日本共産党の高橋ちづ子議員は19日の衆院厚生労働委員会で、来年の通常国会での法案提出にむけて政府の閣僚会議が検討している「保育新システム」を追及しました。
高橋氏は、新システムが財源として、拠出金のなかに国・地方・事業主と本人が含まれている上に、「子ども・子育てビジョン」には保育料1割自己負担という試算が示されていることを指摘。「保育を介護保険と同じようなシステムにするのか」とただしました。
泉健太内閣政務官は「(介護保険の保育版というのは)検討されてきたなかの一つ」と答弁しました。
高橋氏は、市町村が保育の必要度・量を認定する方式になっていることを取り上げ、パート労働者は必要度が低いとされ保育園に入りにくくなったり、認定量より多い利用に対し自己負担が増額されるなど、結局、利用制限につながっていく危険性があることを指摘しました。泉政務官は「安易なサービス利用もあるという指摘もあり、あらゆる立場の人が一定のサービスを受けられるようにしたい」などと述べました。
高橋氏は、経団連が保育への株式会社の参入と配当に対する規制撤廃を要求していることを紹介し、新システムが「入り口は待機児童対策だが出口は保育の市場化になっている」と批判し、保育に公的責任を果たすように求めました。
(2010年5月20日(木)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
今回の児童扶養手当法案については、一日も早く成立をさせるとともに、制度や運用の改善、あるいは一人親家庭の支援など、引き続いて課題があると思いますので取り組んでいきたい、このようにまず表明をしておきたいと思います。
きょうは、とりわけ保育の問題について、保育制度を大きく変えようとする子ども・子育て新システム検討会議の動向について質問をしたいと思います。お忙しいところ、泉政務官においでをいただいております。
資料をつけておいたんですけれども、検討会議は既に、基本的方向、「子ども・子育て新システムの基本的方向」というものが出されておりまして、来年の通常国会に法案を提出し、二〇一三年から施行するとされております。
ただ、ここではいろいろな要素が入っております。幾つか確認をしたいと思うんですけれども、例えば保育については、社会保障審議会少子化部会が検討していた保育制度改革との関係がどうなるのか。例えばフランスの家族手当金庫がイメージとなっているようでありますけれども、実施主体あるいは補助金の出し方、こうしたものが、いわゆる子育て関係というのはさまざまあるわけで、それを一気に来年出す法案で決めていくのか。
そして三つ目に、この基本的方向の最初にも書いてあるように、「政府の推進体制・財源の一元化」、あるいは「方針」のところにあるように、「推進体制の一元化」ということがあるわけですので、いわゆる民主党さんがマニフェストにも掲げてこられた子ども家庭省、家庭庁の設置法案なるものが一体で出てくるのかということで、わからないことがございます。
したがって、聞きたいのは、来国会に出される法案はどのような形で出され、また、何をどこまで盛り込むのでしょうか。
○泉大臣政務官 今、厚生労働省の方にも御協力をいただきながら、この新システムの検討会議を進めています。その中で、来年の通常国会に法案を出すべく計画を今組んでいるところですが、六月にこの報告書がまずはまとまるという段階でありまして、そこから法案の作成なり準備というものが進んでいくということになりますので、具体的にどこまでを盛り込むかというのは、まだ明確には決めておりません。
ただ、四月二十七日に会合をさせていただいて、そのときの資料がまたこうしてついているわけですが、基本的には、縦割りで補助金ごと、メニューごと、ばらばらに出ていたお金というものを一つにまとめて、そして、もちろんナショナルミニマムや最低限の現金給付というものは当然全国同じ基準で、しかしながら、一方で、基金と言われる、あるいは特別会計と言われるものに幅を持たせて、地域の中で重点を置きたい分野に各自治体の判断で予算を使えるような仕組みというものもつくっていきたいということを考えている。
あるいは、子ども家庭省については、これは今、省庁再編全体の流れもありますので、それとは別に単独で進めていくことができるかというと、現在はそうは考えておりません。ですので、来年の通常国会で子ども家庭省のことを法案として出すのかといえば、そこはまだ不透明という状況であります。
しかしながら、やはり待機児童の問題、そして、すべての子供に一定の良質な環境を一刻も早く提供したいという思いはありますので、やはり幼児教育というものが、理念はすばらしいんだけれども、保育の世界では明確に位置づけられている、あるいは世間的にそう見られていないということがあったりですとか、さまざま、両方のサービスがもっとお互いに相入れ合うことで、多くの子供たちに環境を提供できるのではないかという考えがございますので、早くできる部分についてはなるべく早く実施をしていきたいというのが現在の考えであります。
○高橋(千)委員 器が先なのか、中身が先なのか、あるいはそれを動かすためのお金の仕組みが先なのか、いずれにしても課題が多過ぎて、器がなくて中身だけ決まってもどうなのかということもありますので、六月に報告書が出されて来年に法案が出るというテンポはかなり拙速ではないかなという感じがいたしますし、後でお話しするいろいろな問題があると思います。
一つお答えにならなかったのですけれども、厚労省が所管しておりました少子化部会が検討していた保育制度改革が前提であるということを、一言御確認ください。
○泉大臣政務官 器が先か中身が先かという話とともに、我々の一番の考えは、子供が先でなくてはいけないというふうに考えております。
そういう中で、この幼保一体化の話というのは今に始まったことなのか、あるいは、保育改革、幼稚園改革、幼児教育改革というものが今に始まったのかといえば、少なくとも幼保一体化については、もう三十年、四十年以前から、重ねて繰り返し提言や議論が続いてきたという歴史があります。
そういう中で、特別部会の提言もあり、あるいは幼稚園の、文部科学省の世界でいけば幼児教育の無償化という流れがある。ある種、議論は相当尽くされてきて、そして問題は放置され続けてきているという現状をしっかりと踏まえなくてはいけないというふうに考えているところであります。
○高橋(千)委員 ちょっと具体の話に入ります。
子供が先という視点は全く間違っていない、賛成なんですけれども、そこで話し合われている保育の中身が決してそうではないのだということをお話ししたいと思うのです。
まず、厚労省の姿勢が非常に重要だと思いますので伺いたいと思うのですけれども、例えば、この基本的方向の「新システムとは」という中に、社会全体による費用負担ということがございます。国、地方、事業主、いずれも大事だと思いますけれども、個人というものがございます。二枚目のポンチ絵の中も本人というふうに書いているんですね。これは随分議論されていく中で、介護保険の保育版ということが重ねて指摘をされてきたということなんですね。それをイメージしているのかどうか、イエスかノーかでお答えいただきたい。
また、先週、私質問しましたけれども、保育料を自己負担を一割にした場合の試算というのが子ども・子育てビジョンに載っていますけれども、なぜ一割かということを、私、山井政務官に質問しましたけれども、そことリンクしますと介護保険にそっくりだわという議論になってくるわけで、いかがなんでしょうか。
○泉大臣政務官 済みません、作業チームの事務局長、また主査をさせていただいているものですから、ある程度まとめた形で申しわけございませんが、確かに子ども・子育てビジョンの中で、委員御指摘になられた一割の数字も出ております。これは、厚生労働省の中で検討の一つとして、やはり委員おっしゃったような検討というのはなされてきたのかなという認識をしております。
一方で、現在までのこの新システム会合の中で、介護保険と同様の仕組みにするということを決めたり、あるいは、現在俎上にのせて議論をしているということはございません。
○高橋(千)委員 検討の一つという答えがあったと思います。
さらに続けたいと思うのですけれども、保育の必要度、いわゆるサービス量を認定するということが議論をされております。そうすると、フルタイムの方がパートタイムで働く人よりも認定において有利になるということでしょうか。ただ必要量が多ければ、それだけ保育料、利用料、払うべきお金がふえるということになるわけですね。
これもまさにそっくりな構図であって、あるいは、週三回なんだけれども、自分は週五日、子供を預けて仕事を、正社員を目指したいんだ、あるいは求職活動したいんだという方もいらっしゃるわけですよね。だけれども、認定は三日だとした場合に、五日預けた残りの二日分は自己負担、こういう仕組みが考えられると思いますが、いかがですか。
○泉大臣政務官 大前提の問題意識は恐らく一緒でして、できる限り利用者が利用しやすいようにという視点、これは親の立場からすればまずそうだと思います。
一方で、子供の育ちということも大変重要だということは、繰り返しこれまでも話をしてきたわけですが、現在も、市町村ごとに優先順位を事実上点数化したり、いろいろな取り組みの中でつけられていて、フルタイムの方がパートタイムよりも優先されているという実態がある。そしてまた中には、まさに入れないから待機児童化しているという現状があるというふうに思っております。
また、そういったものを、では今後どういうふうに改革をしていくのかという視点で今まさに取り組んでいまして、やはりこれだけ景気や雇用の動向が激しく変化をすると、一年の間に親の立場が非常に変わりやすい環境が今の世の中かなというふうに思っております。正社員だった親が年度途中にパートになり、あるいは無職になりというような状態ですので、そういった意味で、あらゆる立場の利用者の方がやはり一定のサービスを受けられる環境をつくっていきたいということ。
そしてそこには、確かにいろいろな保育関係者の専門家の御意見もありまして、これはまだ決めている話ではありませんが、保育サービスを受ける量に関係なく、全くすべて同じ費用負担でよいのかという点は、別な意味でやはり指摘もあるところであります。
そうすると、サービスの供給が本当に間に合うのかということであったり、いわゆる保育サービスと言われるものの安易な利用につながるのではないかという指摘をされる方もおられまして、これは専門家の中から指摘がある。限られた費用の中で、できる限り公平に、かつ広い方々に利用していただくためにどんな方法があるかということを、今、最善を尽くすべく頑張っているところであります。
○高橋(千)委員 今御紹介いただいたポイント制というものを私は本委員会で質問したことがございますけれども、既に各自治体でやられているわけですよね。しかも、本当に、今政務官がお話しされたように、保育所の皆さん、園長さんなどに言わせますと、やはり今は保育料の徴収相談なども全部やっておりますので、もう本当に御家庭の事情がよくわかるわけですよね。一人親家庭も非常に多い。そして、派遣で仕事先を転々としている。あるいは、全く仕事がない状態がある。まさに子供の家庭の状態を本当に受けとめているというのが実態である。
ただ、そういうことが今回の制度によっていい方法になるのだろうか。今言われたように、限られた利用量とおっしゃっていますので、保育所が決定的に足りない中で、どうしたって利用制限、何らかの理屈づけが必要になってくるわけですよ。
これは認定という言葉を使っておりますけれども、認定イコール入所ではありません。直接契約では、結局、みずから探して見つけなければならない。幾つも園を探して、結局見つからないということだって現実としてはある。これをいかがお考えですか。
○泉大臣政務官 今、やはりそこの仕組みについて、どう利用しやすい制度にできるのかということも真剣に考えているところです。
例えば、両面ありまして、現在の制度においては、利用者が自分の子供を預けたい施設に、保育所に預けられるかといえば、それはやはり市町村が最終的には決定をするということで、必ずしも自分の家とは近くない、あるいは中には、最近大分解消してきていますけれども、兄弟ごとに別々の施設に預けられざるを得ない。例えばそういったこともこれまで起きてきて、どうして自分で施設を選べないんだという声もたくさん上がってきていたということ。
そしてまた、利用者が苦情なり施設に対する改善をお願いする場合に、どこにお願いをするのかといえば、それは市町村に対して物を言わなくてはいけなかった。直接施設の方に言って、細かな点を改善できるところがあったとしても、実は、制度上は市町村がこの契約ということになっておりましたので、そういった意味で、利用者がともすれば施設を使わせていただいているという、利用者主体ではない形に陥っていたところもあったのではないかという指摘も寄せられています。
そういった意味で、一つは、新しい制度で、例えば直接利用者が選んでいくというふうになった場合に、自治体がやはりちゃんと情報提供をすることと、そして公平公正な入所が図られるようにすること、そういったことも含めて対処することが大変重要じゃないかなというふうに思っています。
そして、もちろん大事な観点ですが、優先的に入所しなくてはいけない、特に困難を有する、配慮を要する子供たちにおいては、これは当然配慮されるべきだというふうに考えております。
○高橋(千)委員 済みません。答弁が大変丁寧なので、時間がなくなりまして、申しわけないんですけれども、政務官、せっかくおいでいただいて、厚労省の答弁が一つもなかったわけで、同じ質問を泉政務官と大臣に、最後に一言お願いしたいと思います。
今回の改革の中で、認可制から指定制にしようということが言われております。それで、株式会社の配当に規制をするか否かという議論がやられておりまして、民間事業者へのヒアリングでは、株式会社が配当を制限される場合がある、運営費の使途制限があり余剰金が活用できない、こういう意見があり、経団連は、社会福祉法人会計による財務規制、事実上の配当規制等を撤廃すべきであると主張をしています。
こういう、結局、保育の市場化ということがどうしても進まざるを得なくなるわけですよね。利便性ですとか多様なサービスということで、株式会社にも市場を広げましょう、ただし、それは撤退に陥るという問題が起こってくる中で、入り口は、待機児童が多いです、何とかしなければならない、だけれども、出口は何か保育の市場化ということで、本来、保育の理念である児童福祉法にうたわれている子供の最善の利益とは相入れないものにならないか。
この問題について、私は危機意識を持っていますが、簡潔に一言ずつお願いいたします。
○泉大臣政務官 簡潔にはなかなか語りがたい問題なんですが、これは、我々の側も当事者として考えなくてはいけない。行政も、実はこれまで、保育基盤、インフラも含めて整備し切れてこなかったということを真摯に受けとめなくてはいけないわけですが、しかし、理想論として、では行政が、地方行政も含めて全部、予算そして体制を整備できるのかといえば、それは、今もなお全く先が見えていない状態であります。
そういうことでいいますと、国だけが頑張ってもだめで、これは地方も頑張らなきゃいけない。では、地方がそれを今やってくれる状況にあるかということを踏まえれば、やはり一定の要件を満たした事業者が参入をしていただけるようにはしていかなくてはいけない。しかし、そこには、一定の要件を満たすということが大事ですし、例えば撤退について、事業からの撤退が簡単にできるようであってはいけないというふうに思っております。
そして、先ほどの株式会社か社会福祉法人かという話でいけば、例えば社会福祉法人であっても、事業を始める際に、銀行から融資を受けます。そこに対する利子をお支払いします。これは銀行にとっての利益になるわけで、配当とは違いますが、しかし、事業者側に何らかの利益を払っているということも言えるわけですね。
そういった意味では、この配当をすることが、イコールすべてだめなのかどうかという考え方には立つつもりはない。しかしながら、やはり一定の質を確保しながら、この事業者、民間の方々も含めて入っていただくことというのが大事じゃないかというふうに思っています。
○長妻国務大臣 これは非常に重要な論点だと思いまして、私自身は、政府と市場の役割分担、これを見直す必要があるというふうな立場に、社会保障全体に立っております。
その中で、保育についても、これは、今現在も株式会社がやっている保育所もあり、配当も今行えるようになっておりますが、ただ、配当した場合は、上乗せの給与改善費が払われないなどなど、制限があるわけでありますけれども、これについては、一概に、企業が入ると何か問題が発生してよくないという発想ではなくて、市場を一定の制約をつけてうまく活用していく、こういう観点も重要だというふうに考えております。
○高橋(千)委員 次にまたやります。
ありがとうございました。