日本共産党の高橋ちづ子議員は26日、衆院厚生労働委員会で、グループホームなどの小規模介護施設の防火対策への支援強化を求めるとともに、特別養護老人ホームの待機者問題について政府をただしました。
13日の火災で入所者7人の死者を出した札幌市北区のグループホーム「みらい とんでん」は夜間職員は1人で、スプリンクラー、自動火災報知器を設置していませんでしたが、法令違反ではなかったと指摘。こうした中で大きな犠牲を防げなかった点について、政府の認識をただしました。
山井和則厚労政務官は「緊急実態調査でグループホームの48・7%がスプリンクラーの設置がなかった。国交省、総務省とプロジェクトをつくり、1カ月をめどに対策をまとめていきたい」と述べました。
高橋氏は「どんな小さな施設でもスプリンクラーなどの設置や耐火構造への支援が必要だ。また、夜間の複数職員の配置もどうしても求められる」と強く求めました。
また高橋氏は、山井厚労政務官が新聞紙上で、特別養護老人ホームの待機者42万人のうち在宅で重度の7万人は早急に対応すると発言したことについて「同じ重度でも病院や費用の高い有料老人ホームなどで待機されている11万人は考慮しないのか」と質問しました。山井厚労政務官は「3年間で18万床を目標としているが、できるだけ前倒しでやるよう指導したい」と述べました。
(2010年3月28日(日)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
群馬県の無届け有料老人ホーム「たまゆら」で十人もの犠牲者を出した火災事故からちょうど一年がたちました。私も現地調査に赴き、本委員会で質問させていただきましたが、身寄りのない犠牲者の御遺骨を特定できずにいる、こうした現実を本当に重く受けとめました。
そしてまた、十三日には、札幌市のグループホーム「みらい とんでん」の火災事故で、七名の犠牲者を出してしまいました。本当に心からお悔やみを申し上げたいと思います。
きょうは最初に、通告の趣旨とは若干違うかもしれませんけれども、グループホームの研究者である山井政務官にぜひお伺いをしたいと思います。
この「みらい とんでん」は、夜間に職員が一人、スプリンクラーも自動火災報知機も設置をされておりませんでした。しかし、法令違反ではなかったわけであります。義務基準の外であったと。
また、毎日新聞の北海道版二十日付によりますと、「お金がない中、よくお世話をしてくれた。本当に安心して暮らせていたのに」と、ただ一人無事救助された八十三歳の女性の娘さんの声を紹介しております。また、同じ記事によりますと、NPO福祉サービス評価機構Kネットが〇八年十二月に作成した「みらい とんでん」の外部評価結果には、「家庭的な雰囲気を色濃く残す」「和やかな触れ合いは認知対応の生活での新たな可能性といえる」と記され、「たまゆら」とは違って、市への苦情も一件もなかったとされております。
もちろん、住民参加の避難訓練がされていないなどの問題点も指摘をされているところでありますが、基本的に国が目指す認知症ケアの方向に合致し、しかも法令違反ではないところでこのような大きな犠牲を防げなかった。このことについて、国としてどう考え、どのように取り組んでいこうとしているのか、簡潔にお答えください。
○山井大臣政務官 高橋委員、御質問ありがとうございます。
まさに今回のことに関しては、個々個別のグループホームの問題であったというとらえ方ではだめだというふうに思っております。やはり今回のことを反省材料として、国土交通省、総務省、そして厚生労働省で緊急プロジェクトチームを発足させまして、今、実態調査を行っております。
最新の大まかな状況でありますが、奈良県奈良市だけを緊急調査しましたところ、認知症の高齢者グループホームにおけるスプリンクラーの設置割合は四八・七%ということが、今回初めてわかりました。このこと一つとっても、防火体制の現状等も残念ながら十分に把握されておりませんでした。
そこで、今、三省庁合同になりまして、一カ月間をかけまして、消火器がどうなのか、スプリンクラーがどうなのか、火災報知機がどうなのか、また、夜勤の体制がどうなのか、職員体制あるいは入所者の状況はどうなのか、そういうことを緊急に調査をしているところであります。
それを踏まえまして、今後、スプリンクラーの設置の要件について、また補助額について、また、スプリンクラー以外についても補助が必要なのか、そういうことも含めて、一カ月をめどに調査結果をまとめていきたいと考えております。
○高橋(千)委員 今、一カ月をめどにというお答えでありました。スピード感を持って取り組まなければならないという決意が述べられたと思うんですけれども、小規模施設に対応した防火対策に関する検討会報告書というのは、実は、ことしの二月に出ておりまして、こうした火災事故が繰り返される前に、「たまゆら」の問題ですとか長崎県の問題ですとか、あるいはいわきの小規模な施設の火災事故を踏まえて、そういう対応は既に出されていたわけで、スプリンクラーの設置など、あるいは火災通報機、警報器の設置なども、どんな小規模な施設であってもやはり取り組むべきではないかと提案をさせていただきたいと思います。
同時に、この報告書の中で、出火及び延焼拡大の防止として、今回はストーブだったわけですよね、そうではなくてエアコンですとかあるいは電磁調理器など、そもそも火の気を断つという考え方、あるいは、カーテンや避難路などの防炎化などということも指摘をしています。こうした耐火構造の支援というものも交付金の中に組み込んでいく考えはないのかというのが一つです。
それから、夜間加算、こうしたグループホームでも使えるものがありますが、二十五単位ということで、十人いるホームだとして月に七万五千円程度で、一人ふやすには余りにも足りな過ぎるわけであります。複数配置がどうしても必要だと考えますけれども、見解をお聞かせください。
○山井大臣政務官 質問ありがとうございます。
もともと、このグループホームは宿直であったわけですが、夜勤が必要だということで夜勤に格上げしていった。かつ、今は九人に対して一人の夜勤でありますが、それだけでは不十分な場合もあるということで二十五単位、加算に関してつけておりますが、これも十分ではないという御指摘も数々いただいております。さらに、グループホームに関しましては、外から、訪問看護も介護保険の中で受けられるようにしてほしいという重度の方がふえておりますので、そういう要望もいただいております。
今後、やはり小規模で家庭的な雰囲気のグループホームというのはますます重要になってまいりますので、これをどういう形で支援していくのかということは、今回の夜勤のことも含めて、今後検討していかねばならないと思っておりますし、防火、耐火構造についてのことも、今回の緊急対策プロジェクトチームは消防庁とも国土交通省とも共同でやっておりますので、その一カ月の議論の中で検討してまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 ぜひ、具体的に予算措置という形で、成果が出るように期待をしたいと思います。
やはり認知症のグループホームでは、一人が徘回を始めると、もうそれだけでほかの入所者に手が届かなくなるという実態があるわけですから、そういう方たちだけが集まっているわけですから、本当に人手が足りないというのはだれが考えてもわかるわけで、また同時に、認知症の家族を抱えている介護の悲惨さということも今大きな社会問題となっていて、国としてはそういう方向に向かっていくんだろう、しかし、そうであるがゆえに、こうしたことを繰り返さないための体制づくりは本当に必要だということを重ねて指摘したいと思います。
また、一つの御提案ですけれども、当然、行政との連携や地域ぐるみでの避難訓練というのはやらなければならないことでありますけれども、もし自分やあるいは自分の家族が認知症になったらどうしようかという不安はだれもが抱えております。ですから、そういう方たちを、いわゆる研修を行政が行って、認知症サポーターという形で、地域が支える側に回る。それが全体として社会が支えていくという方向に向かっていきますので、長野ですとかいろいろなところでそういう取り組みが始まっているようであります、大いに研究して応援をしていただきたいと思います。
さて、今回の法改正は、介護保険前に特別養護老人ホームに措置入所されていた方の負担軽減という経過措置を延長するものでありますので、当然賛成でございます。
そこで、先ほどのあべ委員の質疑にもございましたが、厚労省はことしの一月に、特別養護老人ホームの待機者について、四十二万一千人と発表いたしました。
二十三日付の毎日新聞で、山井政務官は、この四十二万人のうち在宅で要介護の四や五の方、つまり重症の方という意味だと思うんですが、六万七千人について早急に対応すると述べております。まず、この意味と、そうすると、同じ重度の方でも、病院や有料老人ホームなどさまざまなところで待機されている方は、まだ十一万人残されているわけです。料金が見合いではないとかさまざまなことがありながらも、とりあえず、いるところがないのでそういう施設にいる方、この方たちは考慮しないということになるのか、また介護度三以下はどうなるのか、伺います。
○山井大臣政務官 御質問ありがとうございます。
この四十二万人の施設利用希望者の中で、要介護四から五でかつ在宅の方、この方々が最優先だと思いますが、昨日も発表させていただきましたが、例えば、たんの吸引等の医療行為も、介護職員の方々が一定の研修のもと利用できるようにさせていただく方向であります。そういうふうなことを含めて、より多くの方が施設を利用しやすくする。
ただ、同時に、そのことに関しては、先ほどあべ委員に答弁させていただきましたように、三年間で十六万床と言っておりますが、これは三年間の中でもできるだけ前倒しできないかということで、今市町村にお願いをさせていただいております。
また同時に、幾ら施設をつくっても追いつかないところがありますので、今後、やはり夜間でもホームヘルパーや訪問看護婦さんが行って、二十四時間三百六十五日体制で、願わくば、望めばターミナルまで在宅で暮らしていけるような社会をつくって、在宅か施設とを選べるような形にしていく。そういう意味では、特養の待機者を減らすことは、やはり在宅をしっかりとやっていくということとセットでやっていかねばならないのではないかと考えております。
○高橋(千)委員 最後に、大臣に伺いたいと思います。
この今の問題はもう少し具体的な計画を示していただきたいと思うんですけれども、いずれにしても、先ほどの答弁にもあるように、どうしても受け皿づくり、規制緩和の方向、それから在宅重視ということが、当然方向としては考えているのだろうと思うんですね。
そこで、先ほど来議論している安全対策の面、それと人員配置の面で緩和をし過ぎるということは、結局、今の事故の教訓と相反することになるわけですね。そことの見合いをどうするのかということと、これからの、やはり今の経過措置の方たちは低所得者の非課税世帯であるわけですけれども、ユニット型中心の施設整備などでは、生活保護世帯や非課税世帯という方は入る施設がなくなってしまうわけですね。そういう低所得者対策をやっていかなければ、できないということもあるわけですが、その辺、一言お願いいたします。
○長妻国務大臣 低所得者対策ということでありますが、平成二十六年度における特養の入所定員のうち七〇%以上をユニット型施設とするのを目標に掲げております。特養は、これは住むわけでありますので、やはりユニット型というのが望ましいというふうに考えておりますが、そのときのやはり自己負担というのが大部屋に比べると上がってしまうという問題もありますので、こういう問題についても、二年後の同時改定等で検討課題になるというふうに考えているところであります。
○高橋(千)委員 まだまだ課題がありますが、時間が来たので、また次にいたします。
ありがとうございました。