――― 議事録 ――――
○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、東日本大震災復興基本法案に対し、反対の討論を行います。(拍手)
大震災から、あすで三カ月となります。今なお行方不明者が八千百四十六名も残され、懸命の捜索活動も続けられております。いまだに多くの被災者が、避難所や自宅での不自由な避難生活を強いられ、あすの暮らしが見えない状況に、いら立ちと不安を募らせています。東京電力福島原発の事故では、事態の収束のめどが立たないまま、住民は、住みなれた土地を追われ、いつ戻れるのかわからない日々を送っています。
今求められているのは、地震、津波や原発事故で破壊された被災者一人一人の生活基盤を再建することです。そのために必要な支援を速やかにかつ具体的に行うことであり、政府と国会は、そのために全力を集中すべきであります。
本法案は、大震災からの復興の枠組みと基本理念を定めるものであり、どのような理念を盛り込むかは、今後の復興に重大な影響を与えます。
日本共産党は、復興の基本は、被災者が主役であり、上からの押しつけであってはならないこと、生活の基盤、すなわち住まいとなりわいの再建が復興の土台であることを繰り返し主張してきました。法案は、そうした肝心な点があいまいにされています。
法案は、復興施策は、二十一世紀半ばにおける日本のあるべき姿を目指して行われるべきとし、我が国が直面する課題を解決するための先導的施策として行うなどとしています。
この間の政府の復興構想会議の議論を見れば、こうしたあるべき姿や先導的施策が新成長戦略の推進を指すことは明らかです。漁業の集約と大規模化、民間企業の参入を認める水産復興特区に象徴されるように、壊滅的な被害を受けた地域をこの際とばかりに、これまでできなかった規制緩和や自由貿易などが叫ばれ、被災者が置き去りにされている感を否めません。
三党の修正は、地方公共団体の責務を盛り込みました。地方公共団体は、国の定める基本方針を踏まえ、復興施策を講ずるとされました。これでは被災自治体は、被災地や被災者の実態よりも国の方針を優先しなければならないことになります。上からの押しつけが可能になる仕組みを法案で担保したことになり、看過できません。
本法案のもう一つの目的は、菅内閣がつくった復興構想会議を法的に位置づけようというものです。
復興構想会議は、復興財源について、基幹税で償還するということも第一次提言素案に明記しました。法案は、復興財源について、償還の道筋を明らかにすることを書き込んでおり、結果として、復興を口実とした消費税大増税に道を開くことになりかねません。
最後に、福島原発事故の被害からの復興です。
法案は、事故収束のめどがついたら復興に取り組むとしているにすぎません。県民の声を聞く仕組みについても、復興構想会議の審議を踏まえるという枠組みの中で、合議制の機関を置くとしているのみであります。
現時点で事故の収束がいつになるのか全くめどが立たないこと、高い放射線量が避難区域の外でも幾つも検出されるという状況のもとで、風評被害や精神的負担などあらゆる損害への補償、営業や仕事をどうするか、長期的な生活支援と健康対策、そして、ふるさとの再生と人々がふるさとに戻れるように特別の枠組みをつくることが必要です。原発事故の収束と、これ以上原発による危険と被害を拡大させないための国の決意を示すべきだと思います。
国会は、あすの暮らしが見えない、将来が描けないという被災者と被災地のために、力を合わせるべきです。私自身の決意も込めながら、討論といたします。(拍手)