国会質問

質問日:2011年 6月 9日 第177国会 東日本大震災復興特別委員会

復興基本法案

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 間もなく発災後三カ月になろうとしておりますが、いまだに多くの被災者が不自由な避難生活を送り、あすの暮らしが見えない状況にいら立ちと不安を募らせています。

 復興基本法を制定するというのであれば、その大前提として、この直面している深刻な実態を一日も早く解決し、被災者一人一人が生活の基盤を確保することを目標とするべきです。そして、そのために政府と国会がやるべきことは何か、これが大前提ではないでしょうか。

 復興は、被災者が主役であり、上からの押しつけであってはならないこと、住まいとなりわいの再建が土台であること、日本共産党はこのことを繰り返し主張してまいりました。残念ながら、そうした視点がこの法案には欠けているのではないか、このことを指摘しておきたいと思います。

 さて、進まない瓦れき撤去についてであります。繰り返し本委員会でも指摘がありました。被害のひどかった三県だけでも、震災瓦れきは阪神・淡路大震災の一・七倍とされております。三月二十九日には、瓦れき撤去費用に一〇〇%国庫補助という方針が出され、五月二日の一次補正では三千五百十九億円が措置されたといいます。まず、その執行状況について伺います。

○松本(龍)国務大臣 お答えいたします。

 御指摘のとおり、第一次補正で三千五百十九億用意をいたしまして、五月二日当日、補助金要綱を全国の自治体に示して、自治体からの申請があれば直ちに補正予算を執行できるよう体制を整えております。

 本日までには、補助金概算払いの申請が行われていないために、補正予算の執行は行われておりません。

○高橋(千)委員 つまり、まだ一円も執行されていないということなんですね。昨日聞いたときには、七月ごろではないかというお話がありました。本当に、私、正直驚きました。もともと、国庫補助ということを九割にして残りを交付税措置、そんな面倒くさいことを言わずに、そもそも国庫補助一〇〇%にすればいいじゃないか、そう言いたかったんですね。

 ところが、今それ以前の状態だ、一次補正さえお金が入っていない。そうすると、この流れで、概算払いも出てきていない、状況がわからない、七月にお金がようやっと出始めて、執行状況がわからなかったら二次補正がまた見通しが持てないじゃないですか。それは、本当にどうするんでしょうか。

 最も困難な自治体に入るであろう岩手県の大槌町に私が最初に訪問したのは四月二日でしたけれども、実は既に撤去を始めておりました。自治体は、書類を書く手間を惜しむ忙しさだけれども、それでも、やはりそれよりもまず撤去しようといって頑張っているわけですよね。それに対して、書類だとかいろいろな、概算払いの計画を上げてこい、そういうことをやっているんです。これは、従来どおりではだめじゃないかということを言いたい。本当に急ぐべきだ。先ほど指摘された国直轄も含めて、どうですか大臣、もう一度。

○松本(龍)国務大臣 概算払いの申請をしやすくするために、補助金申請に必要な書類については大幅に簡素化をしております。また、概算払いの際の災害査定につきましても、現地調査をするのではなくて、まさに本省での机の上の調査ということをするなど、補助金執行までの時間をできるだけ短縮できるように調整をしております。

 今週ずっと、各市町村が来られまして、いろいろな課題を言われましたけれども、各市町村の議員の方々も、また首長さんも、そして我々も、しっかりこれから取り組んでいかなければならないなという話をしたところでありますから、これからも、できるだけ迅速にやれるように、私たちも努力をしてまいりたいと思います。

○高橋(千)委員 国庫補助の方針が出たのは三月二十九日なわけですよね。補正をするということはもう決まっているんですから、概算払いはどのくらいになるかというのをそれまでに積み上げておけばよかったじゃないですか。補正が決まったらすぐに出せる、そういう体制にするべきだった。これは本当に猛省を促したいし、早くやりたいとおっしゃっていますので、七月などと言わずに、一日も早く行き渡るようにしていただきたいと思います。

 福島は、逆にもっとおくれる心配があるわけですよね。そもそも、放射性瓦れきの問題、まだ処理方針は明確にされておりません。汚染レベルが低いとして通常処分をよしとされたのが会津地方と県南部の十町村にすぎない。十九日が正式決定とされております。決定のおくれがまた予算決定のハンディキャップとなることにならないか。いわき市の副市長は、処理業者のスタンバイはできているけれども、方針が決まらないから困っている、早くしてほしいとおっしゃっていました。

 今の反省を踏まえて、人的支援も含めて、しっかりと予算確保できるように、国の支援が必要だと思いますが、いかがですか。

○松本(龍)国務大臣 先ほど言いましたけれども、放射性物質に汚染されたおそれのある廃棄物の関係でありますけれども、今御指摘のように、六月の十九日に最終結論が出るというふうに思っております。

 瓦れきの件につきましても、申請があれば速やかにできるように体制は整えておりますし、これからまた、瓦れきの問題につきましても、さまざま状況を見ていきながら、迅速に対応していきたいというふうに思っております。

○高橋(千)委員 それでなくても福島が次々と新たな課題に苦しめられているわけであります。放射性瓦れきだけではなく、汚泥の問題、校庭の表土の問題、あるいは、草取りをした方が本当は放射線量を下げることができるとわかっているけれども、処分の方法がわからない。さまざまな課題が突きつけられております。

 これは、一つ一つ聞いていくと、全部省庁が違って、縦割りで本当に困るんですね。それがまた佐藤知事の最大の悩みでもあり要望でもありましたので、今、環境大臣にお答えいただきましたけれども、省庁の横の連携をしっかり行って、これらの課題にも向き合っていただきたいということを重ねて指摘したいと思います。

 さて、液状化や内陸部の宅地被害、これも今回の震災の大きな特徴であります。

 国土交通省によれば、被災宅地危険度判定で、岩手県から新潟県まで、赤紙、いわゆる危険と判定された宅地と、黄紙、要注意を合わせると、三千六百件を超えております。資料の一枚目につけておきましたが、そのうち、仙台市が調査をした資料でありますけれども、駅を真ん中にしまして五キロの範囲でこんなにも赤印が点在をしている、こういう状況になっております。

 沢を埋め立て盛り土するなど造成宅地の被害であり、私自身も太白区の緑ケ丘団地あるいは泉区の南光台などを見てまいりましたが、たび重なる余震で地割れが進むなど二次被害が懸念されるため、避難勧告が出されている地域もあります。

 その様子について、資料二枚目もつけておきました。ゴーストタウンになっているという話ですとか、退職金で住宅ローンを払い終えたばかりで、この年で仮設住宅暮らしは厳しいという住民の声なども紹介をしているところであります。

 さて、中越地震のときにも宅地被害は大きな問題となりました。山を削って周辺を盛り土したところが崩れたという高町団地がありますが、ここは、いわゆる私有財産である個人の宅地と河川など公共がクロスしているんだということをもって、人工の擁壁であっても補助の対象となりました。新潟県は、災害関連地域防災がけ崩れ対策事業それから災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業など、現行制度を自然の斜面だけではなくて人工の斜面にも使えるようにと特例措置を国に求めて実現をさせたところです。こうした特例を今回の震災にも当てはめるべきだと思うがどうか、これが一点です。

 同時に、中越沖地震では、これらの事業では高さが足りなかった柏崎の山本団地で、大規模盛土造成地滑動崩落防止事業を活用して団地の再生ができました。

 今回の宅地被害に対してもこのような特例をやること、そして、これらの事業を組み合わせて宅地被害の復旧復興を目指すべきだと思いますが、大臣の認識を伺います。

○大畠国務大臣 高橋議員の御質問にお答えを申し上げます。

 現地に入って地域の方々の声を聞きながら、そしてまた、いただきました新聞といいますか情報、資料を踏まえての御質問でございます。

 ただいま、過去において特例的に措置をしたという二つの事例をお示しいただきました。一つは、今お話がありましたように、平成十六年に発生した新潟県中越地震におきまして、災害関連地域防災がけ崩れ対策事業ですとか災害関連緊急急傾斜地崩壊対策事業において、宅地擁壁を対象とする等の特例措置の課題、そして、平成十九年に発生した新潟県の中越沖地震においての柏崎市の山本団地における大規模盛土造成地滑動崩落防止事業等であります。

 非常に長い名前で恐縮でございますけれども、いずれも、現地の状況を踏まえて、その当時の知恵を結集して措置したところでありまして、今この新聞でのお話、退職金で住宅ローンを払い終えたばかりだ、この年で仮設住宅暮らしは厳しい、あるいは、やっとこれからのんびりと老後を過ごしたかったのにという、そのような声も掲載されておりますが、国土交通省としても、これまでのそのような事例というものを踏まえて、既存の制度を活用しつつ、足らないところについては、御指摘のような経験も踏まえて、いろいろな工夫をして対処してまいりたいと考えているところであります。

○高橋(千)委員 大変丁寧な答弁をいただいたんですが、ちょっと最後は具体的じゃなかったかなと思うんですね。

 実は、この高町団地も山本団地も私自身が直接現地に行って、現行制度では無理なんだということで、非常に被災者の皆さんはつらい声を上げられて、町会の皆さんとも一緒に歩いて、国土交通省が特例措置をすることによって乗り越えてきたという経緯がございます。だから、私はこれを本当に今回生かしたいと思っているんです。

 ただ、残念なことに、さっき言った仙台のように規模がとても大きいものに対して、大規模盛土造成地滑動崩落防止事業は四分の一補助なんですね。これでは自治体負担も大変大きいですし、とてもとても踏み出せないよ、わかっているけれどもできないよという声があるんです。

 だからこれを、さっき足らないところをいろいろな工夫とおっしゃいましたので、まず、最低でも新潟がやった特例はやるということ、そして、この四分の一はもっと引き上げるということ、大臣、いかがですか。

○大畠国務大臣 ただいまの御指摘でございますが、いろいろな工夫というものの中に、過去において知恵を出したものについてはそれを踏まえて行うということも当然入っております。

 私どもといたしましては、ただいまの改めての御指摘を踏まえて、過去に発生した新潟県中越沖地震と同様に、今般の震災に対しても当該事業を活用しつつ、ただいまの御指摘を踏まえて、さまざまな工夫をして、被災を受けた方々がもう一度その地域で安心して暮らせるような環境をつくるために、力いっぱい取り組んでまいりたいと考えております。

○高橋(千)委員 ぜひこれを形にしていただきたいと思います。

 また、液状化の被害についても、私、浦安市や神栖市にも行ってまいりました。傾いた家に入ると、船酔いのような状態になりました。やはりこれも同じように宅地被害であるわけですよね。中越のときも中越沖のときも、実は液状化も同時に発生をしておりました。ですから、これまでの質問と同じ考え方の応用で、液状化被害についてもある程度面的に救済するスキームを考えるべきだと思います。いかがですか。

○松本(龍)国務大臣 御承知と思いますけれども、被災者生活再建支援制度は、居住する住家の被害程度に応じて支援をする仕組みになっています。しかも、全国知事会が積み上げて、そしてそれの額に見合う一対一の割合で今までずっと渡してきております。したがって、宅地のみの被害は本制度の対象外となっています。

 なお、四月に、液状化のことでさまざま深刻な被害があるということで、私ども、先ほど三半規管のこともありましたので、医者も含めて検討部会を設けて、五月二日に見直しをしたところであります。

○大畠国務大臣 ただいま防災大臣から御答弁があったことを踏まえて、国土交通省としての対応について御答弁をさせていただきます。

 ただいま松本大臣から御答弁があったことがベースでございますけれども、今御指摘のように、今回の液状化、範囲が非常に広いということと、それから個々の地域によってさまざまな状況がございまして、私自身も、個人的に、その対象にならないよといっても、これじゃ余りにも冷たいなという感じのところもございますので、国土交通省としても、そのようなところをどういう形で救済ができるのか、こういうことを今検討しておりまして、そのような結果を踏まえて、第二次補正予算の中ではそのような対応がとれるような形でできないかということを検討させているところでございます。

○高橋(千)委員 では、これは引き続きお願いしたいということで、要望にとどめたいと思うんですね。

 やはり幾ら住める状態のおうちであっても、あるいはおうちの補修ができたとしても、面的に宅地が大きく被害があれば住めないのだということであります。ですから、絶対このスキームをつくる必要があるんですね。先ほど紹介した高町団地の場合などでも、一定、長期に避難が必要とされたということで、みなし全壊ということで住宅の支援も、支援法の、松本防災大臣の方からのスキームでいただき、そして宅地被害は国土交通省のスキームでやった。こういうことができるんですね。そういう知恵を使ってほしいということを言っています。

 同時に、先ほど松本大臣がお答えいただいたことは、液状化については、やはり内閣府の方でも、現地に行って、これでは大変だということで基準の見直しをされました。理屈は同じなんです。住宅は住めるんだけれども、宅地が地割れをしていたり傾いていたり沈み込んでいたり、これじゃだめだから、宅地の被害を含めて住めないということを見て認定をしているのだから、ここを見てくださいということを指摘しているんです。これはもっと二次補正の中で踏み込んでほしいと重ねて言いたいと思います。

 あと、きょうはもう一つ、もう時間になりますので、最後に。

 やはり団地の再生の中でも、それでも個人負担が非常に大きいんです。山本団地は四分の一で四千万円でしたけれども、その四千万円を個人に割ると、最大で百万で済んだわけなんです。残りは復興基金で非常に助かったということがございました。ですから、こういう基金の仕組みというのは絶対必要です。取り崩し型の基金であれ、災害一括交付金という言い方もありますが、何らかのスキームが絶対必要だ。枝野長官に一言お願いいたします。

○枝野国務大臣 私は、あの折立の地すべりの現場も行ってまいりましたし、仙台に何年か住んでいましたので、本当に、その地すべり被害を初めとした被害の状況、何とか対応したいというふうに思っております。

 そして、一般論として、復興基金であるとか、あるいは復興のための一括交付金というような、自治体が自由に使い道を決めるということについては大変有効な手段であるということで、今後の有力な検討だと思っております。ただ、実際には、分割、分配をどうするのかとかいろいろな問題がございますし、それから、むしろ被害から復興というより復旧に当たりますので、直接的に被害ごとにやっていただく方がいいのではないかということなどもあります。

 ただ、今の御指摘を踏まえた中での検討を進めてまいりたいと思います。

○高橋(千)委員 いずれにしても、自治体に自由度のきくお金が必要だ、このことを指摘して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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