生活保護 引き下げ撤回求める
「社会保障審議会でも懸念」/ 高橋氏ただす
日本共産党の高橋千鶴子議員は15日の衆院厚生労働委員会で、政府が狙う10月からの生活保護費引き下げについて、現状でも、憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」とは到底言えない利用者の実態を示し、撤回を求めました。
厚労省の定塚由美子社会・援護局長は、今回の引き下げ後の基準でも「『健康で文化的な最低限度の生活』を保障するもの」などと答弁。高橋氏は、「食事は1日2食」「冬に暖房も使えない」「近所づきあいもできない」などの利用者の実態を突きつけ、「それでも『最低限度の生活』と言えるのか」と批判しました。
高橋氏は、生活保護基準を議論してきた社会保障審議会の報告書でも、低所得層のみと比較し生活保護基準を決める現行の算定方法(検証方法)について「絶対的な水準を割ってしまう懸念がある」と述べていることを紹介。生活保護基準のあり方を1年かけて検討し、その間は現行水準を引き下げないよう求めました。
加藤勝信厚労相は「同審議会で検証方法について課題が指摘されているのは承知している。今後こうした課題への対応も検討していく」と答えました。
高橋氏はまた、生活保護法改定案に盛り込まれている生活保護利用者に対する後発医薬品使用の原則化は「差別」であり、やめるべきだと迫りました。
高橋氏は、現状でも利用者が薬局で先発薬を希望した場合、薬局は事情を聞き、いったんは調剤したあと福祉事務所に報告するなどすでに強く後発薬使用を求めている実態を紹介。そのうえ「原則化」すれば、本人の合意がなくても後発薬が処方されることになることを指摘しました。
定塚局長は、後発薬の使用割合は増えたが、伸びが鈍化し80%の目標達成が難しいため法文化したと強弁しました。
(しんぶん赤旗2018年5月16日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
今の質問の続きをやりたい気持ちはありますが、ぜひまたこの働き方改革は十分時間をとっていただきたいということで、きょうは生活困窮者支援法について質問します。
たった一回しか、まだ質問していません。四月十三日、一月たちました。残念ながら、既に本会議で与党のみで採決をしてしまいました。質問したかったことはたくさんありますが、きょうは三十分いただきましたので、まず、生活保護制度そのものについて質問したいと思います。
三月三十日の本会議で、私は、生活保護法は、第一条にあるように、憲法二十五条に基づく権利であるということを総理に確認をしました。総理は、権利ということは答えず、全ての国民に対して無差別平等に国がその最低限度の生活を保障する最後のセーフティーネットである、このように答弁をされました。
さて、今回の見直しは、最大で五%の引下げです。いわば、これが新しい最低限度になるという理解でよろしいでしょうか。
○定塚政府参考人 今回の見直しでございますけれども、そもそも、生活保護法において、三条あるいは八条、八条においては、保護の基準は、「最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。」とされているところでございますので、今回もこの観点に沿って、社会保障審議会生活保護基準部会において、専門的かつ科学的見地から検証を行ったものでございます。
そういう意味におきまして、今回の改定結果というのは、健康で文化的な最低限度の生活を保障するというものであると考えているわけでございます。
○高橋(千)委員 五%下がる今回の基準が、健康で文化的な最低限度の生活であると今お認めになったと思います。これは重大な答弁だと思いますよね。
結局、国が、憲法に保障された最低限度の生活というのはこの程度のものなんだということを、国の判断で下げていくことになるわけなんですよね。その意味を本当に重く受けとめるべきだと思うんです。
そもそも、五年前の見直し時は、デフレを理由に平均六・五%カットされました。だったら、今回はインフレのはずなのに、それは考慮はしておりません。年末には最大一三%カットという数字が飛び出して、与党内からも反発があって、落ちついたのが最大五%です。だから、科学的でも何でもありません。
生の声を少し紹介します。平成二十五年度から生活保護の支払い額が変わっていない。灯油代が上がり、家の中が寒い。電気代、ガス代、水道代、電話代なども全部上がって苦しいです。私の今の生活は、食事は一日二回、風呂は週に三回です。買い物は値段の安いものを買っています。扶助基準が引き下げられてから生活がとても苦しくなりました。人間らしい生活ができる基準に戻してください。あなたたちも私と同じ生活費でやってください。お風呂も週に一回、洗濯も週に一回、トイレも水を流さない、この人生に私は疲れました。豆腐、もやし、もう私は死にたい。こうした声がるる寄せられております。
一九四八年四月七日に発効し、日本が一九五一年六月二十六日に条約第一号として公布したWHO憲章には、健康の定義として、健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態にあることをいうと規定されています。
冬に暖房も使わないとか、ほとんど近所づき合いもないとか、一日二食しか食べていない、その二食も、好きなものを食べるのではなくて安いもの、その日安いものを選んで食べるしかない。今よりもっと下げてもよいというのは、それでも最低限度の生活、今この実態を見て、それで最低限度の生活と思っているのか。これは大臣に伺います。最初は大臣に通告しておりましたので、お答えください。
○加藤国務大臣 生活保護の水準については、先ほど局長からも答弁いたしましたように、社会保障審議会生活保護基準部会において専門的、科学的見地から検証を行っているところでありまして、今では一般均衡水準というものを見て、それがどうなっているのかということで、まず、どこの水準と対応すべきかということで、今回の検証では、モデル世帯、夫婦子一人世帯では年収階級下位一〇%に当たる世帯の消費水準と生活扶助水準を比較するということ、そして、それがおおむね均衡しているということが確認された上で、あとは、それぞれ年齢あるいは世帯の大きさ、そして場所、これによって、これをまた分析をしたところ、実態と扶助の基準とにおいて多いところ、少ないところがありますから、それを是正をさせていただいたということであります。そして、その検証方法については、透明性の高い一つの妥当な手法ということで、審議会の報告書にも記載をされているところでございます。
いずれにしても、生活保護法の規定をしっかり遵守しながら、常にこうした最低生活の水準としてどういったものが妥当であるのか、これをしっかりと我々として検討しながら、これは五年ごとに見直しをさせていただいている、こういうことであります。
○高橋(千)委員 ですから、その見直しのときに、どれだけ実態を聞いたのかということなんですよ。
本当の専門家は、生活保護を利用している人ですよね。そして、その利用している人たちが、一日二食も食べられない、もうこれ以上生きていく希望を持てないと訴えているのに対して、それでも最低限度の生活ですよと大臣は言うのですかということを聞いているんです。一般の低所得者と比べて、それで、同時で、均衡がとれているんだというのであれば、それは保護を受ける権利があるのに受けていない人が一般の低所得者の中にたくさんいるという意味なんですよ。
また、一般の低所得者の生活のレベルを上げなきゃいけないんですよ。そこに目をつぶって、これが最低限度になっています、そんなことを本当に言えますか。もう一度。
○加藤国務大臣 もう委員御承知のように、生活保護法第三条では、「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。」同八条で、保護の基準は、「最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。」こういう規定がされているわけでありますから、それを踏まえて、先ほど申し上げたような手法にのっとって、社会保障審議会生活保護基準部会でも御議論をいただいて、透明性の高い一つの妥当な手法ということで、今回こうした見直しをやらせていただいているところでございます。
ただ、見直しに当たって、この審議会の報告書では、検証手法に関する課題も指摘をされているところであります。今、委員御指摘のような指摘も審議会の中であったということは承知をしておりますので、今後、検証手法の改善、開発に取り組む中で、こうした課題への対応についても検討していきたいと思っております。
○高橋(千)委員 課題が指摘された、それはもうこの委員会でも議論をされたことでありますよね。それを自覚しているのだったら、五年は待てないわけですよ。五年後に見直しをします、それは違うでしょう。今起こっていることに応えなきゃいけないんです。
志位委員長が二月五日の予算委員会で、貧困ラインが下がっていること、そのために、収入や暮らしがよくなったわけではないんだけれども、貧困ではないとされる人が出てくる、こういう指摘をしましたよね。それに対して安倍総理は、高齢者の世帯がふえたからなんだと答えました。
生活保護を利用している高齢者は、一般の高齢者世帯に比べると五割台の水準になっている、それは最低限度の生活とは言えないのではないかと私は聞いたんですけれども、それに対しての直接の答えがなかったんですね。
それで、あえて聞きたい、もう一度。高齢者ならば、一般の高齢者の五割の水準でもよいのですか。
○定塚政府参考人 お答え申し上げます。
一般の世帯の何割の水準でいいかということにつきましては、委員も御承知と思いますけれども、生活保護基準の見直し方法として、昭和五十八年までは格差縮小方式をとっていたわけでございます。その際の五十八年の検証では、一般勤労者世帯と生活保護勤労世帯の消費支出の比率が六割であるということを確認をしていたところでございます。
この五十八年の検証ですけれども、所得階層別の消費支出について詳細に分析をして、変曲点の考え方を用いて生活扶助基準の水準の妥当性について検証を行ったわけでございまして、これ以降、五十九年から現在に至るまでは水準均衡方式を採用しているというところでございます。
したがって、現在では、生活保護基準の改定方式については、一般国民の消費水準の六割を下回らないという考え方は直接採用しているところではないところでございます。近年の検証作業においては、夫婦子一人世帯や高齢単身世帯など、個別の世帯類型ごとに、一般世帯の消費支出と生活扶助基準額の比率を確認はしてございますけれども、これについて、生活扶助基準、最低基準の水準を決める際に直接用いているというものではございません。
さらに、先ほど申しました格差縮小方式について、五十八年当時六割と申し上げましたけれども、同じ方式で算定をした場合に、直近二十七年の状況では、被保護勤労者世帯の消費支出は一般勤労者世帯の消費支出の八割となっているところでございます。
一方で、審議会の報告書では、今後いろいろな議論が必要とされているところでございますので、先ほども大臣から申しましたとおり、今後の検証手法の改善、開発については、今後も検討してまいりたいと考えてございます。
○高橋(千)委員 均衡水準方式、これに変わったのがいつからかとか、そういう説明は本会議でもされたんです。もう十分わかっている。そういうことじゃなくて、それを踏まえて、基準部会でも繰り返し議論されているはずです。
昨年の十二月十二日、第三十六回基準部会で岡部委員は、夫婦子一人世帯は六割水準をクリアしているけれども、特に注目しなければいけないのは高齢者世帯で、とりわけ単身世帯が五割台になっている、その上で、二〇〇七年の検討会では、この基準では低過ぎるということで見送った、二〇一三年の検証でも、高齢単身は増額が必要なのではないかと書かれたと指摘をしているんです。こういう経過があっての今なんだということで、これは全然踏まえていないわけですよね、これまでの何回もの検討会の見直しを。そういうことを指摘をしているわけなんです。
十四日の第三十七回の基準部会でも、岩田部会長代理が、五割は注意信号と指摘をしました。だからこそ、報告書の中に、「高齢者世帯の展開後の基準額では五割台になってしまうことが見込まれることに留意が必要である。」と明記されたことを、そのままにはできないと思います。同時に、委員の中に、高齢者の五割の問題だけではなくて、全体として貧困率が高まっている、高齢単身女性世帯の四割以上、十八歳から六十五歳未満の単身世帯の三分の一が相対的貧困にあると指摘をされている。
ですから、さっき、志位委員長の指摘のように、全体としてラインが下がっているので、第三・五分位の六割、つまり真ん中の所得層のうち六割をもしクリアしているからといって、それでよいとは言えないのではないかという指摘も出ているわけですよね。基準部会報告書は、「一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準の水準を捉えていると、比較する消費水準が低下すると絶対的な水準を割ってしまう懸念がある」、こう指摘をされている。これはもうお認めになりますよね。
○定塚政府参考人 水準均衡方式のもとで一般世帯との比較を行っている、そのことによって、一般世帯の消費の水準が下がると生活保護基準にも下がるという影響を与えるという一般論については、基準部会報告書にも書かれているとおりでございまして、そのとおりでございますけれども、ただ、今回の改定におきましては、モデル世帯を設定をして、高さ比べ、比較をした際に、高くも低くもないという結論が出ておりますので、一般世帯が下がったから生活保護基準が下がった、こういう関係にはないということを御承知いただければと存じます。
○高橋(千)委員 高さ比べの話も、モデル世帯の選び方とかも、さまざま今指摘したいことがありますが、でも、一般論はそのとおりだということをお認めになったと思います。
現実に貧困ラインが下がっていて、それに合わせて今見直しをすると言っているわけですから、それで何も違いがないんだというのはおかしいんです。消費水準を比べて、ない中で我慢して暮らしているその実態、どちらも我慢しているのを比べて、変わっていないからいいのよと、そういう比べ方が間違っていると言わなければなりません。
野党提案には、生活保護基準を一年かけて検討し、そこまでは現行水準を下げないとありました。これは、法案自体は衆では通ってしまったわけですけれども、閣法が通ってしまったわけですけれども、やはり参議院の議論がこれから始まるわけですから、改めて、基準は下げるべきではないということ、そして、そういう意味で、下げずにちゃんと検討していくべきだということを指摘をしたいと思います。残念ですが、ここは言い切りにして、次に進みたいと思います。
先ほど来、繰り返し指摘をされている、後発医薬品の原則使用について伺います。
資料の一、これは単純に条文の比較であります。「医療扶助の方法」ということで、旧三十四条にはアンダーライン、「被保護者に対し、可能な限り後発医薬品の使用を促すことによりその給付を行うよう努めるものとする。」新法は、「原則として、後発医薬品によりその給付を行うものとする。」というふうになる。原則としてになるわけですが、これは私たちは絶対だめだと思っていますが、先ほど来指摘があるように、既に現行の中でも大変厳しいものになっていると。
先ほども尾辻委員が紹介をされた、生活保護法関係通知の医療扶助運営要領が資料の二枚目です。
これは、まずその上の段に「経済・財政再生計画改革工程表の策定について」というのがわざわざ書いてあって、これは、この後発医薬品を原則としていく背景には、まさにこれがあるんだ、経済・財政再生計画があるんだということをちゃんと御丁寧に通知に書いているということ、まさにこれは削減そのものが目的であるということがはっきりするのではないかと思います。
その上で、どういうふうにするのかということで、先ほど取り上げられたイの後のウのところなんですね。これは、処方医が後発医薬品への変更を不可としていない場合にもかかわらず、つまりこれは、先発でなきゃだめよというときはチェックをするんだけれども、それ以外はチェックがない、それをもって不可としていないというわけですよね。そうすると、希望する者に対しては一旦調剤し、先発を調剤して、その先発医薬品を希望する事情などを福祉事務所に伝達するものとする。これは、一旦調剤してから福祉事務所に連絡するという手の込んだことをしているわけですよね。こういうことを今現在やっている。
当然、福祉事務所には厚労省から報告を求めています。どのような内容をどのくらいの頻度で求めているのか、また、そこで何がわかったのか。
○定塚政府参考人 今、御紹介いただいたように、現行ですと、具体的には、生活保護受給者に対しての制度周知であるとか、指定医療機関、薬局に対する制度説明を行うとともに、先発を希望した場合には、一旦調剤をして、その事情を福祉事務所に伝達をするということとしているわけでございます。
福祉事務所は、生活保護受給者が先発医薬品を希望する事情等を確認して、明らかにその理由に妥当性がないと判断される場合には、福祉事務所が行う、服薬指導を行う健康管理指導の対象としてございます。
福祉事務所ごとの後発品使用割合については、毎年六月審査分の状況を厚生労働省に報告するということを求めておりまして、使用割合が一定以下である都道府県などにつきましては、先発薬を調剤した事情などの情報も活用して実態把握を行った上で、後発医薬品使用促進計画を策定して公表していただくということとしてございます。
二十八年度においては、この後発医薬品使用促進計画を策定した自治体は、九百二十六自治体中、八百十七自治体となっているところでございます。
○高橋(千)委員 本当に、ここまでケースワーカーにやらせるのかと思ったんですね。明らかに妥当性がない場合とおっしゃるのは、多分、ですから、薬代が無料なので高い薬の方がいいわという人がいるのよとおっしゃるんだと思うんです。でも、それはあくまでレアケースですよね。
これは世界の医療団などが指摘をしているように、やはり同じ効能の薬だといっても、錠剤とカプセルの違いですとか、大きさの違いですとか、一日一回でよかったものが三回飲まなきゃいけないとか、そういうことが非常に負担になったりとかいうこともあるんだということで、先発を望んでいる場合もあるわけですよね。そのときに、不可じゃなくても、不可じゃなければもういいんだということ、それをわざわざチェックをして調べさせて、そこまでやるのかなと思うんですよ。
大阪などでは、わざわざ薬局を一店一店回って、ジェネリックにしてくださいと福祉事務所が言っているそうです。そんなことまでするんですか。今でも十分厳し過ぎます。それがこれから原則となるんですから、そうすると一体どう変わるんですか。
○定塚政府参考人 現行の仕組みは、ほぼ今申し上げたとおりでございます。
ただ、薬局において受給者が希望した場合には一旦先発医薬品を調剤することが可能であるということでございまして、今後、今回の改正で後発医薬品使用原則化が施行されれば、医師、歯科医師が後発医薬品の使用が可能と判断する場合には、薬局に在庫がない場合などを除いて、原則として後発医薬品により医療の給付が行われるということとなるというものでございます。
具体的には、例えば、医師などが後発医薬品の使用を可能とする処方を行った場合であっても、患者が十分に自身の状況などを医師などに伝えられず、薬局において後発品の使用への不安などから必要な服薬が期待できないと認められるような場合には、薬局から処方した医師などに確認がなされて、医師等が医学的知見に基づいて先発医薬品が適当であると判断した場合には先発医薬品を調剤することになるという流れを考えてございまして、現行の場合には医師等への確認というのがなく、一旦先発薬が調剤されるということですが、今後、改正後においては、今申したように、薬局から必要な場合に医師等に確認をし、医師等が医学的知見に基づき先発薬が適当であると判断した場合には先発医薬品が調剤される、そこの部分が大きく変わってくるところでございます。
○高橋(千)委員 だから、これは、今度は薬局がわざわざ医師に、なぜ後発じゃないんですかみたいなことを聞けと言っているわけですよね。大変な負担ですよね。その上で、医師が別に構わないよと言ったら、本人が嫌だと言っても、これは後発を処方するというふうな流れになる。そこまでやる必要があるのかと何度も言っているんです。
全体で、もう既に後発は六六%、そのうち生保受給者は七二%。もともと生保の利用者の方が後発の利用が多いわけですよね、これだけの厳しい指摘があるのをやっているんですから。それをあえて原則として生保の利用者のみに義務づけることは、やはり差別だと言わなければなりません。そんなことを決めている国がどこにありますか。ジェネリックが同じ効能を持ち、安価で安全というのならば、全国民に普及推進すればいいわけであって、何も保護利用者だけにやる必要はないと思いますが、いかがですか。
○定塚政府参考人 後発医薬品の使用促進については、生活保護だけではなくて、医療保険制度を持続可能なものとするためにも重要な施策として、医療全体においても、生活保護についても、使用割合八〇%という目標を設定をしているところでございます。
前回の生活保護法改正などによりまして、生活保護についての後発薬使用割合がふえてきたわけでございますけれども、次第に年がたつにつれて使用割合の伸びが鈍化をしているという現状にございます。自治体からも、このままでは使用割合を八〇%にするという政府目標は達成が難しく、更に取組を進めるためには、運用で指導、お願い等をするのではなく、制度的な対応として後発医薬品の原則化が必要との意見があったことなどを踏まえまして、また審議会の報告書も踏まえまして、後発医薬品の使用を原則とさせていただくという案を提案しているところでございます。
○高橋(千)委員 鈍化をしているから運用だけではだめだ、制度的にやるんだ、本当に率直に大変なことをおっしゃいましたと思います。
やはり、国全体としてジェネリックの普及を拡大しようと思っているというのは悪いことではないと思うんですよ。それを、だから国としてちゃんと位置づけて、問題がないのだ、むしろ積極的に使いましょうということを全国民として取り上げていけばよいのであって、重ねて、やはり保護の方たちだけに義務づけることは差別であり、やめるべきだと指摘をしたいと思います。
時間がなくなってきましたので、問いを思い切り飛ばします。
昨年、いわゆる小田原ジャンパー事件というものがありました。小田原市の生活保護担当職員が、保護なめんななどとローマ字で書いたジャンパーを着用し、利用者宅を訪問したり、業務に従事していたということが報道され、全国の知るところになりました。
まず、厚労省は、この事件の何が不適切だったと考えているのか。また、厚労省として再発防止のために何をしたのか。
○定塚政府参考人 御指摘の小田原市の事案でございますけれども、まず、生活保護受給者がすべからく不正受給をしているのではないかとの疑いの目で対応するようなものであり、生活保護を必要とする方を萎縮させるおそれがあったことや、また、ジャンパーを着て訪問した際に、生活保護を受給していることが周囲に知られてしまうおそれがあったことなどの点で、大変不適切な事案であったと考えているところでございます。
生活保護に携わる職員は、制度を適切に運用するに際して、常に、保護を受ける方の立場や心情を理解して、支援が必要な人に確実に保護を実施していくという姿勢が大切であると考えておりまして、厚生労働省におきましては、この事案の発覚後間もなく、二十九年一月に開催した都道府県の部局長会議、全国会議において、このような事案が発生することのないよう、適切な保護の実施について、全国の福祉事務所に対する周知と指導を指示し、また、同年二月には、厚生労働省が実施した神奈川県に対する監査の際に、小田原市にも同席を求め、改善と再発防止を個別に指導しております。
その後、同年十一月には、神奈川県が実施した小田原市に対する監査の状況を確認するなど、改善状況を継続的に把握しているところでございまして、引き続き、全国の福祉事務所で適正な保護の実施がされるように指導をしてまいりたいと考えてございます。
○高橋(千)委員 この事件の背景に何があったのかを、やはりきちんと見るべきだと思うんですね。だって、十年間もジャンパーを着ていたのに、報道されるまで誰も指摘しなかったというのはおかしいじゃないですか。その間ずうっと利用者は萎縮していたと思いますよ。
だけれども、あり方検討会、第三者を入れて検討会が出した四月六日の報告書、私、とても心に響きました。なぜこんな思いをしたのかというのは、実は、怖がらせようとしたのではなくて、自分たちを職員は鼓舞しようとしていた。それは、保護課という仕事が、言ってみれば誰もやりたくない仕事、みんなからも恨まれるし、厳しくしなきゃいけないし、経験は不足しているし、一人で百件以上も見なければいけないし、そういう思いで、職員からアンケートをとったら、誰もやりたくないという答えがいっぱい出てくるわけですよ。だから、自分たちを鼓舞するためにこのジャンパーを着ていた。その思いにさえも、この事件が起きるまで気づかなかったわけなんですよね。
それで、本当に、この心ない行為が、保護者、保護を利用している人たちだけじゃなくて、市民の心も傷つけたし、支援をしている人たちも傷つけたという立場で、第一は、生活保護利用者の権利を守るために頑張るんだということで、この保護のしおりを変えたわけです。権利であるということをちゃんと書いて、いきなり差押えするんじゃなくて、ちゃんとしたものがあるんですよと書いています。残念ながら時間が来て読めませんけれども。そうしたら、何か窓口が急に優しくなったと利用者の方が言っているそうですよ。
私、これだけをもって本当に全部解決したとは、まだまだ見ていく必要があると思いますが、同じような事例が全国にあるときに、国がやはりここをしっかり学ぶべきだということを指摘して、終わりたいと思います。
ありがとうございました。
――資料――