じているのか否かということでございますけれども、自己負担の比率は抑えられて変わっていないということでございまして、いろいろ、お配りの資料等々に、外来の減とかあるいは入院の減という数字が出ておりますけれども、我々も、それが直ちに受診抑制のものなのか、あるいは、薬の長期投与というのが可能になったり、ベッドが、そのカウントから外れた老健施設などのベッドに移られた方もいらっしゃるということで、その意味で、受診抑制が生じたという具体的なデータというのはまだ確認はしていないところであります。

 ただ、先ほど私も申し上げましたように、七十五以上の方々を一グループにして、その集団がお医者さんにかかればかかるほど急激に保険料が上がるという仕組みの中で、結果的に集団としてそういうマインドが起こるということは私も想像はつきますけれども、それが具体的に数字で裏づけられたということは、まだ確認はされていないと思っております。

○高橋(千)委員 今、資料を二つ見ていただいて、多分それを見越してお話をされたと思います。

 当初、報道でありますと、〇八年の患者調査の概況で、後期高齢者の入院が過去最多である、外来でも過去最多である、こうしたことが報道されたわけです。それがこの資料の五枚目のグラフでありまして、特に、全年齢でいうと入院も外来も下がっているにもかかわらず、六十五歳以上と七十五歳以上は上がっていると、わざわざこれは特出しをしているわけですね。

 しかし、もう一つの資料があるということで、人口十万人対の受療率ということですが、最初の方は、後期高齢者がふえているわけですから、実数で見るとふえるのは当然なところもあるわけです。ですが、十万人対で一体どのくらいの人が病院に行っているかという割合で見ると、このグラフのように、明らかに六十五歳以上も七十五歳以上も大きく減っているということがわかるのではないか。

 今、大臣、具体的なことはグラフだけではわからないということをおっしゃったと思うんですが、しかし、後期高齢者の制度の特徴からいってそういうことがあり得るのではないかということも、今おっしゃったと思います。

 当時、施行後すぐの九月の調査で、全日本民医連が行った影響調査でも、やはり同じ四月から六月の日数の比較で、〇七年と〇八年では、例えば一般患者が診療所で三・一五%減っているのに対し、後期高齢者はその倍以上の七・八四%ですとか、病院の外来ではマイナス四・三三%に対し、後期高齢者はマイナス一〇・四八%、こう大きくやはり抑制が進んでいるではないかという指摘をされています。同様のデータを日医の方も出しているじゃないかということを指摘しているわけです。

 それで、具体的にわからないというのであれば、きちんと政府として実態調査をやるべきだということを述べておきたいと思います。答弁は、後の方で一緒にしてくださればいいと思います。

 続けてお話をしますけれども、大臣は、厚労委員会の所信表明演説で、また先ほども少しお話しされましたけれども、「差別的扱いとして批判があった後期高齢者医療制度の一環として七十五歳以上に適用された診療報酬体系を廃止します。」と述べました。本当にそうでしょうか。

 昨年の十二月四日の中医協では、まず遠藤小委員長から「名称のみ変更して内容は変えていないというものはこの中のどれでしょうか。」と質問され、佐藤医療課長は「けっこうあるんですけれども……」と答えております。

 大臣は、一昨年十一月の委員会で、救急車で搬送され医療機関に受け入れてもらうまでの時間が高齢者ほど長く、困難になっているという指摘をされて、次のような質問をしました。

 本当にお年を召した方ほど受け入れがなかなか難しいというのは非常に悲しい話、その傾向に拍車をかけかねないのが後期高齢者医療制度だとして、後期高齢者特定入院基本料ということで、九十日を超えて後期高齢者が入院をされると、脳卒中の後遺症または認知症患者の方に関しては病院に入る収入が最大では半分近く減ってしまう、だから、報酬が減らされれば余り初めから受け入れたくないという気持ちに拍車がかかるから、やめるべきだと迫っております。私は、それを後ろで聞いておりましたので、大変いい質問だと思っておりました。

 大臣が指摘したこの後期高齢者特定入院基本料は、廃止ですか。

○長妻国務大臣 私の野党時代の質疑を引用いただきまして、ありがとうございます。だから廃止したんです。廃止しました。

 これは、後期高齢者医療制度が平成二十年の四月に入りまして、そのときに、七十五歳以上の人だけは、九十日入院していると、いろいろ要件はありますけれども、その診療報酬が下がるということで病院の利益が下がってしまう。七十五歳以上だけにそういう診療報酬体系があり、私も、これはおかしいということで野党時代に要望し、これは恐らく共産党も要望されたと思います。その意味で、野党の力でそれが一定の改善をされました、これは前の政権でありますけれども。

 それで、九十日を超えて入院していても、七十五以上の方であっても、一定の紙を出せば、もっと入院が必要なんだというお医者様が認めた紙を出せばその報酬が下がらない、ここまで当時の与党にのんでもらったということで、それは廃止になっているわけでございます。

 そして、今回、ことしの四月からは、七十五以上だけに着目したものは廃止なわけでありますけれども、全年齢にわたって、九十日を超えても基本的にはその診療報酬は下がらない、ただし、限られた病床数、ベッドの中で、それに本当に急性期の方、亜急性期の方に入っていただくという趣旨で、九十日を過ぎると、すべての方に、お医者様が、これは九十日以上必要なんだという証明書を出していただく場合については、そのまま診療報酬は下がらないで継続をする、こういうような形になるわけであります。

○高橋(千)委員 今るる御説明されましたけれども、前政権のときに凍結まで持ってくることができた、まあ括弧つきの凍結でありますけれども、それは我々の成果だったと思います、大臣も含めて。

 そして、紙を出せばというわけですけれども、紙を出すというのはどういうことかというと、退院支援ですから、いずれ、九十日ちょっきりじゃなくても、退院支援をしますから、そのうち出ますから大丈夫ですよという意味じゃないですか。それを全年齢にやるというわけですから、廃止したと今、力を込めましたけれども、全年齢にこの追い出しの仕組みがあるということなんですよ。

 この後期高齢者特定入院基本料を議題にした中医協では、これまであった老人長期入院管理料、これに脳卒中と認知症は対象になるんだということを明確に書いたとわざわざ説明しています。そこで、御存じでしょうか、遠藤小委員長は御丁寧に、「当時野党だった民主党などはこれは凍結すべきだということで、今の厚労大臣なども明確に反対をされていたという、そういう案件である」というふうに議論をされています。

 あなたが指摘した、早期退院を迫る、病院追い出しにつながるこの基本料を全年齢に拡大することが、差別的扱いをなくすという意味でしょうか。

○長妻国務大臣 これは、前は、先ほども申し上げましたように、強制的に、七十五歳以上の方だけは九十日以上入院していたら一定の御病気の方はがんと下がる、こういうことだったわけでございますけれども、基本的に、文書を出せばそれが下がらないで済むということになりまして、ここに今、その文書のフォーマットを持っておりますけれども、このフォーマットで、どの年齢の方でも、お医者様が書いていただければ、それはそのまま継続するということで、仮に、不当にそれを強制的に何か下げるようなそういう運用があるとすれば、これは厳しく我々もチェックをしていくということになると思います。

○高橋(千)委員 ですから、出さなければ下がっちゃうというのが全年齢になるわけですよ。それをちゃんとチェックできるのかということになるわけですよ。これは皆さんが言ってきたこととやはり相反するものだと重ねて指摘しなければなりません。

 療養病床の削減や在宅介護の限界など、受け皿がないじゃないかという議論、私も随分やってまいりました。当時、舛添前大臣は、最初にベッドの長さを決めていて、身長の長い人が来たらそこから足を切るような話になっちゃってと、うまい表現をしています。結局、医療ではみ出す人は介護へ行けということではないですか。

 でも、介護はどうでしょうか。一月十五日、厚労省は、特別養護老人ホームの待機者が四十二万人と発表しました。在宅の待機者のうち、入所が急がれる要介護四、五の人は六万七千三百三十九人、一六%もいました。そのうち、問題の介護療養病床で待機している方は一万五百二十三人、医療療養病床も五万三千八百六十一人。これじゃ、結局だれかが切られます。医療難民、介護難民が生まれることになるではありませんか。

 改めて、特定入院基本料はやめ、療養病床削減計画もやめて、医療難民、介護難民を生み出す政策から基盤整備をしっかりやる政策に変えるべきではありませんか。

○長妻国務大臣 先ほどの状況報告書というのを病院が出していただければ、それはそのまま継続する。つまり、この書類を出すと病院は収入が維持されますから、基本的には出すべきなのに出さないということは余り想定できないのではないかと我々は考えておりますけれども、ただ、そこでもし実態と違うような運用がなされていれば、我々は厳しくチェックをするというのが一点。

 そして、もう一点は、今介護療養病床のお話がございましたけれども、病院は、御存じのように急性期のベッド、亜急性期というベッド、その次に医療療養病床、その次に介護療養病床ということで、そう分かれているわけであります。その介護療養病床をなくして、そして老健とか特養に移していこうという計画が進められておりますけれども、私は、その計画をつぶさに見ますと、あのスケジュールではそれは無理だというふうに感じております。

 その計画の猶予も含めて、きちっと本当に受け皿がないのに、そこの介護療養病床をその時期までになくしていくというのは、その方が、ではどこに行けばいいのかということになりかねないということで、ことしの夏に、どこに行くんですかという実態調査の結果がまとまりますので、そこでその猶予も含めて計画を練り直していくというふうに考えております。

○高橋(千)委員 余り官僚答弁だけをしないように、やはり総合的に、この間、厚労委員会の中でも大臣は、介護と医療の診療報酬が二年後には一気に来るのだということをおっしゃっておりました。しかし、それがいい意味での連携であればいいんだけれども、結局お互いに矛盾を押しつけるではだめなわけですよ。例えば今回、診療報酬で回復期リハを重点にしたわけですけれども、維持期のリハが置き去りにされているとか、こうした問題がまだ取り残されているということをやはりしっかり見ていただいて、実態調査もされるとおっしゃっておりますので、しっかりと追い出しがないようにお願いしたいと思います。ちょっと時間の関係で、残念ですが、ここはそれだけにしたいと思います。

 それで、一言だけ伺いたいと思うんですが、新しい制度について今盛んに改革会議でやられているわけですけれども、一月十二日の日経新聞では、厚労省が新制度素案として、六十五歳以上が原則として自営業者や無職の人が加入する国保に入る、現役世代は別勘定、こういう報道がありました。

 年齢区分を廃止するというのが、ここにもあるように大前提であるわけですけれども、まさかそれが残ったら困るなと思うわけですね。とうとう自分も前期高齢者かと思っていたら、いきなり後期高齢者と同じ枠になっちゃう。名前は違うけれども、別枠という仕組みが残るのかということは非常に困るわけですね。

 これはあくまでも新聞の報道だとおっしゃるかもしれないけれども、改革会議の議論の中でも、例えば、六十五歳以上の独立した制度を健保連が主張しているとか、公的年金を受給するようになったら新しい制度に入ると経団連が主張しているとか、連合は七十歳以上とおっしゃって、六十五歳も検討しますよということも言っていて、どうしても年齢で分けるという仕組みが出てくるのかなという気がしないでもないわけです。この点について、原則は同じですということで、一言確認したい。

○長妻国務大臣 まず、何か案が、提示をしたり固まったということは、これは一切ございません。

 私どもが心がけて検討をお願いしているのは、何しろ一定の年齢で区切ってお年を召した方だけを一くくりにして、それで保険をつくる、これが保険の急上昇を招くということで、国民の皆様から御不信をいただいた点であるので、そういう制度ではない制度ということ、あるいは、六原則というのをつくって、全部は申し上げませんけれども、今申し上げたようなことを中心に御議論いただいている、まだそういう段階でございます。

○高橋(千)委員 二〇〇〇年の国会で、高齢者を別枠とした制度をつくれという附帯決議がされた、そのときの提出者が民主党だった。やはりここに戻っていくのではないかということに非常に不安を感じています。

 きょうは菅大臣にせっかく通告をしていますので、一言だけお願いしたいと思います。

 この間、小泉構造改革による二千二百億円の抑制政策からの決別が言われてきました。厚労委員会の中でも、後期高齢者医療制度が医療費抑制ありきというのが最大の問題と指摘をされてきたわけです。

 〇六年の法改正のときに寸前まで行った議論が、医療費の伸びにキャップをかけるという、最初から頭を決めてしまうという経済財政諮問会議の議論で、当時の与党が踏みとどまりました。新政権は、OECD並みの医療費を掲げている以上、初めから数値を決めるというそんなことはないと思いますが、まず、それを一つ確認したい。そして、そのために高齢者をねらい撃ちにした抑制策というのは当然あり得ないということで、お願いいたします。

○鹿野委員長 菅財務大臣、簡潔に御答弁をお願いいたします。

○菅国務大臣 二千二百億、毎年削るということをやめた新しい予算を今提示しているわけです。個々の項目について、これをどうするこうするというのを私一人が決められるわけではありませんが、少なくとも、この間の、かつての小泉・竹中路線と言われたようなやり方は抜本的に変えていきたい、このように考えております。

○高橋(千)委員 抜本的に変えていきたいとおっしゃられました。

 本当に抑制政策と決別するんだということがやはりここで本当に試されると思うんです。後期高齢者医療制度をきっぱり廃止する、そこで試されるんだということで、国民も見ていますので、早期の廃止を訴えて終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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