国会質問

質問日:2011年 7月 28日 第177国会 本会議

原子力損害賠償支援機構法案反対に対する討論

○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表し、原子力損害賠償支援機構法案及び仮払い法案に反対の討論を行います。(拍手)

 福島県原子力損害対策協議会は、二十一日、すべての県民が放射線の見えない恐怖に長期間さらされている、これまで築き上げてきた地域社会や地域経済の崩壊も危惧される危機的な状況にあるとして、東京電力と国に対して、あらゆる損害への迅速かつ十分な賠償を求めています。

 また、放射性セシウムに汚染された稲わらが全国各地で見つかっています。東電福島第一原発事故の収束は今なお見えないばかりか、損害と影響の広がりは、はかり知れません。

 まず何よりも、東京電力は、原発被害者への迅速で全面的な賠償を行うべきです。そのためには、莫大な内部留保を初め全資産を放出し、株主、金融債権者などステークホルダーに責任と負担を求めるべきです。

 ところが、機構法案は、東電を債務超過させずに存続させることを大前提とし、政府と機構が必要があれば何度でも援助するという、閣議決定を具現化したものであり、大株主やメガバンクの負担と責任を一切問わない、異様な東電救済策にほかなりません。

 その一方で、賠償原資は国民負担で賄うものとなっています。東電初め各電力会社が機構に拠出する負担金は事業コストとされ、電気料金の値上げに直結します。また、修正によって、旧六十五条に加え、五十一条を新設することで、二兆円の交付国債が不足した際に税金投入ができる仕組みを盛り込みました。これにより、事実上、際限のない税金投入の仕組みがつくられたことは重大です。福島県の地元紙が指摘したように、原発事故の賠償対象者が賠償金の一部を自分で支払う矛盾が生じかねない、こう言わなければなりません。

 第二に、支援機構法と仮払い法の一体化です。

 修正により、機構が、賠償の本払いと仮払いをできるようになります。これによって、賠償資金から支払い実務まで、東電の負担が軽減されることになります。資金援助の前提となる特別事業計画も仮払いには必要ないため、文字どおり、東電は何もせず、すべて国が面倒を見るということになりかねません。

 第三に、重大な問題は、法案が原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を目的とし、将来にわたる原発事業の継続を前提としていることです。

 修正により、国の責務を規定し、原子力政策を推進してきた国の責任に言及しましたが、そのため東電の負担と責任を軽減するというのは、本末転倒と言わなければなりません。

 国の責任は、安全神話を振りまいて原発を推進し、今回の事故を防ぎ得なかったことの反省に立って、東電に全面賠償を行わせ、原発政策を根本から転換することであります。福島県復興ビジョンが原子力への依存から脱却を明確に打ち出したように、県民の願いにこたえ、原発ゼロに向け、期限を切った取り組みを進めることであります。

 最後に、電力の安定供給というライフラインを人質に、実質破綻している東電を無理やり救済し続ける必要はありません。

 東電の全資産を可能な限り賠償に充てさせ、株主やメガバンクに責任と負担を求め、プラントメーカーなど、いわゆる原発利益共同体に社会的責任を果たさせ切ることです。東電や電力業界が積み立てる使用済み核燃料再処理等積立金約二兆五千億円を取り崩し、原発推進のための核燃料バックエンド費用として今後も電気代から積み立てられる十六兆円などを活用すること、こうして、国の介入によって全面賠償と電力の安定供給は両立できる、このことを指摘して、討論を終わります。(拍手)

 

 

 


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