国会質問

質問日:2011年 5月 25日 第177国会 厚生労働委員会

介護保険法改正

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、法案に先立ちまして、薬害イレッサ訴訟問題検証チームの報告書が昨日発表されましたので、この点について質問をしたいと思います。

 委員の皆さんにも昨日には報告書が届いているかと思うんですけれども、二月二十四日の予算委員会におきまして、私が、イレッサ訴訟に対する東京、大阪地裁による和解勧告に対して複数の学会や個人から見解が公表されたのでありますが、それに厚労省側からの関与があったのではないかと。それに対して大臣が調査を約束したものでありました。

 初めに、検証チームの主査である小林政務官から、同報告書の内容について簡潔に説明をお願いいたします。

○小林大臣政務官 イレッサ訴訟の問題検証チームの調査報告書は、昨日取りまとめを行い、大臣に報告したところでございます。

 報告書では、まず、厚生労働省の職員が、複数の学会等に対して、みずから作成した声明文案を提供するなどして、受諾に慎重な見解の表明を要請したという事実を認定しております。

 その上で、学会等に見解の公表を求めることは、国民に対し、多様な意見が存在することを示し、厚生労働省の従前の施策に対する信頼感を高めようとするもので、通常の職務の執行の範囲内であると認められるが、本来、学会で独自に作成すべき声明文案まで提供するのは、過剰なサービスであり、公務員としては行き過ぎた行為であったと言わざるを得ないと考察をしております。

○高橋(千)委員 次に、大臣に伺うわけでありますが、正直、今の報告の中にもあったんですけれども、びっくりいたしました。事実は認めていらっしゃるわけでありますけれども、直接文案を書いて出した以外の行為については、多様な意見があることを示すための通常の職務の範囲内であるという認識だということ、まずそこにびっくりしたわけであります。

 報告書の中にはあるんですけれども、「和解勧告の受諾に積極的な意見が多数を占めるメディア対策として、慎重な意見が多いと思われる学会等に対し、翌週前半までに見解を公表するよう要請するべきであり、そのためには、各自の能力に応じて、やれることは何でもやる」ということを局議で決めたということがこの報告書には書いてあります。何か、「各自の能力に応じて、やれることは何でも」って、すごい悲壮感が漂っていて、何でそこまでやるんですかということになるわけです。

 そこまで和解を受け入れるわけにはいかなかったんだろうけれども、それは堂々と厚労省が国民に対して意見を言えばいいわけであって。学会に対して、しかもメディア対策として行われたという、この事の本質がどうなのかということを問いたいわけであります。しかも、そこまでは間違っていない、文面までつくったことは過剰なサービスと。この過剰なサービスという認識は、全く、どう受けとめたらいいのかなと思うわけですよね。

 大臣に聞きたいわけです。この報告をどう受けとめ、そして今後の行政にどう生かすつもりなんですか。

○細川国務大臣 今回の厚生労働省の職員の行為は、今、報告書にもありましたけれども、国民の中で多様な意見が存在するということを示そう、こういうことで、和解勧告に慎重な学会等に見解を表明することを要請したこと自体、これは通常の職務の範囲を超えるというふうには報告書の方も考えていないところでございます。

 ただ、この件につきましては、職員が声明文の案をつくって提供したという、そこまでしたということ、これは公務員としても行き過ぎた行為であるというふうに考えておりまして、私としても大変遺憾であるというふうに考えております。

 したがって、五月の二十四日付で関係職員に対しては厳重な注意を行いました。そして、今回の事例を真摯に受けとめまして、公務に対する国民の信頼を損ねることがないように今後徹底をしてまいりたい、このように考えております。

○高橋(千)委員 さすがにサービスという言葉は大臣は使われなかったと思います。

 多様な意見があるということに介入してはならない、それが民主主義の根本の問題なわけですよね。そのことに対してやはり猛烈な反省をしていただきたいと思います。

 私、本当に残念に思うんですが、三月二十三日の東京地裁は、画期的な原告の勝訴でありました。しかし、大震災が発生した後、震災対応以外の事案が国会内外で一たん全部ストップしていたような、そういう時期だったんですね。本当に悔しいんですが、厚労省はそのさなかに控訴をして、また長い闘いに入ってしまったわけであります。

 もちろん、調査結果が直接判決に影響したかどうか、今それに言及するつもりはありません。しかし、もっと早く結果が出てよかったのではないか。また、こんなことがあってはならなかった。同じことが繰り返されるそういう体質なのかと言わなければなりません。

 今回訓告を受けた平山審議官は、薬害イレッサで多くの死亡者が出た問題が社会的に大きく取り上げられたときに、その後、緊急安全情報を出して添付文書を書きかえるなど、政府は対応を迫られたのは事実であるのに、事故の教訓は特になかったとテレビのインタビューに答えた本人なわけであります。その方がまたこうしたことに関与しているということをちゃんと見る必要があるのではないでしょうか。

 命と健康にかかわる厚労省として猛省すべきだ、そして、長い裁判ではなく、原告との歩み寄りへ努力されるよう強く求めていきたいと思います。きょうはここまでにとどめて、また次の機会を見たいと思います。

 では、法案の中身について入りたいと思います。

 介護保険十年という節目に当たっての改正に当たり、保険あって介護なしじゃないかと指摘をして運動してきた私たちも、あるいは介護の社会化を訴えて推進をしてきた方たちも、このままでは介護は立ち行かない、そういう認識は共有していたのではないかと思います。

 私たちも、何度か各党の厚労部会の皆さんとともにシンポジウムに参加をして発言をしたり、たくさんの参加者の声を聞くという機会がありました。司会者が、各党余り違いがありませんねとまとめた場面もありました。

 率直に言って、その割でもなかったなというのが今度の法案の感想であります。核心部分だった利用者の負担増や軽度者の保険外しというものが、そのものずばりという形ではなっておりません。しかし、そこにつながる芽が入ったということは指摘をしなければならないと思います。

 昨日の参考人質疑でも指摘があったわけですけれども、やはり、大震災からの復興を目指す今の時期にこのような重要な法案をやるべきではない、凍結をして、震災対応のための必要な措置を十分に行って、審議は十分な時間をやるべきだと重ねて指摘をしたいと思います。

 そこで大臣に伺いますが、介護保険十年をどのように総括をしていらっしゃるでしょうか。今度の法案は、利用者の増加と財政の逼迫に引っ張られて、介護を必要とする人が必要なサービスを受けられない、それどころか保険の外に出されるということにならないでしょうか。昨年十一月の予算委員会でもこの問題を質問しました。大臣は、軽度者を外に出すようなことはしないと答弁をされたわけですけれども、改めて、再確認をしたいと思います。

○細川国務大臣 委員御指摘の軽度者の方々に対する支援に当たりましては、本人の能力をできる限り活用して自立を目指す、そういう観点に立って、社会参加や地域貢献を促しつつ介護予防の取り組みを推進していくとともに、地域の実情に応じて、多様なマンパワーや社会資源を活用しながら、配食あるいは見守りなどの生活支援サービスも含めて、総合的で多様なサービスを提供していく、こういうことが重要であるというふうに考えております。

 今回の介護予防・日常生活支援総合事業も、このような趣旨に基づいて、軽度者の方々にする支援の取り組みとして創設されるものでありまして、これを含め、今回の法改正は軽度者についてのサービスを縮小するというようなものでは決してない、こういうように考えているところでございます。

○高橋(千)委員 決してないというお答えでございました。

 それで、具体の中身についてどうなのか、検証していきたいと思います。

 市町村、地域包括支援センターが、いわゆる軽度者、要支援一、二の方や非該当の方、認定によってそれを行ったり来たりする方もいるということで、そういう方たちを、利用者の状態像や意向に応じて、介護保険の枠内の予防給付で対応するのか、あるいは新たな総合サービス、今お話があった見守りなどそういうサービスを利用するのかを判断すると言っています。

 では、利用者は、その判断されたサービスを拒否できるのでしょうか。私はこっちにしたいという希望を聞いてもらえるのですか。

○大塚副大臣 今先生御指摘の市町村、地域包括支援センターによる対応は、今回の一つのポイントでもありますが、要支援者等の皆さんに対して介護予防や配食、見守り等の生活支援サービスなどを総合的に提供する事業であります。

 そして、今先生は非該当とおっしゃられましたが、要支援の必要のない方あるいは要支援の方、その間を行き来するような方々に対しては、切れ目のない総合的なサービスを提供させていただきたいというふうに思っております。

 この事業の対象者については、御指摘の支援センターにおいて、適切なケアマネジメントに基づいて判断することとしておりますので、御本人の意向を尊重しつつ、利用者の状態に応じて、従来どおり予防給付を受けることは可能な仕組みと考えております。

○高橋(千)委員 拒否できるのか。尊重するという答弁でしたが、拒否できるということでいいですか。

○大塚副大臣 拒否という御表現がなかなか強いお言葉でございますが、今申し上げましたとおり、本人の意向を尊重して行うわけでありますので、もし本人の意向に反するような極端な事例があれば、それは改善を要するものというふうに思っております。

○高橋(千)委員 なかなかここは具体的にならない部分なわけですよね。

 それで、現在、介護予防を含む地域支援事業は、介護給付費の三%までと上限が決まっております。それで、対象となる要支援一、二の人の割合がどのくらいあるのか。また、非該当、行ったり来たりする方も含めると、どの程度の利用があると考えますか。これを言っただけで三%は上回っていると思いますけれども、その三%の上限についてどうするつもりですか。

○大塚副大臣 今先生御質問の要支援の方々、これは一の方と二の方がいらっしゃいますが、介護給付費をベースに考えますと、その方々の介護給付費が介護給付費全体に占める割合は、平成二十年度の実績で五・九%でございます。

 そして、御指摘のとおり、地域支援事業については、政令において、介護保険給付見込み額の三%を上限とするというふうにされておりますが、現時点でこの新しい総合事業の利用者数の見込みはなかなか把握しがたいのが実情でございます。この事業が市町村の判断により実施される事業であるということや、あるいはそれらの市町村においても、先ほど申し上げました利用者の方々の御意向も尊重して最終的に判断されるわけでありますので、現時点で三%を超えるということもなかなか見通しがたいわけでありますので、御指摘の上限のあり方については、今後も実情を踏まえてしっかり考えていきたいと思います。

○高橋(千)委員 先ほど来、総合的、切れ目のないサービスをやっていくんだ、適切なケアマネジメントで、本人の意見も尊重してと。しかし、現実には、三%の上限に対して、既に要支援一、二の方たちだけでも五・九%で、倍近くあるわけで、このままでは対応し切れないということは明らかなわけですよね。その矛盾をそのままにして進めると一体どういうことが起こるのかということをやはり考えなければならないと思うんですね。

 厚労省がモデルとしてきた自治体に赤旗新聞が取材した記事が手元にございます。例えば東京都の武蔵野市、財団法人による福祉公社が有償在宅福祉サービスを行っておりますが、利用料月一万円で看護師などが月一回訪問し、家事援助は別途一時間八百五十円と言っています。利用者が五十五世帯、有償ボランティアは二十八人。一方、介護保険の要支援の訪問介護利用者は三百四十一人だということです。ヘルパーのなり手もいないのに、報酬の安い有償ボランティアに人は集まらない、要支援者の受け皿は絶対に無理と同福祉公社の担当者は発言をしております。

 あるいは、要介護状態になるおそれのある人に予防ヘルプサービスを行っている埼玉県和光市、大臣のお地元でございますが、介護保険料と自治体負担の折半で、介護が必要になっても連続してサービスが受けられると厚労省が推奨しているモデルであります。しかし、要支援者をこのサービスに移せば市の負担が大きくなる、自主サークル的なものでも対応しなければならない、そういうふうに担当者は述べているわけです。

 全体のパイが少ない中で、自治体が決めなさいとなれば、それはどうなるのか。結局、有償のところに、有料の高いところに丸投げするとか、あるいは我慢してくださいとか、さまざまなことが考えられる。自治体負担も大きくなる。でも、いろいろなことがあっても、市町村が決めたことだからということで、国は別に軽度者外しをしたわけではありませんということで、責任を市町村に負わせることになりませんか。

○大塚副大臣 必ずしもそういうことは意図しておりません。

 そして、要支援者の予防給付のすべてが総合事業に振りかわるわけではありませんので、直ちに先ほど御指摘の上限の引き上げが必要となるものでもないと思っております。

 あわせて、私もちょうど介護保険制度ができたころに要は四十歳になりましたので、ちょうど介護保険とともに歩んでおりますけれども、この間、要介護一とか二、そして要支援ができてからは要支援の方々、軽度の方々の給付費負担が非常に大きくなってきているというこの現実もある中で、できるだけ、要支援にも至らない、先生のおっしゃるところの非該当で元気にお暮らしいただく方々をふやしていく、そのことが御本人にとっても制度にとっても重要なことでありますので、そういう方向に、しかも御本人の御意向が尊重されつつ進むように努力をさせていただきたいというふうに思っております。

○高橋(千)委員 非該当になって元気に暮らせるんだったらいいんだけれども、今の実態は、介護度が重くなった方がサービスを受けられて助かるなというような状態になっているのが現実なわけですよね。そこをどう見るのかということであります。

 介護予防を取り入れた〇五年の法改正以降、介護ベッドなどの福祉用具の利用制限、通所サービスの回数、時間制限などが行われ、問題となりました。こうした影響について、まず大臣はどう受けとめていらっしゃいますか。

○細川国務大臣 介護予防につきましては、要介護状態になることを予防するとともに、要介護状態になった場合でも可能な限り地域において自立した生活を営むことを支援する、そういう目的で平成十八年に創設をされました。

 この制度の導入の際に、車いすや特殊寝台等の一部の種目については、要支援などの軽度の方については原則として保険給付の対象にはならないものとしつつ、医師の判断と適切なケアマネジメント等の手続を経た上で、福祉用具を必要とする場合には給付の対象とする、そして、介護予防通所サービスについては、月単位でまとめた定額の報酬設定とする、こういうことなどを行ったところでありますけれども、必要なサービスについて特に利用制限があったというふうには私は認識はいたしていないところでございます。

 一方で、軽度者に対しては生活援助、これは例えば調理とか掃除とかふろ、洗濯、こういうことを中心とした提供がなされておりまして、本人の能力をできる限り活用した自立支援等に資するサービス提供が不十分だという指摘もされているということも認識をいたしております。

 これからのこれらの課題への対応も含めまして、より効果的で効率的な介護予防に取り組んでまいりたい、このように考えております。

○高橋(千)委員 現場のいろいろな混乱や指摘や要望があって政府もさまざま対応を迫られてきたということを今るる述べられたのではないかなと思うわけであります。今回もまた同じことが指摘をされているわけですね。

 大臣が今、生活援助のことをお話をされました。私たちは、介護予防に対して、非常に問題があるということを指摘してきたわけですけれども、しかし、そういう中でも、本当に生活援助が大事だ、要支援一、二の方でも、やはり病気や疾患があってそのサービスを必要としている方がいらっしゃるんだ、そこは本当に奪わないでほしいという声が寄せられております。

 北海道の民医連の皆さんが実態調査をまとめているわけですけれども、もしヘルパーさんが来なくなったら生活できない、この訴えをまとめているわけであります。

 例えば、老老世帯の七十五歳の女性。台所仕事に数時間かかるとおっしゃっています。リウマチで手、指の変形、痛みに加え、ひざの変形、痛みにより、家事仕事はほとんどできず、特に掃除全般ができない状況だった。台所仕事も、三十分と立っていられない状況。数時間かけて支度をされていたといいます。去年の末、夫の体調面での不良により入院、在宅加療となり、家事が滞り、現在、週二回の訪問介護で掃除と調理の下ごしらえに入っています。

 夫が今まで家事を担ってきたが、加療中で困難だ。本人も、身体的にどう考えても無理な家事をヘルパーで支援しなければ、どう生活をしていくのかと訴えています。掃除の行き届かない衛生面もよくない環境、近隣に商店もなく、宅配で届く食材だけの状態で、二人の生活をだれが支えるのか。サービスを受けてから、本人は、痛みを押しながら台所に立っていたが、時間がかかるばかりで体の負担が大きかった。下ごしらえをヘルパーさんに手伝ってもらうことで、体の負担も減り、夕食を決まった時間にとれる喜びを感じている、精神的ストレスもとても軽くなったとおっしゃっています。

 八十歳の男性、ひとり暮らしの男性の方。きれい好きな方で、部屋の整頓はされているんですが、猫背があって、掃除機かけとふき掃除が困難で、ヘルパーが支援をしています。最近は猫背がひどくなってきて、外出先や部屋での転倒を繰り返しています。調理は、ひじに全体重をかけて、たこをつくりながら頑張り、買い物も自分でできると頑張っています。今後、体調の変化や転倒のリスクはさらに増加していくと思われるにもかかわらず、ヘルパーが入らなくなったらどうなるかと心配をしている。危険ではないかという訴えがございます。

 こうした形で、ヘルパーさんがいるから、本当に何時間もかかる家事だけれども頑張ることができるんだ、そういう訴えもあるわけですね。それに対して、先ほど、本人の意見を尊重するということが言われたわけですけれども、切り分けられるということがあってはならないと思うんですけれども、重ねて伺いたいと思います。

○大塚副大臣 先生の実例を交えての御懸念、先々の御心配はよくわかります。今後、高齢者の皆さんの数がふえることはもう確実なわけですから、そうした事例がふえることのないように、しっかりと介護サービスが受けられるように、先ほど申し上げましたケアマネジメントの皆さんのアセスメントというのは、御本人の意向、そして御本人の状態をしっかりと見て、そして、お話し合いをしていただいて決めていただくべきものというふうに考えております。

○高橋(千)委員 同時に、こうしたサービスを、審議会の中ではいろいろなことが言われたわけですね。いわゆる単なる家事手伝いというふうに見るのか、それで民間の家事代行サービスがあるからいいじゃないかともし言うのであれば、本当にヘルパーさんの専門性ということが全否定されることになるわけです。

 先ほど紹介をしたように、ヘルパーさんがいるということの意味が、本当に自立した生活を送り、また、健康面でも大きな役割を果たしている、その専門性はしっかり認めるということがまず大事だと思いますけれども、もう一言お願いいたします。

○大塚副大臣 おっしゃるとおり、専門性のなければならない仕事だと思います。私ごとですが、私も家事は全くできませんので、自分がもしそういう状態になったら心配でありますけれども、当然、生活していくために必要な家事でございますので、そのことをサポートしていただける方には、専門性とともに、しっかりとした処遇、待遇も用意をしなければならないというふうに思っております。

○高橋(千)委員 副大臣は別にヘルパーがいなくても、訓練すれば家事はできると思いますので、そういう議論ではないのかなと思います。ただ、専門性という点で強調されたかったのだと思いますので、ぜひそこを大事にしたいなと思っております。

 今回、目玉とされている地域包括ケアの問題、あるいはその目玉中の二十四時間の定期巡回・随時対応型サービスについてでございます。

 これは、期待の声と、あるいは心配の声、さまざまあるかなと思います。実際にこのサービスを自分はやっているし、やれるという方の声も聞きました。三十分以内の生活圏、安全、安心、健康を確保するサービス、対応が二十四時間、三百六十五日を通じて提供されるということが、地域包括ケア研究会の報告、〇九年に出されているわけで、本当にそれができれば確かにいいかもしれないけれども、課題は非常に多いと思います。

 例えば、その報告書の中にこんな言い方をされているわけです。介護をする人は、定期巡回、短時間でどんどんどんどん回って歩くので大変密度が濃い、なので、今までのように家から家に、交通費のコストも減らせるし、賃金も密度がふえた分ふえるんだ、だから雇用機会もふえるんだということを指摘しているんです。本当にそういうことを喜んで、それが処遇改善という意味なのか、そしてそれを担う人がいるのかなということなわけです。

 訪問看護も病院にいる看護も本当は報酬は同じだ、でも、在宅ケアをしているときしか点数がつかないので違いがあるんだということを訴えられたことがありました。それを、じゃ、違うから密度をふやせばいいんだ、短くいっぱい回ればいいんだということではないと思うんですね。やはり大もとのところをきちんと、今の体制でもやっていけるような評価をしなければならない、そして担い手ができるような体制をやっていかなければ、やはりそれは絵にかいたもちになるわけですよね。地域格差にもなる、要するに事業所や担い手がなければ地域格差も広がるというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○大塚副大臣 そういう事業所がしっかり各地にできるのかというような意味での御質問かと思いますが、この定期巡回・随時対応サービスの普及のためには、保険者の主体的な判断に基づいて、日常生活圏域内で適切なサービス提供体制を確保できるようにすることが必要でありますことから、市町村の判断により、そうした事業者を公募を通じて選考することも可能と考えております。

 そして、サービスの普及とあわせて、事業者間の適正な競争を促すことによりサービスの質の確保、向上を図るため、公募による指定については、市町村が選考基準を設けて、オープンで公正な方法で選考を行うようにすることを念頭に置いております。また、一定期間経過後、これは六年ぐらいでございますが、サービスの提供状況などを評価しながら、再度、市町村が公募、選考を行い、最も良質なサービスを提供し得る事業者を指定できるようにしているところでありまして、利用者の皆さんの便益にも資するものというふうに考えております。

 そして、担い手がいるのかということでありますが、サービスの普及を促進するために、平成二十四年四月の施行に向けまして、事業者にとっても利用者にとっても魅力のあるサービスとなるよう、モデル事業の結果などを踏まえつつ、社会保障審議会介護給付費分科会において具体的な基準や報酬の設定を行いたいと思っております。サービスの実施方法や実施体制について事業者が具体的なイメージを持てるように、今申し上げましたモデル事業を通じて把握いたしました課題や好事例の周知を図り、事業者が育つように努力をさせていただきたいと思っております。

○高橋(千)委員 今、公募をし、また選考を行っていくということが報告されたと思うんですけれども、都道府県が事業者指定を行うということになっていると思うんですね。そして、市町村とは協議をすると。この意味なんですけれども、やはり、先ほど来お話ししているように、このサービスを本当に安定的にやるとなれば、事業所の寡占化が進むのではないか。その中で、利用者の選択がなくなることも心配されるわけです。それによって、もうここの地域はこの事業所よと決まってしまって、そこで万が一撤退ですとかさまざまなことがあったときに、ぽかっとなくなることもあるのかということなんです。

 そういう点で、例えば本当に身近で頑張っている事業者がいて、それを市町村が、やはりそこはちゃんと選んでほしいよ、全部広域のここだけじゃなくて、そういうふうな形で尊重されるというんですか、なるんでしょうか。

○大塚副大臣 これも先生おっしゃるような枠組みで都道府県が決めることになっておりますが、最も住民、国民の皆さんに身近な市町村の意向が反映されないということであってはならないと思っております。

 あわせて、今回のこの介護保険法の改正案も含めて、社会保障改革の大きな枠組みは、一次医療圏、中学校区単位ぐらいを想定した、そういう生活圏の範囲で医療、介護、予防、住まい、そして生活支援サービスというものが行われるようなコミュニティーをつくっていくということでありますので、この新しい制度において、身近なところで適切な事業者がいるにもかかわらず都道府県の意向でそうした事業者が指名をされないということはあってはならないというふうに思っております。

○高橋(千)委員 二〇一一年二月の二十四時間地域巡回型訪問サービスのあり方検討会、この報告書では、あらゆるタイプの要介護高齢者に対して効果的なケアを提供できるとは必ずしも限らないということを認めております。これは、財政的な制約もあるし、サービスの構造上の制約もあるのだということを言っているわけですね。

 そういうことの中で、特に考えられるのが、認知症患者の皆さん、家族の皆さんが訴えていることはまさにその大きな典型例かなと思うわけですけれども、短時間の巡回型サービスはなじまない、従来の滞在型、これも残し、強化してほしいと思っています。本当に、多様なサービスと先ほど来言っているんであれば、また、報告書も認めているわけですから、当然そういうことをやっていかなければだめだと思いますが、いかがですか。

○大塚副大臣 滞在型のサービスもしっかり充実させるべきという御指摘でございます。

 定期巡回・随時対応サービスにつきましては、利用者の生活リズムに合わせた介護・看護サービスの提供が可能であるとともに、心身の状況の変化の定期的な確認が可能であるため、認知症などの高齢者の皆さんの在宅生活を支える上でも有効なサービスの一つであるというふうに私どもは考え、また、期待もしております。

 したがって、この今回のサービスによって、しっかりとそのニーズに、あるいは高齢者の皆さんの御意向に沿えるようにいたしたいというふうには思っておりますが、先生御指摘の滞在型のサービスということも含めて適切なケアマネジメントが行われるように、今後も、仮にこの法案が成立をさせていただきました暁には実情をしっかりフォローアップさせていただきたいと思っております。

○高橋(千)委員 尊重されるということは確認ができたのかなと思います。

 ただ、先ほど来、適切なケアマネジメントということで、かなりそこの負担が重くなっていくなということで、やはりそこに対する支援、財政的な支援、人的な支援ということが必要になってくるのかなと思っています。

 自治体が今非常に大変な思いをしているというお話を先ほどしたわけですけれども、やはり国の責任もしっかりと持ちながら支えていかなければならないということで、重ねて指摘をしたいし、今後も見ていきたいなと思っています。

 時間が残りわずかになりましたので、端的に質問をします。

 介護療養病床については新設は認めない、そして、現在ある介護療養病床は六年間延長するとされました。民主党が当初出していた提言では三年とあったわけです。これを六年にした理由は何か。

○宮島政府参考人 民主党の方からは、ワーキングチームで三年とされました。

 その後、改正案策定の過程で、いろいろな関係の方の御意見を伺いました。その中で、やはり介護報酬改定が一回ではなくて二回できる期間が六年だ、それから、市町村が介護保険事業計画を策定するのが六年間だと二回ある、三年間だと一回だ、そういったようなことで、現場を混乱させないで転換するということで、六年というようなことで今回の法案で提出させていただいているところでございます。

○高橋(千)委員 今の説明は、六年間の中に一回ではなく二回の介護報酬の改定があるので、その中で混乱がなく転換ができるようにとおっしゃったんだと思うんですけれども、それをどう受けとめればいいのか。そうであれば、焦って転換をせざるを得なかった人たちが何でと思うかもしれないし、六年延長するのであれば、私は、そもそも介護療養病床廃止という方針そのものを撤回するべきだというふうに言いたいと思います。

 残りはもう時間がなくなったので要望にとどめますけれども、昨日の参考人質疑でも、たん吸引等を介護職員が実施できるとしたことに対して、研修を実際に行った訪問看護協会の方から、その研修が大変負担であったということのお話があり、提案もあったところであります。また、介護労働者の側から、実際に医療行為というのは非常に怖いという実感も語られ、職員にとって負担となり、離職をふやすことにもつながりかねないという指摘もございました。

 今回、たん吸引等という形で、残りは省令にゆだねられるということになり、これでは医療行為の拡大につながることにもなって、やはりそういうあいまいなことはやるべきではない、そして、始まったことに対しても十分な検証をするべきだということを指摘して、終わりたいと思います。

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