日本共産党の高橋ちづ子議員は24日、衆院厚生労働委員会で、雇用保険法改定案に関連し、20万人もの季節労働者を対象とする短期雇用特例被保険者の特例一時金について、政府に改善を求めました。
高橋氏は、同改定案で、雇用保険の加入要件が「31日以上の雇用見込み」へと緩和されるのにともない、循環的に雇用と失業を繰り返すという点では季節労働者と変わらない「短期常態」(1年未満の雇用に就くことを常態とする者)と呼ばれる労働者は一般被保険者と扱われ、90日分の失業給付が受けられると指摘。一方で、北海道や東北など冬場に仕事のない建設労働者らが多くを占める季節労働者への支給が40日分に据え置かれるのは「おかしくないか」とただしました。
高橋氏は、政府が季節労働者の6・1%が新規の季節労働者(2008年の実態調査)だと示したのをうけ、「仕事がないから季節労働に入っていくしかない現実がある」と指摘。かつて90日分だった同一時金が、法改悪によって50日分から30日分へと削減され、その後「暫定措置」で40日分となった経緯に触れ、少なくとも50日分に戻すよう要求しました。
長妻昭厚労相は、生活保護や住宅手当など雇用保険以外のセーフティーネットの「周知徹底」などの方針を示すにとどまりました。
高橋氏は、「一家心中」も考えたという北海道の男性の訴えも示し、今後も政府に改善を求めていくと強調しました。
(2010年3月25日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
北海道や青森県を初め、積雪寒冷地などで冬場に仕事のない建設労働者などいわゆる季節労働者は、短期雇用特例被保険者として、失業した場合、基本手当の四十日分に当たる特例一時金が支給されております。
資料の一にあるように、今回の法改正で、先ほど議論がされていた三十一日以上の雇用見込みということで、適用要件が緩和をされるわけです。これによって、短期雇用、左側の「現行」のところを見ていただきたいんですが、短期雇用特例被保険者のうち短期常態の者が一般被保険者に組み入れられることになりました。
伺いたいのは、短期常態、「一年未満の雇用に就くことを常態とする者」と書いておりますけれども、どのような職種が該当するのでしょうか。また、短期雇用特例被保険者のうち一%が短期常態だと言われていますけれども、その根拠について伺いたい。政府参考人にお願いします。
○森山政府参考人 お答え申し上げます。
短期雇用特例被保険者の実態等についてのお尋ねでございました。
平成二十年度におきます短期雇用特例被保険者の資格取得件数は、二十万九千六百二十八件でございます。このうち、今先生おっしゃいました短期常態者としての資格取得件数につきましては、特別に集計をいたしました。その結果、二千二百七十件ということでございまして、今先生がおっしゃいましたように、約一・一%ということでございます。
その実態でございますが、安定所等に聴取をいたしましたところ、具体的には、例えば離島等の建設の労働者、あるいは給食の調理員、あるいはゴルフ場のキャディー、こういう方々が見られるという状況でございます。
○高橋(千)委員 皆さんにも聞いていただいて、おやと思ったと思うんですけれども、境界が非常にあいまいなんですね、どこまでが短期常態で、どこまでが季節か。例えば、ゴルフ場のキャディーだとおっしゃいますけれども、では、キャディーは雪が降れば仕事ができないという点では季節労働者とどこが違うのか。離島の建設業者は公共事業の発注時期があるからそれに近いのだと言っておりますけれども、こうやって突き詰めていくと、やはりあいまいな境界になってしまうわけなんですね。
それで、これまで政府は、循環的な給付なんだ、だからこの短期雇用特例被保険者一時金については見直しをするのだといって、これまでは九十日あったものがどんどん削減されてきたわけですけれども、基本的に、要件となる日数、一年間に半年以上、これは月十一日以上とみなしておりますので実質四月と二十二日なわけですけれども、この要件自体で見ると、短期常態と季節労働者の働き方というのは違いがないわけなんです。それなのに、短期常態の人が一般被保険者になれば、九十日基本手当が支給されます。季節労働者は四十日のままです。おかしくないでしょうか、大臣。
○長妻国務大臣 今のお尋ねでございますけれども、今回の措置は、非正規雇用の方で三十一日以上の雇用見込みということに対して最低九十日給付日数ということになるわけで、今おっしゃられたような短期雇用特例被保険者の方は、法の本則は三十日ですが、今特例として四十日になっているものが九十日になるということで、これは給付日数はふえるということになるわけでございます。当然、受給資格要件については変わってくるわけでございますが、基本的には、我々の思いはセーフティーネットを手厚くしていきたい。
そして、今おっしゃられた一%の方々の解釈でございますけれども、これについて、不透明な点がないように、全国について統一的な対応がなされるような、きちっとしたQアンドAあるいは定義を示した通知などもこれから考えていきたいと思います。
○高橋(千)委員 今のお答えは、全然質問に答えていないんです。短期雇用特例被保険者と分かれていた人のうち、一%だけが短期常態だということで九十日基本手当が受けられる条件がある、それ以外の人は置き去りにされて四十日のままだ、おかしくないかと聞いているんです。
○長妻国務大臣 これは、先ほど言われたような季節労働者という方と短期常態という方を、二つに考え方を分けさせていただいて、短期常態の方、そして一般被保険者の三十一日以上の見込みの方が今度新たに一般被保険者に入っていただくということで、一般被保険者の方はこれまでは六カ月以上でございましたので、その間の方が新たに加わるということであります。
○高橋(千)委員 全く答えになっていないんですよ。おかしいと思っていないということなんですね。自分で言っていることが矛盾していると思いませんか。
少し突き詰めてお話ししていきたいと思うんですけれども、一%だけが九十日もらえるというのは、これは、一%だから財政に影響ないというのがぶっちゃけた話なんですよ。そこを、本当にそれでいいのかということを言っているんです。
私は、〇七年にも季節労働者問題を取り上げていますが、当時、柳沢大臣は、通年雇用化を一層促進すると答えておりました。資料の二を見ていただきたいんですけれども、通年雇用も、奨励金によって若干ふえてはいますけれども、一万人余にすぎません。
北海道の有効求人倍率は〇・三六倍、選ばなくても仕事がないという状態です。札幌東部や苫小牧などは〇・二七倍。夏場より灯油代などかさむ冬場の三、四カ月を二十数万円の特例一時金でしのぐ、こういう状況に追い込まれているんです。
苫小牧市の三十七歳の男性は、ここ数年、毎年のように仕事の稼働日数が減り続け、給料の手取りが減って困っている。保険料も払えず、子供を病院に連れていくこともできない。今では、一時金が出ても、その日のうちに支払いですべて出ていき、生活費にすら回らない。冬場のアルバイトもなく、毎年冬になると一家心中でも考えてしまう、このように訴えている。そういう実態なんです。
それでも、毎年新規に季節労働に入る人がいるんです。北海道庁の調査では、〇七年に私が質問したときは五%、毎年新規に季節労働に入っていると言っていました。直近の調査はどうなっていますか、局長。
○森山政府参考人 お答え申し上げます。
二十年の季節労働者実態調査結果報告書、これは北海道が行ったものでございますけれども、昨年、十九年から新たに季節労働者になった者は五・九%ございまして、ことし、平成二十年から新たに季節労働者になった者は六・一%であるということを承知しております。
○高橋(千)委員 今、六・一%というお答えがありました。要するに、これほど厳しい、仕事がないとわかっているけれども、新たに季節労働に入っていく人が六・一%、じわじわとふえているんですよ。どういうことかということ、それほど仕事がないのだということなんです。
一方、建設政策研究所北海道センターの〇八年度の季節労働者の調査報告によると、年間の就労日数が百八十五日から百七十日まで減少しているんだ、そして、季節雇用されていたけれども、日数が足りず権利がつかなかったとか、そもそも雇用保険を掛けてもらわなかった。つまり、特例一時金にさえたどり着けない、そういう実態さえあるのだということをちゃんと見ていただきたいんですね。
だからこそ、北海道の各自治体は独自の季節労働者対策をさまざま取り組んでいますけれども、それでも足りないと、六十七名の首長や議会議長名の副申書あるいは賛同書九十三通が国に出されていることは承知しているのではないでしょうか。
せめて、こうした地域の声をしっかり受けとめて、本当は九十日と言いたいところですが、ともかく五十日以上に戻すべきだと思います。十日給付を延ばすためには約百億円。通年雇用や雇用対策の施策が進んでいけば、おのずと特例給付は減っていくんです。ですから、ずっと上り続けるということではありません。矛盾はありません。
自公政権のもとで、循環的な給付は見直す、ほかの被保険者とのバランスをとるということが繰り返し言われてきました。しかし、今の新政権は、先ほど大臣がお答えしたように、非正規雇用でも、短期の雇用を繰り返していても、すべての労働者に雇用保険を適用するというように動き出しているんです。当然、季節労働者に対する考え方も変わっていいはずではないでしょうか。
○長妻国務大臣 本来は、季節労働者などの短期雇用特例被保険者の方については、法の本則は三十日の支給でございますが、今、四十日ということになっているわけであります。
先ほど、答えがないというふうに言われた点でございますけれども、季節労働者が今回の法改正の中でなぜ普通の雇用保険に入れないのかというお尋ねであるとすれば、季節労働者の方については、一定の期間の後に、毎年その仕事を一たん離れるということになるわけでございまして、仮に離れるたびに失業保険の給付ということが起こるとすると、負担と給付の関係で、果たしてそういう支給が適正なのかどうか。就労実態に即した制度をつくる必要があるというような考え方で、季節労働者は今も、従来、別になっているというふうに考えておりまして、その中でも、特例で短期常態という方、これは一%ということで、数としては大変少ないわけでございますけれども、そういう方については一般被保険者にも入っていただくということになっております。
当然、雇用保険だけがセーフティーネットではないというのはよく御理解いただいていると思います。これ以外にも、生活保護になる以前にも、住宅手当も今、支給の期間を長くとるようにいたしましたし、要件も今後緩和をいたします。求職者支援ということで、雇用保険に入っていない方でも職業訓練を受けていただければ一カ月十万円あるいは一カ月十二万円の生活費を支給する、こういう全体のセーフティーネットも用意をさせていただいているということも御理解いただきたいと思います。
○高橋(千)委員 限られた時間ですので、本当に同じ答弁を繰り返さないでいただきたいと思うんですね。
自公政権が言ってきたことをあなたが繰り返す必要はないわけですよ。循環的な給付はだめなんだ、見直すんだということを言ってきたのが自公政権なわけですよね。
だけれども、だれも最初から、冬になったら仕事を休んで、給付がもらえるからいいんだよなんて思っていないんです。最初から言っているように、二十万円で一冬暮らせるはずがないじゃないですか。もう支払いで終わっちゃうとみんなが言っている。どんな仕事でもいいから働きたいと仕事を見つけている。そのためのいろいろな技能訓練だとかそういう施策を政府はやってきた。でも、それをどんどん見直しをしてきて、現実にはまだ効果が上がっていないという実態なんですよ。
それをどう受けとめるのかということと、その中でも一%だけ救うというのは絶対おかしいでしょう。そういう今までの考え方をちょっと変えたとするんだったら、今回だって変えたっていいじゃないか、新政権になって、そこがなぜ変わらないのかということを聞いているんです。もう一回。
○長妻国務大臣 今、そのお金で、それだけでは生活ができないというお話でございましたけれども、だからこそ、先ほど申し上げた、国の施策としてはこの雇用保険とか一時金以外のセーフティーネットも用意をさせていただいて、それを周知徹底させていただくということを申し上げているところであります。
○高橋(千)委員 大臣が同じ答弁を繰り返すので時間が来てしまって、残りの質問ができなくなってしまったんですけれども、今、失業給付だけではなくて、第二のセーフティーネットなどがあるんだということをおっしゃっていたわけですよね、今の答弁は。だけれども、それをずっと言い続けてきたんですよ、自公政権は。それで、訓練があるんですよ、そういう季節労働者対策の手だてがあるんですよと言ってきました。私、それをまるで否定していないんです。むしろ続けてほしいという声があったんです。
それから、先ほどの資料の二にあるように、通年雇用が少しずつふえてはいます。まだ対象者のうちの一割ではありますけれども、いわゆる季節的な雇用から通年に移る人は出ているんですよ。
そういう努力はこれまでもやってきたんだ、だから、そういう制度があるからいいんだではなくて、その制度がまだまだ届いていない、現状の厳しさを乗り越えるまでになっていない。だとすれば、それを乗り越えるために、今の給付金を少なくとも十日でもふやすということが必要なんじゃないかということを主張しているんです。
これは、財政的にも、今やっている施策の点でも、無理のない要求をしていると思います。しっかりと検討していただいて、さらに続きの質問はまた次の機会にしたいと思います。
ありがとうございました。