○高橋(千)委員 ただいま議題となりました津波対策の推進に関する法律案の起草に対し、日本共産党を代表し、一言意見を表明するものです。
本法案は、津波対策を推進するに当たっての基本認識を明らかにするとともに、総合的な津波対策の推進に必要な事項を定める内容の法案であり、賛成とします。
多くの人命を奪い、甚大な被害をもたらし、深刻な原子力事故につながった東日本大震災の大津波被害については、今なお懸命な捜索活動が続くなど、復旧復興の途上であり、その検証は今後の課題となっています。その上に立って、検証や対策に当たり重要と考えられる諸点について、以下に発言をします。
第一に、想定を超える災害が発生し得るという前提に立った防災対策、防災教育が不可欠だということです。
東日本大震災では、指定避難所に避難した多くの方が津波にのまれました。強固な防潮堤や湾口防波堤も壊され、命と財産を守る歯どめにはなり得ませんでした。
釜石市の津波防災教育に携わってきた群馬大学大学院の片田敏孝教授は、想定に縛られないことの大切さを強調し、自分ができる最大限のことを尽くすという観点から防災教育を実践されています。こうした取り組みが、市内の小中学校生徒の主体的な判断による避難を促し、犠牲を最小限にとどめたことは教訓的です。
何度も大津波に襲われた三陸地方に古くから伝わる津波てんでんこという言葉に改めて学び、津波の被害を風化させないこと、ハード、ソフト両面の対策を総合的に進めていくことが必要です。
第二に、津波警報の問題です。
地震直後、三メートルの高さだという予想に安心して逃げおくれた方が多かったことや、大震災の二日前に発生した津波が一メートルと低かったために、今度も大丈夫だろうと逃げなかったなどの事例が指摘をされており、迅速かつ正確な津波予想や的確な情報伝達など、警報のあり方を見直す必要があります。
第三に、災害弱者に対する対策の強化です。
せっかく助かった命も、水にぬれた衣服を着がえることもできず、暖もとれない中で低体温症になり、命を落とした事例も多くあります。災害弱者の避難のあり方、視力、聴力に障害を持った方々への情報伝達の仕組みを初め災害弱者対策に関する今後の検証を強めて、対策を講じる必要があります。
最後に、原子力事故についてです。
福島第一原発の事故は、起こり得る事故だとの指摘を顧みず、地震、津波に対する防災対策を怠ってきた結果起こった紛れもない人災であります。参議院の経済産業委員会の参考人質疑で柳田邦男氏が、想定外とは、それ以上のことはないことにしようとか考えないことにしようとしてきた思考様式に免罪符を与えるものと指摘をしているように、事故原因を想定外の大津波に解消することは許されません。原発の総点検を直ちに行い、原発からの撤退を目指し、原子力依存のエネルギー政策の抜本的転換を図るべきだと思います。
以上指摘して、意見表明を終わります。(拍手)