○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
今回は、被災者生活再建支援金の確実な支払いのために必要な措置であるため、賛成としたいと思っております。
首都直下や東南海など大規模な災害があったときに、被災者生活再建支援法ではもたないだろうというのはこれまでも議論をされてきたことであります。震災前の被災者生活再建支援基金残高は五百三十八億円で、第一次補正のときには五百二十億円措置して、合わせて一千億円規模ということだったわけですけれども、これでは、十万人に基礎支援金百万円を支払うと基金がなくなっちゃうということを指摘してきたところであります。
また、全国知事会は、大規模災害時には特別法で対応すべきだ、また全額国庫負担でと求めていたと思います。五月二十六日の知事会の要望では、この国負担を九五%ということで求めておりました。その考え方は、やはり、災害の規模が非常に大きくなって十倍くらいの支払いが必要であろう、それでも、地方に対する負担はこれまでと同じ水準にしてほしいと。ということは、その分、国が大きく負担をしてもらう以外にないという考え方だと思いますし、私もそれが当然だと思っているところです。
さてそこで、今回、結局八〇%に落ちついたのはなぜなのか。特別法ということが議論されていたわけですし、また、発災当初には支援法の改正などということも言われていたわけですけれども、結局、財特法で処理するということになったのはなぜでしょうか。
○原田政府参考人 お答え申し上げます。
まず、今回の法改正を東日本財特法の改正という形、そういう法形式でやった理由でございますが、御案内のように、この財特法は、東日本大震災を対象に、平時より高い補助率を定めるなどの特別の助成措置を定めることを趣旨としております。今回の支援金に係る補助金の引き上げの特例もまさにこの趣旨に合致するものであるということから、今回、この東日本大震災財特法の一部改正によって措置をするということにしたものでございます。
それから次、二点目でございますけれども、八割とした理由でございます。先生御指摘のように、知事会からは、通常二分の一の負担を九五%というふうにしてほしいという要望はいただいております。これにつきまして、まずは今回の住宅被害の大きさ、あるいはそれを背景とした知事会等々の要望を踏まえると、特例措置の必要はあるというふうに我々も思っております。
ただ一方で、この制度は、全都道府県の相互扶助という趣旨の上に成り立っているものでございますので、そういった本来の制度の趣旨というのも大切にしなくてはならないというふうに我々は思っておりまして、この二つの兼ね合いの中で、この東日本大震災財特法の他の例もしんしゃくをして八割というふうに決めたということでございます。この点については、知事会とも何度も議論いたしましたけれども、現時点では知事会の方も納得をしていただいているというふうに我々は認識をしております。
○高橋(千)委員 一応知事会も了承したと聞いているので、我々、八〇%じゃ少ないじゃないかということで反対はしないという趣旨でございます。
ただ、今説明の中で、ちょっと確認したいと思うんですが、相互扶助の精神であるからということだったと思うんですね。そうすると、今の震災で特定の地域の支援にだけ非常に多く国が負担するのは、やはり相互扶助、要するに四十七都道府県あるというバランスからいってもどうかなという趣旨でおっしゃっているんですか。
○原田政府参考人 お答え申し上げます。
今回の被害の大きさからしますと、現行の二分の一では必ずしも十分な資金確保はできないということで、我々も、負担率を高めてほしいという知事会の御要望については理解をしているところでございます。
一方で、被害の大きさということはあるにしても、もともとは相互扶助ということで成り立っている仕組みでございますので、こういう災害にあっても助け合いという精神をぜひ各都道府県においても発揮していただきたいということを我々の方からもお願いをし、それについて知事会の方も一定程度御理解をいただいたというふうに我々は認識をしております。
○高橋(千)委員 もともと、全都道府県の基金造成、もちろん人口割りとか一定の拠出額の違いはあるんですけれども、そういうプール制の仕組みでありますので、災害が集中するところとそうでないところというのは当然あるわけですよね。だけれども、今、私がちょっと言いたいのは、逆に、相互扶助ということに本当にふさわしいものになっているのかということをちゃんと考えなければならないと思うんですね。
その問いに行く前にもう一つ質問しますけれども、先ほどちょっと大臣も説明をしていましたように、五百三十八億円、空になったものをもう一度積むんだ、それが都道府県では九月議会で当然予算措置がされるということになっていると思うんですけれども、まずその見通しについてと、今でも台風がもう既に起こっておりますけれども、他の災害、これからの災害に備えて、基金残高というのは最低どのくらい、最低と言っていいのか余裕を持ってというのか、どのくらい残しておくというのが基本だと考えていらっしゃるのか、伺います。
○原田政府参考人 お答えを申し上げます。
今回、東日本大震災の関係で追加拠出をしていただきますけれども、加えて、基金の積み戻しもしていただくということで、これにつきましては、七月十二日の全国知事会の場で、震災前の残額まで二十三年度中に積み戻すということが決定されております。
さらに、その場で、全国知事会長より各都道府県知事に対して、積み戻し分への拠出については、基本的には九月議会で対応するよう要請がされたというふうに聞いておりますので、各都道府県それぞれ事情はあろうかと思いますけれども、今後、各都道府県において適切に対応されるというふうに理解をしております。
それから、基金の水準、どういうものがということでございますけれども、今回、今申し上げましたように、追加負担分に加えて、とりあえず震災前の残高でございます五百三十八億円まで積み戻していただけるということで、現時点では、こういった措置というものは適切なものだというふうに我々も理解をしております。ちなみに、この五百三十八億円という水準でございますけれども、約二万四千世帯に支援金を支払い可能な額でございます。
一方で、この制度は、創設以来十二年を経過しておりますけれども、今回の大震災を除いて、今まで十二年間で約一万八千世帯に支援金が支払われているということでございますので、備えとしては、五百三十八億円もそれなりの水準ではないかなというふうに思っております。
ただ一方で、より一層の制度の安定性を確保するという観点から、あり得べき基金の水準につきましてはさまざまな意見があることも事実でございますので、引き続き、知事会等ともしっかりと議論をしていきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 そこで、平野大臣に伺いたいと思います。
今お話があったように、この制度をつくってから十二年間、支払いがされたところは一万八千世帯なわけです。これ自体が非常に少ないじゃないかと。相互扶助という精神に基づいて、プール制で全都道府県が積んできたわけですけれども、実際には、本当に被災をしていながら支援を受けられていなかった方がたくさんいらっしゃるし、また、それなりの災害でありながらも対象にならなかった自治体などもたくさんあるわけなんですね。それをそろそろ考えたらいかがですかということが言いたいわけです。
例えば、九八年、支援法が成立してから最も支給が多かったのは新潟県中越地震ですけれども、これは五千二百七件であります。中越地震の半壊や一部損壊を含めた損壊家屋のわずか二・五%にすぎません。また、〇七年に法改正をやっておりますが、それ以後対象となった中越沖地震は三千三十三件ですが、それでも七・三%にしかすぎません。
これは、先ほど来いろいろな問題が出されているように、対象にならないところがたくさんあるわけです。大規模半壊以上しか対象にならないという枠の壁、あるいは危険宅地と赤紙が張られていても建物は一部損壊としかならない、こういう形で認定の壁などなど、これまでもいろいろ議論をされてきたわけであります。
そこで、今後はやはり、被災したけれども何の支援も受けられなかったという被災者がなくなるように、被災者生活再建支援法という名にふさわしい法改正を目指すべきだと思いますが、大臣の問題意識を伺いたいと思います。
○平野国務大臣 もっと被災者生活支援金を受けられるようにすべきだ、見方を変えれば、今の支給基準を少し見直して、できるだけ広い範囲で生活支援金を支給すべきだ、そういう御意見かと思います。
そういう考え方、私も気持ちの上では大いに賛成するところもございますけれども、何といっても、これまで支給してきた地域との公平感、不公平感の問題、それから、全体としてこの制度、やはり大きく壊れたところ、あるいは半壊したところというようなところで、そこにまず手厚くやりたい、そんな考え方もあるかと思います。
そういったことも踏まえまして、さまざまな御意見ございますけれども、これから検討されるべき課題ではないかというふうに思います。
○高橋(千)委員 先ほど来の答弁ではいろいろなことをおっしゃっておりましたけれども、今の答弁は、残念ながら従来と同じだなという感じが非常にいたしました。
支給してきた地域との不公平感という言葉をおっしゃいましたけれども、この言葉を言ってはだめなんですね。何でかというと、阪神・淡路大震災のときは、これから起こる災害との不公平感とかそういうことをおっしゃったんですよ。ですから、常にそういう言葉は言われるわけで、そのことを言ってしまえば制度は一歩も前進することができないんだということで、今起こっている事態から見てやはり前進を図っていくというのは当然だと思うんです。
今回の未曾有の災害に当たって、政府は今までにない措置もいろいろやってきたというのはわかっています。でも、歓迎している声も聞く一方で、やはり肝心の、一人一人の暮らしの再建、住まいの再建、個人補償、この点ではやはり前進ができていないということを指摘しなければなりません。
被災者再建支援法の改正から四年目で、ことしは見直しをしなければならない年ですので、思い切った改善を求めたい。これは指摘にとどめます。
最後に、もう一つ質問したいことがあります。
財特法そのものについてですけれども、激甚災害の補助率をかさ上げ、横出ししても、現実自己負担もあるんだということはこの間指摘をしてきたところです。同時に、支払いが遅過ぎるという問題です。
先日、気仙沼の漁協へ行ってきたんですけれども、昨年の三月にもチリ地震がありました、津波がありました。激甚災害として補助決定されたんですけれども、一年間一人の職員がかかり切りで書類を何度も出して、領収書、何とかかんとかと何回も出してやりとりして、やっと実際にお金をもらったのは、ことしの津波があった後の三月二十八日だそうです。
私、それで、ほかにもそうかということで塩竈にも聞きました。塩竈も私、直接漁船に乗って調査したところですので。そうしたら、やはり査定が十一月で支払いは三月三十日だそうです。三月三十日、ことしです。それだと余りにも遅過ぎるんです。
大臣は農水省のキャリアだったので仕組みはよく御存じだと思いますが、これではどうにもならないと思うんですね。今、大規模な災害が起こっています。同じペースでやっていたらもっとおくれますよね。これではちょっと困ります。特別な態勢もとって、発想を大胆に変えて、この何枚も領収書をやりとりするというやり方も見直して、一刻も早く支払いが決まる、そしてお金が出ていく、そういうふうにしてほしいと思いますが、いかがですか。
○平野国務大臣 まず、激甚につきましては、三月十二日に閣議決定をしております。
その後、今委員御指摘のように、大事なことは、災害査定、いかに早くスピーディーにやっていくかということでございますけれども、例えば国土交通省につきましては、設計図書の簡素化、机上査定の適用限度額の拡大、つまり現地を見なくても書類だけで審査してしまう、あるいは総合単価の使用拡大などにより災害査定事務の大幅な簡素化を図ってきているというところでございます。
ただし、一番問題なのは、何といってもやはりマンパワーでありまして、国交省ではTEC―FORCEという一種の技術者集団がいるわけですけれども、その人たちに国が委託費というのを払って、各市町村に行ってみずから現地を歩いて災害現場の図面をつくる、あるいは査定の図面をつくる、こういった支援もやっております。
現在、災害査定の方は、内陸部の方からスタートしまして、内陸部の災害査定というのはほぼ完了しております。問題は、被害の額の一番多い津波、沿岸地域でございますけれども、これは間もなく始めまして、大車輪でこれをやるべく、今、各事業官庁、その準備を進めているというところでございます。
○高橋(千)委員 今一生懸命お話をされましたけれども、目に見えるような違いが出てくるように、本当に現地は間に合わないという声が上がっていますので、よろしくお願いしたいと思います。
終わります。