国会質問

質問日:2010年 5月 28日 第174国会 厚生労働委員会

障害者自立支援法一部改正案

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 時間がありませんので、早速、自民党の提出者に最初に伺います。

 自民、公明の改正案は、与党時代に出された法案と基本的に同じものだと思います、若干の追加があるのは承知をしておりますが。自民党さんの立場は、障害者自立支援法をいずれ廃止するという立場でしょうか。それとも、制度の枠組みは残して修正を図る立場ですか。

○田村(憲)議員 自立支援法の経緯は先ほどお話をさせていただいたとおりでございます。先生、時間もないと思いますので、端的にお答えいたします。

 我々は、これからの、今与党・政府が考えておられます総合福祉法がどういうものになるかよくわかりませんが、少なくとも福祉サービスをどのような形で提供していくか、就労サービスも含めてでありますが、そういうものに関して、今の自立支援法という枠組みを廃止するという意味でこれを出したわけではございませんで、足らざる部分をしっかりと直しながら、障害者の皆様方の御意見をいただきながら、これを改正の中でよりよいものにしていこう、そういう方針でございます。

○高橋(千)委員 まず、確認ができました。

 自民、公明の案は、自立支援法の枠組みを廃止するものではないということであります。

 与党は、自立支援法を廃止し、この一月、自立支援法違憲訴訟原告団と和解し、基本合意を結んだ。廃止しというか、廃止を公約し、基本合意を結んだと思います。制度改革会議が立ち上がり、精力的な検討を重ねているところでありますが、二〇一三年八月までに廃止するという立場を変えたのですか。大臣に伺います。

○長妻国務大臣 先ほども、この一つの原点が、原告団、弁護団との基本合意文書というのを国として責任を持って交わしたわけでございまして、そこにも、「国は、速やかに応益負担制度を廃止し、遅くとも平成二十五年八月までに、障害者自立支援法を廃止し新たな総合的な福祉法制を実施する。」こういうことが明記されているところであります。

 事実、実際今、障がい者制度改革推進会議やその下の総合福祉部会で当事者の御意見も聞きながらその作業を進めているということで、方針は変わっておりません。

○高橋(千)委員 自民党さんは、枠組みは維持なんだと、そして与党は、廃止という立場は変わっていないんだとおっしゃっているんです。

 そうすると、それを一本化するというのはどういうことになるのかということなんです。つなぎだからとおっしゃるかもしれません。しかし、では、施行日が二〇一二年四月というのはなぜですか。つなぎといいながら、二年も待たなければならない。おかしくはありませんか。民主党の提出者に伺います。

○園田(康)議員 今回提出をさせていただいている法案をもう一度よくごらんいただきたいと存じます。三つの法施行日となっております。すなわち、この法律改正案が施行される日は、まず法律の公布日が一点、それから公布日から起算して一年六カ月以内、これが二つ目、三つ目に二十四年四月一日というのが出てまいります。

 この二十四年四月一日というのは、先ほど公明党の高木委員からも御発言があったように、自立支援法の制定過程の中で、いわば法律が制定されてから施行されるまで、かなりの短い期間でやってしまったというところが一つの反省材料ではないかなというふうに私は考えておりました。したがって、きちっと制度を制定され、周知し、そして実施に至るまでの間というのは、その周知期間というものをしっかりと置いていかなければいけないのではないかというふうに考えているところでございます。

 御指摘の二十四年四月一日というのは、先ほど阿部委員からも御指摘があった、支給決定プロセスの見直しのところの部分あるいは障害児の支援の部分でございまして、これは、市町村の方々に今後の政省令をもって周知していき、そして制度を整えていかなければいけないとなると、混乱を来してはならないという意味で、幾つかに施行日が分かれているということでございます。

 なお、発達障害の障害の範囲については、公布日からすぐ施行されるものだというふうに考えています。

○高橋(千)委員 つなぎの法案を周知するためにまた一定の時間がかかるのだと。新しい法案をつくるために今改革会議が検討していて、当然その周知の期間などがかかりますね。そういうことが二重三重に重なってくる、一体これはどういうことになるのかということがあるわけです。

 民主党さんの案には「廃止」という言葉がございます。「廃止を含め」という表現でありますけれども。それから、先ほど阿部委員の質問に対してお答えになっていたように、二〇一三年八月の廃止までの期限、時限立法であるという説明がございました。では、これから出てこようとしている、自民党さんの提案と一緒にしたいという一本化案には、その時限立法は含まれません。どうしてですか。

○園田(康)議員 委員御指摘の、一本化と言われるものは、恐らく合意がなされた後の、委員長から提出される合意案であろうというふうに思っておりますけれども、ここにおいては、先ほど御指摘いただいたように、私どもは、平成二十五年八月までの間において、制度改革推進本部等の議論を踏まえて、そしてきっちりと新しい総合福祉法をつくっていく、この方針を明確にお示しさせていただいている法律案でございます。

 一方、野党案、自公から提出されている法案は、従前の自立支援法の改正という位置づけの中で、幾つかの追加項目があるというふうに承知をさせていただいているところでございます。

 したがって、今私どもは、与野党の真摯な検討とそして議論を重ねさせていただきまして、私どもから申し上げたのは、やはり当事者の方々が議論をしていただいている、そしてその推進会議と総合福祉部会等の会議を踏まえずに新しい法制度をつくるというのは、絶対にこれはまかりならぬということを申し上げさせていただいているところでございます。

 先ほど高木委員からも、推進会議等でしっかりと議論を踏まえていただいているという御発言がございましたけれども、これは、広く国会内においても、野党の皆さん方もようやく御理解をいただいてくるような形になってきたというふうに思っておりますので、そういった点では、私は、方向性は与野党一致できるものではないかというふうに考えております。

○高橋(千)委員 よくわからないんですね。

 だとしたら、こうした機会を何度も重ねて、検討会議の議論を我々が報告を受けたりとか、あるいは当事者の声を聞いたりして、我々が今できることは何なのか、急ぐべきことは何なのかということをやるべきではないか。結論ありきではやはりおかしいのではないかと思うんですね。

 皆さんのお部屋にも、先ほど紹介があった、ことしの一月の基本合意を結んだ自立支援法違憲訴訟原告団の皆さんを初め、全国の団体の皆さんから強い抗議声明が寄せられていると思います。私がここに来るまでの間に数えただけでも、三百七十通以上のファクスが来ています。

 私は、両党とも、両党ともというか、提案者の皆さん、多分よかれと思って提案されたとは理解できますし、内容自体が、少なくとも改悪ではない、改良されている部分があります。では、それでも反対の声が強いのはなぜだと思いますか。

○園田(康)議員 ありがとうございます。

 御指摘の違憲訴訟団の方々からの緊急抗議声明というものが出されているではないかということですけれども、昨日、私もその原告団の一部の方ではありましたけれども、お目にかからせていただきました。私からも真摯に御報告をさせていただいた後に、御意見をちょうだいいたしました。

 その中身につきましては、自立支援法を廃止して、平成二十五年八月までに、制度の谷間をつくらない新しい法律を当事者の意見を十分に聞いてつくるとした国及び与党の姿勢に真っ向から反するものではないかという御指摘もいただいておりましたし、また、内容面においても、改正法案は私たちが願う改正とはほど遠く、基本合意文書の水準を大きく下回るものであるという御意見もいただきました。

 昨日のお話の中で、一つちょっと私、誤解をされていらっしゃったなというふうに、これは私どもの説明不足があったというふうに反省をさせていただいておりますけれども、例えば、自立支援医療の部分も、今般の見直しの中で応能負担化をさせていただいております。平成二十二年度の予算の中においては、低所得者一、二の方々には福祉サービスと補装具だけの無料化をした、残るは自立支援医療の部分ではないかということは、私どもも宿題として、喫緊の課題だということで、基本合意文書の中にももちろん入っておりました。

 したがって、今般のこの見直しの中において、二十九条三項だけではなくて、五十八条においてもきちっと、自立支援医療の部分、ここも応能負担化の条文はしっかりと入れさせていただいて、さらに私ども、立法府の立場で今後政府にこの働きかけを、求めていくということは大変重要なことではないかなというふうに思っておるところでございます。

 いずれにいたしましても、地域で生活する障害者児の方々の生活をしっかりと支援していく、一歩でも前に進めていきたいというところを、今後、当事者の方々にも、私どもの与党、あるいは与野党を超えて、立法府としての責任としてお伝えをしていくことが大変重要なことであろうというふうに思います。

○高橋(千)委員 済みません、この通告、自民党さんにもしていたんですが、時間の関係で省略をいたします。

 今、園田委員から、原告団の皆さんにもお会いしましたと。そして、抗議されている中心部分についてお話をされたと思うんです。それは、多くの皆さんがやはり受けとめてくださっているはずなんですね。なのに、なぜこういう進行なのかと。やはり中身ではないんだということをわかってもらわなければならないわけです。

 今、医療の問題を御説明されました。医療の問題が解決すればそれでいいということではありません。確かに、説明の中には医療も同様の措置とするというふうに書いてございます。でも、例えば自民党さんが出した案の中には、「利用者負担の規定の見直し」ということで、「累次の対策により、負担上限額は大幅に引き下げられており、実質的に負担能力に応じた負担になっているが、法律上は一割負担が原則となっている。」つまり、実質的に負担能力に応じた負担になっている、現行このように評価をされております、自民党さんの説明ペーパーで。しかし、これと同じことを、鳩山総理も我が党の志位委員長の代表質問に対して答えております。現状が実質的に負担能力に応じた負担であると。

 ですから、今回、法律に応能負担と明記するということは、応益負担を撤回するとイコールですか。

○園田(康)議員 当然ながら、旧政権下の方々は少し耳の痛い話かもしれませんけれども、応益負担というものは、これでまず撤回をされるというふうに私は思っております。そして、これから、旧政権下の方々もいろいろ反省をしながら、特別対策であるとか緊急措置であるとか、いろいろ策を講じていらっしゃった。この努力というのを私も当然認めさせていただいているところでございますし、大変ありがたい形をやっていただいた。

 まだまだ、今回のこの法案のあり方でも実は不十分であるというふうに私は思っております。したがって、応能負担というもののあり方を含めて、まさしく今、推進会議並びに総合福祉部会というところで当事者の方々に御議論をいただいて、そして、先ほど来お約束をさせていただいているように、平成二十五年八月までに新しい総合福祉法ができていくんだというこの流れというのは、幅広く合意をしていただけるものではないかというふうに思っております。

○高橋(千)委員 一言、自民党さんにも確認してよろしいですか。

○田村(憲)議員 一言で申し上げれば、応能負担にこれでなる。明確にここに応能負担と書いたということでございます。(高橋(千)委員「応益負担の撤回ですか」と呼ぶ)今まで応益負担であったかどうか。これは、なかなか言葉、明確に難しいですが、応益負担であるというような誤解といいますか、そういうふうに思われた部分があったというのは事実であろうと思います。

○高橋(千)委員 やはり、ここに見解の相違があったのではないか。応益負担の撤回とは、やはり自民党さんはおっしゃらなかった。ですから、そこで一本化するということは、まだそこまではたどり着いていないということであります。それから、総合福祉法、仮称ですから、これから新しい法律が目指しているものはそれだけではないということは、もう御存じだと思います。

 最後にお話をしたいと思いますけれども、私が先ほど来、なぜ抗議がこんなにも来ているのかということの中身、それはもう皆さんが一番よく御存じのことだと思うんですね。私たちのことを私たち抜きに決めないでと。そのスローガンがまさに踏みにじられている、基本合意が踏みにじられているということに怒っているわけであります。

 元原告の方から寄せられている手紙を一部だけ御紹介したいと思います。

 今国会に提案されるとの報道に接し、憤りで胸がつぶれそうです。

  一月七日に国と私たちが合意した基本合意文書は、歴史的な内容をかち取ることができたと思っています。

  障害福祉は基本的人権の行使を支援するものと明言したことは特筆すべきことであり、福祉行政はすべての国民の基本的人権の行使を支援するものへとつながっていく一歩をかち取ることができたと運動の成果を誇りに思いながら、これからが本番だと思ってきたところです。

  しかし、合意文書を一緒に練り上げてきた与党の今回の動きはどういうことなのでしょうか。これまでの反省を踏まえ、二度と同じ過ちをしないと、そして、新たな法律を当事者、関係者一緒につくっていくと、残された緊急課題もあると、それらを基本合意文書で確認したことをいとも簡単にほごにしようとする今回の動きは、到底承服できるものではありません。

 埼玉の元原告のお母さんから寄せられています。

  私どもは、自立支援法が廃止されて、権利条約をも見据えた、真に障害者も安心して暮らせる法律ができることを願って、寒い日も大雨の日も、車いすを押して地裁に通いました。

  そして、一月七日締結された基本合意文を信じて、制度改革推進会議や総合福祉部会に大いなる期待を持って、傍聴にせっせと通っております。

  ところが、国民が沖縄の基地に気をとられている間に、私どもが推進会議を見守っている間に、他方で、訴訟団との基本合意や推進会議、部会を無視したこのようなやり方には、不安を通り越して、失望と怒りの気持ちを禁じ得ません。

 こうした怒りの声が多数寄せられている。それはもう皆さんも御存じだと思うのです。この原則をどうして踏み外すのでしょうか。

 昨年の一〇・三〇の大フォーラムを私は忘れることができません。長妻大臣が、大臣として初めて出席をされました。そして、原告の皆さんを初め、全国から集まった障害者運動の皆さんに謝罪をして、新しい法律を皆さんと一緒につくると約束をしたわけです。隣で山井政務官が、肩を震わせて泣いていました。私も、本当に一緒に感動して、本当によかったと思いました。そういう気持ちを踏みにじることにならないのか、当事者を抜きにした議論をやめるべきではないか、重ねて伺います。いかがですか。

○園田(康)議員 御指摘ありがとうございます。

 私どもの考え方の中で、先ほど来真摯にお話をさせていただいております。高橋委員がおっしゃるように、自立支援法の制定過程の中で、私も二つのことを学ばせていただきました。

 それはやはり、当事者抜きで法制度改正といいますか、そういったことをやるべきではないということ。それから、法律が施行されてから、その周知期間、混乱をつくらないために、きっちりとした準備期間を置きながら皆さん方と御一緒につくっていく、そういう姿勢というものは必ず守っていかなければいけない。

 私は、今でもその気持ちは変わっておりませんし、先ほど来お話をさせていただいているように、平成二十五年八月まで、新しい総合福祉法ができていくそのプロセスをきっちりと、今でも制度改革推進本部、そして会議、そして部会という形の中で議論をしていただいているわけであります。そして、その方向性をしっかりと、私ども与党も、あるいは国会として、立法府として踏まえながら今後も進んでいくというところを今回の法律で明確にさせていただいている。このことは、高橋委員も御理解をいただけるものだというふうに私も思っております。

 ぜひ、御理解をいただいた後に、私も、足らず前のところはもっともっと当事者の皆さん方や、あるいはさまざまな関係者の方々にもお話をさせていただいて、しっかりと同じ道を歩んでまいりたいというふうに思っております。

 どうぞよろしくお願いを申し上げて、私からの答弁とさせていただきます。

○鉢呂委員長 高橋委員に申し上げます。

 申し合わせの時間が来ております。

○高橋(千)委員 終わります。

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