労働時間データ削除/前提崩れた高プロ撤回を
高橋氏「法案差し戻せ」
日本共産党の高橋千鶴子議員は18日の衆院厚労委員会で「働き方改革」一括法案の出発点となった労働時間データの2割が削除された問題を追及し、前提が崩れた高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)を撤回し、法案を労働政策審議会に差し戻すよう求めました。
高橋氏は、同データが残業の上限規制の検討会や規制改革会議等でも加工し使用されてきたと指摘。山越敬一労働基準局長は2割削除でも「大きな傾向の変化はみられない」と答弁しました。
高橋氏は、研究開発業務の残業年間1000時間超が大企業で0・3%など「コンマ数%という細かい数値も重視してきた資料だ。2割削除では大きな影響がある」と批判。「裁量労働制の調査をやり直す日程も決まっていない段階だ。高プロも今やるべきではない」と強調しました。
最近も、IT会社で裁量労働制で働いていた28歳男性、テレビ朝日の50代の管理監督者の過労死事件が発覚したばかり。高橋氏は、「『働き方』法案では、どちらの働き方も見直さない。過労死を増やすことはあっても、なくすことはできない」と指摘しました。
加藤勝信厚労相は、「法案には医師の面談がある」と答えましたが、高橋氏は、「過労死ラインになってから面談するのでは遅すぎる」と反論しました。
(しんぶん赤旗2018年5月19日付より)
無期転換 対応見直せ
高橋氏 「同一労働同一賃金」ただす
日本共産党の高橋千鶴子議員は18日の衆院厚生労働委員会で、「働き方改革」一括法案がうたう「同一労働同一賃金」について、無期雇用転換との関係や派遣労働での実効性をただしました。
高橋氏は「無期転換した労働者も保護の対象とすべきではないか」と質問。加藤勝信厚労相は「パートと有期雇用が対象なので、無期転換すると保護の対象にならない」と答えました。
高橋氏は、無期転換した労働者が、有期雇用労働者の比較対象の「正社員」と扱われ、従来の差別待遇が固定化されると指摘し、見直しを求めました。
派遣労働では派遣先企業が比較対象正社員について情報提供することになっています。高橋氏は「派遣先が比較対象になる労働者がいないと答えたらどうするのか」と質問。同省の宮川晃雇用環境・均等局長は「配置の範囲が違っても一部の職務が同じなど、似ている労働者の情報を提供するので、いないという答えは認められない」と答えました。
高橋氏が「派遣先の労働者と同等の賃金になる派遣労働者はどれくらいいるのか」とただすと、宮川局長は「同等の賃金はあり得るが限定される」としか答えられず、高橋氏は「ごく少数になるのではないか」と問題視しました。
高橋氏は、2015年の派遣法大改悪後、派遣先に直接雇用してほしいのに、派遣会社の無期雇用までしかなれない実態を示し、「職場になくてはならない労働者が、派遣のまま固定される。対応を検討すべきだ」と求めました。
(しんぶん赤旗2018年5月20日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
平成二十五年労働時間等実態調査について、議論の出発点としたいとされたことは承知をしておりますが、きょう、先ほど来何度も議論がされているように、全国一万一千五百七十五の事業場から、裁量労働制のデータにかかわる千五百二十六事業場を差し引き、また、明らかな誤記と考えられる九百六十六の事業場を差し引いて、九千八十三のデータを今残しているわけです。しかし、先ほど来も、その残った九千八十三も真正なデータとはわからない、これが今の到達ではないか、こう思います。
調査項目も多岐にわたり、労政審とその前段階の各種検討会でも活用されています。加工されたデータは何種類くらいつくられ、何回くらい資料として出されたか、まずお答えください。
実は、これは私自身も、もう一年半くらい間がありますので、予算委員会を含めて四回、質問で加工データを使っております。
一番古いのは、二〇一六年五月二十日の、規制改革会議のワーキンググループに出た資料なんですね。これは、三六協定で特別協定を結んでいるんだけれども、それが長ければ長いほど残業時間が長いというデータなんですよ。
だけれども、総理は、その下の二つ目の丸を答えて、これは志位委員長に答えているんですけれども、長く特別協定を結んでいるんだけれども、実績はそんなでもないですよと。そんなでもないですよという答弁をしている。何か似たようなことをやっているんですよ。だけれども、現実には、実際は長く結んでいれば長くなるよということを出した、貴重なデータであるわけなんですね。
もう一つ、ここに、資料の一枚目につけておりますけれども、法定時間外労働の実績、これも、同じやつを、平成二十五年の調査を加工したものですよね。新技術、新商品等の研究開発の業務ということで、この見出しが、一カ月四十五時間以下や一年三百六十時間以下におさまっているのは七割程度と結論づけています。つまり、これは、新技術、新商品等の研究開発の業務が除外になるから、除外になっても、この中におさまっているから大丈夫と言いたいんだと思うんです。だけれども、私は、三割がはみ出ている、このことが重大だと思うんですね。
しかも、これを見ていただければわかるんですが、一月四十五時間超が、百時間超えというのが三%あるわけです。中小企業だと一・七%です。それが、一年間でいうと、一千時間超えが〇・三%なわけですね。そうすると、零コンマという世界ですよ、データは。
これが、例えば〇・一%、今の九千八十三の項目が、精査してみたら〇・一%違ったといったって、物すごく重い意味があると思いませんか。私たち議員だけでなく、政策形成過程でかかわった多くの関係者に対しても、その責任をどう考えるのか、伺います。
二つ聞きました。
○山越政府参考人 平成二十五年調査の結果を用いた資料につきましては、労働政策審議会の労働条件分科会には十一回、仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会におきましては五回、資料として提出をしております。
今回の平成二十五年調査のデータでございますけれども、統計としての精査を、高める観点から、異常値である蓋然性が高いものを削除した上で再集計をしたものでございます。こうした方法で精査を行いましても、なお九千を超えるサンプル数がございまして、精査前と比べて集計結果に大きな傾向の変化も見られないわけでございます。
また、先ほど申しました労働政策審議会などでは、平成二十五年調査データだけではなく、さまざまな資料を確認いただきまして、御議論をいただいたものと承知をしております。
お示ししたデータの中に、正確性が必ずしも確保されていないものがあったということについては、これからの反省といたしまして、これから統計をつくっていく際、資料をお示しする際に対応してまいりたいと思います。
○高橋(千)委員 大臣に通告しています。
今、十一回、五回と言いました。だけれども、私が今指摘したように、規制改革会議のワーキンググループですとか、検討会の前にも、まだ議論をされているわけですよ。そして、それが一つ、二つのデータではない、丈比べをした、そんな話ではないんです。
この今回の法案の全体にかかわる、上限規制をどうするか、除外をどうするか、全体にかかわる議論の基礎データに、このもとの調査結果がさまざまな形で加工されて出されてきたんだ、その意味を、その重さをどう考えるかということを大臣に聞いています。
○加藤国務大臣 労政審の関係では、そういうことであります。
今委員御指摘の、ちょっとそこ、今言った規制改革会議等々において、いつの時点でどういうデータが提出されたかまでは、済みません、ちょっと今把握をしておりませんが、委員御指摘のように、このデータがさまざまな形で活用されているということは、そのとおりだというふうに思います。
いずれにしても、そうしたお示ししたデータが、その正確性が必ずしも担保されていない、あるいは異常なデータとしての蓋然性がある、そういったものが入っていたということ、これは本当に謙虚に反省をしていかなければならないというふうに思いますし、今後、今局長からも話をいたしましたけれども、統計をこうやってつくっていく、あるいは資料をお示ししていく際、この点をしっかりと反省をして、これからにつなげていきたいと思います。
○高橋(千)委員 少なくとも、私が指摘したような零コンマの世界で出しているこのデータ、やり直した調査結果をもとに、もう一度出してもらえますか、山越局長。
○山越政府参考人 ただいまのは、先ほど御指摘があった件でございましょうか。
先ほど御答弁させていただきましたように、九千八十三の事業場のデータにつきましては、今御提出をすべく準備をしている最中でございまして、来週お出しをしたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 そうじゃなくて、そこから加工された、今出している、私が出した資料、これは零コンマの世界なんですよ。〇・一%、だから大した違いがないなんて、そんな答弁できないと言っているんです。わかっていますか。これを出し直してくださいと言っています。
○高鳥委員長 速記をとめてください。
〔速記中止〕
○高鳥委員長 速記を起こしてください。
山越労働基準局長。
○山越政府参考人 審議会にお出ししました資料、加工された資料につきまして、改めて数字を算出いたしまして、提出できるようにしてまいりたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 だから、やり直しをするべきなんです、調査も審議会も。それだけの意味があるんだということを指摘したいと思います。
次に、もう一度聞きますが、裁量労働制についても、総理の指示のもとに新しい実態調査をやると聞いています。いつごろ労政審にかけますか。
○山越政府参考人 裁量労働制でございますけれども、厚生労働省におきまして新たな実態調査を行うこととしております。
今回の問題点をしっかり反省した上で、正確なデータが得られるよう、専門家の御意見も伺いながら、適切な調査の設計を行っていきたいと思います。その上で、労働政策審議会で御議論をいただくことにしたいというふうに考えております。
調査の設計や調査の実施には相応の時間を要するもの、こういうふうに考えておりまして、現時点で今後の予定をお答えすることはできないわけでございますけれども、いずれにいたしましても、裁量労働制の実態をしっかり把握できるよう適切に対処してまいりたいというふうに考えます。
○高橋(千)委員 結局、これは設計がいつごろできるかすらも、これは労政審にかけると聞きました。このデータを撤回したときから、私はずっと聞いているんですよ。だけれども、それすらもまだ答えられない段階なんです。だったら、高プロも当然一緒に調査をするべきなんです。これは今やるべきじゃない。重ねて指摘をしたいと思います。
先ほど来お話が出ているんですけれども、過労死家族の会の皆さんが、過労死をふやす高プロを削除するんだと緊急の会見を行ったその日に、新たに二件の過労死が判明したというのは大変衝撃でした。
お一人は、不動産関連のIT会社で、裁量労働制を適用されていた当時二十八歳の会社員。長時間労働が既に常態化していたにもかかわらず、裁量労働制になった直後に、三日連続の徹夜を含む三十六時間の勤務があったといいます。先ほど、山井委員が指摘をしたとおりです。
これは、三十六時間三日連続自体は、通常の労働者も残念ながら一日限りの規制がないですから、私、前にも何度も質問していましたから、規制がないのとインターバルがないので、それ自体は違法ではありません。だけれども、トータルするとずっと長くなるのがわかっているから裁量労働制にしたんだろう、裁量労働制というのはそういうものなんだろうということを、改めて示していると思うんですね。
もう一人は、テレビ朝日の五十代のプロデューサーが一五年二月に心不全で亡くなり、同年に認定されていたことが判明したというものでした。テレビ局全体として裁量労働制をしいているけれども、この方自身は上限規制の除外される管理監督者だったと報道されています。
そうすると、今回の法案では、企画業務型裁量労働制の拡大だけは法案から削除しましたけれども、現行の裁量労働制はそのまま残っています。管理監督者もさわっていません。つまり、改めて、この法案は、過労死をふやすことはあっても、減らす、なくす法案ではないと思いますが、いかがですか。
○加藤国務大臣 裁量労働制については、委員御指摘のように、規制強化の部分もございましたけれども、それを含めて全面的に削除したところであります。
ただ、今回の改正では、労働安全衛生法を改正し、事業者に対し、労働者の労働時間の状況を把握することを法律によって義務づけることといたしました。この規定は、裁量労働制の適用労働者や管理監督者にも適用されるということでありますから、これらの方について、労働者と労働時間の状況を把握するということが義務づけられることを通じて、医師の面接指導等が適切に実施されることにつながっていき、労働者の健康確保に資するというふうに考えております。
○高橋(千)委員 今、きょうはそれを論じるつもりはありませんでしたが、一言だけ言っておきますが、医師の面接を確かに義務づけました。だけれども、それは、現在は百時間、それを、一般の方は八十時間ですよね。そして、高プロの方は健康管理時間が百時間、これは、過労死ラインに達するぞというときに面接するんですよ。手おくれです。遅過ぎます。それでどうして健康確保措置だと言えるんですか。これはもう言っておきたいと思います。
管理監督者も、新商品開発業務も、実は何度も聞いているんですが、一体どのくらいの労働者が該当するのかは全くわかっておりません。そして、ちょっと飛びますが、資料の3を見ていただきたいと思うんですね。弾力的な労働時間制度の概況とあるんです。これは、通常の労働時間制が三九・六%、それ以外の方たちが六〇・四%なんです。これは、前回私がこの資料を使ったときは五割台でしたので、もっとふえているんですね、弾力的な労働時間が。
これを上から見ていきますと、簡単に言いますが、変形労働時間制、フレックスタイム制、これは今回の改正で緩和をします。清算期間を一月から三カ月に拡大をするわけです。そして、事業場外みなし制、これが、NHKの佐戸未和さんが亡くなったのが、この事業場外みなし制が適用されていたわけですよね。そして、専門業務型裁量労働制、長時間労働になっているということは、もう皆さん御存じです。そして、企画業務型裁量労働制。
これだけ、弾力的な労働時間制度というのはあるわけなんですよ。これ以上やる必要はないし、これ自体を考え直さなきゃいけない、そう言えませんか。一つ一つが、まだまだ実労働時間がよくわからないよということが今指摘をされているときなんです。そういうときに、これ以上、高プロを導入するべきではありません。いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 今委員お示しのように、こうした、いわばさまざまな働き方、そして今回、フレックスタイム制については今委員御指摘のような修正も法案の中に含ませていただいているところでありますけれども、こうした中でも、これまでも答弁をさせていただいていますけれども、やはり時間の管理が例えば休日、深夜といった形で及んでいく、そうした管理下ではなくて、自律的に仕事をし、そしてイノベーションや高付加価値をつくり出していきたいという高度専門職、そうした皆さんが更にその意欲や能力を十分に発揮をさせていただきたい。
そして、そのことは、単にその方だけではなくて、新しい産業やプロジェクトが生み出され、ひいては日本の経済の発展、そして将来における雇用の増大、確保、こういったことにつながっていく。
こういった観点から、今回、高度プロフェッショナル制度を盛り込んだ法案の審議をお願いをしているところでございます。
○高橋(千)委員 どうして、高プロを導入すれば、今もこんなに弾力的な制度があるのに、導入すれば経済が発展し、社会が発展していくのか、答えになっていない。これは、この間も議論をしたわけです。
逆に、こういう柔軟な働き方が、規制が及ばない働き方がふえてしまうと、どれだけ監督官をふやしても、しっかり指導できるはずがないんです。これははっきりしていることです、もう既にその証拠が今も出ているわけですから。これは、本当に考え直すべきだと思います。
先ほど初鹿委員が、なぜ雇用計画は私的なものなのに国が介入するんですかという質問をされて、大臣もお答えになっておりました。
上限規制を七十年ぶりに定めますと総理は声を高めているわけですけれども、この労働基準法が最初に提案をされたのは、まだ戦後の帝国議会ですよね。日本国憲法のもとの国会ではなくて、帝国議会の中で提案をされているわけです。民民の契約に任せていれば労働者の健康は絶対に守れない、そういう趣旨で基準法をつくった、国がここは関与しなければならないといってつくったわけです。それ以前に戻る規制緩和であるということを強く指摘をして、これは絶対やめるべきだと重ねて言いたいと思います。
それで、次の質問に入りますが、十六日の委員会で同一労働同一賃金について質問しました。
改正労働契約法十八条により無期転換した労働者は、フルタイムであれば同一労働同一賃金の対象になりません。それどころか、比較対象労働者、つまり、比較される側になるわけですから、もともとの処遇が固定化し、かつ、その無期転換した労働者と比較した方は更に低い処遇が固定化する、言ってみれば、負のスパイラルみたいになっちゃうわけですよね。これは見直すべきじゃないでしょうか。
もともと非正規労働者の待遇改善という趣旨に照らして、均等・均衡処遇の範囲を拡大すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 今回の改正法案による改正後のパート・有期労働法においては、パートタイム労働者及び有期雇用労働者が保護の対象となっておりまして、無期雇用のフルタイム労働者、これは、今おっしゃった無期転換した人も含めてということでありますが、保護の対象になりません。このため、有期雇用フルタイム労働者がということでございます。
これは、我が国においては、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に大きな待遇差があることから、この不合理な待遇差の解消を目指すということであります。
ただ、もっとも、無期転換する有期雇用フルタイムの方についても、有期雇用労働者の間にということは、もちろんありますね、当然、その対象になります。また、無期雇用労働者に転換した後についても、キャリアアップ助成金など対象に、多様な正社員に向けてこれを促進していく、そんな措置も設けさせていただいているところでございます。
また、対象になるというのは、無期雇用フルタイムの方もなりますけれども、どこを対象にするかというのは、またそれぞれにおいて決めていくことができる、こういう仕組みになっております。
○高橋(千)委員 それは、前回お答えいただいたわけですよね。だけれども、無期転換の人しかいなくなってしまったときに、そうなっちゃうわけですから。今回はまだ、五年たって、無期転換が始まったばかりだと。私自身も、東北大学の問題など、何度も質問をしてきました。まずは安定雇用という第一歩を踏み出したわけですから、だから、まずはと思ったんです。でも、それがずっと固定化したり、あるいは負のスパイラルになってはいけない、この問題意識はぜひ大臣に共有していただきたいと思います。もう一回質問しますので、このことは後で。
それは何かというと、派遣労働者の均等待遇の問題なんですね。
これは資料の5に書いてあります。不合理な待遇差を解消するための規定の整備とありますけれども、派遣労働者と派遣先の労働者の均等・均衡待遇を実現するためには、派遣先事業主から比較対象労働者の賃金その他の待遇に関する情報を得る必要があります。
派遣先の企業は、情報の提供を拒むことはできません。拒むと派遣労働者を受け入れることができないというふうに書いています。だけれども、派遣先が、比較対象労働者はうちにはいないよというのを情報として提供した場合はどうなるでしょうか。
○宮川政府参考人 情報提供に係る比較対象労働者につきましては、均等・均衡待遇規定の実効性を高める観点からは、職務内容等が派遣労働者と近い者とすることが考えられますが、他方で、派遣就業は臨時的かつ一時的なものであるとして、職務内容が類似する派遣先の労働者が存在しないケースがあるなど、派遣労働の実情を踏まえたものにする必要がございます。
比較対象労働者につきましては、厚生労働省令で定めることとしておりますが、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更範囲が当該派遣労働者と同一である者がいない場合に情報提供が不要になるわけではなく、そのような者がいない場合には、職務の内容は派遣労働者と同一であるが、職務の内容及び配置の変更範囲は異なる労働者ですとか、職務の内容は派遣労働者と異なるが、職務の内容及び配置の変更範囲は同一である労働者などに関する情報提供を義務づけることが考えられます。
このため、お尋ねのように、派遣先が、比較対象労働者がいないという情報を提供することは認められないこととなると考えておりまして、いずれにいたしましても、比較対象労働者につきましては、改正法成立後に、労働政策審議会における議論を経た上で考え方を明確にすることとしておりますが、職務の内容等が類似する派遣先の労働者がいない場合にも、不合理な格差が解消されるよう取り組んでいきたいと思っております。
○高橋(千)委員 まず、認められないという答弁をいただきました。これは確認をしたいと思います。
それで、均等待遇がもし条件としてあるのかなということを聞くわけですけれども、派遣元事業主は、平均三割程度のマージンを得ていると聞いています。均等待遇に該当した場合、派遣労働者が受ける賃金は、当然、マージン部分を控除しても、比較対象労働者と同等の賃金になるという意味で理解してよろしいか。また、現実にそのような派遣労働者がいるんでしょうか。どのくらいいるとお考えか、伺います。
○宮川政府参考人 今回の改正法案によります改正後の労働者派遣法第三十条の三第二項におきまして、派遣先の労働者と職務内容や職務内容・配置の変更範囲が同一である派遣労働者の待遇につきましては、当該派遣先の労働者の待遇に比して不利なものとしないことを派遣元事業主に義務づけることとしております。
また、派遣料金につきましては、今回の改正法による改正後の労働者派遣法第二十六条第十一項におきまして、派遣先に対し、均等待遇規定などに基づく措置に要する費用を賄うに足りる派遣料金の額となるように配慮することを義務づけることとしております。
これらの規定によりまして、派遣先の労働者と職務内容や職務内容・配置の変更範囲が同一である派遣労働者の賃金について、当該派遣先の労働者の賃金に比して不利なものとならないというふうに考えております。
後段の、均等待遇の対象者の数についてでございますが、派遣労働者につきましては、企業横断的な専門性を生かして、さまざまな職場で働くことが想定されます。また、派遣先も、企業内で長期的に人材育成していく職種とは異なる分野で、あるいは臨時的、一時的に派遣労働者の能力を活用しようとすると考えられることから、派遣先の労働者と派遣労働者との間で職務内容や職務内容・配置の変更範囲が同一であることは、その性格上、やはり限定されるものと考えております。
その一方で、今回の法改正の趣旨は、雇用形態にかかわらず、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにするものであり、パートタイム労働者あるいは有期雇用労働者とできる限り同じ取扱いとするという観点から、派遣労働者についても均等待遇規定を設けてございます。
今回の改正法案による改正後の労働者派遣法第三十条の三第二項の、通常の労働者と同視できる派遣労働者の数につきましては、適当な統計資料がなく、推計するのは困難ではございますが、ただ、事業所が一つしかない企業に派遣される場合など、派遣先の労働者に職務の内容及び配置の変更がないような場合には、通常の労働者と同視できる派遣労働者と言えることがあり得ると考えているところでございます。
○高橋(千)委員 あり得るということで、パーセントも言えないくらい、パートの一・五%も驚きの数字ですが、それより少ないのかなと思います。
改正派遣法により、本年九月三十日以降で、個人単位の期間制限の期限が到来する派遣労働者に、雇用安定措置を講じなければならなくなります。この周知がどうなっているかということをまず通告しておりますが、時間の関係で、続けて言います。
実際に、この雇用安定措置を、多分、派遣先が避けたのかなと思われるケースです。
派遣先に直雇用を希望していた元専門業務だった派遣社員が、ことし秋から派遣会社の無期雇用になりました。メールをいただきました。この方は四十代、いわゆる二十六業種と言われた専門業務派遣で、CADオペレーターです。十月から派遣会社の無期雇用ですが、希望は派遣先だった。だけれども、法改正後、直雇用を避ける道を探していたようだと。この先、一生、ボーナスも手当も退職金もなく、マージンを取られ続け、将来は不安しかないと。
無期雇用となっても、派遣社員であることには変わらないわけですね。ですから、派遣先は何のリスクもなく使い捨てすることが可能なわけです。これは、雇用安定措置の次善の策として四つのうちの一つにあったわけですけれども、本当にこれが雇用安定措置になるのかなと。しかも、今言ったCADオペレーターは派遣しか求人がないので、同一労働同一賃金の恩恵もない、こういうふうなことを指摘をされています。
こうした事態がこれから起こってくるのではないか。やはり雇用安定措置と言った以上は、私たちは随分、これじゃ実効力がないと言いましたけれども、何らかの手だてをするべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○小川政府参考人 お答え申し上げます。
平成二十七年の労働者派遣法の改正によりまして、同一の組織単位での就業見込みが三年となる有期雇用労働者につきましては、委員御指摘のとおり、派遣元事業主が雇用安定措置を講ずることを義務づけており、これにより、派遣労働者が無期雇用派遣労働者となる場合がございます。
無期雇用派遣労働者につきましては、まず雇用が安定するというメリットがあると考えております。さらに、二十七年労働者派遣法改正におきまして義務づけられた段階的かつ体系的な教育訓練の実施に当たり、特に無期雇用派遣労働者につきましては、その職業生活の全期間を通じて、その有する能力を発揮できるよう配慮することを求めるなど、キャリアアップが図られる仕組みとしております。
今回の働き方改革法案におきまして、派遣労働者について、不合理的な待遇差を解消するための規定の整備に当たり、派遣先の労働者との均衡・均等方式か、労使協定による一定水準を満たす待遇決定方式かを選択する労働者派遣法の改正を盛り込んでおります。
以上のような取組によりまして、無期派遣労働者を選択した方についても、適切な待遇が確保されることになると考えております。
○高橋(千)委員 適切な対応と今おっしゃいましたよね。
今、無期雇用が改正後三年間で六六%もふえているわけなんですね。やはりこれは、雇用安定措置といったけれども、派遣先がこれを避ける手だてなのかなと。しかし、今言ったように、派遣先にとって、本当はなくてはならないキャリア、技術を持っているんです。それが無期雇用という名の派遣社員のまま固定化されるのは適切なのか。これは、派遣法をつくったときに、三年後の見直し規定もつくりました。実態を見て、何らかの対応を検討すべきだと思います。
大臣にもう一回聞くと言いましたが、質疑時間が終了しましたので、ぜひこれは次の課題として、宿題にして終わりたいと思います。
――資料――