国会質問

質問日:2011年 12月 2日 第179国会 厚生労働委員会

B型肝炎救済特別措置法案

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、きょう意見陳述していただいた原告団長の谷口三枝子さんに心からお礼を申し上げます。

 前回の参考人質疑のときは、後ろの席に座って、発言が許されず、どんなにか悔しい思いをしたことでしょうか。きょうの委員会も日程が大変十分なものではありませんけれども、法案がたとえ成立しても、それでよしとしないで、さらに力を尽くしていきたい、このことをお約束したいと思います。ありがとうございました。

 早速質問に入ります。

 基本合意が調印されたのは六月二十八日です。合意した原告は今七百七名と聞いておりますが、五カ月過ぎて、訴状を提出した件数、和解成立数は幾らでしょうか。

○外山政府参考人 十二月一日時点では、訴状が国に送達された原告数は約千四百名でございます。それから、和解が成立した原告数は四十名でございます。

○高橋(千)委員 今、千四百名訴状を受け取った中で四十名が和解成立したというお話でありました。間の資料も、数字もいただいたんですが、そのうち、資料がついている方が四百八十名ということだったかと思います。ですから、五カ月たって和解にたどり着いた方は四十名ということでは、本当に長い道のりだと言わなければなりません。

 昨年の今ごろ、この委員会で質問していたときは、五百十一名の原告団と私言っていましたけれども、既に一千名を超えているわけです。しかも、政府は、四十五万人を救うと言ってきました。これでは遅過ぎないでしょうか。資料の煩雑さ、人手不足等要因があると思いますが、どのようにお考えですか。

○外山政府参考人 B型肝炎訴訟につきましては、裁判所の仲介のもと、一年以上にわたる和解協議を経た結果といたしまして、本年六月末に原告と基本合意書を締結し、提出すべき資料の内容や和解の手続、それから内容等につきまして、国、原告双方が合意に達したところでございます。

 現在、原告から提出された資料をこの基本合意書に沿って確認いたしまして、所定の要件を満たすと認められる者については、和解手続を鋭意進めているところでございます。

 今後とも、適正、迅速に和解手続が進むよう、引き続き誠実に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、厚生労働省における和解手続のための事務処理体制につきましては、担当職員の増加など、随時整備を進めているところでございます。

○高橋(千)委員 昨年のそのときの質問で、政府が、B型肝炎訴訟の解決には二兆円かかる、そして原告の要求を全部入れたら八兆円かかる、こういうことを言っていたわけですね。それで私は、過大過ぎないかと質問をしました。そのときに外山局長は、「原告以外の方にも同様の救済を図るため、最大限どの程度の方が救済対象となり得るかという観点から推計したものであり、過大推計との批判は当たらない」、このように答えたわけです。また、「仮に今回の和解の内容を一般化した場合には、制度の周知等によって自覚が高まり、申請のインセンティブが働くものと考えられることから、申請率は高くなるものと考えております」と言い切りました。

 今でも、その認識は変わらないですか。

○外山政府参考人 変わっておりません。

○高橋(千)委員 そうすると、それに見合うことを本当にやれるかということを確認しなければならないわけです。

 基本合意に当たっての政府見解は、「かつて例のない大変大きな広がりを持つものであり、長期にわたって責任のある対応をとることが必要である」としました。私たちは、過大な数字をひとり歩きさせて、それが増税だと言っているのは許せない、このように指摘をしてきたわけです。しかし、言いかえれば、政府はそれだけ責任を持って四十五万人の救済に当たると約束したということではないですか。確認いたします。

○外山政府参考人 そのとおりでございます。

○高橋(千)委員 では、大臣に質問します。

 札幌地裁の基本合意に当たっての所感では、「可能な限り、原告が生きているうちに、和解を成立させてもらいたい」「あらためて、国も時節柄大変だと思いますが、原告から資料を受け取ったあと、迅速に検討頂き、速やかに和解を進めて頂きたい」と述べています。大臣はどのように思うでしょうか。

 例えば、東京原告の一人は、予防接種を受けた保健所の名称や住所を明らかにするよう言われ、他の要件は整っていたにもかかわらず、その一点のみで見送りになったといいます。基本合意までに長い時間が過ぎ、調印までに命を落とした原告もいたことを考えれば、迅速な処理をすべきという点では認識を共有できるでしょうか。そして、資料の要件を厳しくし過ぎて和解をおくらせるようなことがあってはならないと思いますが、いかがでしょうか。

○小宮山国務大臣 基本的には、委員がおっしゃるとおりだと思っています。

 委員がこういう御指摘があるということで、このケースを調べたんですけれども、このケースの場合は、可能な範囲を広げるために、いろいろ書類が整わないときに何をしたらいいかという、関係者作成の陳述書という形で提出をされたと思います。

 母子手帳の提出ができない理由の陳述書として、最初は、母子手帳が火事で焼失をしたという届けがありました。ではどこで受けたのかと聞いたところ、次には、保健所ですということが返ってきましたので、どこの保健所かということを問い合わせて、三回目に戻ってきたところでこれは受けとめたということなんですけれども、二カ月ごとの期日の最初の期日に間に合わなかったということで、その次の期日のところではこれをちゃんと受けとめてやっているということでございますので、そのあたりのやりとりがもうちょっと迅速にできないかとか、そういうことは検討する余地があるというふうに考えますが、なるべく誠実に対応をするようにしていきたいというふうに思っています。

○高橋(千)委員 事前にきょうの東京原告のお話を通告しておりましたので、調べていただいて、ありがとうございます。ただ、それを、一人一人の分を言って、これはどうですか、これはどうですかという時間はないわけです。今言った対応を本当にやっていただきたいと思います。

 それで、具体的に提案をいたしますが、医療機関に対するカルテの開示の手続を迅速に進むように協力をお願いしていただきたいと思います。

 原告からカルテ開示を医療機関に請求したところ、弁護士紹介でなければ開示に応じない、本人がとりに来ないならば取り寄せに応じない、カルテがないという証明には応じないなどと回答をされています。これは、せっかく迅速に誠実にと言っておきながら、その先で閉ざされてしまうということがないように、やはり厚労省としてきちんとお願いをしていただく必要があるのではないか。

 また、母子手帳がない人は、居住歴の立証のために住民票や戸籍の付票などが求められるわけですけれども、五年の保存期間ということもございますので、なかなか手に入らない。そういうときに、日本で出生したことがわかる戸籍とか、通信簿ですとか、手元にある資料で代替できればよいとか、こういうことはいろいろ考えられると思うんです。いかがでしょうか。

○小宮山国務大臣 医療機関にカルテ開示の手続、迅速に進むようということは非常に重要なことだと思っておりますので、医療機関に対しましては、救済を受けるために必要になるカルテなどの証拠資料の要件がわかるように、B型肝炎訴訟の手続、これは厚生労働省のホームページに掲載をし、また、都道府県や日本医師会を通じましてこの手引を配布するなど、広くその周知をして、なるべく早く医療機関が提出に協力をするようにということを今やっているところでございます。

 また、後半の、満七歳になるまでに集団予防接種を受けたことを確認するために、基本合意書では、母子健康手帳や予防接種台帳を提出することになっていますが、こうした資料を提出できない場合には、予防接種の跡があることを証明する医師の意見書に加えて、満七歳になるまでの居住歴を確認することができる住民票または戸籍の付票の写し、これを提出することになっています。

 そして、今委員から御指摘のあったように、住民票や戸籍の付票の写しが提出できない、こうした場合には、満七歳になるまでの居住歴を確認する資料としてどのようなものがあれば足りるかにつきまして、これは個々のケースによっていろいろあるかと思いますので、そうしたことを、なるべく可能なように、総合的に判断ができるような、そんな方法がとれるようにしていきたい、そういうふうに思います。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。

 私もちょっと厚労省のホームページを見てみたんですけれども、B型肝炎という窓が表紙にありますので、それをクリックしていくと手引が出てくる、あるいは、これまでの訴訟の資料が全部一覧に載っている。これは大変親切だと思うんです。

 ただ、ぜひ提訴してみたいと思う方がそれを開いたときに、なかなか、今おっしゃったような、こういう代替もできますよというところにたどり着く前にあきらめちゃうかなということを率直に思いました。例えば、他の原因による感染ではないことを証明する書類が必要ですと、ばあんと書いてある。そんなこと、どうやってできるのということで、ちょっとひるんでしまうということがあるんです。

 だったら、せっかく誠実に対応するということが前に来るように、いろいろな、年数がもともとたっていることですから、十分な対応をしますよということが伝わるような改善をぜひしていただきたいということを、これはぜひ要望にしたいと思います。

 先ほど来議論がされているところなんですけれども、除斥の問題、やはり、もう一言言っておきたいと思うんですね。

 まず、和解文書については、もともと、肝硬変以上の発症した除斥期間対象者について触れられていませんでした。そして、先ほど谷口さんの陳述書の資料の中にも書き込まれていたように、裁判所の中で、「立法措置の際には、あらためて国会その他の場で御討議頂いて、よりよい解決をして頂ければと思います」、そういうふうに書かれていて、言ってみれば、立法機関にゆだねられたわけであります。基本合意のときに骨子が出されて、私、それ自体不満なんですが、そのときにさえ書いてなかった。それなのに、いきなり法案に「除く」という言葉が出てきた。

 これは原告に対しても説明がなかったと聞いておりますけれども、なぜこういうことになっちゃったんですか。

○辻副大臣 御指摘をいただきました除斥期間を経過した肝硬変、肝がんの患者の方々の取り扱いにつきましては、基本合意書を締結する過程でも議論がされず、また、基本合意書に示されておりませんために、この法案には規定をさせていただいていないところでございます。

 同時に、法律の条文上、「除く」と規定いたしませんと、除斥期間を経過した肝硬変、肝がんの患者等の方々に対しましても、除斥期間を経過していない方と同額の給付金が支払われるということになりますために、条文上、「除く」と規定をしているところでございます。

 今後、除斥期間を経過した肝硬変、肝がんの患者等が提訴なさいました場合には、基本合意書の趣旨に照らし、裁判所の仲介のもとで、誠実に協議するよう努めてまいりたいと考えております。

○高橋(千)委員 全く答えになっていないと思うんですね。なかったから法案に書いたと。ということは、要するに、そういう方がわずかだという指摘があるわけですけれども、出てこられては困る、払いたくないということになるわけです。

 でも、その除斥期間を超えた慢性肝炎の皆さん、無症候キャリアの皆さん、こうした方たちに対しても、大変不十分な額ではありますけれども、国会の議論を通して乗り越えてきたということがありました。そういう点では、この議論はこれからやらなきゃいけないことなんですよ。それを最初から書いてしまうということは、やはりあってはならないと思います。

 先ほど、誠実な対応をするんだとおっしゃいました。固定的に物を見ないで、これからさらに詳細な和解の協議などが始まっていきますので、その中で対応していくということで、もう一言確認をいたします。

○辻副大臣 今後、新たな提訴がありました場合には、除斥期間を経過した患者さんの方々の提訴がなされた場合には、申しましたように、誠実に協議するよう努めていきたい、こういうことを申し上げておきたいと思います。

○高橋(千)委員 引き続いて、その後の対応について、国会としても報告をいただいて議論をしていきたい、このように思います。

 もう一つ、財源の問題なんですけれども、これもずっと議論してきたことなんですけれども、なぜ今回の法案にこの財源の問題を明記することになったのか。これまでもいろいろな国賠訴訟というものはあったわけですけれども、あえてB型肝炎訴訟の和解に伴う給付金だけが財源を明記しなければならなかったのか。

 しかも、当初の案は、成年扶養控除の廃止による財源確保ということで、障害のある方の家族など、最も弱い立場の人に重い増税であり、あってはならないことであるわけです。自分は被害者だと思っていたけれども、いつの間にか加害者にさせられたと、原告の一人は悔しい声を上げていました。

 財源は特出しする必要はないと思いますが、いかがですか。

○小宮山国務大臣 B型肝炎訴訟の特徴としては、対象の方が四十万人以上と、大変多くなると推計をされています。これは、これまでに例のない広がりを持つ問題でございますので、感染された被害者に対する給付金の支給が万全なものになるようにということで、財源の確保が重要だということで、このような形をとっています。

 先ほどもお話ししたように、ことしの七月二十九日の閣議決定で、給付と財源の一体的な法案の成立を目指す、そのようにしています。こうした経緯を踏まえまして、財源確保規定を置き、給付金の財源を法律上明らかにすることによりまして、感染された被害者の方に対する給付金の支給を万全なものにしたい、そういう趣旨でございます。

○高橋(千)委員 万全なものにしたいということは、それは大事だと思うんです。財源がなくて、約束したことができなかったよと言われたら困るんです。でも、それが、今言ったような弱い人にかかる増税ということはあってはならない。

 では、このことは、認識、一致できますか。

○小宮山国務大臣 委員がおっしゃりたいことは、理解をしているつもりでございます。

○高橋(千)委員 理解という表現でありまして、ちょっと残念に思いますけれども、まあ精いっぱいのお答えだったかと思います。

 最後になりますけれども、特別措置法は、給付にかかわることしか書いていないわけです。しかし、基本合意の中では、ウイルス検査の一層の推進や、医療の提供体制の整備、研究の推進や医療費助成などの必要な施策をとること、またB型肝炎ウイルスの感染被害の真相究明及び検証を第三者機関において行う等、恒久対策が盛り込まれております。

 これについて、本来ならちゃんと書き込まれてほしかったなと思うんですが、政府としてしっかり受けとめてやっていくという決意を伺いたいと思います。

○小宮山国務大臣 肝炎の恒久対策につきましては、インターフェロン治療等に対する医療費の助成、肝炎ウイルス検査の促進、研究の推進などを柱といたします肝炎総合対策を平成二十年度から実施をしています。

 また、肝炎対策基本法に基づいて、今後の中長期的な肝炎対策の方向性を定めた肝炎対策基本指針をことしの五月に策定をしまして、これに基づく施策を積極的に今展開をしているところです。

 恒久対策の検討に当たりましては、B型肝炎患者の原告も含めた患者や御遺族の御意見も踏まえながら、これは誠実に取り組んでいきたいと考えています。

 また、基本合意書に基づきまして、第三者機関による検証の場を設置して、B型肝炎ウイルスへの感染被害の真相究明や検証を行うこととしておりまして、その検証結果に基づいて、行政としての責任をしっかりと果たしていきたい、そのように考えています。

○高橋(千)委員 あと、これは指摘にとどめますけれども、先ほど副大臣の答弁も聞いておりましたけれども、第三者機関に対しては、薬害肝炎の方たちも、検証・検討委員会が最終提言をしたにもかかわらず社保審の中の部会という形でやられてしまうと、これは、全く監視機能がない、意味の違うものなんだということを指摘しているわけなんです。これに関しては、第三者評価組織の創設に関する意見書ということで、十一月八日に、ワーキングチームに参加のほとんどの委員の皆さんなどが、大臣と改正部会の委員長に対して上げているわけですね。

 それをまた繰り返しては、せっかく、長い闘いをやり、基本合意を結び、国会で法律をつくったけれども、そこがほごにされるということは、やはりあってはならない。これは、肝炎の薬害の対策も含めて、しっかりとやっていただきたいということを強く要望して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

 

 

【B型肝炎救済特別措置法案 討論】

○高橋(千)委員 私は、日本共産党を代表して、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法案、民主、自民、公明提出の修正案及びみんなの党提出の修正案に対して討論を行います。いずれも賛成しますが、政府原案に対しては、全面賛成とは言えません。

 B型肝炎訴訟は、国の加害責任を認めた二〇〇六年の最高裁判決で解決されているはずでした。原因がわからぬまま長く苦しんでいた原告らは、これで救済されると希望を持ったのでした。しかし国は、補償対象は札幌の元原告五人のみにとどめ、何も行ってきませんでした。そのために、新たな訴訟が立ち上がり、今日までさらに五年の月日を要しました。避けられるはずの死亡や重症化が進んだのです。合意内容は、給付額も値引きされ、除斥期間による線引きなど、本来なら受け入れがたい内容ではありましたが、重症患者が多い中、早期の解決を願い、苦渋の選択で合意に至ったものでした。

 しかしながら、出口の全く見えなかった昨年末からこうして立法までこぎつけたことは大きな成果であり、法案は全面救済への第一歩として成立させるべきと思います。

 その上で、六月二十八日の基本合意から既に五カ月、和解にこぎつけた方はわずかに四十名です。政府は、迅速な和解成立へ力を尽くすべきです。

 また、裁判長が立法措置の際にはよりよい解決をと期待していたにもかかわらず、基本合意から一歩も出ないばかりか、発症後二十年の除斥期間を経過した重症患者を給付の対象から外す規定が入れられたことは許しがたいことです。長く苦しんだ人ほど救済されないということがないよう、政府は真摯に対応すべきです。

 和解直後から、政府は増税が必要だと言い始めました。被害者のためと称して増税を持ち出すことは、今でも差別と偏見に苦しんでいる被害者と国民をさらに分断させるものです。原案は、根拠法となる所得税法の改定では財源の手当てができなくなり、修正を余儀なくされましたが、救済のためには増税やむなしという議論は、今後も絶対に行うべきではありません。

 最後に、被害者救済はまさに緒についたばかりです。肝炎医療の研究、体制整備や第三者機関による検証など、合意文書に盛られた恒久対策等の確立に向けて国の誠意ある対応を求めて、討論といたします。

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