国会質問

質問日:2010年 3月 11日 第174国会 災害対策特別委員会

チリ地震による津波被害対策

 日本共産党の高橋ちづ子議員は11日の衆院災害対策特別委員で、チリ地震による津波で被害を受けた養殖漁業への支援強化を求めました。現場調査を踏まえた質問に議場から「漁民の声だな」と声がかかりました。

 高橋氏は、被害を受けた宮城県塩釜・松島地域は全国のカキの種苗の8割を生産していて全国の漁業に与える影響も大きいと指摘し、政府の認識をただしました。中井洽防災担当相は「被害を幅広く把握し、できる限り国としてお手伝いしたい」と答えました。

 さらに高橋氏は、養殖漁民が、自分の養殖設備が壊れ海に流されているのに、まず真っ先に公共の航路確保のための浮遊物の片づけにあたったことを紹介。「せめて1日500リットル消費する(漁船の)ガソリン代の補助があってもいいのではないか」「(支援の)スキーム(枠組み)がないなら作るべきだ」と提起したのに対し、中井担当相は「検討させて下さい」と答え、補助も視野に置く考えを示しました。

 高橋氏は、「壊された養殖設備を直し収入が出るには3~4年かかる」と述べ、漁協が検討している漁業施設リースの試みや、公的融資制度への利子補給に対して援助をすることを求めました。

(2010年3月12日(金)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 日本海沿岸の各道県で数百名の命が奪われた一九六〇年のチリ津波から、ことしはちょうど五十年目であります。明治の三陸大津波から合わせて人生三度も津波を経験されたという方もまだたくさんいらっしゃいます。

 今回の津波では、人的被害がなかったとはいえ、養殖漁業へ本当に甚大な被害がございました。一日も早い復旧や、また防災対策へ国会としても力を尽くしていきたいと思います。私も、気仙沼、塩竈、石巻などと回ってまいりました。また、先ほど激甚指定に向けた大臣の決意があったと思われますが、大いに期待をしているところであります。

 今回の被害についてですけれども、例えば、台風にしろ低気圧にしろ、漁業だけではなく、農業や、あるいは公共インフラなど、さまざまな被害がある。そうした中で、今回はかなり限定的な、養殖漁業の部分に限定的な被害でありました。ですから、どうしても被害額ということで見ますと小さく見えてしまうわけですね。ですが、漁業というのはやはり加工や流通全体を合わせて地域経済という影響がございます。

 それから、先ほど大臣、カキのお話をされましたけれども、この塩竈、松島地域というのは全国のカキの種苗の八割を生産している地域でもあります。ですから、ここで、種苗がどうだったかということよりも、種苗をつくっている漁業の皆さんがこれでもうあきらめてしまうということがあると、全国の漁業に与える影響も大きいのだということが言えると思うんですね。そういう点で、今回の被害をどう見るかという大臣の認識をぜひ伺いたいと思います。

○中井国務大臣 私も、若いときから水産の問題について発言をしてきた議員の一人でもありますから、水産業、どういう御苦労があって、どういうお金の使い方、どういう時間のかかり方というのを承知いたしております。今回も、被害額が日を追うに従って膨れている、これはやはりそういう業界の状態にあるのだろうと思っております。

 そういう意味で、間違いなく、被害というものを幅広に確かめて、そしてできる限り国がお手伝いできるように頑張って発言をし、行動したいと思っています。

○高橋(千)委員 力強い御答弁、ありがとうございました。

 そこで、少し具体の話に入っていきたいと思うんですけれども、まず、海上保安庁にきょうお願いをしておりますけれども、今回の大津波警報を受けて保安庁がどのような仕事をしたのか、伺います。

○小山内政府参考人 海上保安庁交通部長でございます。

 海上保安庁では、今般のチリ中部沿岸地震に伴う津波来襲後、巡視船艇、航空機により港内や沿岸の被害状況調査を実施し、松島湾内においては養殖施設や漁具等の流出が認められたことから、船舶交通の安全を確保するため、地域航行警報を発出して、航行船舶に対する注意喚起を無線やインターネットにより広く行うとともに、ファクス、電話により、船舶代理店や漁協等を通じて、海事関係者、漁業関係者などに対して個別に詳細な情報提供を実施いたしました。

○高橋(千)委員 確認をしますけれども、なぜこういう質問をしたかといいますと、今の行動については、例えば、塩竈の漁民の皆さんがおっしゃるのは、まず真っ先にやったのは航路の確保だという表現をされたわけです。先ほど小野寺委員からの紹介もありましたけれども、みずからの養殖施設が破壊をして、その処理に追われるわけですけれども、どんどん潮の流れで漂流もしていくわけで、大変な疲労感があるわけです。しかし、まず航路をあけなければならないのだということで、真っ先にその作業に取りかかって大変だったということがあったんですけれども、なぜそれが必要なのか、その意義について、一言お願いいたします。

○小山内政府参考人 先生御存じのとおり、この地域は多数の入り江がございまして、大小の港湾がございまして、また地域の方の生活も、船が生活の足にもなり、あるいは地域産業の大事な手段ともなっておりますので、この地域で船舶交通が滞るということは地域経済にも影響がございますので、海上保安庁といたしましては、航路の確保というのが第一任務になります。

○高橋(千)委員 地域交通が滞るということで、非常に重要な意義があったということが確認をされたのかなと思うんです。

 それで、保安庁が実際に出されました「地域航行警報」という名のファクスをいただきました。一部読み上げますと、「本州東岸、仙台塩釜港塩釜区 次のとおり、漁具等の漂流がありますので、付近航行船舶は注意してください。」と、最初のものは「注意」です。次の航行警報によりますと、「漂流物」となっております。「本州東岸、気仙沼港内に多数の養殖施設が漂流しています。」次が問題です、「漂流位置は潮位の変動により移動しています。」。

 つまり、警報が来るんですけれども、どこにあるかはわからないわけですね。何の目印もない。そういう警報を受けて、とにかく漁民の皆さんは捜しに行きます。しかし、半日捜しても、湾内は広くて全く見つからないのだと。疲労感だけがたまり、しかしガソリンは一日に四百リッターから五百リッターも消費をするということになっている。

 そうすると、先ほどお話があったように、公共の航路を確保するために、みずからの作業をなげうって協力をしている。みずからの責任でもない津波のために、そういう協力をせざるを得ない。せめてガソリン代の補助とかがあってもよいのではないか。いかがでしょうか。

○山縣政府参考人 港湾内に流出いたしました浮遊物の撤去に係ります燃料支援策についての御質問でございますが、津波等によりまして流出いたしました浮遊物につきましては、その所有者がみずからの責任で撤去することが原則となってございます。今般の津波で流出いたしました養殖いかだの撤去につきましては、かかる原則を踏まえて行われておりまして、それに対する国土交通省関係の支援制度はございません。

 以上でございます。

○高橋(千)委員 済みません、通告はないんですが、大臣に、今のやりとりをちょっと聞いていただいて。

 納得がいかないわけですよ。公共交通の確保のために協力をしているのに、その浮遊物を片づけるのは自分の責任だと。どう考えてもおかしい。スキームがないのであれば、何らかのスキームをつくるべきではないかと思います。ぜひ検討されたいと思いますが、いかがでしょうか。

○中井国務大臣 それぞれの役所にはそれぞれの役割があって、考えもあるんだと思います。しかし、わかっておるものは当人が片づける、わからないものは災害、防災の方で何とかするということだけで本当にこういう災害に対応できるかどうか、一度検討させてください。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。

 それから、先ほど農水省の方から、施設の激甚の指定の問題について、大体、今、全国の養殖漁業の所得額の二%ということで、二十数億でありますから、基準額は超えそうであるということがありました。

 これに対しては非常に期待をしているところですけれども、しかし、実際の復旧の段になりますと、それは再度取得という、被害の積み上げとはまた逆の、同じではないわけですよね。つまり、減価償却などが係ってきまして、同じだけの基準で補助があるわけではないという問題がございますが、いかがでしょうか。

○舟山大臣政務官 お答え申し上げます。

 仮に激甚災害に指定されたときの実際の支援については、今御指摘のとおり、減価償却分を除くというような算定になるわけでありますけれども、そこはやはり、しっかりとそういう基準にのっとって対応することになるのではないかと思っております。

 ただ一方で、今回の災害に当たって、もちろんその激甚災害の指定での対応もあるわけですけれども、もう一つ、共済での対応、またはさまざま金融措置も講じさせていただいております。

 特に、災害復旧の関係の資金、かなり低利の資金が幾つかありますし、もう一つは、農林漁業セーフティーネット資金、これは貸付限度額が三百万円なんですが、かなり多くの、たっぷりとした融資枠も設けさせていただいておりまして、それこそ天災融資法での融資よりもかなり条件がいいような形で借りられる、そういった資金も用意しておりますので、そういった資金面、共済、それから激甚での対応、さまざまなものを組み合わせて、しっかりと現場の声に対応していきたいと思っております。

○高橋(千)委員 共済の加入率が悪いということは先ほど来お話があったわけでありますので、そこはやはり実態に応じて、結局、再取得をしなければ意味がないわけですから、そこに応じた支援ということをぜひ考えなければならないと思うわけです。

 例えば、大船渡漁協では、今、施設を漁協として買い上げて、リース方式で漁民に貸し出すということを考えていると聞いております。漁業者の高齢化が進み、これをきっかけに漁業を続けられなくなる人が出てくる可能性も大きい、あるいは、ホヤなどは収入が見込まれるまでに三、四年かかるために、若い人でも再建には負担が大きい、何とか漁業を続けられるようにそういう施設が必要なんだということをおっしゃっています。このことを、宮城県の漁協でも、こういう方式ができないのかなということを今考えていらっしゃるということなんです。

 そうすると、例えば、漁協と県がこうした施設をつくってリース方式にするですとか、さまざまな知恵が今回出てくるし、出すべきだと思うんですね。そういうものに対して、例えば、強い水産業づくり交付金の拡充ですとか、さまざまな方法で対応することもこれありということで、ぜひ一言お願いします。

○舟山大臣政務官 御指摘のとおり、国としましても、復興に向けた漁業者の取り組みを積極的に支援していく考えであります。

 ただ、今の仕組みの中でなかなかリースでの対応は難しい状況でありますけれども、共同利用する養殖施設については、強い水産業づくり交付金による助成が可能でありますし、これについては、都道府県が地域の事業要望を取りまとめて申請いただくという仕組みになっておりますので、関係県、特に今回、さまざまな不測の事態で被害が生じておりますけれども、そういった要望も受けて、可能な限り対応させていただきたい、そんなふうに考えております。

○高橋(千)委員 国も大いに知恵を使っていただきたい。国がリースをするわけではありません、漁協がしっかりと整備をして、そこにそういうリースということもまたこれありということでありますから。そういう知恵を大いに応援する、本来、民主党さんがおっしゃっている地域主権ということにも沿うものであるということで、ぜひ提案をしたいと思うんですね。

 もう一つ、地域の知恵を応援しようということで、雇用の面で今回提案されているものがございます。

 例えば、塩竈市では、先ほど、ごみという表現がございましたが、確かに廃棄物といいますと環境省の予算が使えるということは承知をしているところですけれども、しかしその中には、ブイがあったりとかアンカーがあったりですとか、まだ使えるものがあるんだと。その仕分けに厚労省の緊急雇用対策を活用するということを考えているということをおっしゃっていました。

 そういう発想というのは、別に廃棄物の仕分けというだけではなくて、例えば、ダイバーを雇用して、水中の廃棄物や海産物のこんがらがっちゃったものを処理するですとか、さまざまな知恵ができてくるのではないかなと思うんですね。そういう雇用に結びつけていくことや、あるいは、かつてはよくあった救農土木の漁業版みたいなものがあってもいいなということも思うわけです。

 なぜかというと、生活が大変だ、当面復旧しても、実際に収入が得られるまで二、三年かかるということもあって、そういうことも考えて、こういう雇用の対策を活用するということもあるなと思うんですが、いかがでしょうか。

○山井大臣政務官 お答え申し上げます。

 御指摘のような事業については、緊急雇用創出事業というのは、自治体が行っている既存の事業の振りかえとならず、新たな雇用を生み出す事業であれば対象になり得ますので、各自治体の事業計画に盛り込んだ上で、実施していただきたいと考えております。

○高橋(千)委員 こうした制度の活用についても積極的に周知や、あるいは知恵の出し方について援助をしていただければいいかなと思います。

 先ほど融資の話もございましたけれども、これに対しても、例えば宮城県の水産業災害対策資金制度、〇六年十月の低気圧のときには、やはり今言った生活維持に三百万、そして全体の復旧事業などを合わせて一千万の枠で県が制度をつくっております。そういうものに対して県と漁協が一%ずつ利子を出そうよとか、いわゆる利子補給をやったら国も少し乗ってほしいな、そういう要望も出されているわけです。

 こういうスキームも、低利の融資があるからというだけではなくて、利子補給を地元もやるから国もやってほしいという声にもぜひこたえてほしい。これは時間がありませんので、要望にして終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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