○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
日曜日の福島市は、早朝から一斉清掃活動をやっておりました。雑草を刈り取り、側溝の泥を上げて水で流しております。確実に放射線量が下がると言われております。ただ、普通の住宅街の至るところに泥や雑草を入れたビニール袋がたまっておりまして、その行く先がまだ決まっていない。これでは、本当に気の休まることはないだろうと思いました。
また、市内でも一番線量が高いと言われている団地、あえて地域名は言いませんけれども、真ん中の小さな公園に、放射線量が高いので立入禁止という、ロープで囲みがありまして、つり下げ看板がございました。自分たちもホットスポットとなって避難を勧告されるのだろうか、あるいは避難しなくてよいのだろうかと、いつもいつも放射線のことを考えている状況なわけですね。本当に息苦しく思いました。
政府は、第二次補正予算の中で特別緊急除染事業百八十億円を盛り込み、そのうちガイドラインの作成事業を盛り込みました。子供たちがよく利用する校庭などの表土の除去、通学路や側溝などの除染に二分の一補助をするといいます。そして、午前中の枝野官房長官の答弁にも少し紹介されておりましたけれども、一定の基準値を超えるものについてはさらに補助率を高めるということであります。
そこで、資料を配られているでしょうか、厚労省の二次補正の中身なんですけれども、「児童福祉施設等の園庭の放射線量低減策について」ということで、保育所等の児童が受ける線量を減らしていくために、土壌に関する線量低減策が効果的となる空間線量率が毎時一マイクロシーベルト以上の保育所等を対象に、設置者の希望に応じて、土壌の入れかえ費用を災害復旧費の枠組みで財政支援を行うというものであります。
まず、ここですけれども、厚労大臣に伺いますけれども、毎時一マイクロシーベルト以上のみを補助の対象とし、そして三・八マイクロシーベルト以上ということで補助率が違うのはなぜか。
それからもう一つ、あわせて言いますけれども、上と下の関係を見ていただくとわかるんですけれども、対象施設、保育所などは三・八マイクロシーベルト以上を超えますと激甚法の補助率になります。そうすると、これは最大で十分の九まで補助されることになるわけですよね。ところが、その下の子育て支援のための拠点施設云々は三分の二であります。これは認定こども園、政府が鳴り物入りで進めてきたし、これからは仮称こども園などというものも出てくると思うんですが、これが三分の二であります。さらに下に行きますと、児童館は二分の一なんですね。
同じ子供の施設なのに、何で差をつけるんでしょう。そんな必要はないと思いますが、いかがですか。
○細川国務大臣 まず、毎時一・〇マイクロシーベルト以上の場合、こういうことで対象にしたわけでありますけれども、それはなぜかと申し上げますと、四月五日から七日にかけまして福島県が実施しました調査結果におきまして、毎時三・七マイクロシーベルト以上の値が測定された学校のうち、当該調査後に二センチメートルから五センチメートルの土壌を剥離した学校については、五月十八日に文科省が実施した調査結果におきまして、土壌の剥離前の空間線量率の値にかかわらず、毎時〇・六から一・一マイクロシーベルトの一定の範囲に減少をいたしました。また、空間線量率は剥離直後に減少いたしまして、その後大きく下回る傾向は見られない。さらにまた、剥離の結果、毎時一・〇マイクロシーベルト弱となった校庭等における調査では、地面から剥離による違いが見られないということから、剥離後の空間線量のほとんどが地表以外である放射性物質によるものと考えられております。
したがって、毎時一・〇マイクロシーベルト以上の線量が測定されている学校におきまして、土壌の剥離による放射線量の低減効果が確実であるというふうに考えられたので、そのような結果にしたというところであります。
そのほか、先ほど、いろいろな施設によって補助率が違う、こういう御指摘でございます。
特に、認定こども園、認可外保育所施設が、対象にはなったんだけれども、激甚の対象にはなっていなくて補助率が低い、こういうことになるわけでありますけれども、それについては、これまで全然対象外だったのを今回対象にいたしました。しかし、補助率が違う、こういうことでありますから、委員も御指摘のところもありますので、私も、これについてはさらに検討を少し重ねなければいけないというふうに思って、検討をさせていただきたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 まず、前段の説明はほとんど理解できなかったかなと思うんですね。
実は、厚労省に、これはどうしてかしらと聞いたときに、文科省の基準に沿っているんですということでありました。子供のことなら文科省だそうであります。私は逆に、小さな子供の命を守る厚労省が、何も文科省の例の年間二十ミリシーベルトというあの基準に合わせる必要は全くないであろう、まずこのことを言わなければならないと思うんです。
それと、この上と下の、認可外の保育所、認定こども園で何で違うのかという話は、お話ししたように、激甚災害法の補助の施設の中に書かれていないからだということなんですね。これは大人の都合でありますよね。
要するに、設置基準に基づく認可、これが補助金をどこまで出せるかという仕分けでありまして、非常時であり、子供の健康にかかわるその表土が云々という問題に、認可も認可外も関係ないだろう、差をつけるべきではないと思います。
いかがですか、もう一度。
○細川国務大臣 委員が御指摘の点につきましては、これは私も少し検討をしたらいいというふうに思っておりますので、今後前向きに検討して御回答をしていきたい、このように考えております。
○高橋(千)委員 検討とおっしゃいましたが、少しではなく、確実にやっていただきたいと思います。
そこで、官房長官に重ねて質問をいたしますけれども、子供に差をつけないこと、このことをまず確認させていただきたいと思います。
それで、私は、やはりこれは十分の十が一番いいと思うんですよ。何でこれは段階があるのかな、おかしいですね。これは、福島県には、先ほど来議論しています仮払い法案でセットをする基金があるので、場合によっては不足分を捻出することができます。ただし、これは他県にはないわけです。そうすると、ここでまた差がつくことになる。これはやはりまずいですね。これは、結果として子供に差がつくことになってしまいますので、これを吸収する何らかの仕組みを考えなくてはいけません。いかがですか。
○枝野国務大臣 原子力被災者・子ども健康基金の使い方については、補助率を含めて、具体的な事業内容については、基金の目的の範囲内で、県内各地域等のニーズを踏まえて、今後福島県と関係省庁、御相談の上で定めていくことになります。
御指摘のとおり、県外の方との違いが出てくるということについては、最終的にはそういったことは適切でないというふうに思っておりますが、まずは影響の直接大きい福島県について対応させていただいておりまして、県外の地域についても、今後さらにモニタリングの範囲あるいは制度等を広範に広げた中で、各県ごとの事情を踏まえた上で、特にお子さんを初めとする健康への対応という点で遺漏なきよう今後努力をしてまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 遺漏なきようということでしたので、しっかりとお願いをしたいと思います。
では、具体的な中身で伺いたいと思います。
仮払い法案の十四条、この基金については修正がなかったかと思います。そこで、条文ではこのように書かれています。「原子力被害応急対策基金を設ける場合には、国は、予算の範囲内において、その財源に充てるために必要な資金の全部又は一部を当該地方公共団体に対して補助することができる。」とあるが、なぜ全部または一部なのか。先ほど来、十分の十という言葉が聞こえてきますけれども、なぜこの一部という言葉があるのか、伺います。
○浜田(昌)参議院議員 高橋委員にお答えしたいと思っております。
発議者の意思としては、全部と考えております。ただし、この基金に対しまして、例えば福島県が独自の財源でこの基金に、ふるさと納税とかのお金を使って入れるということもございますので、形上、一部になることもあるかもしれませんが、発議者の意思としては、全部を出すという趣旨からこういう表現になったわけでございます。
○高橋(千)委員 では、申しわけないんですが、大臣にこの点で伺ってよろしいでしょうか。
実は、説明を受けたときに同じことを聞きました。ふるさと納税、確かに今回の災害を機会に非常にふえております。いいことだと思うんですね。ただ、それを野党が提出してきたときにはそういう発想であったかもしれないんだけれども、与党がそれを受け入れて法案にしたときに、本当にそういう意図でよろしいのかと。
要するに、財政理論、つまり、なるべく十分の十はしないという財務当局の理屈にこれが使われては困るということですので、発議者の意思と同じであるということを明言していただければよろしいのですが、いかがですか。
○海江田国務大臣 せっかくつくった基金でありますから、やはりそれが本当に十全に活用できるように、それは今発議者がお話があった、その発議者の意思をしっかり体したいと思っております。
○高橋(千)委員 ありがとうございました。確認ができましたので。ふるさと納税のような場合を除いては、負担を求めるのではないのだということを確認させていただきたいなと思います。
それから次に、参議院の提出者が繰り返し述べていた自主避難の問題。これらについては、指針から漏れた部分について基金で対応するべきだということを主張されていたわけですけれども、この問題については、私、五月三十一日の本委員会で質問をしまして、官房長官が検討すると答えていたと思います。現時点では中間指針にはまだ入る見通しがないのでありますけれども、提出者の問題意識もはっきりしている。それも与党も受け入れたわけです。やはり、こういう問題は指針できちんと書いていくべきではないかと思うんですね。
それから、避難生活が半年過ぎれば精神的苦痛が半減というのは絶対おかしい、これは七月十二日にこの場で指摘をさせていただきました。これは、福島県の二十一日に政府に提出した緊急要望の中でも、早急に見直せということが明記をされているわけなんです。これはもう中間指針のところで解決すべきだと思うんですね。ですから、何でも基金でできるということではなくて、やれることはちゃんと指針に盛り込んで政府として対応すべきだと思うんです。
この点、いかがでしょうか。
○枝野国務大臣 まず、前提として、自主避難の方についても、今回の事故との相当因果関係が認められるものは、原子力損害賠償法に基づき賠償がなされるということでございます。
原子力損害賠償紛争審査会でございますが、被害者を可能な限り早期に救済するため、相当因果関係が明らかなものから順次、範囲の判定の指針を策定してきているところでございます。御指摘のとおり、できるだけ早く、前倒しをしてこの指針をつくっていただきたいと政府としても考えているところでございますが、これは独立性を持った審査会でございますので、政府の判断でえいやと決められるものではございません。ただ、審査会の皆様方も、できるだけ早くという思いは持っていただいているというふうに承知をいたしております。
なお、仮に、地方自治体が仮払い法案に規定される基金によって自主避難者に対して避難費用等を支払った場合が生じた場合でも、事故との相当因果関係が認められる場合については、自治体から東京電力に求償できるというふうに思っております。
また、避難から半年で精神的損害が小さくなるということについては、これは交通事故による入院等の例を前提に御判断されたというふうに承っておりますが、これもまた、専門家の皆さんの独立性を持った機関でございますので、直接的に政府としてこうする、ああするとは申し上げられませんが、県からの御要望やあるいはそうした御指摘も踏まえて、交通事故の入院の場合と、御自宅に帰りたくても帰れない状況の長期化という場合との違いということが、損害賠償理論の中で評価できるのかどうかについてはぜひ検討をいただきたいというふうに思っておりまして、所管の文部科学大臣とも御相談をしたいと思っております。
○高橋(千)委員 できるだけ早くとおっしゃいましたが、早いがために、みんな保留になって先送りになったということでもいけないわけであります。今の議論をしっかりと踏まえて、やはり私は、できるものはちゃんと基準になっていくべきだと思うんですね。そうでなければ、難しい、よって基金に入れましょうとなったら、福島県が国や東電に対してこうであるべきだということを要求する立場だったのに、自分が要求される立場になっちゃうわけですよね。何でこれは入らない、何でこれは入らないと矢面に立って逆に県が責められる、そういうことはやはり避けるべきだ。これまで主張してきたことは積極的に取り入れていくべきだということを重ねて指摘したいと思います。
さて、少し時間がなくなってきましたので飛ばしまして、民主党の提出者に伺います。
六十五条が既にあるのにもかかわらず、その上、五十一条「資金の交付」を書くのはなぜでしょうか。国の真水投入に大変前のめりのような気がしますが、いかがでしょうか。
○柿沼委員 この真水規定、六十五条、今のこの修正案の後では六十八条になりますけれども、この五十一条と六十八条の違いは、五十一条というのは、その条文に書いてありますとおり、交付国債を用いて損害賠償に充ててもそれでも足りないとき、そのときに真水が注入できる、これを新たに修正案で入れたものでございます。
六十八条は、旧六十五条、高橋先生もお読みになって、長い日本語で、非常に難解な日本語でありますが、原賠法の三条ただし書きのような非常に難しい文章になっていますが、恐らく、これは政府原案でありますけれども、数十兆、百兆、隕石のときは当然でしょうけれども、原子力発電所が複数同時に損害に遭うとか、そういうときに真水の注入を予定していたものでございます。
その意味で、六十五条があるのに五十一条というのはちょっと当たらなくて、全く違う局面で適用されるものであるというふうに思います。
○高橋(千)委員 あるのにとか、そういう違いを聞いたわけではなくて、資金、真水の投入が、そうであれば、逆に最初から原案にきちんと整理をされているはずであったわけですから、あえてそれを修正して真水がこうなってきたのはなぜかということを聞いたわけであります。
やはりここは、六月十四日の閣議決定の、「援助には上限を設けず、必要があれば何度でも援助し、損害賠償、設備投資等のために必要とする金額のすべてを援助できるようにし、原子力事業者を債務超過にさせない。」この閣議決定がやはり修正案の中でも生きているということなんですね。もう一度。
○黄川田委員長 修正案提出者柿沼正明君。高橋委員の持ち時間が過ぎておりますので、簡潔明瞭にお願いいたします。
○柿沼委員 お答えいたします。
閣議決定の精神が生きているかといえば、閣議決定の精神を受けてこの法律に変わっていますので、精神は受けているということであろうと思います。
その上で、五十一条の真水がありませんと、交付国債の資金交付が終わった後にだれも補償されない、被害者の救済ができないということになってしまいますので、その意味で、ちょっと原案の方で少し不明確になっていたものを明確にしたということでございます。
○高橋(千)委員 また午前の指摘に戻るということで、残念ながら時間になりましたので、討論の中で意見を述べたいと思います。
終わります。
【原子力損害賠償支援機構法案・修正案、仮払い法案に対する反対討論】
○高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表し、原子力損害賠償支援機構法案及び仮払い法案について、原案並びに修正案に反対の討論を行います。
まず何よりも、東京電力は原発被害者への迅速で全面的な賠償を行うべきです。そのためには、莫大な内部留保を初め全資産を吐き出させるとともに、株主、金融債権者などステークホルダーに責任と負担を求めるべきであります。
しかし、法案は、東電を債務超過させずに存続させることを大前提としており、政府と機構が何度でも資金援助し、大株主やメガバンクの負担と責任を一切問わない異様な東電救済策にほかなりません。
その一方で、賠償原資は国民負担で賄うものとなっています。東電初め各電力会社が機構に拠出する負担金は事業コストとされ、電気料金の値上げに直結します。修正によって、六十五条に加え五十一条を新設し、二重に、かつ、より容易に税金投入ができる仕組みを盛り込んでいることは重大であります。
さらに問題は、機構法と仮払い法が一体化することです。修正で、機構は賠償の本払いと仮払いの事務を実施できることになっており、仮払い法案は実質必要なくなります。これによって、賠償資金から支払い実務まで、東電の負担が軽減されることになります。資金援助の前提となる特別事業計画も仮払いには必要ないため、文字どおり、東電は何もせず、すべて国が面倒を見るということになりかねません。
もう一つの重大な問題は、法案が原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を目的とし、将来にわたる原発事業の継続を前提としていることです。修正案は、国の責務を規定し、原子力政策を推進してきた国の責任に言及しましたが、そのために東電の負担と責任を軽減するというのは、本末転倒と言わなければなりません。
国の責任は、安全神話を振りまいて原発を推進し、今回の事故を防ぎ得なかったことの反省に立って、東電に全面賠償を行わせ、原発政策を根本から転換することであります。
そのため、実質破綻している東電を救済し続けるのではなく、東電の全資産を可能な限り賠償に充てる、東電や電力業界が積み立てる使用済み核燃料再処理積立金等約十九兆円の活用、事故処理でもうけを拡大させるプラントメーカー、メガバンクに責任と負担を求めるなど、国の介入によって全面賠償と電力の安定供給を両立させるべきであります。
福島県民の願いにこたえ、原発ゼロに向け期限を切った取り組みを進めることであります。
なお、仮払い法案及び修正案では、現状の改善につながりません。基金で救えるものは積極的に指針に盛り込み、東電に求償できるようにするべきであります。
以上、討論を終わります。