150時間残業の抜け穴も
「働き方」法案 高橋氏が告発
日本共産党の高橋千鶴子議員は11日、衆院厚生労働委員会の「働き方改革」一括法案の審議で、半導体大手ルネサスで起こった過労死事件を取り上げ、残業を月平均80時間、単月100時間まで認める「上限規制」では、過労死を防げないと追及しました。また30日間で150時間以上の残業が可能になる「抜け穴」を告発しました。
山形県米沢市のルネサス子会社工場で2017年1月、38歳男性が過労死し、同12月に労災認定されています。男性は4カ月で平均80時間残業し、直前1週間は集中的に25時間12分も残業していました。
高橋氏は、「法案では過労死の恐れがある水準にお墨付きが与えられ、同じ犠牲が起こる」と強調。残業を月45時間までとする大臣告示基準こそ上限にすべきだと迫りました。
加藤勝信厚労相は「ぎりぎり実現可能なものとして労使で合意した内容だ」などと繰り返し、過労死ラインを残業上限とすることを容認しました。
高橋氏は、「上限」以内の月75時間残業でも、月をまたいで残業が集中すれば、30日間で150時間残業になると指摘。山越敬一労働基準局長は、「起算日を特定しなければ、上限を上回ることは生じ得る」と認めました。加藤厚労相は、「そういうことはあり得るが、企業の管理の観点も考えないといけない」と企業側に立って、抜け穴を黙認しました。
高橋氏は、『過労死白書』17年版で、労働時間が正確に把握されている労働者の方が残業時間が少ないとする結果を紹介し、労働時間の適正把握のための「ガイドライン」を労働基準法に法定化することこそ必要だと強調しました。
(しんぶん赤旗2018年5月12日付より)
――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
前回、通告しながら質問できなかった分も含め、きょうは、過労死と労働時間の適正把握を中心に質問したいと思います。
資料の一枚目を見てください。これは山形新聞です。
半導体大手ルネサスの子会社であるテストソリューションズ米沢工場で働いていた三十代の男性社員が昨年一月二十三日に急性心不全で死亡し、十二月七日に米沢労基署が過労死の労災認定をしました。
ことしの四月二日に、代理人弁護士が事実を公表されましたので、先日、代理人弁護士からお話を聞いてきました。この記事の下の段にちょっと紹介されているように、長時間労働などによる過労死が繰り返されないように広く報道してほしい、それが、御遺族から弁護士さんに託された言葉であります。
手記の一部を紹介したいと思います。
何をしても、もう夫が戻ってくることはありません。私も子供たちも、このような形でいつもの幸せな毎日が終わるとは思ってもみませんでした。長年の夢だったキャンピングカーの納車を目前に控え、心待ちにしていました。当時八歳、六歳、一歳の誕生日を迎えたばかりの三人の女の子たちを残して、キャンピングカーでの家族旅行を実現できぬまま、夫は苦しみながら逝ってしまいました。夜遅くまで仕事を頑張り、少ない休暇でも、休日は家族と過ごす時間を大切にしていました。これから家族みんなでたくさんの思い出をつくろうと張り切っていたのに。
子供たちのことを思うと、本当につらく思いますけれども。
男性は、直前の一週間は二十五時間を超える残業でした。四カ月平均だとおおむね八十時間でした。工場は二十四時間稼働しています。ですが、この男性の実際の労働契約は日勤なんです。日勤で夜勤なし、週休二日制なんです。
ところが、メンテナンスをたった一人でやっているために、昼休みでも日曜日でも深夜でも、呼出しがあれば必ず行かなければなりません。手伝った方がよいのではと心配してくれる同僚がいて、ようやく一人増員されたのは、亡くなる直前だったそうです。
短期間の過重負荷、過大なノルマによる精神的緊張も認められましたが、弁護士も、遺族の思いを、過労死ライン上の労働時間で亡くなってしまったという現実からすれば、このような法改正では、つまり今やっている法案のことです、過労死、過労自死等の労災を招くおそれのある基準にお墨つきを与えて、政府みずからが容認するに等しいものとなってしまうと言わざるを得ません、こう代弁されています。
この法案が通っても、過労死ラインに張りつく上限では、同じ犠牲が起こり得るのではないか、大臣はそう思いませんか。
○加藤国務大臣 こうして罰則つきの上限規制をするということは、これまでいろいろ議論をされながら、なかなか合意が得られなかったわけでありますけれども、もう中身は申し上げませんけれども、今回の法案で御提示をしましたこの中身について、これはまさに、ぎりぎり実現可能なものとして労使で合意をした、こういう内容でありますので、それに沿って法定をさせていただいたところであります。
また、もう委員御承知のように、更にこの法案の中には、長時間労働の削減に向けた労使の取組を促す、こういった指針、要するに、指針を定め、そして必要な助言指導を行う、それをしかも法律に規定を設ける、こういった措置も入れ込んでいるところでありまして、私ども、これは、ここまでやっていいという意味ではなくて、少なくともそれ以下にすべきだということでありますし、そしてさらに、そうした長時間労働の削減に向けて、さらなる努力を、労使に対してもその取組を促していきたいと思っております。
○高橋(千)委員 少なくともそれ以下に、そんなにそれが最大限やっていいという意味ではないという言葉を何度も答弁で聞いてきました。これは、これから話すことをよく聞いていただきたいと思うんですが、局長にも聞いていただきたい。
記事の下段にあるように、親会社ルネサス広報のコメントは、就業において法令違反はなかったと認識しています、こうあるんですね。
同僚などの聞き取りでわかったことは、タイムカードで出退時間を管理しているんだけれども、五時には打刻するようにと言われています。実際は、八時とか十一時まで働いています。さっき言ったように、医師のオンコールみたいなもので、携帯電話がしょっちゅう鳴るわけですよね。だけれども、その着信履歴があったために時間が大分判明したということであります。
機械の取付け、年間一千台のノルマです。ところが、一日二台が限度だそうです。そうすると、どう計算してもやり切れませんよね。なのに、やり切れなくても、朝礼で、ノルマは達成できたと報告をさせられていた。これはパワハラだと言えます。
労災が認定されてもなお、法令違反はないと企業は言う。まして、上限を八十、百時間認めてしまえば、法令を遵守していると言うに決まっているじゃありませんか。絶対に上限規制は見直すべきです。
大臣告示基準こそ上限にすべきと重ねて言いたいと思いますが、大臣、もう一度お願いします。
○加藤国務大臣 これまでも、今委員のおっしゃった大臣告示、そして更に言えば特別条項、こういったことがあって、いわば特別条項の部分が青天井になっていた。そこにどう罰則つきで上限をかけていくのか、これは本当にるる議論をしてきたわけでありまして、そして、やっとここで労使が合意をしたということでありますので、まずは、その上限を設定をしていく、そしてその上で、先ほどから重ねてで恐縮でありますけれども、更に長時間労働の是正、労働時間の縮減、これに向けてしっかりと取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。
○高橋(千)委員 天井の話をしているんじゃないんですよ。
労災認定であれば、発症前の一カ月という単位で実労働時間を見ますよね。なので、休日も通常労働日も合算する。それは、それが休日だとか深夜だとかは関係ないわけです。実際の労働時間を発症前の一カ月で見ます。なので、上限の八十時間に休日含むという言葉が加わったのは、そのことを何度も指摘したからなんです。八十、百に休日を含んでいるのはそのためです。
だけれども、実は、この百と八十は暦の上での期限なんですよね。つまり、五月が残業七十五時間でした、これは違反じゃありません、六月の残業も七十五時間でした、これも違反じゃありません。だけれども、その残業が月末から月初めにぎゅっと集中していた場合、月をまたいで一カ月間を見ると百五十時間になることもあるんですよね。
これは、労災であれば、それはまさか一日とか三十一日に労災が発生するとは限りません、月の真ん中であったら足し算になるんですよ。だから、百五十時間も二百時間もあるじゃないですか。単月で八十、百、これがマックスだからいいんだという話にはならない。
現実的にあり得ますね。局長、どうですか。
○山越政府参考人 今回の上限規制でございますけれども、単月百時間、複数月、月平均八十時間とすることとしておりますけれども、これは、一定の起算日から起算をいたしまして、その一カ月、二カ月という期間で判断をしているものでございます。これにつきましては、現行の大臣告示におきましても、月の時間数の計算は、三六協定で定められた起算日から区切られた月を単位として計算をしておりまして、これを踏襲しているところでございます。
したがいまして、起算日から一カ月ということではこの百時間ということになるわけでございますけれども、今御指摘をいただいたのは、ある月の終わりと次の月の前の方ということかもしれませんけれども、起算日を特定しない形でそういった上限を上回るということは、これは生じ得るものでございますけれども、いずれにいたしましても、この上限規制の考え方といたしましては、起算日からどうするかということでございますので、そういうことで制度を設計させていただいているところでございます。
○高橋(千)委員 起算日だから、一から三十一じゃないということをおっしゃったと思います。
それはそうかもしれません。だけれども、今お認めになりましたよね、月をまたぐと足し算になって百五十時間になる場合もあり得る。それをやはり考慮に入れないといけないんですよ。
これは、大臣告示でも、四十五時間、四十五時間なら下手をすると九十時間になることもあり得るわけですし、単月で満たしているから、足りているからいいんだ、マックスに合っているからいいんだということではないこともあるということをぜひ考慮に入れていただきたい。
ルネサスの三六協定も、一日の所定外労働時間は十三時間まで認めています。なので、足すと二十一時間で、休憩を入れるとほとんど丸一日働いている。これは、前に私が質問した電力の場合もほとんどそういう三六協定でありました。
ですから、一日の限度時間は決めていないわけですから、そういう働き方がぎゅっと凝縮されたときに、これは過労死ラインをあっという間に超えてしまう、そういうことを理解していただきたい。
検討していただけますか。大臣、一言。
〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕
○加藤国務大臣 確かに、委員御指摘のような、そういったこともあり得るわけでありますけれども、ただ一方で、実際、企業の現場でそういったものをどう管理をしていくのか、そういった観点も考えていかないと、実効のある規定、規則ということにはならないんだろうというふうに思います。
そういったことも含めて労使でいろいろ議論した結果として今回の結論に至ったということでありますから、まずはこの罰則つき上限をしっかりと導入していく、そして、これは七十年ぶりの労働基準法の大改革だ、こういう指摘もあるわけでありますから、まずそこをしっかりやらせていただきたいと思います。
ただ、その上で、先ほどから申し上げておりますように、これはそこまでやっていいというものではないということでありますから、可能な限り労働時間の延長を短くしていく、その根拠規定も設けて、そして指針を定めて、そして労使に対して必要な助言指導を行って、長時間労働の削減に向けた労使の取組、これを我々としてもしっかりと促していきたい、こういうふうに思います。
○高橋(千)委員 ぎりぎりの合意だとか、実効性ある策としてこれが限度だという答えを何度も聞いてきたわけですが、山井さん流に言うと、命にかかわる問題をそういう計算では決めてはいけないということを指摘したいと思うんですね。
こうした中、法案の先取りなのか、資料の二枚目を見てください。時間外労働等改善助成金、時間外労働の上限設定を行う中小企業事業主に対して助成するものです。これは名前が変わって、今年度は十九億の予算、大分ふえていますよね。まず、どれくらいの件数を目標としているかを後で答えてください。
それで、下を見てください、条件のところ。これは、これまで所定外労働、残業が八十時間以上あった事業場が、六十時間以上八十時間以下に設定した三六協定を届け出さえすれば五十万円もらえる、そういう意味ですよね。言ってみれば、長時間労働を監督指導する「かとく」の監督対象になるような事業場が、八十時間と書いただけで五十万円もらえる、おかしくないですか。
○山越政府参考人 まず、この時間外労働改善助成金でございますけれども、平成三十年度予算額は十九億円で、目標としては、二千六百件を目標としております。
この時間外労働等改善助成金、上限設定コースでございますけれども、今回の労働基準法の改正に先駆けて時間外労働の上限設定を行う中小企業に対しまして支援を行うものでございまして、これは、単月で八十時間以内とする三六協定を新たに引き下げて締結した、そういった場合にも確かに支給するものでございますけれども、この助成金は、例えば、ノウハウが非常に不足しております中小企業につきまして、外部専門家によるコンサルティングを行うとか、あるいは労務管理機器の導入を行う、そういった費用とかノウハウに乏しい中小企業の支援を行って、円滑に労働時間の短縮を進めていただこうという制度でございます。
○高橋(千)委員 先駆けてとおっしゃいました。八十時間の上限を私は高いと言っているのに、大臣は、ぎりぎりの合意ですとかいろいろおっしゃって、でも、それを八十時間以下と書いたら助成金を上げるって、国がそんなことを言ったらおかしいでしょう。絶対おかしいですよ。中小企業を支援するんだったら、もっと違う形でやってください。ノウハウ云々と言いますが、これはコンサルをもうけさせるだけです。
前にも、私、インターバル助成金のことをここで取り上げたことがありますよね。もともと九時―五時とか、インターバルを十分とれている事業所が、十一時間あるいは九時間と書いただけで助成金をもらえるんですよ。そんなばかな話があるかと言いました。だけれども、それも、社労士ですとかコンサルをもうけさせるわけですよね。
でも、社労士さんが、とてもよく、こういうことに詳しいですから、雇用保険の助成金、さまざまあるのを詳しいですから、自分の事業所が、社労士さんの事業所が、うちのところもインターバルを就業規則に入れたから助成金をくれと言ってきたそうです。みんながそうだと言っていませんけれども、それはちょっと違うでしょう、そういうことを目指していたんですかと。
やはりこれは見直すべきです。中小企業を応援するんだったら、もっと違う形で、最低賃金を本当に引き上げていけるような、そういう形でもっと応援していくべきだ。これを見直してください。大臣、いかがですか。
○加藤国務大臣 今、最賃のお話もありましたけれども、最賃等に対して取り組むために生産性を向上する、これに対しても助成金も出させていただいているところでございます。
また、これは、確かに今委員の御指摘、例えばコンサルティングと称して、これまで、この事案かどうか別として、いわば組まれる形でいろいろな事案があったということ、その辺は我々、しっかりと肝に銘じておかなければならないと思いますが、これは単に下げたからもらえるわけではなくて、まさにそういった対応をしていく、あるいは機器等を導入していく、あるいは人材確保のための費用ということでありますから、単にその費用が出ただけではなくて、それが具体的にどういう形で人材の育成につながっているのか、あるいは、コンサルティングを受ければ、それがどういう形で企業の経営改善等につながっていくのか、その辺もしっかり把握をしながら、この予算執行に当たっていきたいと思います。
○高橋(千)委員 しっかりチェックをしてください。これはやめてくださいと私は重ねて言いたいと思います。
それで、ちょっと急ぎながら頑張りたいと思います。
労働安全衛生法六十六条の八の三、労働時間の状況の把握が義務づけられました。この状況とは何を指しますか。
○山越政府参考人 この労働安全衛生法の労働時間の状況でございますけれども、裁量労働制などみなし労働時間の適用を受けている方でございますとか管理監督者の方も含めまして、健康確保措置を適切に実施するために把握を義務づけるものとしたものでございます。これは、いかなる時間帯にどの程度の時間在社し、労務を提供し得る状態にあったかを把握することでもよいということとしているものでございます。
○高橋(千)委員 よくわからないですよね。
それで、きょう随分たくさんの方が時間の把握の問題を質問されていましたけれども、要するに、ここで言っているのは、そういういかなる形で働いているのかというのを把握するのも大事だと思いますよ。だけれども、労働時間の適正把握については、昨年の一月二十日にガイドラインが改定されて、使用者には労働時間を適正に把握する責務があることが強調されました。でも、ここで言う労働時間、ここで言う適正に把握とは全く別物ですね。
○山越政府参考人 この労働時間の状況の把握でございますけれども、これは、在社時間あるいはそうした在社時間から休憩時間を除いた労働時間でもいい、そういった性格のものでございます。
そして、その労働時間の状況の把握でございますけれども、これについては客観的な記録をもとに把握する。それが、やむを得ない場合には自主申告ということでよいわけでございますけれども、客観的な方法による把握を原則とする。そういった把握の方法についてはガイドラインと同様の方法で行っていくということを考えているところでございます。
○高橋(千)委員 把握する中身が違うでしょう。それを同様の方法って、意味がわからないです。
○山越政府参考人 この労働時間の状況は、いかなる時間帯にどの程度の時間在社し、労務を提供し得る状態ということで、在社時間を把握することでよいものでございますけれども、もちろん、そこから、在社している間で休憩している時間など労働時間以外の時間を控除いたしまして、労働時間を把握してもいいものでございます。
そういった労働時間の状況というのは、在社時間あるいは労働時間、そういったものであるというふうに考えているところでございます。
○高橋(千)委員 どう聞けばちゃんと答えていただけるのか。
状況というと、とても曖昧な表現なんですよね。つまり、いかなる形で勤務しているかといったら、言ってみれば、サンプル調査でいいんですかという話なんですよ。実労働時間を含んでいて、その上で全体がわかるという意味なのか、そうじゃなくて、一部でもどういう時間帯にいるかということがわかればいいのか、そういう違いを聞いています。
○山越政府参考人 この労働時間でございますけれども、これは労働基準法上の労働時間でございますので、賃金の支払い、この算定の根拠となるための正確な把握が必要であるものでございます。
これに対しまして、労働安全衛生法の労働時間の状況は、健康管理、健康確保措置を適切に実施するものでございますので、これは、在社時間ということで、労働時間を含む、包含する時間、在社している時間を把握することでもよいということとしようとしているところでございます。
○高橋(千)委員 だから、実労働時間が入っているのかということをさっきから聞いているんですよ。ちゃんと答えてください。
それで、時間がどんどん、このせいで押してしまったので、その答えと一緒に次に答えてもらいたいんですけれども、資料の三枚目にあるのは、平成二十八年度の長時間労働が疑われる事業場の重点監督指導結果なんです。私、本当に強調したいんですけれども、高プロだけが時間把握が難しいのではないんです。一般の事業場でもこの状態なんです。この一番下を見ていただきたいんですけれども、労働時間の把握方法が不適正なため指導したもの、一二・四%。その上で、不適正だけれども、一生懸命監督官が頑張って調べたら、月八十時間を残業が超えている、四四・三%なんです。
何でこういう状況なのか、また、こういう人たちにどういう指導をしているのか、お願いします。
○山越政府参考人 お答え申し上げます。
一つ前の質問で、労働時間の状況でございますけれども、これは、労働者の方一人一人の労働時間の状況を把握していただくというものでございます。
それから、監督指導の関係でございますけれども、御指摘をいただきました平成二十八年度の長時間労働が疑われる事業場の監督指導でございますけれども、これは、月八十時間を超える時間外、休日労働が疑われる、そういったことが行われたと疑いのある事業場でございますとか、長時間労働によります過労死等に関する労災請求があった事業場を対象として実施したものでございます。
その上で、監督指導でございますけれども、これは、法違反があれば、私ども、法違反を改善いただくために必要な指導をしていくところでございますし、それから、それに加えまして、労働時間の把握、このガイドラインにつきましても、労働時間が適正に把握されますように、そういった指導をやってまいりたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 これはちょっとつけなかったですけれども、結局、監督官が指導をして、何を指導したかというと、全部、ガイドラインの徹底なんですよ。ガイドラインの理解、ガイドラインに沿って適正に把握しなさいと。それが基本でしょう。そういうことですよね。
資料の四枚目を見てください。これは人事院の調査です。二十七年の民間企業の勤務条件制度等調査結果の概要。毎年、調査のテーマは違うんですけれども、民間企業と国家公務員の条件を比べるためにやっているらしいんですけれども、どの職種でも、事務であろうと販売であろうと研究者であろうと、自己申告が一番多いんですよね。しかも、五割前後である。これが問題だということを、過労死家族の会を始め、皆さんが指摘をしているんです。
時間がないので飛びますけれども、労働時間の把握については、私は、ガイドラインを法定化という形でやるべきだと思います。
昨年の三月八日の本委員会で、参考人として陳述された寺西笑子過労死家族の会会長に、私が、労災認定の最大の障害は何かと聞きました。寺西さんは、最大の課題は労働時間の客観的証拠ですとおっしゃいました。つまり、寺西さん自身が、準備に足かけ三年かかりました、申請する前段階で三年かかった、というのは、会社が箝口令をしいて誰も教えてくれないということがあったとおっしゃっています。その上で、事業主に労働時間適正把握を義務づけるべきと述べていらっしゃいます。
同時に、参考人の川人弁護士にも伺いました。時間の適正把握は、本来、経営の基本中の基本だと指摘をして、ガイドラインを法律にきちんと書くべきと答えています。
先ほど来、答弁を聞いていますと、これは労働安全衛生法に位置づけたことの限界なんですよ。だから、労働時間の把握については、ガイドラインの法定化、罰則つきで労基法に書くべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
○加藤国務大臣 労働時間の把握については、昨年六月五日の労政審の建議において、労働安全衛生法に基づく医師による面接指導の適切な実施を図るということで、管理監督者を含む全ての労働者を対象として、労働時間の把握について、客観的な方法その他適切な方法によらなければならない旨を省令に規定することが適当だとされていたわけでありますけれども、その段階でも、罰則を設けるべきだとの結論には至っていなかったわけであります。
ただ、この省令については、与党審査において御議論があり、法律で明確に義務づけることとなったわけであります。
そして、この趣旨を労使がしっかり理解をし守っていただく、そのためには適切な周知や監督指導、これが大事だというふうに思いますし、また、今委員からお話ありました現行のガイドライン、これを参考に把握方法についても省令で定めることを考えておりますけれども、労働時間の状況の適正な把握がしっかりと担保されるようにしっかりと対応していきたいというふうに思っております。
○高橋(千)委員 二〇一七年版の過労死白書で、労働時間が正確に把握されている労働者とされていない労働者を比べると、把握されている方が週当たりの残業時間が少なく、メンタルヘルスも良好だという結果を紹介しています。
これを受けて、過労死防止大綱の改定素案の中にも、自己申告だと勤務実態は把握できない、長時間労働を招くおそれがあるとして、タイムカードやICカード、雇用側にしっかりと、就労現認を原則として正確な把握に努めるよう求めるという方向が出されています。
せっかく過労死防止法をつくって、実態を把握して、このようなエビデンスが得られて、やっていこうとしているときに、何か法案の方に全然それが反映されていない。それではだめなんじゃないかと重ねて指摘をしたい。まだ間に合うと思いますので、ぜひお願いをしたいと思います。
もう時間の紙が回っておりますので、次に回して、指摘だけをしておきたいと思いますが、資料の5、これは、先ほど言った重点監督の中に、実際にどんな指導をしているのかという事例をつけているんですけれども、それを紹介したものなんですね。
やはり、これは過労死が端緒になっています。一般の飲食店だけれども、過労死があったので立入調査をやったら、三六協定も結んでいないで、これはもう話にならないんですが、百四十九時間も時間外労働をやっていて、それ以外の労働者五名も同じような実態である、百時間を超えている、最長月百四十五時間。
やはりそうだと思うんですね。過労死一人あれば、同じような働き方をしている、だから同じ事業所に行って指導するんだろう、私、そういうふうに思うし、やはり大臣がもっともっと乗り越えて、こういうふうにできるだけ公表しなければ、同じことを繰り返すことになると思うんです。
もうしゃべる時間がないから見ていただければと思いますが、電通は異例のスピードであったと。これは二枚つけておきましたけれども、送検までいっているわけですよね、御家族が会見をされてからたった二カ月で。
それに比べると、野村はしないのか、そういうことが非常に不思議に思う。裁量労働制で時間が把握できないからなのかな、そういうふうに思ってしまう。だからこそ、なぜ野村だったのか、なぜ特別指導だったのかということを明らかにしなければ、本当の意味でのこの法案の議論は始まらないんだということを指摘して、終わりたいと思います。
ありがとうございました。
――資料――