日本共産党の高橋千鶴子議員は、二十五日の衆院予算委員会分科会で、公務災害認定問題をただしました。
高橋氏は、教員の過労死や過労自殺が公務上の労災と認定されず、裁判となる事例が多発していると指摘。二○○○年に自殺した静岡県の養護学級担任尾崎善子さんの遺族が、昨年十月に最高裁で勝訴した事例を示し、「文部科学省として、教員の過労死の状況や、認定をめぐる裁判の状況を掌握する必要がある」と提起しました。川端達夫文科相は、「大変大事な視点であり検討したい」と述べました。
過労死・過労自殺の労災認定基準は一般の労災も公務労災も同じですが、公務の認定率が極めて低くなっています。
高橋氏は公務では所属長(教員の場合は校長)の証明が義務づけられていること、過労死や過労自殺の場合、地方公務員災害補償基金支部が公務上と認定しても、基金本部との協議で公務外にされる事例が非常に多いことを指摘。「(所属長が証明しない場合は)一般の労災のように、直接基金支部に請求できる」、「(所属長が証明した場合は)基金支部の認定を尊重する」よう制度を改めるよう求めました。
小川淳也総務大臣政務官は、「ご指摘は共有すべきだと思う。参考にさせて頂きたい」と答弁しました。
(2010年2月28日(日)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋(千)分科員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めて川端文部科学大臣に質問させていただきます。
今、新政権は、子ども手当法案や高校無償化法案などを提出し、子供を社会全体で育てる方向へ大きくかじを切ろうとしております。その精神は当然共有できるものであります。
子供の豊かな育ちを応援する上で、学校現場はどうなのか。一人の教師との出会いは、子供の人生を決めるほどの大きな意味を持っております。しかし、今、教職員の心の病、病気休職がふえ続け、みずから命を絶つほど追い詰められていることは、一刻も放置できないと思います。
まず、資料の一枚目。これは文部科学省の調査でありますが、二十年度の教職員の病気休職者が八千五百七十八人、十年間で倍近くにふえております。そのうち、精神疾患による休職者数も急増し、千九百二十四人から五千四百人と二・八倍、病気休職者の三人に二人が精神疾患という状態になっております。
このような現状をどのように認識し、どう取り組んでいこうとするのか、まず、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○川端国務大臣 お答えいたします。
御指摘のような数字で、平成二十年度では、公立学校の教職員の病休職が八千五百七十八人、精神疾患による休職者は前年度から四百五人増加して五千四百人、このことは深刻な問題であると認識をしておりますし、精神疾患による休職者数は十六年連続増加ということでありますので、当然ながら、過去最高の数字を示しているということであります。
原因として、いろいろなことが考えられるんですが、一つは、非常に多忙であるという多忙感のストレス。それから、これは複雑に、全部関連するんですけれども、教員同士のコミュニケーション減少、適当な相談相手の人が周りにおられなかった。あるいは、生徒指導や教育内容の変化に、物すごく多岐にわたり複雑化しているので、なかなかついていけない。あるいは、保護者や地域住民の期待などに十分こたえ切れないというストレスなど。それから、そういう人の要望も実に多岐、多様化しているというふうな状況に置かれているということが複雑に関係しているのではないかなと。
さらに、年代別に見ますと、中堅以上の教員については、職務上の悩みとかライフサイクル上のいろいろな問題とが複雑に重なっている状況がありまして、若手の教員は、職務上求められている要求と実際の指導力とのギャップ、任用前に描いていた教職員のイメージと現実のギャップで自信を失ってしまった等々の報告もいただいております。
そういうことを踏まえて、メンタルヘルスの保持という観点からは、教育委員会に対して、会議や行事の見直し等々で公務を効率化したり、それから、各学校へいろいろ調査とか照会をするというふうな、事務的に非常に手間がかかるような仕事をできるだけ効率化してやってくださいということとか、職場環境としては、みんながコミュニケーションをとりやすい環境をつくるとか、それから、カウンセリング体制の整備ということで、早期発見、早期治療というものを指導しております。
先ほども重野先生にお答えしていましたけれども、いろいろな原因があるんですが、その背景にあるものを、いろいろなケースをクリアにしていく中で、そういうことが起こらないようにという対策をきめ細かくする、原因分析をして対応するということで、いろいろな教育委員会とも連携をとりながら、指導も進めてまいりたいと思っております。
○高橋(千)分科員 全教が昨年十一月に取り組んだ教職員要求・意識アンケートでは、働き方の不安について、体がもたないかもしれないと感じる、七六・八%、心の病になるかもしれないと感じる、六七・三%にもなっており、やはり働き過ぎの改善が待ったなしだと読み取れるのではないかと思います。
文部科学省が、平成十九年の調査で、四十年ぶりに教員の実態調査を行いました。そのデータの中でも、例えば、持ち帰り残業を除いたとしても、全体の三三%が一月に四十五時間を超える残業、いわゆる労基法で言うところの限度基準を超えているということでありますし、一日に五分から八分しか休みをとれていない、そうしたことが明らかになったと思います。四十年ぶりの調査でもあったということで、そのころの衆参の委員会でも、後で議事録を拝見しましたけれども、教員の働き過ぎということが熱心に議論されたのではなかったかと思うんですね。
問題は、その後の取り組みなんです。その実態調査をどう生かしていくかということなんですね。学校という残業代がない世界で、私も七年間おりましたけれども、労働時間をどう把握するかということ。少なくとも、私たちがサービス残業根絶通達と呼んでいる、平成十三年の四月六日、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置についてという厚労省の通達がありますけれども、タイムカードなどの時間管理をきちっとやりなさいということを言っているわけですね。文科省も、この趣旨を通達して職場に徹底しましょうということを言ってきました。
では、実際に、学校現場で、そうしたタイムカードやそれにかわる時間管理の仕組み、各都道府県でどのように取り組まれているでしょうか。
○鈴木副大臣 今おっしゃいましたとおり、労働基準法上も、使用者には労働時間の管理を適切に行う責務があり、教員についても適切に把握されることは必要だというふうに考えております。
それから、労働安全衛生法につきましても、週四十時間を超える労働が一月当たり百時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められるときなどは、労働者の申し出を受けて面接指導を受けさせなければならない、こういう観点からも、労働時間の管理というのは極めて重要だというふうに思っております。
文部科学省といたしましては、各学校において教職員の労働時間の適正な把握に努めるように通知を発出しております。とともに、各種会議を通じまして、各教育委員会に対して周知を図っているところでございまして、今後とも周知、指導を図ってまいりたい、このように考えているところでございます。
○高橋(千)分科員 今のお答えは、周知を図っていくということでしたので、どのような取り組みが始まっているかということはまだ把握をされていないという意味で受けとめてよろしいのかなと思います。
今、やはり少しずつ始まっていて、高校で十八、義務制では埼玉、大阪、兵庫、広島などで、記録簿とか、エクセル形式で記録をつけ始めたというところを聞いております。あと、例えば、持ち帰り時間をどう記録するかですとか、今話したように、とれない休憩時間をどう把握するか、そういうような工夫もよくされているようですので、やはり、紙を出した後の状況把握と現場に合った取り組みの奨励ということをぜひお願いしたいと思います。
そこで、昨年の春、公務災害で裁判を行って、頑張っている家族の方々と懇談をしました。私は、厚労委員会でも労基法改正案などでこの問題を取り上げてきたわけですけれども、やはり公務災害の認定が、とりわけ精神疾患や脳・心臓疾患、いわゆる過労死、自死などになると、なかなか認定してもらえない、この訴えが非常に多いわけであります。
その中で、尾崎善子さんという先生の話を聞きました。静岡県の養護学級の担任なんですけれども、二〇〇〇年四月に休職をし、八月にみずから命を絶ちました。この事件は、昨年十月、最高裁で勝訴をし、公務災害が確定をいたしました。しかし、遺族が基金支部に公務災害認定を申請し公務外と判断をされてから十年近い歳月がかかっているわけです。この判決を本当に生かして、同じようなことを繰り返したくないと思います。
そこで、大臣に伺いますが、尾崎さんのような学校現場の公務災害、過労死、自殺などの案件について、どの程度あるのか。また、裁判も、どの程度行われているのかを把握されているのか。あるいは、把握されていないとすれば、総務省とも連携し、つかんでいく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○川端国務大臣 済みません、今手元に、情報として、正確に把握、お答えできる数字を私は持ち合わせておりません。ただ、先生御質問のときに御指摘いただいた静岡県の事例は、見させていただきました。
それぞれの案件に関しては、それぞれの地方の、都道府県を含めた教育委員会等から情報提供を求めてはおりますが、一律に全部に調査をしたことはございません。
○高橋(千)分科員 今私がお話しした趣旨は、調査というよりは、まさに、情報をつかんでいただきたいと。先ほども、自殺、現職で亡くなった先生が多いという議論がされておりましたけれども、そこに至る背景をぜひつかみたいということを大臣もおっしゃったわけで、公務災害全体というデータはあるんですけれども、そのうち教員がどうなのかというデータが今詳細にないですので、我々がつかんでいるのもその一部でしかないと思うんですね。そういうことで、ぜひ要望したいと思います。それを一言、いいですか。
○川端国務大臣 非常に大事な視点だというふうに思いましたので、御提携も含めて、また検討してまいりたいと思います。
○高橋(千)分科員 ありがとうございます。
そこで、厚労省に伺いますけれども、平成十三年の十二月十二日、脳血管及び虚血性心疾患等の認定基準を厚労省が発表し、また、十八年の三月には、過重労働による健康障害防止のための総合対策などを発表してきたと思います。過労死で非常に多いのがクモ膜下出血なわけですけれども、こうした疾患と過重労働の関係を明確にしたことで、その後の認定数や率がやはり伸びたのではないかと私も認識をしているんですね。
ですから、これらの基準の意義、これはなるべく短くお話をいただくとともに、その基本の考え方というのはやはり公務においても同じだと思うんですけれども、その点、厚労省にぜひお願いします。
○山井大臣政務官 高橋委員にお答え申し上げます。
平成十三年以前の認定基準では、発症直前の異常な出来事を、短期間、つまり発症前一週間の過重業務というものに限定しておりましたが、平成十三年の改正により、長期間、つまり発症前の一カ月から六カ月間の過重業務に関しても労災として認定することとし、その目安となる時間外労働の時間数も示しました。
また、それ以外にも、労働時間以外の負荷要因も評価することとして、具体的には、不規則な勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、交代制勤務、深夜勤務等の認定基準に例示をしておりまして、労働時間とともに、これらの負荷要因を総合的に評価して、業務の過重性を判断することとしました。
○高橋(千)分科員 基本の考え方は公務においても同じだという、後段がなかったと思うんですが。厚労省に答えていただきたい。
○山井大臣政務官 とにかく、この十三年以降の改正のポイントということに関しては、今答弁させていただいたとおりであります。
○高橋(千)分科員 基本的に、公務災害においても同様の趣旨の通知を出していらっしゃると思うんですね。ただ、逆の現象が起きている。これが一つの目安となって、百時間を超えていなければあれですよとか、何か目安がむしろ厳しい方向に向かっているのが公務災害ではないのかという問題意識を持っているんですね。
それで、具体の話に入る前に、フローの図をつけておきました。資料の2です。左側が労災ですが、これは至ってシンプルであります。
まず、厚労省に伺いますが、労災においては、請求書に、事業主の証明を出す、そして、被災労働者が労働基準監督署に請求書を出すということで決定通知をもらうというフローになっております。しかし、実際には、事業主というのは要するに過労死の原因となる労働をつくった本人なわけですから、なかなか証明を得られるというのは考えにくい。そういう場合に、証明が得られなくても本人や遺族あるいは代理人などの申し立てで申請できると思うけれども、確認させてください。
○山井大臣政務官 これは、事業主等の証明がなくとも給付申請は可能というふうになっております。
○高橋(千)分科員 そこで、なぜ公務の場合はそうならないのかということなんですね。
見ていただくとわかるように、所属長から証明をもらい、任命権者の意見書までもらわないと支部まで申請できない仕組みになっております。教師でいえば、校長先生が所属長になり、任命権者というのは市町村などになるわけですね。そうすると、今お話ししたように、過重な労働をさせた原因は、自分が働かせ過ぎたんだ、あるいは仕事を与え過ぎたんだということを証明するというのはなかなか考えにくい。つまり、自分の非を認めることになるわけですから。
ですから、労災のように直接申請もできるようにするべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○小川大臣政務官 地方公務員の災害補償を担当いたします総務省でございますが、御指摘のとおり、法律の大原則から申し上げますと、所属長の証明を受けた上で申請をいただくという手続になっております。
ただ、ごくまれなケースというふうには把握をしておりますが、そういった証明を得ることが困難な場合にも、やはり人道的な観点から、証明書を受理するケースはあるというふうに承知をいたしております。
○高橋(千)分科員 人道的な観点からとおっしゃいましたけれども、手続をきちんとすればいいんじゃないでしょうか。
例えば、文京区の先生の話では、一九八七年に申請をするんですけれども、校長先生が出してくれない、ずっと放置されている、こういうことがあるわけですね。仙台で、十年かかって勝訴した方の場合ですと、任命権者である市教委が、あなたのだんなさんだけが苦労したわけではない、家庭の不和があったのではないか、公務災害という確証がない限り申請書は出さないとまで言われたわけです。本来、任命権者というのは公務災害の申請書を出すに当たって指導しなさいと書いてあるわけですよ。指導する立場の人が、指導というのは要するに出すなということである、こういう実態は絶対許されないと思うんですね。
今、人道的にとおっしゃるんだったら、ケースとして、労災と同じように直接請求できるようにすべきではありませんか。もう一度。
○小川大臣政務官 御指摘の趣旨はやはり共有すべきだなというふうに感じます。
ただ、一方で、やはり所属長にとっても大きな関心事だと思います。所属の人間がいかなる形であれ公務あるいはそれに関連して障害を負うというのは大変大きな関心事だと思いますので、そうした面からも十分に事態を把握していただく必要もございますし、災害補償に当たっては、正確さなり、公正さも期さねばなりません。そこのバランスを考えるに当たって、御指摘の点は十分共有をさせていただきたいと思います。
○高橋(千)分科員 ぜひ前向きにお願いしたいと思います。意見を聞くのはいいと思うんですね。ただ、請求権が封じられると困るということだと思うんです。
過労死の場合は特に、表にも書いたように、必ず基金本部と協議をすることになっております。資料の4は、その協議がどうなったかという表をいただきました。非常に見にくいんですけれども、支部長が公務上、つまり公務災害であると認めたものが、協議したらどうなったか。「上」「外」と書いてありますが、認めたもの、認めていないもの、こういう内訳になっております。
見ていきますと、例えば、支部長が公務外である、公務災害ではないと認めたものを、本部との協議で、いやいや、これは公務上ですよとひっくり返したのが平成十九年にたった一件ございます。これは協議の成果かなと思うんですけれども。しかし、あとは、圧倒的にその逆であります。協議をするということは、やはりどうしても渋い結果が出るということになると思うんですね。
そこで、先ほど政務官がお話ししてくれたように、所属長の意見も大事であるとおっしゃいました。いろいろな案件を聞いていますと、いろいろあっても校長がちゃんと証明書を出してくれた、この人は明らかに過労死なんだと言ってくれた、あるいは、いつも診ているお医者さんが、仕事をとるか命をとるか、そこまで言って証明書を書いてくれたり、そういう経過を経て支部に上がってくるわけですね。
そうしたら、逆に、今度は、意見を聞いたんですから、現場の人が一番よくわかっているんだから、それは認めるべきだ、信頼するべきだ。幾つも幾つも、上に行って却下、却下ということをやめるべきだと思いますが、いかがですか。
○小川大臣政務官 大変意味のある資料をお取り上げいただいたことに感謝を申し上げたいと思います。
これは、上側が脳、心臓関連の疾患でございます。下側が精神障害または自殺事案。これは合わせて百件前後でございます。実は、公務災害の認定件数が年間約三万件ということでございまして、三万件のうち、この百件が本部協議をいただいている。この脳、心臓関連の疾患あるいは精神疾患というのは、やはり事案の蓄積が非常に限られておりまして、四十七支部に任せっきりですと、支部の判断も非常に困るという面もございます。
委員の御指摘の趣旨は十分踏まえたいと思いますが、いずれにしても、そういった事情と十分兼ね合わせた判断が今後必要になってこようかと思いますので、きょうの質疑の趣旨は、十分参考にさせていただきたいと思います。
○高橋(千)分科員 過去の委員会の答弁などを見ますと、今おっしゃったように、本部の専門的な意見が必要なんだというふうなことが、るるお話があるわけですけれども、ただ、現場よりも東京の本部のメンバーが、東京に全部行かなきゃいけないわけですが、そこまで専門的なのか、あるいは、現場をそんなによく知っているのか、現場から話を聞いているのかということは本当に言えると思うんですね。
平成十九年の三月二十日に、自民党の政務調査会司法制度調査会というところが「二十一世紀社会にふさわしい準司法手続の確立をめざして」という文書をまとめております。簡素で効率的な政府という考え方ですから全部一致するわけではありませんが、そこで大事な指摘をしているんですね。今のような準司法手続機関について、「その手続の主宰者・判断者が、行政機関の通常のローテーションの一環として任命されており、法曹有資格者の割合が極めて少ないため、判断者としての中立・公平さに欠けるとともに、法的専門性にも乏しい、」そのために、審理の大幅なおくれだとか、判断を誤り、「裁判所でその判断が覆されたりする」、そういうことが起こっているという指摘をしていて、これは、私、実は非常に言い得ていると思うんですね。
基金も、基金本部も、代表委員の三者は、知事会、市長会、町村会の各代表で、充て職であります。理事長、常勤理事も総務省からの天下りであります。そういうことにしっかりとメスを入れて改善をするべきではないかとお話をして、時間の関係がありますので、先を急ぎたいと思います。
実は、先ほど大臣にお話を聞いていただいた静岡の尾崎さんの場合は、最高裁で勝訴をしているわけですけれども、養護学校の教諭の資格のない方が養護学校から来た子供を養護学級の別の障害を持っているお子さんと一緒に体験入学をさせるということで、過度なストレスを生じるわけですね。ただ、本人は、自分はこの仕事を本当に前向きに、いい機会だと思って頑張りたいと言って始めるわけですけれども、予想外な事態がいろいろ起きて、例えば、刃物を振り回して、二人の別の子供さんが襲いかかられて恐怖に震えるですとか、そういう中でストレスをぐっとためていくわけですね。
そのときに、東京高裁は、きちんと、それは仕事のストレスと今回のうつになり自殺になったことが関係しているということを認めるわけですけれども、最高裁はそれを追認して勝訴をするわけですが、上告するときに基金は、いや、一般の養護学校の先生だったらこのくらいは普通でしょうということを言うわけですね。それを裁判では、結局、一般の人というだけではなくて、尾崎さん個人にとっては、きちょうめん過ぎると言えばそれまでかもしれないけれども、それだけではなくて、その性格、尾崎さんにとってはとてもつらいんだということをきちんと評価をして認めてくれたという点では、物すごく画期的な裁判だったわけなんです。
ですから、こういう最高裁の成果というのがやはりきちんとその後の行政に生かされるべきだと思うわけですね。その点で、残念ながら、地公災は繰り返し最高裁で争うという事件が起こっているわけです。
厚労省にまた確認をしますけれども、労災では、現在、高裁で国が敗訴した場合、上告はしていないと思います。事実はどうかということと、また、なぜそういう判断をしているのか、伺います。
○山井大臣政務官 平成十一年以降、国側からの上告は行っておりません。
○高橋(千)分科員 なぜそうなったのかと聞いたんですけれども。
○山井大臣政務官 それは、上告する理由に当たらないと考えたからであります。
○高橋(千)分科員 平成十一年以降とおっしゃいましたよね。私、これは非常に大事だと思っているんですね。民事訴訟法の改正があった。そして、憲法違反であるとか法律に照らして違反であるとか、そういう特別な理由がない限り、いわゆる事実関係である限りはもう上告をする必要がないのだという判断だという説明をいただきましたし、後で私も条文を読んでみて、そう書いてあるなと思ったわけです。
そうすると、地公災だって、民事という点では、裁判になってしまえば民事で同じことなわけですね。事実関係は、そこまで何度も何度も重ねてもうわかっているわけです。少なくとも、高裁で決まって、原告の訴えが認められたときに、まだそこをそれ以上争う必要があるのかということを一言伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。総務省に。
○小川大臣政務官 恐れ入ります、お尋ねをもう一度いただけたらありがたく存じます。
○高橋(千)分科員 最高裁まで争っているケースが非常に多いわけです。だけれども、今お話があったように、労災では平成十一年以降はもう上告をしていない、つまり、高裁で確定しているということなんですね。事実関係なのでそれ以上争うことがないという判断だと私は聞いているんですけれども、地公災だって同じことが言えるのではないか。裁判を長引かせるべきではないと思いますが、御所見を伺いたいと思います。
〔津島主査代理退席、主査着席〕
○小川大臣政務官 大変恐れ入ります。
事実関係をよく調べた上で正確にお答えすべきだと思いますが、いずれにしても、きょう通して、御質疑の趣旨は、よくよく頭に入れておきたいと思います。
○高橋(千)分科員 ありがとうございます。ぜひ御検討をいただきたいと思うんですね。
先ほど来、本部とわざわざ協議をしなければいけないんだという話をしてきました。また、現場の方がよく知っているじゃないかという話もしてきました。
実際に、やはり本部が本当にそういう不当なことを繰り返し言っているわけですよ。学校で例えば教師への暴力事件が頻発している、そういう中でストレスで自殺をしてしまった、そういう案件があったときに、みんなも殴られているんだから大したことないだろうということを基金本部は言うわけですよ。あるいは、本人が弱いからだと言ってみる。二十六年も前の病気、ちょこっとやったものを見つけ出してきて、あなたのせいでしょうと言う。
だから、そういうことは現場のいわゆる所属長の方がよく知っているのに、基金の本部の人が専門家ですよという顔をしてそういうことをやるのだ、ここを改善してほしいと思うんです。
最後に一言だけ。
私が心配しているのは、なぜ地公災の方が認定が厳しいのだろうかというときに、ことしの四月から地公災基金にメリット制が導入されると聞いております。都道府県と政令市などで始まりますけれども、収支状況に応じて最大で二〇%プラマイ、負担金をふやすか減らすかということが決まっています。今わかっているのでは、都道府県で一番ふえるのが北海道です。一八・二%、一億二千二十六万円負担金がふえます。次が京都府で一五・四%、五千百万円です。二〇%が最大ですから、振り幅がかなり大きい。
つまり、災害認定がふえれば収支が悪化しますよね。そうすると、どうしても災害隠しにつながるおそれがある。この点、いかがですか。
○小川大臣政務官 この点も、大変重要な御指摘だと受けとめております。
まさに、平成二十二年から御指摘のような制度改正を行う予定でございますが、このことが、間違っても、認定を抑制したりとか、あるいは、要らぬ配慮が働いたりとかということにつながることは、本意ではありません。
しかし、一方で、ある種の保険数理といいますか、財政的にも成り立たなければならないわけでありまして、各自治体から大変多額の負担金をいただいている以上、それが固定化する傾向があるとすれば、これは民間の労災にも昭和二十年代から既に導入されているというふうに把握をしておりますが、負担と給付の均衡というのは、合理的に許される範囲で必要な調整を図ってまいりたいと思っております。
○高橋(千)分科員 地方の財政が厳しい中で、それが労災隠しにならないように、しっかりお願いいたします。
時間になってしまいましたので、最後に、三省が本当に連携をとり合って、過労死をなくす、公務災害を本当に減らしていくために、きょう言いたかったんですけれども、基準の見直しも含めて、ぜひ御検討されますようにお願いして、終わります。
ありがとうございました。