国会質問

質問日:2011年 5月 19日 第177国会 本会議

復興基本法案

 

――― 議事録 ――――

○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、東日本大震災復興基本法案について質問します。(拍手)

 初めに、このたびの東日本大震災で犠牲になられた皆さん、被災された皆さんに、改めて心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 第一は、復興を言う前に、今すぐ解決しなければならない問題についてです。

 地震、津波で助かった命をこれ以上犠牲にしてはなりません。震災から二カ月と一週間がたちましたが、依然として行方のわからない人は九千名を超え、十一万五千名以上の被災者が避難生活を余儀なくされています。不自由な避難生活はもはや限界であり、一刻の猶予も許されない事態です。

 一つは、避難生活の環境を改善することです。

 NHKの調査によると、東日本大震災の被災地のうち、宮城、岩手、福島の三県で、少なくとも五百二十四人の方が長引く避難生活のストレスなどで亡くなっていることが明らかになりました。五月に入ってもふえ続けています。

 その原因は、地震直後は地震によるショックや停電による医療機器の停止などだったものが、疲労やストレスによる免疫力の低下や血圧の上昇など、長引く避難生活がもたらす要因が多くなっていることだと言われています。また、避難所や避難所以外でも、心労や衛生状態の悪化から体調を崩し、救急搬送される人が急増しています。政府として、こうした実態をどう把握しているのでしょうか。お答えください。

 治療に当たっている医師も、食生活や睡眠など生活環境の改善によって抑えることができれば新たな犠牲の多くを防ぐことができるとしており、政府の責任は重大ではありませんか。

 政府が四月に行った三回目の避難所の実態把握結果を見ると、いまだに、把握できているのは、全体の半数強にすぎません。把握できた中でも、おにぎりとパンのみの避難所や、温かい食事の提供ができていない避難所、医師の巡回が不十分、下着が不足しているなどの避難所が二カ月以上も放置されている実態が浮き彫りになっています。

 政府が手をこまねいている間に、失わなくてもいい、失わせてはいけない命が日々犠牲となっているのです。せっかく助かった命をこれ以上犠牲にしてはなりません。調査も対策も自治体に丸投げではなく、人的支援も含め、具体的に解消するめどを示すことを強く要求します。明確にお答えください。

 被災地では仮設住宅の建設が急がれていますが、仮設住宅に入居した途端、避難所であった食事の提供が打ち切られるという問題が相次いでいます。

 細川厚労大臣は、四月二十九日の予算委員会で、私の質問に対し、自宅で避難生活をしている被災者も災害救助法の対象であり、支援すると答弁しました。同様に、仮設住宅に入居しても生活の糧がない人もあり、救助の対象として支援していくことは当然だと思いますが、答弁を求めます。

 さらに、被災した住宅をとりあえず住めるようにすることも、避難生活の環境を改善する上で急がなければなりません。自宅を修理したいが、復興計画との関係で後から立ち退きを迫られるかもしれないと悩む被災者もおり、修理か仮設住宅か、二者択一を迫るべきではありません。

 住宅の応急修理について、所得や資産要件などはなくすべきです。阪神・淡路大震災などに倣って、仮設住宅の入居要件については既に取り払いました。同じようにすべきではありませんか。明確にお答えください。

 第二に、復興の理念についてです。

 大震災からの復興を考える場合、何をその基本理念とするかが重要であることは言うまでもありません。被災地の復興を考える上で最も大事なことは何でしょうか。例えば、復興プランの一つとして、エコタウンやコンパクトシティーなどが言われています。しかし、よそから見れば、安全で、どんなにクリーンで省エネな地域ができたとしても、仕事ができない、住民が戻れない地域をつくっては、再建にはなりません。被災者一人一人の生活となりわいを再建することが、被災地の地域社会と地域経済の復興を進める最大の保証です。日本共産党は、このことを復興の基本理念の中心に据えるべきと考えます。

 総理、被災者一人一人の生活となりわいを再建するために政府が責任を持って支援する、このことを被災者の前で明確にすべきではありませんか。

 次に、復興を進める基本方針について伺います。

 地域の再建を進める上で重要なことは、水産業や農畜産業、中小企業など、これまで地域社会を支えてきた人々の意向を最大限に尊重し、こうした人々が中心になって考える再建を支援していくことです。このことについて、総理の決意を伺います。

 三陸地域の復興を考える場合、リアス式の豊かな漁場と漁業が果たしてきた役割を重視するべきです。壊滅的な被害を受けても、漁師をやめたいという人はほとんどいません。多くの人々が浜の再建を願っています。こうした意向を無視した漁港の集約が、再建につながるでしょうか。総理の見解を求めます。

 被災した農地や宅地を再建するために、一時的に国が土地を買い上げ、防災対策を行った上でもとの所有者に払い戻すことが切実に求められています。そのためには、もとの所有者に払い戻す条件を明確にすることが不可欠です。安易な証券化などにより、被災地復興を投機の対象にするようなことがあってはならないと考えますが、総理の認識をお答えください。

 まちづくりや雇用の確保など、地域を支える中小企業に対する直接の支援が重要です。この問題は、阪神・淡路大震災以来の課題とされてきました。

 今回、岩手県では、被災した店舗や工場、機械設備の修繕に経費の半額を補助する制度を創設しました。国は、今こそ、地域経済の再建のために、中小企業や店舗の再建に対する直接支援に踏み切るべきではありませんか。

 第三は、社会保障の問題です。

 大震災の被害を通じて、社会保障のあり方が根本から問われています。

 津波にぬれた白衣のままで診療を続ける医師など、医療、介護、福祉スタッフなどの献身的な活動が、多くの被災者の命を救い、守っています。こうした人々の存在なしに地域を支えることはできません。まさに人的ライフラインというべきものであり、なくてはならないものだと改めて実感させられました。

 しかし、大もとには、この地域で、医師を減らし、公立病院を統廃合し、地域医療を縮小してきたことが大震災の被害を拡大させたと思います。総理は、そうした認識はありますか。

 今は全国から医療スタッフが派遣されていますが、将来にわたって地域医療を守る体制が必要です。そのためには、公立病院の再建、民間医療機関への支援、医療、介護、福祉を支えるスタッフの確保と拡充へ思い切った対策をとるべきではありませんか。具体的な答弁を求めます。

 こうした中、税と社会保障の一体改革に関する議論が再開されました。厚労省が提出したたたき台では、東日本大震災被災による社会経済への大きなダメージは社会保障制度の安定性と持続可能性にも影響を及ぼすとして、これまで以上に給付の重点化や選択と集中などが必要だとしています。出席委員からは、年金額の引き下げや医療費の窓口負担を初めとする負担増や、サービス抑制を迫る意見が出されています。総理は、決意を共有するとあいさつされていますが、それはどういう意味ですか。

 震災を口実とした我慢と負担の押しつけは許されません。福祉も自己責任と称して壊されてきた社会保障を再構築することこそ必要ではありませんか。明確にお答えください。

 最後に、原発事故災害地域の復興の問題です。

 復興基本法案では、原子力発電施設の事故による災害を受けた地域の復興については、当該災害の復旧の状況を勘案しつつ復興への取り組みがされるという書きぶりになっています。一日も早い事態の収束が最優先なのは言うまでもありませんが、それは東電任せでは許されません。

 福島県民にとっては、今、復興どころか、先の見通しが全く持てないのです。その思いにこたえるためには、単なる願望と、根拠のない工程表ではなく、偽りのない、ありのままの情報を示して、誠意ある説明をすることではありませんか。

 政府は、一昨日、原子力被災者への対応に関する当面の取組方針を発表しました。そこには、原発被災者は国策の被害者と明記してあります。だとすれば、避難を余儀なくされた住民が、住まいと仕事を確保して当面の暮らしを安定させること、そして、ふるさとに戻りたいという思いにこたえるために国が最後まで責任を果たすということでなければなりません。明確にお答えください。

 同時に、そのことで東電が免罪されるものでは決してありません。原発事故による直接、間接にかかわらず、すべての被害について全額を賠償させるべきであります。

 被災者が一刻も早く生活となりわいの再建を果たし、地域社会と地域経済の復興が果たせるよう、また、原発事故の収束と、住民が一日も早く安心した暮らしを取り戻すことができるように、被災者の思いに寄り添い、力を尽くしていくことをお誓いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣菅直人君登壇〕

○内閣総理大臣(菅直人君) 高橋千鶴子議員にお答えを申し上げます。

 まず、避難所の環境の改善についての御質問をいただきました。

 震災発生から二カ月以上たった今も、避難者の皆様は困難な状況に置かれており、生活環境の改善は極めて重要な課題だと認識をいたしております。私も、幾つかの避難所を訪問し、その実情を目の当たりにし、また、その声も聞いてまいりました。

 政府としても避難所の実態把握に努めておりますが、食料は行き渡っているものの、例えば入浴が毎日できなかったり、プライバシーが十分確保できないなど、生活環境は十分なものとはまだ言えません。このため、二次避難を進めるとともに、仮設住宅の建設を急ぐなどの対策を進めております。また、特に環境のよくない避難所については、市町村や県に対し個別に改善を求め、その解消を図っているところであります。

 今後とも、少しでも生活環境の改善を図るため、人的支援を含め、政府としてやれることは何でもやるとの覚悟のもと、県、市町村の取り組みを全力で支援してまいります。

 次に、被災地の復興の基本理念について御質問をいただきました。

 今般の東日本大震災からの復興に当たっては、まず第一に、自然災害に強く、安心、安全な地域づくり、第二に、環境と調和したシステムや、人口減少、高齢化等の課題に果敢に取り組む先進的な地域の創造、そして、御指摘のように、地域における雇用の創出と活力ある経済の再生により地域の人々の生活の再建を図ること、これらを基本とする必要があり、今回の法案では、この趣旨を基本理念として盛り込んだところであります。

 この基本理念に沿って被災地域の復興を迅速に推進していくことにより、被災地域の社会経済の再生と生活の再建を図ってまいりたいと考えております。

 次に、復興に当たって地域住民の意向を尊重することについての御質問でした。

 今般の東日本大震災からの復興に向けた取り組みは、被災地域主体の復興が基本となるものであり、御指摘のように、地域住民の意向を尊重しつつ復興を進めていくことが重要であります。

 このため、東日本大震災復興構想会議においても、被害を受けた岩手、宮城及び福島の各県知事や東北にゆかりのある方々にも委員になっていただくとともに、委員の方々の現地への訪問や地元の方々との意見交換を行うといった取り組みを行っております。

 さらに、今般提出した法律案が成立し、国会の御承認をいただいた際には、岩手県、宮城県、福島県の三県に現地対策本部を設置し、地域社会を支えてきた方々の声をしっかりと受けとめ、向き合ってまいりたいと考えております。

 次に、漁港の復興についての御質問をいただきました。

 今回の震災により、五月十七日現在で、北海道から千葉県に至る太平洋沿岸部の三百十九の漁港において被害の発生が確認されております。

 今後の漁港の復興に当たっては、復興構想会議における議論を踏まえるとともに、漁業者、県、市町村等の意向を十分に踏まえつつ、地域水産業の姿を描き、災害に強く、活力ある新しい水産業、漁村づくりを軸に取り組む考えであります。

 次に、被災した農地や宅地についての国の一時的な買い上げについての御質問をいただきました。

 被災地域の復興に当たっては、農地や宅地の土地利用のあり方については、各方面から国有地化も含めた各種の提案をいただくとともに、復興構想会議においても議論が行われており、これらの議論、さらには地元地域や自治体の声も踏まえ、十分検討してまいりたいと思います。

 次に、中小企業の再建支援に関する質問をいただきました。

 被災中小企業が早期に事業再開できるよう支援することは、地域経済の再建、復興のために重要であります。このために、今般の補正予算により、資金繰り支援を抜本的に拡充するとともに、中小企業の工場施設等の復旧支援、仮設店舗・工場の整備などを実施していくことといたしております。

 次に、地域医療の再建のための対策についての御質問をいただきました。

 被災地域は、従来から医師不足等の課題が指摘されてきていましたが、これまで、診療報酬の十年ぶりのプラス改定や医師養成数の増員等により、地域医療の改善強化を行ってきたところであります。

 被災地の医療・福祉サービスの再構築のため、第一次補正予算に医療機関等の災害復旧の経費を盛り込むとともに、地域の施設整備や人材確保等に活用できる地域医療再生基金を被災地に重点的に配分するなどの措置を講じたところであります。

 引き続き、被災県等と十分連携し、医療・福祉サービスの復興と再構築に向けて、できる限りの支援をしてまいります。

 次に、社会保障と税の一体改革についての御質問です。

 社会保障は、五十年前に骨格ができましたが、当時と比べ、人口構造が変化するとともに、非正規雇用が増大し、現在では、若い世代が直面している新たな生活リスクに十分対応できておりません。

 また、少子高齢化が進み、給付費が増大していく中で、社会保障を、国民生活の安定を支えることのできる持続可能な制度としていかなければなりません。さらに、大震災により経済、財政の制約が増大している状況を踏まえつつ、社会保障におけるより一層の機能強化や優先順位の明確化を進めることも必要となっております。

 これらの課題を克服する改革を実現しなければならないという、そういう意味の決意を持って、六月末までに社会保障と税の一体改革の成案を得るよう精力的に検討を進めてまいりたいと思います。

 次に、情報公開と誠意ある説明についての御質問をいただきました。

 工程表が着実に実施されれば、来年の一月の中ごろには原子炉が冷温停止状態となり、放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられることになります。政府としては、それまでの間、モニタリングを継続し、可能な限り広域の除染を進め、避難されている皆様に御帰宅が可能か否かをお知らせすることができるようにいたしていきたいと思っております。

 なお、情報の開示に関しては、これまでも最大限の透明性を持って努めてきておりますが、今後とも、迅速かつ十分な情報を提供していくよう最大限の努力をしてまいります。

 次に、原子力被災者への対応に関する当面の取組方針についての御質問をいただきました。

 原子力政策は国策として進められてきたものであり、国に大きな責任があると認識しております。私自身、福島や埼玉の避難所を訪れました。二カ月を超える避難生活で、避難者の方々には大変な御苦労をおかけしていると感じております。

 今回の取組方針に基づき、政府一丸となって、住宅、雇用、子供の教育など、被災者の皆さんが直面するさまざまな課題にきめ細かく対応してまいります。さらに、被災者の皆様と、生活再建のため、最後の最後まで国として責任を持って対応していくことをお約束いたしているところであります。

 次に、原子力損害の賠償についての御質問をいただきました。

 今回の原子力発電所の事故により生じる損害については、事故との相当因果関係が認められるものは、風評被害を含めてすべて、原子力損害賠償法に基づき、適切な賠償が行われることとなっております。

 この賠償については、一義的には原子力事業者である東京電力がその責任を負うべきものでありますが、被害者の方々が適切な賠償を受けられるよう、政府としても、責任を持って、万全を期していく覚悟であります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣細川律夫君登壇〕

○国務大臣(細川律夫君) 高橋議員にお答えをいたします。

 応急仮設住宅入居後の支援についてお尋ねがありました。

 応急仮設住宅の入居により、当面の居住の安定が確保される。このことから、基本的には、自立した生活を送っていただくこととなります。ただ、委員御指摘の応急仮設住宅入居後においても、現に救助を必要とするものであれば、これは災害救助法の対象となり得るものでございます。

 厚生労働省といたしましては、関係機関とも連携しつつ、今後とも、応急仮設住宅に入居された方も含めて、被災者の方々の支援に努めてまいります。

 次に、災害救助法の、応急修理と応急仮設住宅についてお尋ねがありました。

 災害救助法による応急修理は、災害のため被害を受けた住居に対し、居住のため必要最小限度の部分を応急的に修理をして、被災者が自宅に戻れるようにするものでございます。

 応急修理と復興計画との関係につきましては、復興政策の中で対応を図るべきものと考えております。

 応急仮設住宅と異なり、住宅の応急修理は、災害により半壊以上の被害を受けた住宅に対して、応急的に必要となっている住宅の修理を本人にかわって行政が行うものであり、被災者の必要の度合いに応じて、みずから住宅を修理することができない者を対象としているところでございます。

 以上、お答えをいたします。(拍手)

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