国会質問

質問日:2018年 5月 25日 第196国会 厚生労働委員会

「働き方改革」一括法案(労働時間データ問題、高度プロフェッショナル制度)

高プロに残業上限なし
高橋氏追及 厚労相はぐらかし

 「働き方改革」一括法案を審議する衆院厚生労働委員会で25日、日本共産党の高橋千鶴子議員は、高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)には、労働時間に上限がない問題や、長時間労働がまん延している研究開発業務を対象にすることの問題をただしました。加藤勝信厚労相は、答弁をはぐらかす不誠実な態度に終始しました。
 高橋氏は、健康管理時間(残業相当)で医師面接を課すのはなぜ100時間に達してからなのかと質問。加藤厚労相は、「労働政策審議会の建議で100時間が適当とされている」と言うだけで、100時間に決定するかも「今後検討する」と述べるにとどまりました。健康確保措置の選択肢のひとつにある、残業相当の上限では、加藤厚労相は「(過労死ラインの)80時間、100時間を考慮する」と答えました。
 高橋氏は、選択肢で上限を選ばなければ「高プロは医師が面接さえすれば、何百時間働かせてもよい」と指摘し、労働時間に上限があるのかとただしました。
 加藤厚労相は、「医師が面接し、対応する」となどというだけの答弁を繰り返し、上限の有無を一言も答えませんでした。結局、事業者が医師から意見を聞いたり、医師の勧告内容を衛生委員会に報告するだけで、残業にストップがかかる保障はないことが分かりました。高橋氏は、「実効性は何もない」と批判しました。
 労働時間データの2割削除の再集計によって、高プロ対象のひとつに挙げられる研究開発業務で、残業が大臣告示(月45時間、年360時間)を超えている労働者が3割から5割へ増加しました。
 高橋氏は、「長時間労働だと分かっている業務を規制も割増賃金もない高プロに入れていいのか」と追及。加藤厚労相は、「ストレートに比較できない。年収要件などがある」などと答弁。高橋氏は、「総理が他よりも強い制度といった健康確保措置も担保にならない。徹底審議が必要であり、このまま採決など到底認められない」と批判しました。
(2018年5月26日付より)

 

――議事録――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 冒頭、昨日の本会議で、高鳥委員長の解任決議案、我々が出したものが否決をされましたけれども、その翌日の委員会で、まさかの委員長職権、しかも、採決までセットで提案をされたこと、強く抗議をしたいと思います。
 けさの理事会でも、野党が求めていた資料が新たに出てきまして、指摘をされていたデータの誤りがまた新たに出てきた。これをそのままにはできないんです。議論の出発点だと何度も言ってきたではありませんか。
 改めて、その分の時間をきちんとし、きょう、もう委員長が一時間半とセットしてしまいましたけれども、引き続く協議をやるべきだ、審議をやるべきだということを委員長にお願いします。
○高鳥委員長 後刻、理事会で協議します。
○高橋(千)委員 では、質問します。時間が限られていますので、答弁も簡潔にお願いします。
 まず、水曜日の続きみたいなものですけれども、高プロの労働者の健康管理時間が所定内労働を上回る部分、これが月百時間を超えたときに医師の面接指導を義務づけるということを言っています。これは百時間と書いていないんだけれども、省令に落とすということだと思います。
 それで、健康管理時間は、普通に考えて、実労働時間より長いわけですけれども、なぜ百時間としたんでしょうか。
○加藤国務大臣 その点につきましては、平成二十七年二月十三日の労働政策審議会の建議において、一週間当たり四十時間を超えた場合の健康管理時間が一月当たり百時間を超えた労働者を面接指導の対象とすることが適当とされております。これを踏まえて、今後、省令の内容は検討していきたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 なぜ百時間にしたんでしょうかと聞いたんですが、今のは、百時間も決まっていないという意味ですか。
○加藤国務大臣 そうした建議があるわけでありますけれども、具体的な時間については、省令の内容については、今後、労働政策審議会での議論も踏まえて検討していくということになります。
○高橋(千)委員 大臣、この間、私の質問に対して、どうやってチェックをするんですか、監督署がチェックするんですかと言ったときに、健康管理時間が百時間になったら医師の面接指導をやると答弁されたじゃないですか。
○加藤国務大臣 ですから、建議でそう書いてありますので、基本的にはその線において検討する、それをベースに検討するということで申し上げておりますが、この法令の建前、たてつけからすれば、その省令の内容は、今後、省令において定めるということになっているわけであります。
○高橋(千)委員 安倍総理が来たときも、これは、高プロは強い健康確保措置をやるんだ、これまで以上にやるんだと言いましたよ。だけれども、その百時間すらもちゃんと答えられない。それで、どうして強い確保措置だなんて言えますか。
 第四十一条の二、五号で、健康確保措置を、四つのうち、いずれかを講ずることと言っています。その中のロの部分、一月又は三月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。言ってみれば、健康管理時間の上限という意味だと思います。何時間にしますか。
○加藤国務大臣 今の委員の御指摘は、高度プロフェッショナル制度において、労使委員会で選択して決めていただく健康確保措置、これは四つじゃなくて、その次のレベルでありますけれども、一つとして、健康管理時間を一カ月又は三カ月について厚生労働省令で定める時間を超えない範囲とするという措置、これが規定をされております。
 その具体的な中身については、平成二十七年二月十三日、労働政策審議会の建議において、「法案成立後、改めて審議会で検討の上、省令で規定することが適当」「その審議に当たっては、各企業における現在の健康確保措置の取組実態も十分踏まえつつ、対象労働者の健康の確保に十分留意することが適当である。」とされております。
 これを踏まえて検討していくということになると思いますけれども、一つの議論としては、今回設ける時間外労働の上限、単月百時間未満、複数月八十時間、これは議論の一つの出発点になるものと考えております。
○高橋(千)委員 これは絶対、考え方を示さないのはおかしいんです。
 今、百、八十は一つの考え方だとおっしゃいました。やはり、確保措置の選択の中にある例えばインターバルも、あるいは今私が指摘した上限も、当然やるべきだと思います。ただ、はっきり言って、これは選ばないだろうなと思うんですよね。選べと書いた、だけれども、選べと書いた以上は省令で示す必要があります。
 百時間で、医師の面接という基準がある。実労働時間でいえば、間違いなく過労死ラインである。高プロだからといって、そもそも、過労死ラインを飛び越える基準を省令でつくることは考えにくいですけれども、どうですか。はっきり考え方を示してください。
○加藤国務大臣 今の御質問のあった、健康管理時間の上限ということでありましょうか。(高橋(千)委員「はい」と呼ぶ)それについては、今申し上げたように、その上限、それも当然踏まえながら議論するということになると思います。
○高橋(千)委員 踏まえながらということで、ちょっと曖昧ですけれども。
 つまり、高プロだからといって、通常の方たちよりも長い上限があるということはあり得ないですよね。それはどうですか。はっきりおっしゃってくださいますか。
○加藤国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、各企業における現在の健康確保措置の取組実態も踏まえつつということでありますから、さまざまな観点から議論していただくということになりますが、ただ、今委員からもお話がありましたように、今回、時間外労働の上限も求めております。これは労働時間でありまして、一方は健康管理時間、その差はありますから、その辺も含めて議論されることになろうと思います。
○高橋(千)委員 さっぱりしないですよね。健康管理時間という概念の曖昧さは、これまでも、裁量労働制でも指摘されてきました。
 NHKが昨年、元記者、佐戸未和さんの過労死認定を公表したことを受けて、記者を裁量労働制に切りかえるとともに、専門業務型裁量労働制に対する四段階に分けた健康確保措置を決めました。これは指摘を受けてまた見直しをしているわけですけれども、ちょっとびっくりしたんですね。
 第一段階として、月三百二十時間超で注意喚起、自己診断。自己診断ですよ、注意喚起。でも、健康管理時間が三百二十時間と言われても、ぴんとこないですよね。実労働時間より長いと言っているわけですから、長いんだか低いんだかよくわからない。これは所定内労働時間も入っているから、週四十時間から換算すると大体月百八十時間くらいかなとすると、百四十時間の残業ということになるのかなと思うんですね。未和さんが亡くなる直前の拘束時間は三百四十九時間でしたから、結局、見直しをした確保措置でもオーバーしていて、助けられないものを平気で出してきたんですね。
 第二段階は月三百五十時間。第三段階は月三百七十時間又は二月で七百時間超。
 時間外労働が現実として多いから、いかに健康確保措置といっても、そこに照準を合わせたということになるのかな、そう言わざるを得ません。
 高プロは、面接さえすれば何百時間でもよいのでしょうか。
○加藤国務大臣 今委員が言われたのは、NHKの事例、第一ステップ、第二ステップということなんだろうと思いますが、ちょっとそれについては、コメントは控えたいというふうに思います。
 この面接指導については、最終的には省令に落ちているわけでありますけれども、今、建議では百時間という一つの目安を明示されているわけでありますから、その段階で面接をし、そして、必要があれば医師から指導等を行っていく、そして、その指導等において事業主側もそれに対応していく、一連の措置を決めさせていただいているところであります。
○高橋(千)委員 聞いたことに答えていないんです。さっき言った、上限を聞きましたけれども、それを選ぶとは限らない。私、多分選ばないだろうと思います。
 そうすると、残るは、百時間過ぎたら医師の面接指導というだけなんですよ。でも、面接指導をやったら、またその後、百時間、何百時間でもよいということになりますか。上限を決めない以上は、これが許されることになりませんか。
○加藤国務大臣 今のは、だから、面接指導についてという御質問でお答えさせていただいたんですけれども……(高橋(千)委員「違うでしょう、面接さえすれば何百時間でもよいのかと聞いています」と呼ぶ)いや、ですから、面接指導ということで、面接指導を行った結果として、その対象の働き方の状況に応じて、その面接指導を行った産業医あるいは医師の方が必要な対応をとっていく、こういうことになるわけでありまして……(発言する者あり)いや、ですから、その状況に応じてそこは判断するということになるわけであります。(高橋(千)委員「違うでしょう」と呼ぶ)
 いや、ですから、具体的な時間という、もちろん、先ほどから御議論させていただいているように、百時間ということで、省令で決めたとしたことを前提に話をさせていただきますけれども、そうした対象労働者に対しては、本人の申出にかかわらず面接指導を行い、そして、その状況に応じて、もちろん、時間等も考えながら、その本人の状況、その状況を踏まえて必要な対応をとっていくということであります。
○高橋(千)委員 対応を聞いているんじゃありません。上限を決めていないんですよ。そうでしょう。選ばなかったら、上限がないんです。そうすれば、面接を一旦受ける、何らかの指導をするでしょう、血液検査をしましょうとか言うかもしれません。だけれども、上限はないんですよ。何百時間でもよいのですかと聞いています。
○加藤国務大臣 ですから、その状況に応じて、医師から、例えば職務をかえた方がいい、あるいは時間に制約を設けた方がいい、さまざまな指示が、状況に応じ、あるということでありますから、それに対して事業主は対応していく、こういう姿勢でありまして、だから、委員御指摘のように、百時間を超えたらということではなくて、医師においては、その状況、時間というのもいろいろな判断の一つの要素ではありますけれども、最終的には、その相手の状況を見て、今申し上げた対応を、必要な対応をとっていく、こういうことになっているわけであります。
○高鳥委員長 高橋千鶴子君、質問を続けてください。(発言する者あり)
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
○高鳥委員長 速記を起こしてください。
 加藤厚生労働大臣。
○加藤国務大臣 産業医が面接指導を行った後のプロセスを申し上げれば、事業者が産業医等から労働者の措置等に関する意見を聞く、そして、事業者が産業医の意見を踏まえて必要な措置を講ずる、そして、先ほど申し上げた、その人の状況に応じて、職務を変更する必要がある、あるいは時間に制約を設ける必要があるということになれば、今のようなプロセスになり、さらに、今回新たに、事業者が産業医に措置内容を、こういう措置をとったということを情報提供をする、そして、措置状況を確認した産業医が労働者の健康確保に必要があると認める場合は事業者に勧告をする、そして、これも新しい、新規に設けられた措置でありますが、事業者が産業医の勧告内容を衛生委員会に報告する、こういう仕組みになっております。
 その上で、衛生委員会というのは、御承知のような、労使が入った形になっているわけでありますから、そうしたプロセスにおいて、産業医におけるこうした指導等が実効性を持つような仕組みとさせていただいているわけであります。
○高橋(千)委員 実効性を持つ仕組みではなくて、きちんと修正してくださいよ。そうでなかったら、担保ができません。そのことをちゃんと答えてください。
 私、大臣が何度も答弁をして時間をとったので、もうあと一問しか聞けませんから、そのときに一緒に答えてください。
 資料にありますが、この間から私が質問している、見直しをしたデータのあれで出てきた、法定時間外労働の実績、新技術、新商品等の研究開発の業務、これは、今も法定時間外労働の除外になっている業務が一体この法定時間にどれだけおさまっているのかねという話で、五割程度なんですね。
 だけれども、これは、今度は高プロの対象になるんですよ。高プロの対象になる。ということは、それは全部がそうならないかもしれませんよ、年収が低い人もいるでしょう。だけれども、五割がおさまっていないんです。それがわかっていて高プロに入れる、入れることもあり得る、それはおかしいじゃないですか。
 もともと、法定時間を超えていることがわかっている、そういう業務を、高プロで、規制もない、割増し賃金もない、そういう世界に入れていくのは絶対だめなんです。これを調査するべきではありませんか。
○加藤国務大臣 済みません、最初の質問の撤回するという意味がちょっとあれだったんですけれども、今、二問おっしゃって、最初の一問、ちょっとそこを受け取れませんでしたが、後段の部分について申し上げさせていただきますと、確かに、今回の精査した結果、委員のおっしゃるような数字が変わったところはそのとおりであります。
 これは、ただ一方で、そもそもこの議論というのは、研究開発業務をそもそも労働時間の規制の外にするかしないかという議論の際に提供された資料だというふうに承知をしておりますけれども、高度プロフェッショナルについては、先ほど委員もお話ありましたように、どういう業種にするかということもこれからの議論でありますが、加えて、収入とかそうした、あるいは書面によって職務を明確にしていく、あるいはもともと業務を限定していく、そういう要件を課しているところでありますし、また、この数字は、長時間労働、要するに残業を入れた結果の数字も入っているわけでありますけれども、高プロの場合には、そういったものは基本的には対象にならず、もともと支払いが、確実に支払われることが見込まれる賃金ということでその数字を決定している、そういった相違がございますので、ストレートに比較できるものではないというふうに思います。
 そういった点も含めて労働政策審議会で御議論いただいた結果、こうして出させていただいたということであります。
○高橋(千)委員 長時間労働がもう最初からわかっているんだ、それを、残業代がない、時間規制がない高プロの世界に入れていいんですかと聞いています。
○加藤国務大臣 ですから、今申し上げた統計というのは、残業時間も含めた数字が入っているということが一つ。
 それから、今委員も最初の御質問でおっしゃったように、全てが対象にならずに、さまざまな要件を設け、そしてさまざまな御懸念もございますから、先ほど議論になりました健康確保措置等も、今回、通常に比べてより強いものを入れさせていただくことによってそうした懸念の解消等に努めていく、こういう仕組みになっているわけであります。
○高橋(千)委員 全く納得できません。
 健康確保措置もまともに答えていません。せめてそれを法律に書き足すとか、そのくらいのことをやってくれなければ、到底認められません。
 審議を引き続き行っていただきたいことをお願いして、私の質問を終わります。

 

――資料――

2018年5月25日衆院厚生労働委員会配布資料

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