国会質問

質問日:2010年 11月 12日 第176国会 厚生労働委員会

雇用能力開発機構廃止法案

日本共産党の高橋ちづ子議員は12日の衆院厚生労働委員会で、独立行政法人雇用・能力開発機構廃止法案について、「職業訓練に対する国の責任を後退させる」と批判し存続を求めました。

 職業訓練を行うポリテクセンターなどの都道府県への移管について高橋氏は、財政支援は2年限りで、業務の縮小や民間譲渡になる危険性があると指摘。小林正夫厚労政務官は「そういう事態が生じないようにする」としか言えませんでした。

 同機構の業務は他機構などに継承するのに、職員は継承せず、いったん解雇します。小林政務官は「前例がない」と認めながら、「解体的出直しする」と正当化。高橋氏は「厚労省が所管する労働契約法にてらしても、国による一方的な解雇、労働条件の不利益変更にあたる」と批判しました。

 同機構が担っている雇用促進住宅は2022年まですべて廃止譲渡する方針です。高橋氏が、入居者が追い出されるようなことがあってはならないと指摘。市町村に移管した場合に、市営住宅には単身者が入居できない問題点などの改善を求めました。

 廃止が決まっている住宅も、12年までは「退去勧告」をしないことになっていますが、その先22年までの間はどうなるかについて、小林政務官は「雇用情勢をふまえて検討する」とし、12年以降も退去を進めるかどうかは固定的でないことを明らかにしました。単身者が優先的に入居できるよう検討していくと述べました。

(2010年11月13日(土)「しんぶん赤旗」より転載)

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、細川大臣に、国の行う職業訓練、能力開発の意義について伺いたいと思います。

 私は、国の行う職業訓練は、憲法二十七条、勤労権の保障、この具体化であると考えております。ILO百四十二号条約、あるいは人的資源の開発に関する百九十五号勧告などから見ても、公的職業訓練を量的、質的にも充実させ、発展させることが要請されていると思います。

 資料の一枚目に「各国における訓練プログラムへの公的支出(対GDP比)」というものがございますけれども、これで見ると、日本は〇・〇三%にすぎず、ドイツの約十分の一、フランスの八分の一にすぎません。余りにも足りないです。

 雇用失業情勢が依然として厳しい中、国の行う職業訓練の意義とは何か、また、その拡充について見解を伺います。

○細川国務大臣 高橋委員の御質問にお答えをしたいと思います。

 厳しい雇用失業情勢が続いております。そういう中で、離職者に対します職業訓練の必要性というのはますます増加しておりまして、離職者訓練というものを的確に実施することが喫緊の課題となっているというふうに思います。また、今後、成長が見込まれます分野において、その担い手となる人材育成というのもまた求められているというふうに思っております。

 さらに、我が国の基幹産業でもあります物づくり産業におきましても、国際競争力の強化や日本の技能の承継の観点からも、企業におきます中核的な人材の育成、確保というのが大きな課題でございまして、そういう意味で、職業訓練というのはますます重要性が高まっているというふうに思っております。

 こうした中で、国が行うべき雇用のセーフティーネットとしての職業訓練、物づくり産業に必要となる人材の育成等につきましては、都道府県と役割を分担いたしまして、雇用・能力開発機構がその実施を担ってきたというところでございます。

 この雇用開発機構につきましては、抜本的に組織を見直して、法人として廃止をすることとしておりますけれども、職業能力開発業務というものは高障機構の方に移管することとして、引き続き国が責任を持って行っていくということでございます。

 この法案の中には、職業訓練などにつきまして、労使の代表を含めました識見を有する者から成ります運営委員会とか、あるいは地域におきます協議会の設置等によりまして、労使や地域の職業訓練ニーズがこれまで以上に的確に反映される仕組みをつくっているところでございます。

 国としては、職業訓練の重要性を踏まえまして、雇用のセーフティーネットとしての職業訓練、高度な物づくり訓練などの職業能力開発業務につきまして、こうした仕組みも活用しつつ、さらに充実を図っていきたいというふうに思っております。

○高橋(千)委員 たくさんおっしゃられましたので、微妙にかわされているような答えぶりではありましたけれども、さらに充実を図っていきたいというのが最後のお言葉でありましたので、そこをまず確認をさせていただきたいと思います。

 今、後段で強調されました、いわゆる物づくりの問題ですとかについて、例えば全国商工会や中小企業団体中央会なども、中小企業における能力開発、職業訓練が重要な課題だけれども、経営状況などからいって非常に困難である、民間では実施していない、物づくり系分野を中心とした中小企業向けの在職者訓練、地域産業を支える技能者を養成する重要な施設として、ポリテクセンター、ポリテクカレッジなどは国の責任において維持、推進を求めているところだと思います。

 そこで、具体的に伺います。これらの施設を都道府県に移管する場合、その機能を維持することができると厚労大臣が認めた場合とありますが、その機能を維持とは具体的にどういう中身ですか。

○小林大臣政務官 ポリテクセンター及びポリテクカレッジなどについては、高度な物づくりを支える人材育成などの職業訓練を担っております。

 これの移管などに当たっては、その地域の求職者などが必要な職業訓練を受ける機会が失われることのないよう、都道府県においてポリテクセンター等の機能を維持していただくことを前提として考えております。

 厚生労働大臣が認める機能維持の要件については、譲渡前に行われていた職業訓練の定員、科目等を維持することなどの要件を満たすことが必要になると考えております。

○高橋(千)委員 そうすると、もう少し詳細な条件が今後出てくるんだろう、今の答弁ぶりはそう思いますけれども、次の質問の前に一つ確認したいのは、では、基本的に今やっている内容が維持される、同じであるという意味ですよね。イエスかノーか、一言だけ。

    〔委員長退席、石毛委員長代理着席〕

○小林大臣政務官 はい、基本的には同じと考えております。

○高橋(千)委員 そこで、都道府県に対するアンケートでも、条件が整えばと答えているところが十四県にとどまっているわけです。しかも、その移管の条件は、職員をそのまま引き受けた割合に応じて最低五割から十割の運営費を補助するとしていますけれども、その特例は二年限りの措置であります。

 そうすると、二年たって、やはり維持できない、業務の縮小、改編あるいは民間譲渡など、中身が違うものになってもいいのかということなのです。そもそも、国がやってきたものを地方にお願いするのに、厚労大臣が認めたときなどと、正直、偉そうじゃないかと私は思うわけです。そう言っておきながら、後は知りませんとは言えない。中身の維持について国が責任をとるのか、伺います。

○小林大臣政務官 今、高橋委員がおっしゃったように、そういう状況が生じないようにしていくことが大事だ、このように認識をしております。

 したがって、国としては、高率補助期間より、都道府県に譲渡されるポリテクセンター等については、財政支援を行うほか、職業能力開発総合大学校における訓練指導員のスキルアップ訓練の実施を行います。これは、平成二十四年度から毎年度一週間程度この訓練を実施していく、このように考えております。さらに、訓練カリキュラム等のノウハウの提供など、こういう取り組みを行って、ポリテクセンター等の機能が維持されるような必要な支援を積極的に行ってまいりたい、このように考えております。

○高橋(千)委員 それは、二年過ぎた後もきちんと支援するという意味ですか。先ほど言ったように、財政が続かないから中身を変えたいと言われたらどうなりますか。

○小林大臣政務官 二年後については、現行の都道府県職業能力開発短期大学校と同じ程度、約五割程度、このように考えているところでございます。

○高橋(千)委員 民間譲渡ですとか、施設は続けられないとなったらどうしますか、引き揚げますか、国が引き取りますか。

○小林大臣政務官 政府としては、そのようなことが生じないように、しっかり今言ったようなことの施策をしていくということでございます。

○高橋(千)委員 当然、そうしか答えられないですよね。

 ですから、私は、今回、とりあえず今十四が手を挙げていますけれども、必ずしもそこが本当に引き受けるとなるかはわからないわけですね。二年先のことを非常に心配するし、現実に五割の自治体が、民間の施設などはほかにかわるものがないというふうにアンケートでも答えているわけです。そういう中で、こういう条件をつけて、とりあえず今回は引き受け手がなかった場合は国が受けるよといっても、これでは甘いということで第二、第三の事業仕分けが来るという可能性があるということなんです。

 そうなったときに、やはり国がきちんと、最初に大臣に聞いたように、国が行う訓練の意義というのはどういうものなのか、そして、充実させていって事業仕分けのすきが入らないようにしていくことが大事なんだということを強く要請したいと思います。

 そこで、雇用・能力開発機構の解散に際して、職員の労働契約に係る権利及び義務は次の機構に継承されないとしています。これは、要するに、次の機構に移る人もすべて一たん全員を解雇するという意味ですね、これを確認します。これまで、非公務員型の独立行政法人の廃止、統合において、このようなやり方は初めてだと思いますが、事実ですか。もしそうならば、なぜそうするんですか。

○小林大臣政務官 非公務員型独立行政法人で採用方式とした前例はないと承知しております。

 雇用・能力開発機構は、これまで、私のしごと館やスパウザ小田原などの施設の設置、運営のあり方等の問題について、与野党を問わず、またマスコミ、国民から厳しい批判を浴びてきたところでございます。

 このため、今般の見直しにおいては、雇用・能力開発機構を廃止するとともに、ポリテクセンター等の職業能力開発業務を高齢・障害・求職者雇用支援機構に移管して、条件が合う場合には都道府県に移管をしていく、次に、事業主への助成等の業務については労働局に移管をしていく、私のしごと館等の施設は廃止をするなど、組織を抜本的に見直し、解体的出直しを行うこととしていることから、職員の労働契約について、採用方式をとることにしたものでございます。

○高橋(千)委員 今言われたスパウザですとか私のしごと館ですとか、無駄遣いが与野党から指摘をされたと。そのことと、では実際にそれをやったのはだれか。それは政府の責任もあり、理事者の責任ももっとあるわけですよね。でも、現場の職員の身分はそれと関係ないわけでしょう。それをやった方たちが、それによって全員、しごと館云々ではなく、ほかの機構の人たちも一たん全員解雇という手続をとる、しかも前例のないことだと。これはやはり国による一方的な解雇に当たりませんか。厚労省が所管する労働契約法に照らしても、不利益変更にもなるわけです。こうした点で、労政審の中でも重大だという指摘があったはずです。

 この規定は削除すべきと思いますが、大臣、いかがですか。

    〔石毛委員長代理退席、委員長着席〕

○小林大臣政務官 先ほど答弁したように、今回、解体的出直しをしていく、そういう背景から先ほど言ったように採用方式とした、このことを御理解いただきたいと思います。

○高橋(千)委員 まず絶対認められません。

 それで、採用方式としたという場合に、本人が希望した場合は採用されるのか、あるいは配置がえなどを拒否できるのか。例えば非常勤になってくれとか、大幅に条件が下がったということもあり得ると思いますが、それに対する歯どめ策はあるんですか。

○小林大臣政務官 極力雇用問題が発生しないように考えていくということでございます。

○高橋(千)委員 今ちょっと、極力と言うだけで、もう少しおっしゃってくださるのかなと思ったんですけれども、やはりその歯どめ策というのが条文上は特に何も読めませんので、そういうことになるんだろうということで、これはもう断じて認められないということを重ねて指摘をし、かつ、やはり採用枠はとってあるはずですので、不利益変更にならないように十分な努力をお願いしたいと思います。

 そこで、きょう、あともう少し残り時間で伺いたいのは、機構の廃止によって、雇用促進住宅に関する業務は次の、新しい名前の高齢者・障害者・求職者支援機構に引き継がれることになるんですけれども、この雇用促進住宅がこの間どうなってきたかという、残り千四百五住宅というカウントダウンのような表をつけておきましたけれども、今決まっているのは、平成三十三年度までにすべての処理を完了するという十九年の閣議決定、それから、二十三年度中は新たに退去の促進はしないということ、この二つが決まっております。

 そうすると、その間、平成二十四年から三十三年までの間はどうなりますか。

○小林大臣政務官 先生おっしゃったように、一連の今までの閣議決定で、平成三十三年度までの譲渡、廃止を完了すること、こういうことになっております。

 一方、平成二十年末からは、緊急一時入居者のための雇用促進住宅の活用を図っていますけれども、既存の入居者の退去が同時に行われることのないよう、平成二十一年度以降少なくとも三年間は退去促進の取り組みを延期しているところでございます。

 平成二十四年度以降の緊急一時入居の取り扱いや退去促進を再開する時期等については、今後の経済状況や雇用失業情勢を踏まえて適切に判断をしてまいりたいと思います。

○高橋(千)委員 ということは、二十四年度以降でも、今の経済状況は非常に深刻ですし、雇用状況も深刻だという中で、引き続き入居が可能になる条件もあり得るということでよろしいでしょうか。あり得るという言い方ですからね。

○小林大臣政務官 先ほどお話ししたとおり、今後の経済状況や雇用失業情勢を踏まえて適切に判断をしていきます。

○高橋(千)委員 ぜひ前向きにお願いしたいと思います。

 そこで、この表によりますと、市町村への譲渡というのが百十三住宅というところまで今進んでいるわけです。私は、市営住宅として住み続けられるんだったら安心なのかなと思っておりました。でも、実はそうではないことが起こっております。

 例えば、先日、岩手県の花巻市で相談されたわけですけれども、市営住宅として引き受けると決めたんだけれども、単身者はだめなんですね。そうすると、考えてみると、この間、派遣切りなどに遭った労働者、失業者を雇用促進住宅が支えてきた。だけれども、こういう方たちがかなりの割合で単身者だったり、中年からまだ若い層で高齢者にもなっていない、そういうのではじかれる可能性があるわけですね。でも、そういうことというのは柔軟に対応すればいいんじゃないか。国土交通省や受け入れ市町村と調整して、そういうことがないようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○小林大臣政務官 公営住宅については、国と地方公共団体が協力して、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で供給されているものでございます。このため、その性格上、収入条件を初めとしてさまざまな入居基準があることと承知をしております。

 雇用促進住宅を退去し、特に住宅に困窮する者については、国土交通省とも連携を図りつつ、平成十八年九月に地方公共団体に対して公営住宅への優先入居に関する要請を行ったところでございます。

 引き続き、国土交通省との連携を図ってまいりたい、このように考えております。

○高橋(千)委員 今のお答えは、可能性があるという意味ですよね。住宅に困窮するということでいえば、まさに単身者であろうと、今の状況の中で、仕事がなかなか見つからない中で言っているわけですから、これはぜひ考慮していただきたい、柔軟にやっていただきたい。

 それからあと、最後ですので一言、要望を含めてもう一問。

 本当に精神的にも、だんだん周りの方が退去されているので、気持ちがとても焦っている、でも、非常に高齢であったりあるいは障害を抱えていたりして簡単に退去はできないという状況があるわけです。ところが、今相談したくても、電話をかけると、うちは関係ありませんと言われるんです。

 だから、新しい機構になった際にも、そういう相談もきちんと受けてくれる体制を整えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○小林大臣政務官 先ほどお話ししたとおり、公営住宅という性格がございます。そのために、収入条件を初めとしてさまざまな入居基準があるということは承知しておる、先ほど答弁したとおりです。したがって、条件を変えることはできないと思っております。ただ、優先入居の取り扱いなどについて国土交通省と連携を図っていきたい、このように考えております。

 雇用促進住宅の修繕や相談業務を含めた管理運営業務については、実績のある住宅管理業者から独立行政法人雇用・能力開発機構が一般競争入札により選定して委託しているところでございます。

 今後とも、新しい機構等により、適切な運営管理が行われるものと考えております。

○高橋(千)委員 しっかり見ていただきたいと思います。

 終わります。

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