国会質問

質問日:2011年 12月 6日 第179国会 東日本大震災復興特別委員会

福島県の復興

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 来年の通常国会で、福島復興再生特別措置法案、仮称でございますが、提出されると聞いております。福島県からの強い要望もあり、私自身も繰り返し質問をしてきました。しかし、まだ骨格は示されておらず、報道によると、避難解除区域の復興や長期帰宅困難者への支援、健康調査などの放射線対策や企業への税制優遇措置などが取りざたされているように伺っています。

 大変限定的なイメージも持っているわけなんですけれども、確認したいのは、県内外十五万人を超えると言われている避難者を含めすべての県民が対象である、また、その所管は当然復興庁である、このことをまず確認いたします。

○平野国務大臣 今、福島再生のための特別法については鋭意検討を進めているところでございます。

 対象とすれば、まず、県内全域を対象とするという前提で今作業を進めております。また、避難者への支援につきましては、委員御指摘のとおり、県内外を問わず、特に県外にはまだ六万人、十一月十六日段階で六万人を超える方が県外に避難されています。県内外を問わず支援措置を講じる必要があるというふうに考えております。

 この所管につきましても、復興庁という前提で今進めておりまして、できるだけ早く全体の案をまとめたいというふうに考えております。

○高橋(千)委員 今、六万人とも言われている県外に避難されている方も含めてだというお話があったと思います。

 パネルを見ていただきたいと思うんですけれども、これは、住民基本台帳に基づく福島県の県外転出状況をグラフにしたものであります。青が昨年の数字。これは、下はマイナスです。一番赤の出ているところは、三千五百人を超えて出ているという意味であります。青が昨年で、赤がことし。こうすると一目瞭然なんですね。

 例年でも、二十前後というのは進学や就職で当然県外に出ます。でも、ことしはとりわけ、その世代も県外に出ざるを得なかったということがうかがえますし、ゼロ歳から四歳が、昨年は全くなかったのに三千五百人を超えて出ている、そして、二十代後半から四十代前半の方が非常に多く出ているということが見えると思うんです。そうすると、やはり小さなお子さんを連れて若いお母さんが避難をしている、こういう状況がうかがえるなと思います。

 原発事故の深刻な影響をどのように受けとめますか。総理に伺います。

○野田内閣総理大臣 今の、お示しいただいたグラフを見ると、やはりお子さんと子育て世代が流出をしているということが明らかに見てとれるというふうに思います。当然のことながら、警戒区域の設定などの原発の事故の影響を受けているものということを厳しく受けとめなければいけないだろうというふうに思います。

○高橋(千)委員 私が思ったことと同じことを、総理も見てとれるということを認めてくださったと思います。

 総理が九月の所信の演説のときに福島の高校生の創作劇を紹介して、福島で生まれ、育ち、子供を産んで最期を迎えたいという訴えをされたんですけれども、本当にそのことが困難になっている状況だということをまず受けとめなければならないと思います。

 その上で、福島県の調査で、今わかっているだけで、自主的避難者と言われている方たちが五万人を超えているといいます。各地でこの方たちを支援する運動が広がり、先日も国会内で集会が開かれました。そこで紹介されたメッセージを少し紹介させていただきたい。

 「二週間に一度会いにくる父親が帰る日、子どもが泣きながら父親の着ていたシャツを抱きしめています。二歳の子どもが返事の返ってこない旅館の玄関に向かって、パパ!パパ!と何度も叫びます。そしてじっと耳をすまし父親の返事をまっています。なぜ、幼い子どもがこんな思いをしなければならないのですか」「子ども三人はそれぞれ学校や保育園を二度転校。避難生活維持のために百枚以上も書類をかかされた。避難場所が九回変わり、落ち着かない避難生活で、長女はストレス性胃炎、次女は肺炎になりかけ、三女はぜんそくが悪化。母も肺炎になりかけた」「一時的に避難していて福島に帰ったら、子どもがいじめにあい、悩んでいる」「親を見捨てて自分たちだけ逃げて、何かあっても親に頼るな!と親戚の人から言われた」「人の税金を使っていろいろな支援を受け、いい思いをしているといわれた」など、追い詰められ、悲痛な訴えばかりです。

 それでもなぜ避難を続けるのか。皆さんの共通する言葉は、自主避難を決断するに至ったのは政府の情報が信用できなかったからです。それを裏打ちするように、今になって次々に情報が明らかになっています。それなのに、いまだに自主避難者には補償の話も何もありません。

 総理、この方たちを、避難したのが自分の勝手であるかのように自主避難と呼ぶべきではありません。だれにも避難する権利があることを認めるべきではありませんか。

○野田内閣総理大臣 呼び方をどうするかというのはちょっとありますが、自主的に避難をされた方の損害については、原子力損害賠償紛争審査会において、政府による避難指示の対象区域外に居住する方であっても、その区域からの避難は放射線被曝の危険を回避するための行動であるとして、賠償すべき損害となり得るとの共通認識が形成されてきているものと承知をしています。

 具体的な自主的な避難に係る損害賠償の範囲については、ちょうど本日審査会が行われるということでありますので、中立公正な立場から議論をされると思いますので、その動きを注視していきたいというふうに思います。

○高橋(千)委員 そのことについては、今、文科大臣にも質問することになっておりますけれども。

 今、なり得るべきとの認識とお答えをいただきました。やはり、それをもう少し進んで、避難する権利を認めるべきだと思うんです。

 これは、国連でも国内避難民の保護に関する原則という考え方が九八年から既にできているわけなんですね。そこの中で、移動の自由とか居住選択の自由に対する権利を認める、家族生活を尊重される権利などが明記をされているんです。避難者を支援する市民団体、弁護士らが主張する避難する権利というのは、こうした国連の原則、国際的な常識を根拠としています。

 もしかして初めて聞いたかもしれませんが、そういう立場で認めていくんだということを、もう一言伺いたいと思います。

○枝野国務大臣 避難する権利という呼び方がいいのかどうかということは別としても、先ほど総理も若干お触れになりましたが、これまで自主的避難という言い方をしてきておりますが、本質的には、政府からの避難指示地域以外の方で避難をされている方ということになるわけです。

 避難指示地域というのは、一律、網羅的に避難を政府としてお願いしている地域でございますので、御本人の意向にかかわらず避難をしてくださいということでございますが、その避難指示が出ている地域以外であっても、さまざまな御判断の中で避難をされている方は、当然のことながら、その中には原発事故との相当因果関係のあると認められる避難をされている方が少なからずいらっしゃるというのは、ある意味では当然の前提になっていると見ております。

○高橋(千)委員 認識の発展があるのだろうと期待をしたいと思います。

 ちょっと順番が変わりますが、先ほど総理のお答えにありましたので、確認をしたいと思うんですね。

 こういう議論をしてきて、最初は全く対象にならなかった自主的避難と呼ばれた方たち。この方たちの支援と、あるいは避難できずにとどまった方たち、そういう方たちに対しても同様の補償をするべきだ、こういう議論がされまして、きょうの午後、まさに中間指針追補の決定に向けて審査会が開かれるということです。どのようになるのでしょうか、文部科学大臣、お願いします。

○中川国務大臣 きょうの午後にはぜひ結論を得ていきたいというふうに私も思っております。

 自主的避難に伴う損害について、これまで五回にわたってこの紛争審査会が開かれてまいりました。賠償の対象区域や対象者、それから損害項目や損害額の算定の考え方、さらに指針のいわゆる対象期間等について議論が行われてまいりました。

 避難せずに滞在を続けていた方々についても、自主的避難者と同程度の損害を認める方向でほぼ委員の皆さんの意見の一致を見ておりまして、きょう午後に開催される予定の審査会では、避難した人、とどまった人、それぞれ両者について、損害賠償の対象となる市町村や金額等の指針の具体的内容について提示をされて議論がされ、結論が得られる方向で進んでいるというふうに承知をしております。

 それによって被害者の方々の救済が図られるようになるように私自身も期待をしております。

○高橋(千)委員 避難された方と、そうではなくとどまった方に対しても同等に扱うのだ、補償するのだというお答えがありました。まずそこは歓迎をしたいと思います。

 避難しなかった人たちも苦しい思いをしています。先ほどメッセージを紹介しましたけれども、避難した方に対して、残っている方たち、いわゆるママ友からの言葉が託されているんですね。

 例えば、「家のローンもあるし、働かなきゃ食べていけないし、親戚をおいていけないし、出られない。せめて、友達が安全なところにいてくれたほうが安心だよ」「毎日引っ越ししたいと思うよ。まだ、給食とか運動会をやる、やらないで、親同士もめたりする。まだ、そこにいられるなら、帰らないほうがいいよ」、そういうふうに、避難した友達に対して、今いる友達が声をかけているんですね。こういう思いをしているんだから、当然差をつけるべきではないんです。

 ところが、自主的避難に関する主な論点を見ると、対象区域を決めて指針に書き込むと言っています。けさの朝日新聞には、それが五十キロ圏内であるということが既に書かれておりますが、また線引きをするんですか。

○中川国務大臣 同審査会において、中立公正な立場から、今、自主的避難に係る損害についての議論が行われているわけですが、この対象となる区域については、基本的な考え方として、一つは、事故を起こした発電所からの距離、それから、放射線量に関する情報、居住区域における自主的避難の状況、これを総合的に勘案して決める方向で議論が進んでいるというふうに理解をしております。

 きょうの審査会では、損害賠償の対象とする具体的な市町村や金額等について引き続き議論を行いまして、賠償の範囲を類型化して明示する指針案、何らかの形で類型化をしていくというのがこの審査会の役割ということが前提になっていますので、類型化していく。その中で線引きというのが行われていくわけですが、きょうの朝日新聞の報道のようになるかどうかということについては、まだ今の段階で明らかになっていないということが一つあります。

 同時に、これは指針でありますので、追補される指針の中で類型として明示されない区域、ということは、この線引き以外のところであっても個別具体的な事情に応じて賠償の対象となり得るということについては、この審査会においても共通認識がありますので、そこのところの運用を弾力的にしていくということだと思っております。

 そのことも含めて、この審査会の議論を尊重しながらしっかりと対応をしていきたいというふうに思います。

○高橋(千)委員 事故の直後から、福島の皆さんは、絶えずこの線引きということに苦しみ続けてきたんです。二十キロ、三十キロ、そこに何の根拠があるのかということがずっとこれまで言われてきたじゃないですか。ようやっと、自主的避難の方も残った方も同等です、そこまで言っておきながら、また線引きですか。これは認められません。

 極端な話をしているわけではないんです。皆さんの手元に政府の「自主的避難者数」という資料がございます。これは決して全部を網羅しているものではないと思いますけれども、人数に応じて色が塗られているわけなんですけれども、仮にこの五十キロ圏で線を引いたとしますと、わずかでもかかっている二本松、郡山市、須賀川市などが入ったとして、五百二十二人も避難をされている白河市は除かれる。こういうふうに線引きすることに何の合理性もないんです。

 逆に言えば、これほど集中的な特徴があるんだから、たとえ一人であっても避難している方は線引きしない、当然、そういう自治体に残っている方も同じように補償する、これでいいじゃないですか。

 総理、いかがですか。

○枝野国務大臣 文部科学省がやっておられますこの審査会の指針というのは、あくまでもこれは類型化をされた方々に対する類型的な賠償についてお示しをするものでございまして、類型化をする以上は、どうしても何らかの基準でこの範囲の皆さんについてはということにならざるを得ないというのは御理解をいただきたいと思います。

 ただ、賠償そのものについては、その指針に書かれていないものはしないではなくて、指針はあくまでも、類型的なものをピックアップして、できるだけ賠償がスムーズにいくようにということでお示しをいただくことでございますので、きょうの指針がどうなるかわかりませんが、その指針の対象になっていない自主避難をされている方あるいはその自主避難をされている方の周辺の皆さんについても、相当因果関係があれば、当然のことながら東京電力に賠償をさせます。

○高橋(千)委員 ということは、きょう仮に線引きのような指針が出されたとしても、今私が指摘したように、その枠の外であっても当然賠償する、考慮していくんだということで確認をさせていただきます。いいですね。

○枝野国務大臣 この場合は、個別に、これも機構などが弁護士などのチームを福島に送っていろいろ御相談に乗ったり、あるいは裁判外紛争機関で決着がつくようにというシステムをつくっておりますので、そうしたプロセスの中で、相当因果関係のある自主避難やその周辺の皆さんについては賠償の対象にさせます。

○高橋(千)委員 では、最後に要望して終わります。

 福島大学の災害復興研究所の調査でも、避難を余儀なくされている双葉郡八町村のアンケートで、もとの居住地に戻らないという方が二七%に上ります。このままでは、今後、新たに自主的避難と呼ばれる人たちが生まれることになりかねません。戻ると答えた方は、三年以内なら待てるが七割あります。浪江のアンケートでは、震災前の線量に戻れば戻ってもよいと答えた方が四九%です。

 今は戻れないという人も含め、差をつけずに支援をすること、それが本当に基本だと思うんです。徹底した除染とモニタリングを行い、帰宅できる環境づくりを進めると同時に、県内外にかかわらず、健康調査や、情報と相談窓口を設置し、住宅、雇用対策、保育所の確保など、しっかりとやっていただきたい。特措法と、これからできる復興庁がそれをしっかり担っていただきたいということを要望して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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