――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
まず最初に、先ほども少し議論があったと思いますけれども、七月一日の閣議報告、社会保障・税一体改革成案では、高額療養費の見直しによる負担軽減の財源として、受診時定額負担を導入するとしております。初診、再診時に百円ずつということが検討されているようでありますけれども、まず、その具体的な考え方について御説明をお願いします。
○外口政府参考人 医療保険では、家計に対する患者負担が過大なものとならないよう、高額療養費制度で患者負担に上限を設けております。この高額療養費については、近年、がんなど高額で長期にわたって医療費の負担が重い患者が生じているため、見直しが求められております。
高額療養費の見直しは、昨年も医療保険部会で議論いただきましたが、厳しい医療保険財政の中で、保険料財源を負担する保険者の方々の理解が得られず、見送ったところであります。
今回の受診時定額負担は、こうした経緯を踏まえ、長期に高額な医療費がかかっている患者の負担を軽減するための財源について、政府・与党社会保障改革検討本部等の議論を経て、一体改革の成案に盛り込まれたものであります。
○高橋(千)委員 具体的な考え方ということで、制度設計のこともちょっと聞いたつもりだったんですが、次の質問の中で答えていただければと思います。
今説明があった高額療養費の制度そのものは、当然必要だと思っております。また、医療制度改革の中で上限が少しずつ上がってきまして、せっかくの高過ぎる医療費の負担を軽減する制度といいながら十分高いという点では、当然これは、軽減はやるべきだという立場でございます。ただ、問題は、その財源を定額負担という形で外来の患者さんに求めるということは絶対に反対でございます。
社会保障審議会医療保険部会に厚労省が示した高額療養費の負担軽減に必要な財源は、二〇一五年の医療給付費ベースで約三千六百億円とされております。受診時定額負担は約四千百億円という試算がございますが、そうすると、差し引き、ちょっとおつりが来る。これが、いわゆるペイ・アズ・ユー・ゴー原則というか、中で解決するという話なんだろう。これ自体を問題だと私たちは言っているわけです。
では、その翌年度以降はどうなるでしょうか。翌年度以降は、高額療養費の伸びの方が上回って合わなくなるということが言われています。つまり、足りなくなれば、百円と思ったものが二百円になったり、順次引き上げをせざるを得なくなるのではありませんか。
○外口政府参考人 受診時定額負担でございますけれども、まず、その仕組みは、外来受診時に百円の別途負担をいただくものでございます。
これは、今回の高額療養費の見直しの規模に応じて設定するものでございまして、ただいま御指摘がありました制度見直し後の高額療養費の伸びの部分につきましては、この百円をさらに引き上げるのではなく、保険者財政の中で負担する案を医療保険部会では提示しているところでございます。
また、必要な医療にかかることができなくなることのないよう、低所得者の方には定額負担の軽減を行うことをあわせて検討しております。
ただいま、三千六百億と四千百億でおつりが出るではないかという御意見がありましたけれども、この軽減分につきましては、これからそれに加わるわけでございます。
いずれにいたしましても、関係者の方々の御意見をよく聞きながら検討していきたいと考えております。
○高橋(千)委員 そうすると、まず、高額療養費が上がっていくであろうということはお認めになるのか。そして、上がるけれども、定額負担をふやすのではなくて、別のところから、どっちにしても患者負担になるのかなと思うんですが、やるという意味ですか。
○外口政府参考人 医療の高度化と高齢者の人口割合の増加によりまして、御指摘のように、この高額療養費の規模自体もだんだんふえていってまいります。
今回の百円の方は、いわゆる制度の改善部分の最初のところに入るわけでございまして、その改善された部分がそれから一定の上昇率で上がっていくことについては、従来の医療保険同様に、保険料と公費、こういった仕組みの中で負担していくということを考えております。
○高橋(千)委員 そうすると、百円が二百円にはならないかもしれないけれども、別な形で負担になるのかなということしか今の時点ではわからないと。ただ、負担がふえないとはおっしゃらなかったと思うんですね。非常にわかりにくい話です。
例えば、国民の気持ちとして、確かに、百円、その百円よりも入院費というのは非常に高額なので、そちらが少しでも軽くなるんだったらいいかなと思うかもしれません。しかし、一回は百円、小さくても、それが定期的に受診をしている高齢者の方たちや持病のある人たちは、その分、毎回毎回払うわけですから、負担が大きくなると思うんです。
そして、それこそがねらいなわけでしょう。四千百億円の財政効果というのは、初めからそれを見込んでいるはずです。長瀬効果と言われて、受診を控えることで医療費抑制をねらっているということだと思いますが、まず、ここは確認をしたいと思います。
○外口政府参考人 今回の高額療養費の見直しと受診時定額負担の目的でございますけれども、受診の抑制が目的ではございません。目的は、高額療養費の改善でございます。そのための財源として、本来は公費と保険料という普通のやり方で進めるべきでありましょうが、これがなかなかうまくいきませんので、次善の策としてこういった制度を提示しているわけでございます。
○高橋(千)委員 目的ではないと今強調されましたが、しかし、受診抑制を見込んでいるということはお認めになりますか。
○外口政府参考人 一般に、窓口の負担を上下させたときには、それに伴って長瀬効果という効果が実際に出ますので、医療費の総額が動くということは事実でございます。
○高橋(千)委員 事実ということで、認められたと思います。
結果として、これが公的医療保険の範囲を狭めることにならないかということを大臣に伺いたいと思うんです。
二〇〇六年の医療制度改革のときは、風邪などを軽い病気と規定して保険給付の対象外とする保険免責制、これが俎上に上りました。非常にこれは悪い制度だということで、さすがに盛り込まれなかったわけでございます。
ただ、そのときに、この委員会では強行採決だったわけですけれども、参議院では附帯決議がされて、先ほど紹介もあったわけですけれども、「給付の割合については、将来にわたり百分の七十を維持する」ことを初めとして、「安易に公的医療保険の範囲の縮小を行わず、現行の公的医療保険の範囲の堅持に努めること」という決議もされております。
私は、百分の七十、これはもっと上げてもいいなと思っておるわけですけれども、少なくとも、これ以上公費負担の割合を狭めるということはあり得ないということが国会の意思だったと思います。大臣の認識を伺います。
○藤田大臣政務官 今委員の方からお話がございましたように、健康保険法の改正法附則で、「将来にわたり百分の七十を維持するもの」とされておりまして、それを踏まえて国会で決議をいただいたわけでございます。
そのことはしっかりと踏まえていかなければならないわけでありますが、一方では、医療保険の給付と負担のあり方というのは、制度の持続可能性ということを維持していくためにも、さまざまな状況の変化に対して検討をしていく、考慮をしていくという必要もあろうかというふうに考えております。
このため、今回、厳しい医療保険財政の中で、本当にセーフティーネットの機能を強化していくための方策というものを議論していただいているところでございまして、御指摘の決議を尊重しながら、この給付と負担のあり方については幅広く議論をしていく必要があると考えているところでございます。
○高橋(千)委員 大臣に通告しましたので、改めて同じ質問をしたいと思います。
本当に定期的に通わなければならない持病のある方、高齢者の方に負担をさせてこの医療保険財政の中でやっていこうという考え方は、やはり、筋悪であり、やめるべきだと思います。いかがですか。
○小宮山国務大臣 厳しいさまざまな医療保険財政の中で、セーフティーネットの機能を強化するための方策をいろいろ議論いただいているところでございます。その中で、そうしたさまざまな御意見を尊重しながら、給付と負担のあり方については、しっかりと、今の委員の御懸念のないような形で検討していきたいというふうに思っております。
○高橋(千)委員 この報告は、閣議報告であり、決定ではないということが先ほどもあったわけですから、もうコンクリートされたものではないということで確認をしてよろしいですね。
○辻副大臣 閣議決定ではなく閣議報告であることは、事実でございます。
○高橋(千)委員 そういうことですから、決まったものではありませんので、引き続いて、撤回をしていただきたいということを求めていきたいと思います。
次に、七月二十一日の規制・制度改革に関する分科会第二次報告書では、「医療分野における制度改革の方向性」として、「予防医療も含めて真に国民に必要な医療を整理し、公的保険の適用範囲を再定義することが必要」とあります。
これも、結局は、公的医療保険の範囲を狭めることになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○小宮山国務大臣 御指摘の規制・制度改革に関する分科会の報告書、これは内閣府で取りまとめたものですが、御指摘の記述は、この分科会のもとに置かれましたライフイノベーションワーキンググループの議論の中で、ある委員から、予防接種も医療保険の対象とすることを検討すべきという御意見があったことを踏まえて盛り込まれたというふうに理解をしています。
したがいまして、御指摘の報告書、医療保険の範囲を狭めることを求めたものではないというふうに考えています。
○高橋(千)委員 書いたのが私ではないからという前提がありましたので、正直言って、ちょっとそれだけでは納得しかねるところがあるわけですが、狭めるものではないということは、おっしゃったことをやはり確認させていただきたいなと思うんです。
確かに、予防接種を含めてということがあったにしても、「真に国民に必要な」という文脈は、やはり、その前後を読みますと、先ほど来、外口局長の方からもお話があったように、要するに、高額な医療費、機械ですとか医薬品ですとか、そうしたものの中で医療費が伸びていくんだ、だから見直しをしなければならないという文脈の中で出てきているものであること。また、その前の年の規制・制度改革の第一次報告などでも、明らかに混合診療の解禁について求めている。
そうした経過がある中で、これは懸念をされるというのは当然のことだと思います。でも、狭めるものではないということで、確認をしたいと思います。
そこで、四月八日の方は、閣議決定されたこちらは、規制・制度改革に係る方針の方ですけれども、「国民皆保険制度を守ることを前提として、以下を行う」と書いておりまして、「医療法人と他の法人の役職員を兼務して問題ないと考えられる範囲の明確化を図る」とあります。これは、事実上の株式会社の参入を認めることにつながらないのか、伺います。
○藤田大臣政務官 御承知のように、現行、営利を目的とした経営主体による医療への参入については、医療法によって認められておりません。このため、医療法人と他の法人の役職員との兼務については、医療機関の開設、経営に影響を与えることがない場合に限り認められる旨、都道府県に対して通知をしているところでございます。
今、委員の方から御指摘がありました閣議決定については、この通知が認める医療法人と他の法人の役職員の兼務の範囲が不明確である、都道府県によって対応がまちまち、ばらつきがある、こういう御指摘もありましたので、その明確化を図ろうとするものでございまして、具体的な内容については、関係者の御意見も伺いながら検討してまいりたい、このように思っております。
したがって、この閣議決定を受けて、新たに株式会社が医療提供に参入することを認めるような見直しは考えておりません。
○高橋(千)委員 範囲を明確にするんですか。
○藤田大臣政務官 先ほども申しましたように、通知に対する対応にばらつきがあるということでございましたので、そこの明確化を図ろうということでございます。
ただ、そのことについては、関係者の皆様の御意見もしっかり伺いながら取り組んでまいりたいと思っております。
○高橋(千)委員 とにかく、新たな参入ではないということを確認させていただきたいと思います。
さて、本日も、農協などの主催で大規模なTPP反対の集会が開催をされております。
今私が規制・制度改革の分科会の報告などについて質問をしたのも、昨年菅前総理がTPP参加を打ち出して以降、この審議が大変活性化しまして、TPP加入への対応機関として作業を進めてきたのだ、そういう認識が一般的にあるからであります。つまり、受け皿づくりになるような議題が議論されているということになるのではないかと思います。
今話題のTPPは、医療の分野においても、混合診療の解禁、営利企業の参入などが求められ、公的医療保険が変えられる、皆保険が壊されるのではないかという反対の声が大きいところであり、もちろん私も反対であります。
そこで、まず伺いたいのは、厚労省として、厚労省にかかわる分野、医療から労働から食の安全、さまざまあるわけですけれども、そういう分野がTPP問題でどんな影響があるのか、独自の試算や評価を行ったことがあるのか、伺いたいと思います。
○辻副大臣 現在、TPPで交渉が行われております二十一分野につきまして、厚生労働行政に関係し得る分野としては、衛生植物検疫、貿易の技術的障害、越境サービス貿易などがあるわけでございます。
これまでの外務省を中心とした情報収集によりますと、厚生労働省が所管しております医療、医療保険、食品安全、外国人労働者等について、大きな影響が生じるような議論は行われていないと理解をしているところでございます。
厚生労働省といたしましては、国民の生命、健康、生活、雇用に大きな影響が及ぶことのないよう対処しなければならないと考えているところでございます。
なお、前提となる要件がいまだ定まっていないのが現状でございまして、試算等は行っておりません。
○高橋(千)委員 結局、厚労省として独自の取り組みを一切行っていない、このこと自体が大問題だと思うわけです。今の答弁も、外務省の情報収集によればというだけの話なわけですね。入ってから何かするというのでは遅過ぎるんだということを言わなければなりません。
そもそも、背景に、アメリカの対日要求というのは繰り返しあったはずなんですね。それは、みんながわかっていることなわけです。混合診療の解禁、営利企業の参入は、自由診療を拡大させ、民間保険に対する需要が高まるとして、ここへのアメリカ保険会社の参入をねらっていることなどがこれまでも指摘されてきましたし、二〇〇六年日米投資イニシアチブなどでも明示されているところです。
二十三日付の農業新聞によれば、米国の経済団体がアメリカの大統領に対して、TPPでは例外なき自由化を実現するよう圧力をかけていると報じました。
全米商工会議所など四十三団体が、いかなる産業分野、商品、サービスも除外しない包括的な協定を達成することを求める要請書を出したといいます。その中には、先進医療技術協会、米国研究製薬工業協会などの医療団体も入っております。この団体らは、アメリカ自身も一部の品目や産業分野を除外することは、高い野心と経済可能性を阻むという、最も好ましくない結果をもたらすと批判をしています。
つまりは、アメリカ自身も裸にならなければ交渉は成功しない、そういう形で国内が大統領に迫った、そういうところに来ているわけですね。
また、本日付によれば、米国政府が、TPP交渉で獲得する目標を列挙した資料の中に、公的医療保険制度の運用について、透明性と公平な手続の尊重を求めると明記をし、同制度の自由化を交渉参加国に要求するとの方針を示していたとされています。
厚労省として、そうしたこれまでの圧力をどのように受けとめてきたのか、あるいは、こうした報道されるものに対して、だったら問い合わせてみる、そういうことを当然やるべきではありませんか。
○辻副大臣 高橋委員御指摘のように、例えば日米投資イニシアチブ報告書などを拝見いたしますと、アメリカ政府が病院、診療所経営に対する株式会社の参入拡大を可能とするよう要望した、あるいは、アメリカ政府はいわゆる混合診療の導入について関心を表明したというような表記もあるわけでございまして、御指摘のような要望が出されていることを私どもとしても認識しているところでございます。
厚生労働省といたしましては、いわゆる混合診療を全面的に解禁することについては、患者負担が不当に拡大するおそれがあること、安全性、有効性等が確認されていない医療の実施を助長するおそれがあることから、医療保険制度の根幹に影響を与えるものであり、適切ではないと考えているところでございます。
また、営利法人の病院経営については、患者に必要な医療が継続的に提供されなくなるおそれがあること等から、株式会社による医療機関の経営は認められないと考えているところでございます。
従来からこのような考え方のもとに対処してきたところでございますけれども、今日的な交渉の議論などにかかわろうがかかわるまいが、私どもといたしましては、その立場に立って、国民に安全、安心な医療を提供すべく対処していきたいと思っております。
○高橋(千)委員 今、最後におっしゃった安心、安全な医療、これは、厚労省ではなくて、交渉当局といいましょうか政府がつくったQアンドAの中に出てくるわけですよ。医療、保険の分野では、混合診療の解禁や営利企業の参入については議論の対象になっていません、参加国間のFTAでは金融サービス分野において公的医療保険制度は適用除外されており、TPP協定交渉においても公的医療保険制度は議論の対象になっていませんとあり、なお、仮に交渉に参加する場合には政府としては安心、安全な医療が損なわれないよう対応します、こう言っているんです。それを読んだだけなんです。全然抽象的でしょう。
何をどうするんですか。本当にこの混合診療は認めないというのであれば、今じっとしているわけにはいかないわけですよ。なぜそういうことを言われないんですか。大臣から直接伺いたいと思います。
○小宮山国務大臣 混合診療については、先ほどから私も答弁をし、副大臣が答弁をしたとおりでございますので、そういうことのないようにしっかり対応したいと思っています。
ただ、再三申し上げますように、TPPで今交渉されている中では、具体的にこういうことが検討項目には上がっていないというふうに認識をしております。
○高橋(千)委員 これまで対日要求があったということを先ほどお認めになりました。ですから、アメリカの政府の中で大統領に対してこれを突き上げる声があり、かつアメリカ政府としてもTPP要求の中に盛り込んでいる、その報道は本当か否かと直接問い合わせてみればいいじゃないですか。そういう努力も一切しないということ、なぜ厚労省は何もその情報収集をしないのかということを言っているのであります。その点について、いかがですか。
○辻副大臣 TPP交渉においてそのような議論がなされていないということでございまして、先ほど読み上げましたのは、対日要求としてかつてあったということを申し上げたということでございます。
○高橋(千)委員 余りにも危機感がなさ過ぎると言わなければならないと思うんです。
先ほど言ったように、本当に反対だというのであれば、一たん始まってしまえばそこだけ抜くということはできないということがこれまで繰り返し言われてきたわけじゃないですか。だから、農業の分野だけではないんだ、医療の分野でもこんな問題があるんだということを発していかなければならないということを繰り返し指摘しているわけであります。
きょうは外務省に来ていただいていますので、少し技術的なことを聞きたいと思います。
混合診療や営利企業の参入など、医療の規制緩和が議題となる可能性について排除はできないと思います。これについては、外務省がつくった資料の中に、可能性があると書いておりますので、確認をさせていただきたいと思います。
それから、二十一の作業部会には、医療というテーマはないわけですね。だけれども、サービスとかいろいろな分野の中に、紛れ込んでいると言えばちょっと言い方が悪いかもしれないけれども、さまざま入っているということであります。
もし入るとすれば、どういう脈絡の中で検討されるのか、御説明いただきたい。
○西塔政府参考人 お答え申し上げます。
また繰り返しになってまことに恐縮でございますが、混合診療の解禁あるいは営利企業の医療参入につきましては、TPP交渉の中で現在のところ議論の対象にはなっていないものでございます。
将来の議論の可能性につきましては、現時点においてそれを見通すことはなかなか困難であるわけでございますが、いずれにしましても、仮に交渉に参加する場合には、政府として、安心、安全な医療が損なわれることがないよう対応してまいる所存でございます。
なお、作業部会についての御質問がございました。
まず、混合診療でございますが、これは我が国の公的医療保険制度の保険給付に係る問題でございますので、金融サービス分野での議論になるのではないかと考えております。また、営利企業の医療参入の問題につきましては、これは、投資あるいはサービス貿易における議論ということが予想されるわけでございます。
以上でございます。
○高橋(千)委員 技術的なことを聞きますと最初に言ったのに、何も外務省が厚労省と同じ答弁をしなくてもいいじゃないですか。本当に、外務省がつくった資料の中に、可能性も今後あると書いていることを私は読み上げただけですから、ないと言っているわけじゃないので、現実にそれはもう否定できないですねということを確認しただけなんですから、別にかばってあげなくてもいいかなと思います。
それで、仮に議題になるにしても、医療保険制度は各国かなり違っているわけですが、それがどのように働くかということであります。
例えば、米韓FTAなどでは、いわゆる毒素条項と呼ばれておりますけれども、ほぼ米国に有利な形で入っていると言われています。例えばノンバイオレーション・コンプレイント、韓国がFTAに違反していなくても米国政府が国際機関に提訴できる仕組みがある。韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない、こういう訴えも可能なシステムになっているんだと。要するに、違法ではないけれどもというふうな制度であります。そんなことまで認められている。
また、最恵国待遇とか内国民待遇というように、自国と外資の待遇を均等に扱えというルールが一般的であるということを言われているわけですね。
例えば、これに対して、そういう米国の要求やねらいを十分にわかった上で、それでもTPPを受け入れるべきだと論じている方たち、その中で、馬田啓一杏林大学教授などは、「国際貿易と投資」秋号で、こういうルールが一定の国内規制を前提としたものだから、そんなに日本の制度が大きく変更させられると疑心暗鬼になることはないと言っているんですね。国内法があれば心配は要らない、もしそう言うのであれば、国内法を変えないと言えば済むだけの話であって、だったら米韓のような問題は起きないわけです。
先行している事例からいっても、やはり統一のルールは求められるということになりかねないなと思いますが、いかがでしょうか。一般論でよろしいです。
○西塔政府参考人 これも繰り返しになってまことに恐縮でございますが、仮に日本が参画をすると決めたとして、仮にアメリカその他の国から公的医療保険制度について問題提起がされたとしても、いずれにしても、これは交渉に参加するということでございますので日本は日本としての意見が言えるわけでございますので、そうした交渉の中でしっかりと安心、安全な医療が損なわれることがないように最善の努力をしていくということだと思います。
以上です。
○高橋(千)委員 ですから、厚労省じゃないんですから、何度も言いますけれども。
客観的なことを聞いているんです。米韓でも、明らかに韓国の方が不利でしょう。今言ったことは間違いですか。
○西塔政府参考人 繰り返しになってまことに恐縮でございますが、仮に問題提起がなされるとしましても、日本としては、安全、安心な医療が損なわれることがないように、とにかく全力を尽くしていくということかと思います。
以上でございます。
○高橋(千)委員 なぜ外務省がそういう答弁をするんですか。交渉の技術的な問題、今現実に外務省が少ない情報の中で参加国からいろいろとっている情報、あるいは二国間で進んでいるFTAなどの情報、そういうものから見ても、例外というのはないですよねということを客観的に聞いているだけなんですよ。安全、安心の医療とか、それは厚労省が言えばいい話です。
○西塔政府参考人 アメリカから言われたら必ずそれを受け入れなければならないということはないわけでございまして、交渉というのは、ここだけとってみれば、場合によってはそういう要求というのは強いものがあるのかもしれません。ただ、交渉というのは全体として進めるわけでございますので、それは、こちらの方で譲るのであれば、こちらの方でとっていかないといけない。全体の中で判断されるべきでございます。
この部分については、特に日本の医療の安全、安心にとって非常に大事な分野でございますので、全力を尽くして日本の主張を通していく、その努力をするということでございます。
○高橋(千)委員 とてもそれでは、交渉に仮に入っても、安全、安心な医療が守られるだろう、アメリカが幾ら言ったってというふうにはだれも受け取れないと思いますよ。
アメリカとの関係では、もう日米構造協議にもさかのぼらなければならない。日本が頑張って、日本の主張の方が強かったということを堂々と列挙して言えるのであればまだわかりますよ。それはもう歴史がはっきりしていることじゃないですか。それをあいまいにして、逆に、情報収集をしないことで、そういう問題が起きるかどうかわからないといって月日を費やすということは絶対あってはならない。
このことは重ねて指摘をして、少なくとも厚労省として、先ほど指摘をしたような独自の情報収集をしてほしい。これだけ、イエスかノーかだけ答えてください、厚労省。
○小宮山国務大臣 これは再三申し上げていますけれども、交渉に参加する中で具体的な中身が出てきますので、その中で私は交渉をするべきだと思っています。その中で、本当にこういう安心、安全を守るべきところはしっかりと主張していけばいいことだというふうに私は思っております。
○高橋(千)委員 参加国に情報を求めるという程度のことさえも言えないというのであれば、とてもこれは交渉に入る資格はないなと言わなければなりません。きっぱりとやめるべきだという指摘をしたいと思います。
最後に、残された時間で、きょう、もう一つ関連をしてお話をしたいことがあります。
先ほど指摘をした規制改革の問題と、今回の震災でつくられる復興特区制度、これが、下手すれば国内から穴をあけることにならないのか。そうなっては困るという立場で一言質問させていただきます。
今、第三次補正予算案とセットで法案が出されようとしていますが、医療の規制緩和については、例えば宮城県の復興計画の中にも明記をされております。特区では具体的にどこまで可能になるのか、お願いします。
○後藤副大臣 先生おっしゃられましたように、今政府の中で、いわゆる復興特別区域法案について最終的な詰めの作業を行っているところでございます。
これも先生、釈迦に説法でありますが、この復興特区制度は、地域が主体になって復興支援するために、地域における創意工夫を生かした復興に向けた取り組みの促進を図るというものであります。
例えば宮城県では、復興計画で、「新たな医療・福祉システムの構築のための規制緩和」であるとか「医療・福祉等従事者の流出防止と育成・確保」というのをこの復興計画の課題に挙げております。
そして、先生御懸念の部分は、多分、復興計画をまとめる際に、この地域の要望、いろいろな事業者、また自治体の中、あらゆる関係者とある意味では合意形成をしてこの要望を出してきているものでありますので、一方的な規制緩和が行われるということは、私は少なくともないと思っています。
ただし、例えば、現在、先生も御案内のとおり、宮城県、福島県、岩手県を中心とした被災地では、医療従事者の不足というのが懸念をされています。
そういう中で、これは省令の改正という部分でありますが、医療機器製造販売業等の許可基準の緩和、これは薬事法の施行規則の緩和でありますが、それであるとか、例えば医療・介護施設等に係る基準等の特例、これも省令の緩和であります。
あわせて、仮設薬局等の構造基準の特例というものを念頭に置きながら対応をしているところであります。
いずれにしても、被災の地方公共団体が特例措置を計画に盛り込んで国がそれを認定するというたてつけになっておりますので、そういう意味では、繰り返しになりますが、先生御懸念のような、地域の要望の合意形成並びに国がそれを認定するということで、ある意味では、一方的な、先ほど来御議論があるようなたてつけにはなっていないということについて、ぜひ御理解をいただければというふうに思います。
○高橋(千)委員 今紹介がありましたように、医薬品の販売、これに関しては、既に特区法の中に盛り込むことが検討されていると。それ以外の分については、いわゆる地方との協議会を通じて、場合によっては追加、充実をさせていくということになる。特例措置がふえていくわけですよね。
問題は、今議論してきたような、制度の根本にかかわるようなことが特区に書き込まれて、それが、構造改革特区の場合は検証の後全国展開というルールがありましたよね、そういうことになっては困るなということが言いたいわけなんです。
地域が主体とおっしゃいましたけれども、宮城県の復興構想会議のメンバーは、三菱総研、日本総研、野村総研、日本政策投資銀行。メンバーがメンバーですので、東京で会議をやっているわけです。政府の成長戦略にぴったり沿って、というか、旗を振った側の人たちが集まりまして、医薬品、医療機器産業拠点、先端医療拠点など、医療関連産業の集積を目指すということも議論の中にありました。その中で、ちょっと議論の中にあったのは、阪神・淡路大震災のときの神戸医療産業都市構想、こうしたものもあったわけですね。
ですから、復興特区の中でさまざまな優遇措置をしますよね。税制改正などもやります。でも、期限が来たら撤退するということも神戸のときはあったわけですし、医療といろいろな産業を集積してと、いいように見えるけれども、本当の身近な医療が損なわれるようなことがあってはならないし、それが根幹に触れるようなことがあってもならないと思うんですけれども、時間になりましたので、もう一度、一言、その全国展開云々のことだけお願いします。
○後藤副大臣 先生がおっしゃられた国と地方の協議の場、これについては、現在、法律で十三、そして政省令でこれからの詰めをしている作業で、いわゆる規制緩和をするということになります。
いずれにしても、今後、その国と地方の協議の場というのは、先生おっしゃるように、東京ではなく、基本的には現場に近いところで対応することになりますし、また、協議が調った事項について措置を講ずるというふうなことになりますので、その際には、協議会には、いわゆる規制官庁、安全性をきちっと確認するという視点も当然入って、それが被災地の立場になっているかどうかという観点も含めて合意形成をしていくことになりますので、先生の御懸念がないような形で対応していきたいというふうに考えております。
○高橋(千)委員 震災からの復興が根幹に穴をあけるようなことがないように、ぜひ小宮山大臣にも今の懸念を伝えておきたいと思います。
終わります。ありがとうございました。