国会質問

質問日:2010年 3月 19日 第174国会 厚生労働委員会

雇用保険法等改正案、地域職業訓練センター廃止問題

 日本共産党の高橋ちづ子議員は19日の衆院厚生労働委員会で、全国のコンピュータ・カレッジ(11ヶ所)と地域職業訓練センター(82ヶ所)を2010年度末で廃止する厚労省の方針を撤回するよう求めました。

 高橋氏は、両施設について「事業仕分け」で廃止になったといわれているが、実際はその前日の昨年11月10日、長妻昭厚労相自らが廃止の決定を公表していると指摘しました。

 もともと、前政権では一律廃止ではなく、利用実績などの業務改善目標を達成すれば存続する方針だったことから、青森のコンピュータ・カレッジなど各施設が懸命に努力してきた渡橋長。「それなのに、大臣ひとりの判断と一片の通知によってはしごをはずされた」と批判しました。

 高橋氏は、岩手県の諒版地域職業訓練センターでは、地域で大企業の工場閉鎖が相次ぐ中で利用者が二割以上増えたことなどにも触れながら、「いまほど地域密着の職業訓練が必要なときはない」と強調しました。

 長妻厚労相は、職業訓練における国の役割については「特化した目標を果たしたい」と答弁。高橋氏は「いまのような深刻な雇用・失業情勢の中でこそ、実績も中身もある公的職業訓練を生かし、雇用につなげるべきだ」と主張しました。

(2010年3月21日(日)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 全国十地裁で三百八十三名の原告が争っているB型肝炎訴訟において、三月十二日、札幌地裁で和解勧告が出されました。和解協議に当たり、救済範囲をめぐる本件訴訟の各争点については、その救済範囲を広くとらえる方向で臨むとの指針が示されたことは、命の残り時間と競争するように闘ってきた原告や支援者を大きく励ましました。

 大臣に伺います。一日も早く和解協議につくべきですが、御決意をお願いいたします。

○長妻国務大臣 先日も、総理、官房長官、私、仙谷大臣、菅副総理等が集まって、この対応に向けては政府内で万全の態勢で取り組んでいこうというような話し合いをいたしました。

 次回の期日が五月十四日と聞いておりますので、次回期日に向けて、政府部内で総合的に検討、調整を進めていきたいというふうに考えております。

○高橋(千)委員 きょうは時間がないのでこれ以上は聞きませんけれども、勧告は、具体的な金額の提示ではなく、まず協議のテーブルに着けということであります。ですから、まず、ためらいなくそのことを表明されればいいと思うんです。

 そもそも、集団予防接種によるB型肝炎感染については、〇六年の最高裁で国の責任を認めています。本来ならそのときに救済されるはずだった方たち、あるいは、その時点でもっと国が肝炎検査や医療費助成などに踏み切っていれば重症化は防げた方たちも多数いらっしゃるわけです。だからこそ、五月十四日までなど、あと二カ月も時間稼ぎをするべきではありません。このことを強く要望して、一日も早い決断をされることをお願いしたいと思います。

 さて、雇用保険法の議論に入ります。

 ちょうど一年前、雇用保険法改正が全会派一致で成立をし、当時の野党三党が提出していた求職者支援法案、あるいは私も修正案の提出をいたしましたが、これらも考慮した附帯決議が採決をされました。その中で、今回、雇用保険の適用要件を六カ月以上から三十一日以上に緩和することなどは評価できると思われます。同時に、失業者の四人に一人しか給付が受けられていない、世界的に見ても低い到達、これを根本的に変えることは引き続く課題ではないでしょうか。

 雇用保険二事業は、今年度の収入五千百九十九億円に対し、雇用調整助成金だけで六千六百二十九億円、既に上回っているわけです。今回、失業等給付の方から四千四百億円借り入れても、収支を黒字化するところまで行きません。

 そうした中で、労政審雇用保険部会からも事業費全体の絞り込みを要求され、総務省の行政評価、あるいは事業仕分けでもターゲットになってまいりました。しかし、失業の予防、雇用の安定、能力の開発という二事業の三本柱は、今日の雇用失業情勢を改善するためにも本当に重要だと思いますが、率直に言って、大臣は今後どのような見通しを持っているのか、伺います。

○長妻国務大臣 雇用調整助成金は、言うまでもなく、これが仮になければ失業率が上がっているということもあろうかと思います。景気がよくなるまで、失業という状況にならないで、企業の中で休業補償等に補助していくということでありまして、要件緩和もさせていただきましたので、金額がこれからかなりふえてくるのではないかというふうに思いますが、それについて怠りなく準備をしていくということであります。

○高橋(千)委員 今聞いたのは、雇調金をどうするのかという質問ではないんです。二事業のあり方をどうするのかということを聞いたんです。時間がもったいないので、端的にお答えください。

○長妻国務大臣 二事業につきましては、先ほどもお答えを前のところでしましたけれども、雇調金以外の事業もやっているところであります。

 これについて、総務省からも先日も勧告を受けたということで、ここの部分は、過去の経緯からいって、いろいろな無駄も指摘されている部分でもありますので、これは厳格に費用対効果を見て事業を峻別するということも必要だというふうに考え、省内でも今、省内事業仕分けというのをしておりますので、そこでも厳しく、見直すものは見直すという姿勢で取り組んでまいります。

○高橋(千)委員 本当は役割に触れてほしいということを通告しておりましたけれども、残念ながら無駄の指摘だけでございました。

 私は、二事業の中に、この間指摘をされてきた天下りやあるいは無駄遣い、これが多数含まれていること、ここに徹底してメスを入れることは当然のことだと思います。しかし、国民から喜ばれている財産や施策まで無駄遣いと切り捨てることは、本末転倒ではないでしょうか。

 一言でお答えいただきたいと思います。独立行政法人雇用・能力開発機構が設置している地域職業訓練センター及び情報処理技能者養成施設、コンピューターカレッジ、これらの廃止を決めたのは長妻大臣自身ですね。

○長妻国務大臣 今申し上げた雇用二事業の観点から、国と地方の職業訓練のあり方はどう役割分担するのか、あるいは民間との役割分担というような中で、これは廃止ということではありますけれども、建物自身が直ちになくなる、事業がなくなるということではありませんで、地方自治体への移管をお願いして、一定の要件で、地方自治体で必要性がある部分は運営をいただきたい、こういうことであります。

○高橋(千)委員 今私が指摘をしたのは、大臣自身が廃止を決めたということなんですよ。

 資料にあるように、コンピューターカレッジは全国十一カ所、地域職業訓練センターが八十二カ所、突然の廃止通知に全国から怒りと存続を求める陳情が寄せられている、このことはよく御存じだと思います。また、本委員会の各委員のところにも届いているはずです。

 私は最初この話を聞いたときに、自治体の皆さんは、事業仕分けによって廃止になったと言われました。しかし、事実は、事業仕分けがあったのは十一月十一日、大臣が会見で廃止を表明したのはその前日でございます。もともと、自治体から賃貸料を取り、リース支援などに限られているこの両事業の予算は、わずか十六億円であります。つまり、何もこちらから差し出す必要はなかったわけです、仕分けの対象にまだなっていなかったわけですから。そのことを言いたいわけです。

 まず、事実関係をちょっと局長にお願いしておきたいんですけれども、独立行政法人整理合理化計画、あるいは平成二十年十二月二十四日付閣議決定「雇用・能力開発機構の廃止について」など、この間、方針が出される中でも、この二つの施設については、一律廃止ではなく、事業改善を求め、利用実績が改善しなければ廃止も含め見直すという意味であったと思いますが、いかがですか。

○小野政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、独立行政法人整理合理化計画、それから平成二十年の「雇用・能力開発機構の廃止について」閣議決定、この段階で業務改善目標をつくりまして、業務改善目標をクリアしている施設につきましては機構の業務として引き続き存続をする、下回っているものについては機構の業務として廃止をし、自治体等への譲渡を進めるということでございました。

 昨年の秋には、先ほど大臣から御説明ありましたように、民間、自治体にゆだねられるものはできるだけゆだねていく、また、国、独法につきましてはさらにスリム化の徹底を図っていく、こういう方針のもとに、機構の業務としては廃止をし、地方自治体への譲渡を進める、こういうことになったということでございます。

○高橋(千)委員 今、確認ができました。

 この間の方針によって、目標があるわけですけれども、それを達成できれば、機構が廃止になっても次の機構に移管をして継続するという方針であったと思います。

 平成二十年の二月十三日付内簡によって、コンピューターカレッジは充足率七〇%以上として事業改善を求められ、その達成のために各施設は頑張ってまいりました。ところが、翌二十一年三月五日では、この目標を一年前倒ししなさい、二十一年度で達成をしなさいと言われたわけです。それだけでも大変むちゃな話でありますが、青森、北上は目標を達成しました。また、未達成であっても、いわき、久留米、諫早など、二十二年度の充足率で再度判断することとしていたわけであります。

 ここで、青森の陳情書にある資料が二でございます。アンダーラインが施設の方で引いてありまして、見ていただければわかると思いますが、年平均九十三名の入学生であった。これは百人の定員でございますので、非常に実績が高いわけです。また、就職率の平均が九二・八%、IT関係でも四二・二%など、るる実績が紹介をされています。また、資格取得なども全国トップである、そうしたことが書かれているわけです。これは、全国一、二の就職難を誇る、不名誉ではありますが、そういう中で、本当に重要な役割を果たしているということは一目瞭然だと思うんです。

 機構が廃止されてからも雇用支援機構に移管されることが決まっていたとして、教職員は、これまでの努力と積み重ねてきた実績が評価されたことを喜ぶと同時に、今後の人材育成に向け、気持ちを新たに、カリキュラムの見直しや機器構成の検討に着手し、鋭意作業を進めてまいりました、このように述べているわけであります。

 ところが、昨年の年末、十二月二十五日、廃止の通知であります。資料の三番目につけておきましたが、事業改善に取り組んでいただき、目標を達成していたところです、しかし、今般、二十二年度末をもって廃止し、建物の譲渡を希望する自治体等に対しては、これを譲渡することとなりましたと。

 これまで言われて頑張ってきたことを全く無視して、大臣の会見と一片の通知で廃止を決めたわけです。何の合理性もありません。廃止を撤回すべきではありませんか。

○長妻国務大臣 これは、先ほども申し上げましたけれども、この通知にもありますように、国の事業としては、「今般、平成二十二年度末をもって廃止し、」というふうに書いてございますけれども、必要のあるものについては、その建物、中の設備などを、譲渡を希望する自治体にお渡しをしてやっていただくということであります。

 今、自治体が譲り受けやすい条件にしてほしいという御要望もいただいておりますので、我々としては、できる限り自治体の要望に沿うような、そういう譲渡要件をつくっておりますので、それを提示して、自治体で必要性があるものについては継続をしていただくということであります。

 その中で、我々としては、全体の、国が関与すべき職業訓練ということで基金訓練というのも始めさせていただいて、そして、平成二十三年度には求職者支援ということでそれを恒久的にやっていく。これは、失業保険のない方、ある方でも参加できますけれども、民間の専門学校等に職業訓練をお願いして、そこで訓練を受けていただくということで、今後、十五万人の定員を確保していこうということで、国全体の訓練に対して民間の力もきちっと使っていくという考え方を実現していくということ。さらに、専門性の非常に高い、訓練の学校の中で教える先生、この先生を育成する機能も国で特化していこうということで、そういうめり張りをつけた役割分担の中でこういうことをお願いしているということであります。

○高橋(千)委員 存続はするけれども、地方にやってもらうのだと。なぜそうやって国の都合を地方に押しつけるんですか。あなたはそう言って、結局、地方に時価で買えと言ったんでしょう。それで、どこも受けてもらえなかった。そういう実態があるわけですよ。国の都合で廃止を決めて、そして地方にやってくれと。地方がこれまで頑張ってやってきたものを、全く無視しているわけじゃないですか。なぜそういうことを認めないんですか。

 基金訓練で十五万人やると今おっしゃいました。現在、三万人であります。これを十五万人にしたとしても、今の公共的な職業訓練が果たしているのは百五十万人以上、十倍以上の効果があるわけです。それを地方が受け入れられないとなったら、その受け皿がどこに行くのですか。そこをちゃんと認めるべきではないでしょうか。

 今ほど地域密着の職業訓練が必要なときはないと思います。

 例えば、地域職業訓練センターは、中小企業の労働者や求職者らを対象に、地域に、産業に合わせ、建設、板金などの技能向上、資格取得のための訓練を行っています。

 一月十五日の岩手日報によると、岩手県一関市千厩にある両磐地域職業訓練センターは、木造建築科、配管科の長期訓練のほか、県や市の委託で事務、建設、溶接、造園、電気工事、パソコン、介護、CADなど、さまざまな分野で技術習得を支援しています。昨年四月から十二月で、利用者は一万九千六百四十八人、前年同期の二二%増。この地域は、NECトーキン、ソニー千厩テックが相次いで工場閉鎖をしており、再就職支援のために定員を超える応募があるといいます。

 このような雇用失業情勢の中で、国としても、まさにこうした公的な資産を本当に活用する。逆に、地方にお願いしても、今、十六億円の予算、これはリース料とか、これが地方にとっては非常に貴重なわけです。これは、お願いしてでもやってもらう、そういう立場に立つべきではありませんか。

○長妻国務大臣 先ほど、地方に時価で買えというような話があったようなお話がありましたけれども、地方にそういうことを提示したという事実はございません。

 そして、基金訓練にいたしましても、この十五万人というのは定員数でありますけれども、これは平成二十二年度、来年度の計画数ということで、これは実行していこうということで考えているところであります。

 私どもとしては、職業訓練は決して軽んじているわけではありませんで、その重要性というのは本当に、これから人を雇うと思っていない企業にとって、そういうすばらしい人材が目の前にいた場合、雇って付加価値をさらに高めて企業を回復していこう、こう思えるような人材を育成するということで、文部科学省とも連携した中で国全体の役割分担を果たすということは、さらに職業訓練については強い、特化した役割を果たしていくというのは、これは目標として私も取り組みたいと思います。

○高橋(千)委員 時価で買えというのは、提示したのではなくて、御相談をして聞いたということであります。そういう事実はちゃんと把握しております。

 今、特化とおっしゃったんですけれども、私が言っているのは、地域に受け皿がないのだ、やはり地域に格差があるのだ、そこをちゃんと、今ある資産を活用するというのは必要じゃないかと言っているんです。

 例えば、雇調金の受給者は今二百万人を切っておりますが、助成金をもらった企業が適切な訓練ができていますか。こういうセンターを活用するべきではないでしょうか。また、基金訓練も、今民間だけをどうも随分当てにしているようでありますけれども、これは手挙げ方式でありますので、地域に満遍なく民間が手挙げするというところまではまだ行っていないわけです。

 そういう意味でも活用する必要があると思いますが、まず、この可能性についてお願いいたします。

○長妻国務大臣 いろいろな活用というのは、これは検討していく必要があると思いますけれども、やはり職業訓練について、今国がやっているものは、もう全く役割分担をしないでそのまま国が続けるということで本当にいいのかということもあります。

 例えば、コンピューターカレッジにつきましても、定員百人のところを平成二十一年度は十九人しか来ていただけないというようなことも現実としてあるわけでありますので、本当に必要な施設について我々も譲渡条件を受けやすい形で提示させていただいて、地方と国と役割を分担していくということ。そして、基金訓練という民間委託の訓練については、これは来年度十五万人の定員を確保していくということでありますので、そういう民間の活用、あるいは、非常に高度な職業訓練をする、ある意味では先生役の育成などなど、特化をしていくような役割分担ということを議論していきたいと思います。

○高橋(千)委員 全く聞いていることに答えていないんですよ。私は、せめてもの可能性として、国が考えている雇調金の活用や基金訓練も生かして、やはり地元で存続する道を探るべきだと、少し、一歩譲って提案しているんですよ。そういうこともちゃんとのみ込んでくださいよ。

 十九人の話は、あなたは予算委員会から何度も同じことを言っています、参議院の予算委員会から。最初に局長に確認したように、目標を達成したところは存続するというのが最初の方針だったわけです。十九人のところが、もし本当に利用が、存在価値がないのであれば、それはそこまで踏み込んで言っているわけじゃないですよ、だけれども、みんなが十九人のような言い方をしないでください。

 先ほどの青森の話もあったように、利用率が非常に高いところがあり、また目標達成をして頑張っているところがあり、そこは存続するんだということでやってきたのに、はしごを外されて、大臣一人の決断で廃止をされた、そういう問題なんですよ。そこをきちんと認めるべきなんです。これは大臣と通知だけの世界でありますので、見直す余地があると思います。再度検討をお願いしたいと思います。

 四月間近の今、三万人の高卒あるいは十六万四千人の大学生などが、就職の決まらないまま社会に出ることになります。最初の仕事が派遣会社のお試し雇用や、あるいは雇調金で休職そのものだ、あるいは緊急雇用創出の臨時雇用に応募してきた学生もいます。こういう中を本当に変えなければいけない。でも、企業の側は即戦力を求めているわけですから、職業訓練の役割は本当に重要なわけです。そういう点で、実績も中身もある公的職業訓練を生かして雇用につなげるべきです。

 私が言っているのは、官なのか民なのかどっちかではなくて、どっちも生かして、すべての資源を生かさなければ今乗り越えられない情勢なんだということなんです。

 そのことをしっかり受けとめていただきたいという指摘をして、終わります。


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