衆院厚生労働委員会は28日、障害者自立支援法の「延命」につながる「自立支援法一部改定案」を民主、自民、公明各党の賛成多数で可決しました。日本共産党、社民党は反対しました。
同法案は、提出されていた自民・公明議員の案と民主・社民・国民新議員の案を取り下げ、委員会提出法案として一本化したもの。質疑時間はわずか1時間15分でした。
日本共産党の高橋ちづ子議員は反対の意見を表明しました。高橋氏は、反対の最大の理由は当事者の意見を踏まえないでいきなり提出を行ったことにあると強調し、その背景には労働者派遣法改定を強行するための環境づくりという国会対策の思惑があると指摘しました。
高橋氏は、与党は廃止までの「つなぎ」法案だというが、時限立法であることが明記されていないうえ、完全施行日が2012年4月と今から2年後になっていることを示し、「自立支援法延命がねらいではないかとの疑念を持たざるを得ない」と表明。当事者参加での議論と立法こそ行うべきだと述べました。
傍聴席に入りきれないほど多数の障害者が審議を見守りました。岩手・花巻市からかけつけた視覚障害者の小田嶋保子さん(61)は、「障害者も参加して12回開かれてきた障がい者制度改革推進会議の議論を全部録音で聞いています。さまざまな意見が出されているのにその中身が反映されていません。私たち抜きの法案です」と目を赤くしました。
(2010年5月29日(土)「しんぶん赤旗」より転載)
――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となりました障害者自立支援法の一部改正案について反対の意見表明を行います。
ことし一月七日、政府は、障害のある当事者が社会の対等な一員として安心して暮らすことのできるものとするために最善を尽くすことを約束し、障害者自立支援法違憲訴訟原告団、弁護団と歴史的な基本合意を結びました。これに基づき、障がい者制度改革推進会議が設置され、当事者参加のもとで、二〇一三年八月の障害者自立支援法廃止とその後の新法成立へ向けて精力的な協議が始まっており、国連障害者の権利条約にふさわしい総合的な新法が期待されているところです。
しかし、今、和解を心から喜んだ原告らが、あの謝罪と約束は何だったのかと怒りの声を上げているのです。
反対の最大の理由は、基本合意を踏みにじり、当事者参加の原則、改革会議の協議を飛び越えて国会が決めてしまうというやり方に対してです。
この間、委員会が長く不正常な状態が続いていたにもかかわらず、本法案に限って与野党合意が成り立った背景には、選挙を前にした党内事情や、この後に控えている労働者派遣法の強行採決への環境整備という与党の思惑もあり、障害者の問題が政争の具にされているのではないか。強い怒りを表明するものです。
なぜ今、改正案なのですか。旧与党時代に自民、公明が提出した改正案は、一定の改良ではあるとしても、自立支援法の枠組みは維持するための法案です。廃止を掲げた与党が、なぜその自民、公明案と一本化を図ることができるのか、理解できません。
障害者自立支援法三年後の見直しとしてつくった旧与党案と、廃止までの部分修正である与党案が本来合体できるはずがないのです。互いに一本化を優先する余り、廃止を前提としていることがあいまいにされ、時限立法であることすら明記することができませんでした。一方、最大の争点だった応益負担については、応能負担を原則とするとしながら、現在でも実質応能になっているという旧与党の言い分を受け入れており、実際に能力に応じた負担の程度は、時々の政府の判断にゆだねられているのです。
やはり、基本合意が最初に指摘しているように、契約制度、程度区分で障害の程度と利用量を決定し、その利用量に応じて定率の負担をするという仕組みそのものを変えて、憲法に即した福祉の制度でなければならないという、そのためにこそ議論を重ねるべきだと思います。
最後に、廃止までのつなぎ法案だといいながら、施行日は二〇一二年四月と、最長であと二年もあるのは矛盾しています。また、廃止までの時限立法と明確にすべきです。与党が廃止をためらい、自立支援法延命こそがねらいではないかと強い懸念をぬぐえません。
以上、本法案は廃案にし、きょうの議論を生かして、改革会議の議論の充実と当事者参加を貫いた立法を強く求めて、発言を終わります。