――― 議事録 ――――
○高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、平成二十三年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法案に反対の討論を行います。(拍手)
最初に指摘しなければならないのは、子ども手当が政争の具として扱われたということです。
本法案は、公債特例法の成立を人質に、子ども手当という民主党マニフェストの中心的政策を頓挫させ、政権に打撃を与えようとする自民、公明両党に対し、民主党が妥協に妥協を重ねた結果の三党合意に基づいたものであります。
我が国においては、子供の貧困が深刻化し、先進国でもおくれた分野である子育て支援を拡充することに国民は期待してきました。それを、ばらまきと称して骨抜きにしてしまったのです。削減すべきは、大企業、大資産家への二兆円もの減税や政党助成金などの無駄遣いであります。子ども手当を、四Kと称して、高速道路などと同列に論じるべきではありません。
そもそも、昨年の子ども手当法が一年限りの法案でスタートしたために、子ども手当と総合的対策をどう設計していくのかを明確にしないまま、その後、半年間のつなぎ法が辛くも成立と、綱渡りをしながら問題を先送りにし、ついには子ども手当という国民との約束を投げ捨てた政権与党民主党の責任は極めて大きいと言えます。また、子育て支援という重要な課題を政局に絡めて標的にした自民、公明の姿勢も問題であり、この三党合意による本法案は、断じて認めることはできません。
次に問題なのは、本法案によって、大多数の世帯の手当支給額が削減され、増税とあわせて実質手取り額が減る世帯も多いことです。
二千円の増額である三歳未満の子供が三百万人であるのに対し、三千円削減となる子供は一千四百二十万人にも上ります。しかも、児童手当と比べても負担増になる世帯があります。既に子ども手当の支給に合わせて年少扶養控除が本年一月から廃止され、三歳未満で逆転現象が起きることは、前回のつなぎ法案の時点でわかっていました。住民税についても、来年六月から廃止されるもとで逆転現象は拡大するのであり、児童手当のときより手当の額が増額されているからという口実は全く通用しません。
来年度以降については、年収五百万円の世帯でも、手当の額よりも増税分が上回る世帯が生じます。三党合意によれば、住民税の扶養控除が廃止される来年六月以降、年収九百六十万円以上の世帯に所得制限が設けられ、所得制限世帯には何らかの税制上の措置や九千円を支給する案などが検討されていますが、逆に、所得制限以下でも実質増税になる世帯に対する検討規定は設けられていません。これでは格差がますます広がることになります。
第三に、我が党は、子育て支援について、現物給付と現金給付のバランスをとりながら総合的に進めるべきだと主張してきました。既に、現行の子ども手当創設に伴い、地方単独の子育て支援事業を廃止縮小した自治体も出ています。
本法案は、総合的な子育て支援の拡充の議論を行わないまま現金給付の削減だけを行うもので、明らかに子育て支援政策を後退させるものです。その上、保育の市場化をねらう子ども・子育て新システムは認められません。
第四に、保育料の直接徴収の規定は、もともと、大部分が手当の額より保育料が上回っている現実があること、保育料を払えない世帯などの事情を行政が配慮するという機会を失わせ、手当の意味もなくすものであり、反対です。
本法案は、改めて受給者が申請しなければならず、地方自治体にも事務の負担を課すもので、多くの混乱も予想されます。被災地、被災者においてはなおさらです。このような負担を受給者や自治体に負わせるべきではありません。
最後に、東日本大震災で両親を失った子供は二百人を超えています。学用品をすべて失った子供、福島では震災と原発事故の影響で転校を余儀なくされる小中学生が一万四千人にも及んでいます。
そもそも、リストラや被災による廃業、雇用保険も九月で切れる人が大量に発生することが予想される中で、たとえ一万三千円の手当でも、現金支給が本当に助かっているという声も聞かれます。また、被災地ではない子供に対して、何ら環境が好転してもいないのに、震災だから我慢せよというのは許せません。
日本共産党は、日本の将来に直接かかわる子供と子育て世代への支援をどうするかの議論よりも党利党略を優先させるやり方は絶対に認められないことを表明し、子供の貧困の解消など、安心して子供たちが成長できる施策の充実のために全力を挙げる決意を申し上げて、本法案の反対討論といたします。(拍手)