○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
きょうは、五人の参考人の皆さん、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。
早速質問に入りたいと思います。
最初に、佐藤参考人に伺いたいと思うんですけれども、介護職員等によるたんの吸引等の実施のための試行事業ということで詳細な報告をいただきまして、非常に知りたかった情報がいただけたということで、感謝を申し上げたいと思います。
法律は、介護職員等によるたんの吸引等の実施を可能とするということになっておりまして、たんの吸引については明確に書いているわけですけれども、後は「等」ということで、その後の医療行為については省令で拡大をするということになっているわけであります。
そうすると、この問題一つをとってもいろいろな課題が見えてきて、もっともっと検証しなければならないと思うんですが、その先についてはチェックどころか省令で拡大できるということに対して、「等」の部分についてどのように思いますか。
それと、先ほどのあべ委員の質問とも結局重なるのじゃないかなと思うんですけれども、やはりその動機が、看護師不足、あるいは、訪問看護がもっと位置づけられなければならないところを介護で補うという発想ではないかというふうに思いますけれども、御意見をいただきたいと思います。
○佐藤参考人 ありがとうございます。
今私どもが試行事業を行ったのは、喀たん吸引と経管栄養、それは胃瘻。腸瘻はしませんでしたけれども、胃瘻と鼻腔栄養でした。
ただ、そのときに、やはり必要性は確かにある、今後必要性はあると思うんですけれども、やみくもに拡大するということについては、私はどうしても不安が残りました。
ですから、今回、喀たん吸引は命にかかわることですから、たんが詰まったら死んでしまう、そういう状況ですからこれはやむを得ないことだと思いますけれども、例えば経管栄養などは、定期的に発生するのであれば、御家族ができることの補いということであれば、それはそんなに問題ではない、私どもの訪問看護師がやってもそれはできるのではないかと思います。
今後、例えばストマとか褥瘡とかいろいろなことに広がっていくことにつきましては、それぞれに試行事業をしっかりしていただいて安全を確認し、連携のあり方を確保してやっていただきたいと思います。
それから二番目につきましては、私どもではちょっとお答えできる状況ではないかと思います。済みません。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
今後の拡大について、やはり一つ一つ検証が必要であるということだったかと思います。
続けて、田原参考人に伺いたいと思うんですが、今の件については、やはり介護労働の側で見ると、もともと介護の労働条件という問題があるのに、さらに負荷が加わって、離職がふえるとかそういう深刻な状況があるのではないかという指摘があったかと思います。
今の「等」の部分について、もし補足があればお願いしたいと思います。
○田原参考人 一言で申し上げると、本当に怖いという、今、法案の中身で出されているものがありますが、中身も広さもどこまでいってしまうのかというところが怖いという一言で、今回の医療行為については、繰り返しになりますが、基本的には業務拡大であり反対なんですけれども、それでもやるというのでしたら、ここまでというのをとにかく決めていただきたい。それで、医師の指示のもとで行うのですから、その団体というふうに申し上げると医師会というふうになるのかもしれませんけれども、医療関係団体がこれならという了解が得られる形の最小限にとどめていただきたいというところです。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
次に、服部参考人に伺いたいと思うんですけれども、七割が在宅であり、七割が軽度者である、そういうデータを踏まえて訴えられたということを非常に重要だと思って聞いておりました。
そこで、生活援助の重要性についてお話をいただいたと思うんです。私自身もこのことを繰り返し取り上げてきたものでありますから、本当に審議会の中では、単なる家事援助というんですか、非常にこれを低める考え方が盛んにされたのかなと思っておるわけです。やはり、これがむしろもっと大事である、そして、それを外すことが逆に介護にとって重度化につながるですとか、そうしたいろいろな問題があると思うんですけれども、補足いただきたいと思います。
○服部参考人 ありがとうございます。
既に、データとしては生活協同組合等から、生活支援が入ることによってどう維持してきたのかというデータも出されているかなと思います。
よく言われることは、あなたでも洗濯、掃除をやってもらったら助かるでしょうというようなことが言われるんですけれども、介護サービスを利用されている方、半分以上が八十歳、八十五歳以上なんですね。しかもその方は、何らかの疾患で、御自身が、保険者が介護が必要というふうに認めた方ですので、その手がなければ、食事をまともにする、それから環境を整えることができないという状況の中で、それも含めて必要なケアを受けるということで生活が成り立つ。これは、一般の健康な方が生活が成り立つということではなくて、命とか、生きていくことの基礎ができるんだろうと私は思っています。
しかも、そのことに関しては、大きなお金が使われているわけではありません。その意味で、全体のケアプランの中にそういうことも含めていくということで、これだけを利用すればいいとは思わないんですけれども、それを医師も看護職も介護職も入ったサービス担当者会議の中で認めて、もしそこが必要だということになれば、そのことについてまで、それだけ取り上げて抑制をするということがあれば、在宅がもっと暮らしにくくなってしまう、結果として重度化につながるというふうに考えております。
○高橋(千)委員 大変ありがとうございました。
そこで、もう一度田原参考人に伺いたいと思うんですけれども、やはり、今回の法案の争点が、軽度者を介護から外してしまう、ヘルパーの仕事の専門性を、ボランティアでもよいではないか、そういうところに行き着くのではないかと思っているんです。やはりそれが専ら財政的理由に支配をされているのかなという問題意識を持っております。
今の服部参考人に対する質問ともかかわるわけですけれども、そういうことも踏まえながら、介護職の専門性についてさらに補足をしていただきたいと思います。
それと、いただいた資料の中で、皆さんが出している要望があるんですけれども、その中に四番として、「外出・文化レクリエーション業務に介護報酬を設定して賃金支払いを」という要望がございます。これは、やはり介護の現場では、いろいろな制限、できること、できないことと制限があるんだけれども、そうではなくて、もっと必要なものというのがあるんだという、現場から発した提言ではないのかなと思って伺っていましたので、一言、補足いただければと思います。
○田原参考人 軽度者の問題については、私どもも非常に危機感を持っているわけです。ヘルパーの専門性をこれだけ否定された政策はないなと。
やはり、日常のかかわりの中で、精神状況や身体状況の変化、無論、家族の状況というのは、これはこういう介護関係団体は必ず言うことですけれども、それによって必要なサービスをケアマネジャーや場合によっては保健師のような専門職につなぐ。そういう意味では、サービスのかなめはケアマネジャーかもしれませんが、利用者の隣にいるのはやはり在宅ではホームヘルパーだろうというところで、ここを外してしまったら、暮らしが成り立たなくなってしまって、在宅を進めるといいながらかえって施設利用をふやしていく、こういうことになっていくだろうと思います。
それともう一点、実は、出していただいた資料の一番後ろに、三十六ページですけれども、「東京二十三区のひとり暮らし高齢者 見守り施策一覧」というのがあります。
これは、昨年度の、夏の所在不明問題が起こったときに、八月のところで、電話調査による二十三区の各自治体のいわゆる見守り施策、社会福祉協議会等のところで、各自治体に問い合わせたところなんですけれども、この十年間、介護保険が始まってから、介護のことは介護保険でということで各自治体とも大分削減をしていまして、今回の法案では地域支援事業とあわせてこの予防をということですけれども、そういう状況に各自治体がなっていないなということを、ケアマネジャーやホームヘルパーを組織している労働組合としての、これは東京だけの調査ですが、そういう意味でも非常に実感をしています。
それから、三十二ページに戻って、四項目めのところに「外出・文化レクリエーション業務に介護報酬を設定して賃金払いを(サービス残業の撤廃)」というふうに記載されていますが、これは、いろいろなところで、認知症のケアを中心に、外出や散歩、こういうものが非常に認知症の予防やあるいは介護予防に効果的であるということが科学的にも出されていますが、実は、介護報酬がこの十年間、つけられていないんですね。
だから、やりたくてもできない、介護報酬がないから人手も不足をしているというところがありますので、今後の報酬改定については、ここの部分も、前回の加算などということではなくて、しっかりと報酬設定をしていただきたいというふうに思っています。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。
残りの時間で、大森参考人と木村参考人に同じ質問をしたいと思います。それは、介護予防と日常生活支援総合事業をどう振り分けるのかという問題であります。
先ほど来、軽度者外しではないかということを言ってきたわけですけれども、実際には、その介護予防の枠というのは、給付の枠というのは前と変わらないわけですので、そこに入ってしまうと、もうあふれちゃうよという自治体の声もございます。しかし、受け皿もどこにでもあるというわけでもありません。
そこで、もし振り分けをすることによっていろいろな問題が起きたときに、それは全部自治体の責任になっちゃうのかしらということもございます。先ほど、木村参考人からは、ニーズ調査が十分にできていないということもございました。ですから、どういう給付をふやすべきなのか、あるいはそういう支援事業に対してはやはり介護できちっとやるべきなのか、そうしたことも含めて、振り分けについて伺いたいと思います。
○大森参考人 介護保険制度を創設したときに、虚弱老人と当時は言っていまして、この方々をどういうふうにするか。当時、ある種のサービスを受けていたものですから、この方々を介護保険のサービスの外に置くのはとても国民の理解が得られないということで、組み込んだわけですね。
一番悩ましいのは、実は、諸外国ではほとんど、日本のような軽度者を介護保険の制度の中に入れていませんので、そういう国際的な視点の議論も一つございますし、それから、実は、介護保険で行うサービスと社会福祉のサービスは違うものなんですけれども、これがなかなか、現実にはこの区別が難しゅうございます。だから、身の回りのお世話をするということを本当に介護保険でやるべきかどうかというのは、当初からございます。
しかし、これを今後どうするかということでございますけれども、現在の私の判断は、少なくとも今までは要介護認定制度の中で軽度者についても認定してきましたから、ということは、介護保険の事項が発生しているという認定でこのサービスをやってきましたから、これを直ちに外に置くとか、今回の法律改正で総合事業をやるからこの方々を切り捨てるなんということはありませんので、その御心配は要らないと私は思います。
○木村参考人 私も大森参考人がおっしゃったとおりだと思っておりまして、むしろ、私は、これをチャンスに、先生方は御存じだと思いますけれども、介護保険法二条二項には、保険給付の目的が記載されています。介護の状態を悪化させない、またはそういう状態にならないために保険給付されると記載されています。そのために要介護認定という事項としての判定をして予防給付ということがあるわけであります。
必要なのは、そこはその趣旨にのっとって保険給付しているサービスを使えばいいわけでありまして、配食サービスとか見守り、買い物、これらはほかの制度でやればいいことだと思っておりまして、合わせて一本という形ですね。ですから、総合事業を使いながら、いわゆる本体の自立支援のところの給付のサービスを入れつつ、生活していく上での食事それから買い物、見守り、そういうところを市として総合事業で支えていく形にしていくという考え方でいいんだと思うんですね。
振り返りますと、老人保健事業があったときに、自主財源がなくて市町村がそのような事業ができないということもあり、介護保険法改正を何回かやってくる中で、財源として総合事業等々に保険料と税を少し入れて今までやってきたということがありますので、私はむしろ、本体、何でも介護保険で見るというものを、今回、総合事業を含めて、本当に地域で暮らすということに持っていくための道筋をつくるための方向性じゃないか。そこに、あくまでも保険者が判断すると記載されておりますし、軽度者切りとは私は考えておりません。
以上です。
○高橋(千)委員 残念ながら時間が来たので終わります。もう一回くらいやりたいと思います。よろしくお願いいたします。