医師への時間外労働 上限規制猶予
長時間労働放置するのか/衆院予算委 高橋氏
「働き方改革」関連法案に盛り込まれている時間外労働の上限規制が、医師に5年間適用を猶予される問題について、日本共産党の高橋千鶴子議員は20日の衆院予算委員会で、過労死ラインを超える長時間労働が医療現場で横行している実態を示し、適用除外の撤回や現場の要望に沿った医師の増員を求めました。
高橋氏は「医師は現行の労働基準法上では除外ではない。(医師の適用猶予について)なぜそうしたのか」と追及。加藤勝信厚生労働相は「医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要だ」などと答弁しました。高橋氏は、診療行為を求められたら正当な理由なく断れない応召義務は「元々分かっていたこと。今さら応召義務を引き合いに除外することは許されない」と指摘しました。
高橋氏は、労働時間が過労死ラインに達する週65時間以上の割合が、医師は全職業に比べて際立って高い水準であることや、医療機関の「三六協定」で救急医療対応などを理由に、過労死ラインの倍を超える月200時間、年2000時間などの特別条項が結ばれ、それでも守られていない実例を紹介。「命を救う医師が自分の命を犠牲にしてもよいと誰が決めたのか。特別条項に上限がないため、長時間労働を許し、常態化させてきた」と批判しました。
高橋氏は「猶予ということは5年以上月200時間や年2000時間の労働がいいことになる。それで許されるのか」とただしました。加藤厚労相は「医師である前に人間だ」と述べ、青天井の残業時間を「(施行予定の2020年から)5年後にはカバーすることを決め、それに向けて努力していく」と答弁。25年までの7年間上限規制を課さない姿勢に、高橋氏は「7年このままの状態で放置するのか」と批判しました。
高橋氏は、10年前の予算委員会で医師の過重労働の改善のため必要な増員を求めた際、当時の舛添要一厚労相が医学部の定員を抑制する閣議決定を事実上撤回し、その後定員を増やしてきたとして「ようやく各県で地元に定着する医師が出てきた」と指摘。地方に定着しはじめた医師の増員枠について現場の要望に応えることを求めました。
(しんぶん赤旗2018年2月21日付より)
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――議事録――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
本題に入る前に、本日八時四十分ごろ、青森県三沢市にある米軍三沢基地を離陸した直後の米空軍三五戦闘航空団所属F16戦闘機のエンジン部分から出火し、燃料タンク二本を上空から東北町小川原湖に投棄いたしました。きょうは、約百人がシジミ漁に出ていたといいます。
これまでもF16は、緊急着陸や墜落事故、模擬弾や実弾投下も繰り返されてきました。シジミ漁やワカサギ漁が盛んな小川原湖は米軍の訓練場ではありません。再発防止という言葉は我々何度も聞いてきた言葉であります。徹底した調査、解明を行い、住民を脅かす訓練はやめるべきであります。
総理、一言お願いいたします。
○安倍内閣総理大臣 本日午前、米空軍三沢基地所属のF16戦闘機が離陸直後、エンジントラブルが発生し、同基地に着陸する際に、燃料タンク二本を当基地北側に所在する小川原湖に投棄したとの報告を受けています。
政府としては、発生後直ちに米側に対して、安全管理の徹底と原因究明、再発防止について申し入れたところであります。
在日米軍は日米安全保障条約の目的を達成するため必要な訓練を行っているところでありますが、日々の訓練を含め、米軍の運用に当たっては、地域住民の方々の安全確保は大前提であります。
政府としては、引き続き米側に対して、安全管理の徹底と原因究明、再発防止について強く求めてまいります。安全の確保については、最優先の課題として日米で協力して取り組んでまいります。
○高橋(千)委員 再発防止の言葉だけでは絶対にだめであります。
私たちは、もう何十年もF16撤去を求めてきました。だけれども、それだけではなくて、やはり一つ一つの事象、墜落なりトラブルなりが起こるたびに、それに厳しく対峙することがそのためのプロセスだと思ってきたからです。
逆に言えば、それに対して、常に米軍のよき理解者であり、調査がまだ解明されていないうちに、沖縄がそうでありますけれども、飛行再開をしてしまった、そういうことが積み重なってきているからこそ、米軍との関係が曖昧になり基地の強化を許してきた、そう言わなければならないと思います。今度のことでも厳しく対処していただきたい。重ねて指摘をして、本題に入りたいと思います。
総理は施政方針演説で、働き方改革を断行しますと強調されました。戦後の労働基準法制定以来七十年ぶりの大改革であると、答弁でも繰り返し強調されています。
労基法は、昭和二十二年、一九四七年四月七日、日本国憲法第二十七条の勤労権を保障するものとして具体化、制定されました。第一条には「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」、こうあります。
まず、加藤大臣に伺います。
この第一条は七十年間変わっておりませんが、まさかこの一条を変えることはないですね。一言で。
○加藤国務大臣 御指摘のとおり、労働基準法第一条第一項は労働条件の原則を定めており、働き方改革において、また今回の法案の議論においてこの原則を変えることは考えておりません。
○高橋(千)委員 では次に、総理に伺います。
今、変えないと答弁がございました。第一条の二項には「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」とあります。
働き方改革法案は、人たるに値する生活を保障するために労働条件を向上させるものだと言えるんでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 働き方改革は、一人一人の事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するための、労働基準法制定以来七十年ぶりの大改革であります。
働く方の健康の確保を大前提に、ワーク・ライフ・バランスを改善し、子育て、介護などさまざまな事情を抱える方々が意欲を持って働くことができる社会に変えていきます。こうした社会を実現するためには、労働時間法制の見直しが急務であります。
これを実現するための働き方改革関連法案は、史上初の罰則つきの時間外労働の上限規制、そして中小企業の割増し賃金率の向上、年次有給休暇の取得促進、健康確保措置を講じつつ、高度プロフェッショナル制度の導入、裁量労働制見直しを行うこと、同一労働同一賃金を進めることなど、労働基準法第一条に規定されている労働条件の原則の考え方に沿うものであり、労働条件を向上させるものと考えております。
○高橋(千)委員 総理からも、この第一条の趣旨は変わらないんだと答弁がありました。七十年ぶりの大改革であるけれども、ここは変えないんだと。なのに、どうして、今出されている法案は全く真逆じゃないか、こう言わなければならないと思います。
罰則つきの上限規制が必要だと、私たちはずっと言ってきました。でも、その上限の中身が違います。過労死ラインを認めるものです。こんなものを、本当にこの趣旨に合っているなんて言えるはずがありません。
まず、きょうずっと質問されておりますが、過労死が今もふえ続けているこの状況を変えることが前提のはずなのに、裁量労働制の方の労働時間は一般の方より短いとする総理の答弁を本委員会で撤回するという残念なことが起きました。
今国会に上程を準備している働き方改革法案では、企画業務型裁量労働の対象を拡大するということで、野党からは、長時間労働になるのではないか、時間の把握が難しいから労災が決まりにくい、そういう指摘を繰り返し受けたものだから、何とか苦し紛れにつくったのではないでしょうか。
裁量労働制の労働者が一般労働者より労働時間が長いという傾向は、もう既に何度も議論されているように、独法の労働政策研究・研修機構の二〇一四年の調査でも明白です。なのに、わずかでもいいから、結果として二十分ですよね、裁量労働制の方が労働時間が短い、そういうデータをつくれないかと無理やりつくり出した偽りの結果であることは、既に疑う余地がありません。
偽りのデータを操って影響を少なく見せようとするこそくなやり方に、断固抗議します。この際、法案提出もやめるべきではありませんか。
○加藤国務大臣 今御指摘がございました平成二十五年度の労働時間等総合実態調査についてのデータに関して、この国会等で答弁をさせていただきました。精査が必要なものということで撤回をし、またさらに、先日、平均的な労働者、平均的な者の労働時間について、一般労働者と裁量労働制で異なる仕方で選んだ、こうした数値を比較をした、これは大変不適切でございまして、深くおわびを申し上げるところでございます。
その上で、今回の働き方改革関連法案の検討過程においては、労働政策審議会等において、さまざまな視点に立って御議論をいただきました。そして、労働政策審議会においては、意見が付されてはおりますけれども、おおむね妥当、こういう答申も頂戴いたしました。
今回の働き方改革については、多様な働き方を実現していく、そして裁量労働制の見直しにおいても、働く方の健康を確保しつつ、その意欲や能力を発揮できる、そうした働き方の選択を可能にしようとするものでございますので、これについて、労働政策審議会において答申していただいた要綱に沿って今法案の作成の作業を進めているところでございます。
○高橋(千)委員 いろいろな意見があったけれども、おおむね妥当と言われたから続けるんだというお話でありました。
私は、やはり今回の問題が起こった根っこには、野党が指摘したことが当たっているからだと思うんですね。だから、こういうふうに避けようとするんです。これは、やはり裁量労働制が持つ大きな弱点だと思うんですね。
あえて、厚労省が出した資料の中にあるデータをもとにこのパネルをつくりました。
裁量労働制、一日のみなし時間を決めて、それよりも多くても少なくても残業代を払いません。そのみなし時間の分しか払わないわけです。だから、みなし時間が九時間であれば一時間分の残業代が入るということになります、当然ですが。深夜勤務にも払われます。
今回、対象を拡大しようとする企画業務型裁量労働制の一日のみなし労働時間と実際の労働時間の比較であります。
一番上がまずみなし労働時間ですけれども、水色のところを見ていただきたいんですが、八時間以下に設定している事業場が五割以上あるわけですよね。十時間以上に設定しているところは赤なんですが、ほとんど見えません。〇・一%しかないんです。
だけれども、実際に労働時間で見ると、平均的な者であっても、八時間でおさまっている人は二割もいないわけです。それどころか、さっき〇・一%だったのに、十時間超というのは三一・七%です。そして、最長の者では七五%も十時間超働いている、こういう状態になるわけですよね。
そうすると、このみなしと実際の労働時間との差、そこは、はみ出した部分は、残業代が出ない、ただ働きの部分になるわけです。だから、私は、これはサービス残業合法化と言えるんじゃないかなと思うんですね。
このような状態で更に裁量労働を広げるというのは、それが狙いなのかと思われても仕方がないと思います。どうですか。
○加藤国務大臣 今、こういう図ではなかったと思いますけれども、ベースになる資料はこの労働政策審議会においても提出し、御議論をいただいたところでございます。
そういう中で、長時間労働に対する懸念、こういったこともあり、今度これは省令の形になりますけれども、労働時間をしっかり把握するということ、そして、このみなし労働時間と実労働時間の乖離が大きいといった場合にはそれに対してしっかりと監督指導を行えるように、厚生労働省がつくる指針に沿って、これは労使委員会というところが対応するわけでありますけれども、労使委員会が決める決議においてしっかりそれを遵守していく、そしてまた厚生労働省等がこの指針に沿って労使委員会に対して指導していく、その根拠規定も法律の中に盛り込む。こういうことで、こうした長時間労働にならない、特にみなし労働時間と実労働時間が乖離しない、そういった施策も盛り込ませていただいているところであります。
○高橋(千)委員 こういうことがあり得るということをお認めになっているからこそ、今、指導するとおっしゃったんだと思います。指導も何もしないとなったら、これは大変なことですけれどもね。
東京労働局は、年末に、裁量労働制を社員に違法に適用して残業代の一部を支払わなかったとして、不動産大手の野村不動産本社あるいは関西支社など全国四拠点に是正勧告を行いました。約千九百人のうち約六百人に裁量労働制を適用して、その大半を個別営業などの業務につかせていたということで、これは違法だとなった。
ですから、裁量労働制を隠れみのにただ働きや長時間労働をさせている、そういうことがあり得る、そして、それがちゃんとわかっていなければ今拡大するということはもっと起こり得る、その危険意識を持っているということですよね。一言でいいです。
○加藤国務大臣 今御指摘の野村不動産も一つの事例でありますけれども、この裁量労働制の中でそれなりにメリットをうまく活用されている方もいる、またそうしたことをしっかり進めている会社もある。一方で、今の野村不動産を始めとして、適切に運用していない、こうした事業所等もございますから、そういったものに対してはしっかり監督指導を行っているところでありますし、今後とも更に進めていきたいと思っております。
○高橋(千)委員 メリットを感じている人がいる、このことを否定するわけではないんです。私自身が厚労委員会でも取り上げたことがございますし、実際にJILPT、労働政策研究・研修機構の調査でも、満足しているという人がいるわけなんですね。
ただ、仕事に熱中し過ぎて時間を忘れているとか、それは余り満足と言わないのかな、そういうこと自体を危険だと見なきゃいけないんじゃないかなと思うんですが、この不満の内訳を見ていきますと、非常に深刻な特徴がわかると思うんです。トップファイブを並べましたけれども、やはり労働時間が長い、在社時間が長い、業務量が過大である、そうならざるを得ない仕組みなんですね。給与が低い、それはそうなんです、決まったお金しか出ないですし。人事評価が不透明とか、みなし時間の設定が不適切、こういうことが起こっている。私は、こういうことが起こっていることをとても理解できるんですね。
というのは、例えば外資系の企業で企画業務型裁量労働で働いている男性は、労働時間は自己申告なんだ、だから少なく申告しますと言っていました。なぜかと聞いたら、自分はプロジェクトマネジャーだからチームの成果に責任を持たされるんです、長く働くやつは仕事ができないやつとみなされる。チームの成果が遅いのはあなたのせいよと、そういう仕組みをつくっちゃっているんですよ。それが今の成果主義のやり方そのものなのではないか。自分で自分を管理する仕組みなんです。これが一般的になっているのではないでしょうか。
総理は、このような自分で自分の首を絞めるような仕組みを、やはり生産性向上だと言ってしまうおつもりなんでしょうか。裁量労働制の問題をしっかりと認め、検証することが先ではありませんか。
○加藤国務大臣 済みません。まず私の方から。答弁は同じことになるので、そこはもう省略をさせていただいて。
先ほどありましたように、今、こうした事例は、マネジャーの方がどういう形でされているか、いま一つわからないところはありますけれども、しっかりとした適用がなされていけるように、裁量労働制がしっかりと適用されるように、私どもも監督指導に努めていきたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 今回の働き方改革は、長時間労働となっている方の労働条件を改善していくという目的も有しているわけでありまして、自分の能力や才能を生かしながら、そしてしっかりと健康管理もしながら、働く時間をみずから計画して設定しながら成果を上げていく、希望する方にはこういう働き方を選んでいただけるよう、裁量労働制についても見直しを行うものでございます。
○高橋(千)委員 今大臣が、プロジェクトマネジャー、私が取り上げた方の話ですけれども、そういう働き方はわからないとおっしゃいました。わからないとおっしゃったんですよね。だから、現場でそういうことが起きていると言っているのに、わからないと言っちゃって、広げていいんですか。そういうことが問われるわけでしょう。
今はまだ、お給料も収入も一定高くて、自律的な人が一定いるかもしれません。でも、それを広げるということは、当然この不満な分野が広がっていくということじゃないですか。わからないんだったら、わかってから言ってくださいよ。
○加藤国務大臣 わからないというのは、今御指摘の点について私たちが具体的に掌握をしていないという意味においてわからないということを申し上げたということでありまして、ただ、その上で申し上げましたのは、そうした事態がないように、適正に運用されていくように、しっかりと監督指導等に努めていきたいと思います。
○高橋(千)委員 これは改めて実態調査を行っていただきたいと、強く求めていきたいと思います。
資料の次のパネルを見ていただきたいと思うんですが、裁量労働だけではなくて、今回総理が、初めて罰則つき上限規制を書くんだと強調していますが、それすら適用にならない、対象とならない人たちもたくさんいるんです。
本当はこれは一つ一つやりたいくらいなんですが、管理監督者がそのまま適用除外のままで残ることや、過労死の多い建設や自動車運転の分野、これは合わせて約五百六十万人に上るんですけれども、五年間適用が猶予されます。あるいは、新技術、商品等の研究開発業務はそのまま除外なんです。これは全然納得できません。
中でも、きょう問題にしたいのは、医師です。プラスされています。
医師は実は、これまでは労基法上では特に除外はされていませんでした。ところが、施行後五年間猶予ということは、その五年間は新法の基準が適用されないということですね。なぜそうなんでしょうか。
○加藤国務大臣 医師については、現行では限度基準告示に基づく規制が適用され、その上で、今般の時間外労働規制の見直しにおいては、働き方改革実行計画において、時間外労働規制の対象とはするが、規制のあり方については別途検討の場を設け、同計画決定後二年後を目途に、今現在検討しているわけでありますが、規制の具体的なあり方を検討するとともに、労働基準法の改正法の施行期日の五年後を目途に規制を適用する。
この趣旨は、医師の場合には他の職種と比較して長時間労働の実態にあるということはありますが、他方で、医師法に基づく応招義務等特殊性を踏まえた対応が必要でありますから、そうしたことを踏まえてこのような取扱いをさせていただき、また、規制の適用までに必要かつ十分な準備期間を設けたものでございます。
○高橋(千)委員 救急車が来れば断れないからという、今に始まったことではないんです。応招義務の問題を引き合いに出して、これまでずっとその問題があったのに、働き方改革のついでに医師を今外そうというのは許せません。命を救う医師が自分の命を犠牲にしてもよいと、誰が決めたのですか。医師の過労死や医療機関に対する是正勧告などが連日のように報道されています。
このパネルは医師の働き方改革検討会議の資料ですけれども、全産業と比べて、一週間の労働時間が医師だけ、この赤のところです、六十五時間以上でくいっと上がるんですね。これはつまり、過労死ライン、月にならすと八十から百時間という残業に近い、あるいは超えているという意味になるんです。
配付している資料をちょっと見ていただきたいんですが、同じ検討会に出された、医療機関における三六協定の実際であります。特別条項として、一月百五十時間、年千時間、あるいは規模が大きい病院になりますと月二百時間、年千四百七十時間などが紹介されています。
そして、最後のページに、日赤医療センターは、過労死ラインの二倍になる残業月二百時間を協定で結んでいたけれども、それすら守れない医師が二十人もいたとなっているんですね。
現在、特別条項を結べば上限がないから、今回法定をすることにしたはず、上限にすることにしたじゃないですか。だけれども、五年間猶予ということは、この月二百時間、年二千時間だって、そのままいいことになるじゃないですか。それで許されるんですか。
○加藤国務大臣 高橋委員もお話しのように、医師も、医師である前に一人の人間であります。長時間労働による健康への影響が懸念をされるということは決してあってはなりませんし、また、医師の方の場合には患者さんの命にもかかわるという大変重要な仕事をされているわけでありまして、そういった意味においても、医師について、働き方改革をしっかりと進めていく必要があるというふうに思います。
そういう中で、ただ、先ほど申し上げましたように、今も、特別条項があればこれは青天井になっているわけであります。それについて二年の検討をし、その五年後にはカバーをするということを決め、そしてそれに向けて努力をしていくということが当然必要になってくるわけでありまして、検討会において先ほど議論していると申し上げましたけれども、現在七回開催をしておりますけれども、平成三十年二月末までには中間的な論点整理とともに緊急的な取組も取りまとめて、まずこうしたことについて実施していただくべく我々も努力をしていきたいと思います。
○高橋(千)委員 検討しているのは知っています。だけれども、それがやはり本筋に触れていないと思うんですね。しかも、五年間猶予ですから、施行されてから五年間ですから、足し算すると七年かかるんですよ。七年この状態が放置される、それをそのままでいいのかということを指摘しています。
新潟市民病院の研修医で、昨年七月に労災認定された女性医師三十七歳は、もともと看護助手をしていたのに、国立の医学部に入り直して、誇りを持って医師として働き始めました。なのに、医者になんかなるんじゃなかった、気力がない、病院に行きたくないと言うようになって、一昨年一月、市内の公園の雪の上でみずから命を絶ってしまいました。最長で月二百五十一時間もの残業でした。
昨年の十二月の働き方検討会議でもこうしたことがるる紹介をされて、御自身の夫さんが過労自殺で亡くなった中原のり子さん、もう二度とこういう思いをしないでいただきたいということを繰り返し言っているんです。だけれども、なぜそれを本格的に改善をしようとしないのか。私は、医師をふやすべきだと思うんですね。
私、中原さんのことを取り上げたちょうど十年前の予算委員会で、最後に一言、文科大臣に伺いたいと思うんですが、深刻な医師不足の背景には勤務医の過重労働があるとして、人の命を預かる医師が人間らしく働ける条件、まさに、ゆっくり休めて家族の顔も見られる、そういう条件を整えなければ解決にならないと追及しました、二〇〇八年二月二十六日。そのときに、当時の舛添厚労大臣が医学部の定員抑制をしてきた閣議決定を事実上撤回し、その後、医師の増員を図ってきました。だけれども、十年かかって、ようやっと今、地方に医師が波及されてきた。ようやっと今、その段階なんです。
だから、これを今、立ち消えにしては全然だめなんですね。この予算をしっかり確保するということ、そして医師も人間らしく働ける条件をつくるんだという決意を述べていただけますか。
○林国務大臣 地域の実情に応じた医療提供体制を構築するために、地域における医師の確保は喫緊の課題であるというふうに認識をしております。
文科省では、各大学における地域医療に従事する医師を養成するための選抜枠等である地域枠、この設定を推進するとともに、平成二十年度から、将来地域医療に従事することを条件とする都道府県の修学資金の貸与枠と連動して、医学部の入学定員増を認めてまいりました。
この結果、平成二十九年度には、九百四人の定員増を含む千六百七十四人の地域枠が七十一大学で設定をされてきております。これらの学生は、六年間の大学での教育及び二年間の卒後の臨床研修を終えて地域医療の現場にまさに今出始めたところでございまして、今後、地域での医師確保の効果が出てくるものと考えておるところでございます。
今後とも、地域枠の推進を図るとともに、平成三十一年度で期限を迎える医学部定員増については、そのあり方について、厚生労働省とも連携して検討してまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 残念ながら時間が来ました。人たるに値する労働条件、改めてこのことを求めて、引き続き訴えていきたいと思います。
終わります。
――資料――