国会質問

質問日:2011年 7月 12日 第177国会 東日本大震災復興特別委員会

原子力損害賠償支援機構法案

 

――― 議事録 ――――

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 ふくしま復興共同センターが行ったアンケートで、八一%の方が東電に賠償請求をしたい、このように答えました。

 紹介をいたしますが、今現在は体に影響はないとしても、数十年後に影響があったときには逃げないで責任をとってほしいです。いわき市の方。国、県、東電、それぞれに責任があると思います、生きることを脅かし、生きる希望まで奪い取ってしまう、最後まで責任を持って収束してください、そして、東電で作業に当たっている人たちを大事にしてあげてください。これは楢葉からいわき市に避難している方です。先祖から受け継いだ農地、子々孫々に残すための家を安全なものにしてもらいたい、何の心配もなく胸いっぱい空気を吸いたい。これは南相馬市の鹿島区の方です。

 きょうは、東京電力の西澤新社長においでをいただいております。今、一部の声を紹介しましたが、福島県民全員に慰謝料を、それが県民の気持ちであり、私は、今そのくらいの覚悟が必要だと思います。ぜひ社長の御認識を伺いたいと思います。

○西澤参考人 東京電力の西澤でございます。

 このたびの福島原子力発電所の重大な事故によりまして、発電所周辺の皆様、福島県の皆様、そして、さらに広くは国民の皆様に多大な御迷惑と御不安をおかけしております。心からおわび申し上げます。

 先生のお尋ねの件でございますけれども、当社といたしましては、紛争審査会の指針も踏まえまして、国の御支援をいただきながら、福島県の皆様を初め、被害を受けられた皆様に対する公正かつ円滑な補償を進めてまいりたいというふうに思っております。

 以上でございます。

○高橋(千)委員 非常に残念に思います、今の答弁は。公正かつ円滑なと。本当に今の福島県民全員の声にこたえてほしいという思いに対して、まず、その思いを受けとめるというお言葉があってもよかったのではないのか、そう思います。

 社長は、報道によりますと、今審議をしています賠償法案が国会に提案されているけれども、早く成立してもらうことが大事、そこの裏づけがなくて賠償をと言われても、額によりけりだが非常に厳しい、早目に法案が成立することを切に願っていると述べたといいます。私は、まさしく東電の救済法案だ、こう言わなければならないと思います。

 しかし、まず最初に考えたいのは、では国が支援すれば全面賠償は可能なのかということであります。何よりも原発の被災者が救済されることが最優先であります。しかし、その根拠となる原子力損害賠償法に基づく指針は、なかなか賠償の範囲が広がりません。

 六月二十日、原子力損害賠償紛争審査会が第二次指針追補を発表しました。いわゆる避難、屋内退避を余儀なくされた方たちへの精神的損害を償うものとして、半年間で月十万円、次の半年間は五万円というふうに決められました。これに基づく仮払いが七月五日から始まっているわけであります。

 そこで、避難を余儀なくされた方たちの精神的損害について、なぜ半年たてば半分にすると決めたのですか。その根拠をお話しください。文部科学大臣。

○高木国務大臣 高橋委員にお答えをいたします。

 賠償紛争審査会は、まさに公平中立の立場から損害の範囲の判定の指針を策定しておるところでございまして、六月の二十日に、第二次指針の追補として、避難生活等に伴う精神的損害の損害額の算定方法を示したところであります。

 この第二次指針の追補として、事故後の六カ月間は、まさに地域コミュニティー等が広範囲にわたって突然喪失をする、これまでの平穏な日常の生活とその基盤が奪われる、また、自宅から離れ不便な避難生活を余儀なくされた上、帰宅の見通しもつかない不安を感じる、こういう最も精神的苦痛の大きい期間とされております。

 一方、審査会は、その後の六カ月間は、自宅以外での不便な避難生活や先が見えない不安は継続するものの、突然の混乱などの要素はなくなる、こういう評価がされておりまして、損害額を半減されることが適切と判断されたものと私は理解をしております。

○高橋(千)委員 だれがそんな基準を納得しますか。今、交通事故の話をまず一つの基準にしたとおっしゃいました。まず、そこと比べる方がおかしいですよ。

 審査会の議事録を見ますと、こんな議論があります。借地借家法では、借家を突然追い出されることになったときに猶予期間は六カ月ある、次の生活のめどの段取りをつけるのにそのくらいかかる、これが参考になるのではという発言があって、座長も、今まで気がつかない論点などと、大まじめに議論しているんです。これは一緒にしていいんですか、借地借家と。

 総理がお盆までに仮設住宅をつくると約束したからって……(発言する者あり)仮設住宅に入居すると約束したからって、それで先の見通しが持てますか。安心した暮らしが約束できますか。全然事情が違うではありませんか。

 南相馬市の緊急時避難準備区域に住む九十三歳の女性が、私はお墓に避難します、そう遺書を残して命を絶ちました。せっかくばらばらに避難していた家族が戻って一緒に暮らしていたんです。家族が一緒にいた。だけれども、またいつ避難せよとなるかわからない、そのときは足手まといになりたくないと書いていたわけです。

 取材した毎日新聞は、四月から六月の福島県内の自殺者は百六十人、昨年より二割もふえていると報じています。総理は、原発の処理に数十年もかかると発言されていますね。これでは、苦しみが減るどころか、増すばかりではありませんか。

 総理に伺います。半年間で精神的苦痛が半減するだろう、この基準はやはりおかしくありませんか。

○菅内閣総理大臣 今のお話を聞いていて、確かに、突然の事故で避難を余儀なくされるそのときの一つの精神的な苦痛と、それが長引くことによる苦痛、なかなかこれは比較をすることは難しいように私にも思われます。そういう中で、何らかの基準を設けるという中でのそうした御議論があった上でのそういう判断ではなかったかと。

 私も、それでいいとか悪いとか、個人的な見解はちょっと申し上げにくいんですけれども、今のお話を聞いておりますと、何らかのそういう考え方で判断されたんだということだと思います。

○高橋(千)委員 大変苦しい答弁だったかと思います。

 だれが聞いてもおかしいと思うんですね。これはもちろん、審査会の中では、いずれ本当に長引いたときにまた見直しが必要だねということは確かに議論されています、名誉のために言っておきますけれども。しかし今、本当に見通しがつかないし、工程表だって、その決めたときには前のものであったわけですよね。そのときに決めたものがもう既に見直しをしなければならないというときに、明らかにこんな基準はおかしいという立場に立たなければならないと思います。

 六月九日の本委員会での私の質問で、私はこのようなことを言いました。例えば、いろいろな商工団体などではカバーできない個人事業主に補償すること、避難を余儀なくされた人だけではなくて、事情があって避難できずにいる人たち、家族がばらばらなど、精神的苦痛にこたえていく必要がある、こう言ったのに対して、枝野官房長官が、今指摘された損害については、最終的にはいずれも幅広く賠償の対象になるものと理解している、このように答弁をしています。

 先ほど紹介したアンケートの中にも、目に見えない放射線がすごく不安で、安定剤も飲んだりしています、精神面が強い人ばかりではないということを考えてほしいという声もあります。また、審査会の中でも、避難はしていないけれども、校庭で遊べない子供たち、そうした子供たちの対応、これも対策が必要じゃないのという議論があって、今はその話題じゃないということで、まだ何の基準も決まっていないわけです。ですから、今示されている基準というのは、本当に避難区域の線引きから一歩も出ていない、こういうことになるわけです。

 ですから、賠償のスキーム以前に、まず全面賠償をする、そういう立場に立つのかどうか、もう一度伺います。

○海江田国務大臣 全面賠償というのがどういう内容を示すかということは私にはよくわかりませんが、ただ、やはりこれは、原子力発電所の事故とまさに相当因果関係があるものについてはしっかりと賠償するというのが基本的な立場でございます。

○高橋(千)委員 このことが、やはり今答弁にあった相当程度因果関係、これがこの指針の非常に限界といいますか、矛盾なわけです。

 それで、きょうは最初にまず、第一次指針、出荷制限になったものについて、これでしたらまさにはっきりしているので、すぐ補償が決まりそうに思えますけれども、実はそうではありません。

 ここに、東電あての封筒とそれから請求書、こんなにたくさんの書類を書かなければならないということで、現物がございますけれども、六月三十日に福島県の農民連が第二回目の損害賠償請求を行いました。東電側は、一月前に出した書類、それ以外に、こちらの請求書を書いてくださいと。一月前に全部出しているんですね。だけれども、さらに二十一枚の書類を要求されました。これを全部そろえないとだめなんですか、そう言ったら、立証責任は被害者が行うというのが原則ですのでと開き直ったと言うんです。

 そこで、西澤社長に伺います。

 一体、東電は払うつもりが本当にあるんでしょうか。書類を大量に要求し、あきらめろと言わんばかりではないですか。そこまで因果関係を言うのであれば、原発とは関係ないという立証責任は加害者が負うべきではないですか。

○西澤参考人 お答えいたします。

 当社といたしましては、公正な補償を行う観点から、被害を受けられた皆様に対して、仮払いにおきましても被害額を確認するための適切な書類を御提出いただくことをお願いしてございます。そうした中、今先生が御指摘ありましたような対応に本当に失礼な点がございましたら、この場をかりておわび申し上げます。

 今後も、今回の事故の当事者であることを真摯に受けとめております。原子力損害賠償法の趣旨に基づきまして、国の御支援もいただきながら、被害を受けられた皆様に対してきちんと補償を行ってまいります。

○高橋(千)委員 現場ではやはりそのような高圧的な状態に置かれている。二十一枚もの書類が本当に必要ですか。本当にそこはしっかり見直して、丁寧な対応をしていただきたい。もう明らかに実態はわかっているんですから、取り入れるという立場でやっていただきたいと思います。

 今度は、このパネルを見ていただきたいと思います。皆さんの手元に同じ資料を配っております。

 国の指針が余りに遅かったために、農協などは、収入の途絶えた農家を救済しようと、立てかえ払いを早い時期に決断しました。非常に重要なことだと思います。

 これは、ある酪農家が農協と結んだ立てかえ払いの契約書であります。これは、四月一日から三十日まで、原乳の損害賠償分九十八万九百十円。その立てかえ期間は、十一月二十日までに組合にその農家の方が返済をするわけです。下の方を見ていただければわかるように、返済するお金というのは、損害賠償金でありますから、東電からもらったお金で返済をいたします。

 一番下を見てください。第三条の二項、「損害賠償金の額が立替金に不足する場合においても全額返済するものとします。」。つまり、農協から九十八万立てかえてもらっても、その東電から入ってきたお金は、実は二分の一ですよね。二分の一と今言っているんです、農家の皆さんには。そうすると、残り五十万円、この人は自腹で返さなくちゃならないわけです、十一月までに。そういうことをやらざるを得ない。でもそれを、では、農協がみんなかぶりなさいとなると、これも大変なことなんです。

 高木大臣、このような実情、御存じでしたでしょうか。

○高木国務大臣 今回の事故につきましては、被害者が多数に及んでおりまして、賠償紛争審査会の皆さん方も、四月以降、精力的に審査をしております。特に、早急に適切な被害者への救済が図られなきゃならないことは言うまでもありません。そういう中で、できるところから順次指針を策定してきたところであります。

 東京電力は、この指針を踏まえまして、今、仮払いを順次実施しておりまして、特に農林漁業者についても、五月十二日の政府の決定を踏まえて、五月末から仮払いが行われたと承知をいたしております。

 また、JAにおいて、農家の東電に対する損害賠償請求の取りまとめや、つなぎ資金の融資の提供などが行われたことは承知をしておりますが、本日御指摘の件については承知をしておりませんでした。

 文部科学省としては、JAの運営についての詳しいことはよく承知をしておりませんが、関係省庁と十分連携をして、被災者への適切な救済が図られるよう今後とも努力をしていきたいと思っております。

○高橋(千)委員 今、JAを責めろと言っているのではないですからね。こういう状況にならざるを得ない、その事態をしっかり受けとめていただいて、やはり被災者が、一部立てかえていただいたと思ったら、今度は半分返さなきゃいけない、こんなことだけはやめてほしい、それが言いたいわけであります。これはもう海江田大臣に対しても、総理に対しても、ぜひ聞いていただきたいと思います。

 そこで、西澤社長にもう一度伺います。

 農林漁業者は請求額の二分の一、このことが先ほど示した説明書にも書いてありますし、ですから、こういう矛盾が起きるわけなんですよね。加えて商工業者はどうか。これはもう上限二百五十万円と一律であります。従業員が百人いたって二百五十万円、これじゃとてもやっていけません。声が上がっています。これで終わりではないはずです。一刻も早く満額払うべきではないでしょうか。

○西澤参考人 お答えいたします。

 農林漁業の皆様、そして中小企業の皆様がこうむった被害につきましては、先ほど大臣がお話ありましたけれども、五月十二日の政府決定を踏まえまして、当面必要な資金を速やかにお支払いするということから、書類の確認作業もなるべく簡素化した上で、御請求額の一定比率をお支払いさせていただいております。

 なお、当社といたしましては、最終的には、エビデンスに基づきまして損害額を御確認の上、精算はさせていただきます。

 以上でございます。

○高橋(千)委員 基本的には満額ということでよろしいですよね。

○西澤参考人 お答えいたします。

 きちっと精算させていただきます。

 以上でございます。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。

 では、今回の法案で支援のスキームがどのようになるのか、伺いたいと思います。

 これはまた、二枚目のパネル、同じものを皆さんのところにつけております。これは「資金援助の流れ」と書いてあります。「原子力損害の発生」、そして「民間保険契約または政府補償契約により賠償措置額千二百億円の支払い」、これはもともとある原子力損害賠償法の仕組みであって、政府は千二百億円支払うことになっております。このお金は、このたびの二次補正で措置をされることになっていると思います。

 原子力損害賠償支援機構法案第四十条、この間に書いてありますけれども、要賠償額が賠償措置額を超える場合、東電は機構に対して資金援助の申し込みができるとなっております。これは、どのくらいの賠償額になるのかというのをある程度決めませんとこの法律が成り立たないと説明を受けております。

 では、海江田大臣、この要賠償額というのは幾らになるんでしょうか。

○海江田国務大臣 今の時点では、これが幾らになるかということはまだ判明をしておりません。

○高橋(千)委員 しかし、法律の成り立ちとしては決めなくてはいけないわけですよね。

○海江田国務大臣 この後の、ここから絵で分かれますけれども、例えば、交付国債ということではおおよそ二兆円の資金を準備する予定でおります。

○高橋(千)委員 この賠償額が幾らになるのか。もちろんそうです、まだ被害が終わっておりませんので、全体像が見えないのは当然であります。しかし、それが結局、国民負担とどれほど結びつくのかということにかかわるわけですので、非常に重要な問題かと思います。

 今大臣お話しされたように、これは二兆円の交付国債と二次補正の中で書かれております。また、それプラス二兆円の政府保証ということもあるので、政府は四兆円以上の一定支援をするという枠組みは既にできているのかなと思うんですね。

 問題は、この書きぶりですと、千二百億円、政府がこれから出します、これを超えれば機構が援助ができるという仕組みになっているわけです。

 そうすると、右の図にありますが、二兆円の交付国債が発行できる。そして、機構に対しては、これは無利子です、国債を交付して、いつでもお金にかえてよいと書いてあります。国は、その二兆円の調達のために二百億円の利子を払って借り入れをするわけです。これは、二百億円も二次補正の中に書かれてあります。多くの被災者が二重ローンで苦しんでいるときに、政府は、その苦しみの原因者でもある東電救済のために無利子で二兆円の国債を用意し、そのために利子を払って借り入れをしなければならない、こういう仕組みになっていると思うんです。

 そこで、三枚目に、その中身について書いているのが六月十四日の閣議決定であります。赤字で書いてありますけれども、「援助には上限を設けず、必要があれば何度でも援助し、損害賠償、設備投資等のために必要とする金額のすべてを援助できるようにし、原子力事業者を債務超過にさせない。」これが大前提であります。何度でも、しかも上限を設けず。なぜそこまで援助をするのでしょうか。

 海江田大臣、これまでこの問題での議論が何度もありましたけれども、大臣は、第一義的には東電に責任があるとお答えになっていました。そのことと矛盾しませんか。

○海江田国務大臣 何のために何度でも援助を行うのかというお尋ねでございますが、これはまさに、原子力事故の被害を受けて損害を生じた方々に対して、十分適切な賠償を行うためでございます。

 それから、その後でお尋ねのありました第一義的にはということでございますが、これはまさに、先ほど来、きょうも一日議論をいたしましたけれども、原子力の損害賠償法にそうした原則の決まりがあるからでございまして、ただ、きょう一日、まだ委員の質問、その後の質問もございますが、今出ておりますのは、そうした東京電力だけに第一義的な責任を負わせるのではなく、国がもっと前に出るべしという議論もたくさんございましたので、今、そうしたことについて、まさにこの委員会で議論をしている最中でございます。

○高橋(千)委員 第一義的にと言ってきたわけですけれども、その努力を本当にやってきたのかということと、それをやらせるためにこそ国の責任があるのではないかということが言いたいわけです。

 東電は、資産六千億円、役員報酬の削減などで五千億円捻出しますと経営合理化方針で明記をされています。五月十日に国に対する支援をお願いしているその文書の中で、海江田大臣あてですけれども、火力発電の燃料の高騰などで一兆円かかります、それから社債や借入金の返済が七千五百億円かかります、ですから、賠償どころか、電気の安定供給にも支障を来しますと書いているわけです。そうすると、経営合理化を行っても、ほかの支払いで消えてしまう、そう言っているんですね。それだと、第一義も何もあったものではないのではないかと思うんです。

 メガバンクはどうなったのか。三大メガバンクだけでも二兆円の残高があります。この放棄の問題や、関係する業者の皆さんにもっと責任を持ってもらう、そういう努力をしてきたと言えるでしょうか。

 そもそも、現在の仮払いの実績は一千六十四億円と聞いています。そうすると、さっきから言っているように、国はまず千二百億円出す、その枠さえ超えていないんですね。考え方によっては、一円も払っていないに等しいではありませんか。

○海江田国務大臣 この東京電力の仮払いについては、私は、本当に口が酸っぱくなるほど、東京電力に早くやるようにということを言ってまいりました。それは、きょうこちらの委員会にお見えになっている西澤社長もおわかりいただけると思います。

 それからもう一つは、やはり、まずリストラについてでございます。このリストラにつきましても、今委員御指摘のありました、そのときはまだ清水社長でございましたけれども、清水社長と私との間のやりとりで、幾つか、リストラをしっかりやるようにというお話をいたしましたが、その後、政府は第三者の、先ほど午前中の当委員会の質疑でお答えをいたしましたけれども、プレデューデリジェンスと申しますか、まだ法案が成立をしていないわけでございますから、正規のデューデリジェンスにはなりませんけれども、その事前の作業として、法律の専門家あるいは会計の専門家、こういう方々が、今の東京電力の資産の内容あるいはリストラの進行ぐあい、こういうものをしっかりとチェックをしております。

○高橋(千)委員 通告しておりませんが、西澤社長、今の点ですが、千二百億円を超えれば国からもらって、その後は資金援助をお願いしますというのでは、賠償に対して本当の責任を果たしたことにならないと思います。

 どれだけ頑張るつもりでいるのか、一言お願いします。

○西澤参考人 お答えいたします。

 先生の御質問でございますけれども、我々としましても、賠償につきましては誠心誠意努めていきたいと思っております。リストラ等もいろいろ進めてございます。その分も含めまして、事業の安定的な運営とともに一生懸命努めていきたいというふうに思っております。

 何とぞ御理解を賜りますよう、よろしくお願いいたします。

○高橋(千)委員 一番肝心なところが、今はまだ始まっていないので、チェックをしますということを言えます。では、本当に、今はたった一円も払っていない状況と同じことですから、それ以上どれだけの努力がされるのかということはやはり私は非常に疑問なんだと。それは、先ほど言ったように、最初から何度でも、上限も持たない、この仕組みがそうなっているんだということを指摘したいと思うんです。

 それで、先ほど、国の責任もある、こうおっしゃっています。私は、やはりそのことをきちんと法案に書くべきだと思うんです。その国の責任というのは、歴代自民党政権に何よりも責任がございます。残念ながら、今自民党さんにそれを質問するわけにいきませんので、これをどういう形で本当に果たすべきなのか。

 私は、東電が東電がと言いながら、第一義的には東電がと言いながら、わからないところでじゃぶじゃぶと資金提供をするというやり方は本当の責任の果たし方ではない、このように思います。必要な、本当にもっと原発にかかわって、いろいろな人たちが利益を共同して分け合ってきた、その方たちにきちんと責任を果たせということを、ただ協力してくださいとお願いするのではなくて、法案にきちんと盛り込んで、政府がそれを示していく、求めていくべきだと思います。もちろん、指針では網羅できないあらゆる被害対策に責任を持つということでは、政府が被災者対策に対してやっていかなければならないことは言うまでもありません。

 そこで、最後に、原子力行政そのものの転換が、これはもう一つ、国の責任の果たし方ではないのかなと思うんです。

 パネルの四枚目、これは法案の目的の第一条でありますが、「原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を図り、」と書いてあります。わざわざ「原子炉の運転」ということが書き込まれているのはなぜでしょうか。

 法案では、支援機構に対して、相互扶助の名目で、全国の原子力事業者が負担金を出すことになっています。ただ、その一般負担金というのは、原発の稼働状況に応じて負担の割合が決まります。つまり、多くの原発によって多くの発電を行っているところほど割合が多くなる仕組みであります。ですから、機構がきちんとお金を回収しようと思えば、原発は稼働していなくてはならなくなります。

 福島県民は、原子力によらないエネルギー行政、これをはっきりと復興ビジョンに書き込みました。佐藤知事は、福島第一、第二原発の再稼働はあり得ないと明言をしています。それなのに、原発を動かし続けることが大前提の法案になっている。このことはおかしいのではないですか。総理に伺います。

○菅内閣総理大臣 この法案のこの部分について、いろいろと御指摘をいただいております。

 この「原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を」というのは、基本的には、電力の安定供給と原発事故の収束を適切に行うことを確保する、そういう意味と理解いたしております。

 電力事業形態のあり方等は、これらを含むエネルギー政策については今後予断なく検討を行うこととしており、今回の支援の枠組みはこうした検討に影響を与えるものではない、こういうふうに認識をいたしております。

○高橋(千)委員 残念ながら時間が来たので、続きをまたやりたいと思いますが、県民がもう原発は要らないと言ったときに、この「原子炉の運転」ということが目的に書かれた法案、これはどうなのか。原発を動かし続けなければお金が回収できないような仕組み、回収できないんだったら国民に負担させるような仕組み、これではやはり受け入れられないということを指摘して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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