――― 議事録 ――――
○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
初めに、今冬の豪雪対策について伺います。
二月十五日現在で、犠牲者が九十八名にも上りました。重軽傷が千四百八十五名です。被害に遭われた方々に心からお悔やみを申し上げるとともに、お見舞いを申し上げます。
しかし、今なお被害は進行形であります。十日、国道二百七十九号線、四百台もの自動車が立ち往生した青森県の横浜町に行ってきました。地域の消防団が徒歩で一台一台声をかけ、避難所に誘導してくれたり、地元住民が炊き出しをするなどして、丸一日近く立ち往生したままだったにもかかわらず、一人の病人さえ出さなかったという取り組みに大変敬服をするものです。
また、十三日には、災害対策特別委員会として新潟、長野に行ってきましたが、家をすっぽり隠してしまうほどの雪の深さに驚くとともに、雪おろしに精を出す住民の姿を見て、事故のないように祈る思いでした。
雪は災害である、この立場に立って、これ以上犠牲者を生まないように、政府の強力な支援を求めたいと思います。
日本共産党の豪雪対策本部としては、二月八日に申し入れを行っています。機械やオペレーター不足などの除雪体制への支援、通学路の確保、ひとり暮らしの高齢者や障害者などの弱者対策、きめ細かい対策が求められます。
十日には、社会資本整備交付金、これが百一億円追加交付されたことは承知をしておりますが、市町村道への臨時特例補助の決定が急がれます。また、特別交付税措置も強く要請されておりますが、前田国土交通大臣と川端総務大臣にそれぞれ伺いたいと思います。
○川端国務大臣 委員御指摘のように、大変な雪害でありまして、被害の大きさに本当に心が痛む思いでありますが、総務省といたしましては、基本的に除排雪の費用に関しては、普通交付税において今までの実績を含めて手当てをしておりますが、今回はこれをはるかに上回る費用が発生している自治体がたくさん出ているということは事実であります。
年間を通じた所要額をできるだけ的確に把握して、地方公共団体の財政運営に支障が生じることなく、地方の皆さんが安心して除排雪に取り組んでいただけることが一番肝要だというふうに思っております。この旨について、要するに、生命の安全確保が一番大事であります。これで安心してしっかり取り組んでいただきたい、そして、年度内の費用に関しては、特別交付税も含めてしっかりと財政運営に支障がないようにやるという旨は、既に地方自治体にお伝えをしてあります。
それを含めまして、現在、特別交付税三月分について、三月下旬の決定、交付を目途に算定作業をやっているところでございます。
○前田国務大臣 お答えいたします。
ただいまの川端総務大臣の御答弁のように、基本的には自治体の道路の道路管理者としての維持管理、そこには交付税等が参るわけですが、先生御指摘のように、社会資本整備総合交付金も百一億円出しました。加えて、市町村に直接行くように、臨時の特例措置として、道路会計、道路勘定を今かき集めておりまして、それで対応するということで、同時に調査にも入っているところでございます。
○高橋(千)委員 ありがとうございます。
両大臣とも前向きな答弁であったと思うんですけれども、一日も早くメッセージが届き、現実に交付がされるように、また実態に即してお願いしたいと思います。
それで、道路の問題でもう一言お願いしたいんですけれども、例えば新潟県でいいますと、昨年の道路除排雪経費は百三億円、それに対して補助対象事業費は八十四億円。国費で見ると、交付決定したうちの十九億円にしかなりません。百三億円のうち十九億円であります。泉田県知事によれば、雪庇の処理や基本待機料など、補助対象外の事業が大き過ぎるのだと指摘をしています。実際に私たちも歩いてみて、せり出した雪庇の下を子供たちが毎日通学で歩いているわけですから、これは絶対に必要な事業費だと言わなければならないと思いました。
また、青森市でいいますと、二十二億六千二百万円の当初の予算に対して、一月末で既に二億近い赤が出ております。先ほどお話しした交付金による除雪費用というのは雪寒法第三条に基づく雪寒道路が根拠となっておりますが、この雪寒道路は、青森市でいいますと、昭和六十三年二百キロ指定されて、四十キロしか延長されておらなくて、実際に除排雪をやっている道路というのは千三百五十キロだというので、かなり実態に合わなくなっているわけですね。でも、市町村は、国の指定外だからといって除雪しないというわけにはいかないわけです。
そういうことに本当に鑑みれば、やはり雪寒道路の指定を見直して、生活道路の確保、これにさらに前に向く必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○前田国務大臣 先生御指摘のように、大雪というのは災害に近いわけでございますから、そういう意味で、できるだけの対応をしてまいりたいと思います。
ただ、基本的には、この雪寒法においても、都道府県道レベルまではかなりの指定率になっているわけですが、市町村道レベルになってまいりますと、御承知のように非常に範囲も広うございますから、どうしてもこれは自治体の主体のことになってくる上に、実は公共事業費なんかも、要するに、ひものつかない交付金というような形でどんどん渡しているものですから、そういう中で、建前としては、県等においてもできるだけの対応をしていただきたいということが片一方であります。
ということも踏まえた上で、道路勘定、もうわずかしかないんですけれども、かき集めるだけかき集めて、とにかく対応をさせていただこうと思っております。
○中井委員長 前田国交大臣、予算委員会でこの雪害が質疑が一番多いんですが、今、災害に近いものだと考えているという御答弁がありましたが、災害じゃなしに災害に近いという認識なんですか。
○前田国務大臣 雪に対する維持管理という意味においては、雪寒法において指定をしているわけでございますが、こういうような状況になりますと、災害と心得て、道路勘定を総動員して、先年度あるいは先々年度よりも実は公共事業費そのものは随分削減しているわけですが、道路費もそういう中からかき集めて、最大限のことをさせていただこう、こう思っております。
○中井委員長 高橋さん、余分なことを言いまして済みません。
○高橋(千)委員 今委員長が指摘したことを私が今お話ししたかったんです。自分の最初の質問にちゃんと言ってあるんですね。雪は災害であるという立場に立てという意味で質問をしておりますので、災害に近いなどということを今言われるというのはちょっとあり得ないのであるということを指摘したいと思います。
何度も言うように、本当に市町村の財政力を超えた事態になっているけれども、国の対象じゃないからとか、国から来たお金がこれしかないからということでそのままにしてはおけないのだと、命が危ないという立場で市町村は取り組んでいるわけですから、それにしっかり応えていただきたい、このことを重ねて要望したいと思います。
さて、次のテーマに行きたいと思います。
二月八日、障がい者制度改革推進本部の総合福祉部会において、障害者自立支援法にかわる法律の厚労省案が示されました。まだ名前がありません。まず、中川担当大臣に経緯をちょっと確認したいと思うんですね。
二〇〇八年から九年にかけて、全国の障害者ら七十一名が原告となって、障害者自立支援法違憲訴訟が行われました。民主党は二〇〇九年の総選挙で同法の廃止を公約に掲げ、翌二〇一〇年一月七日の基本合意を踏まえて、同年四月までに全国十四地裁全てで和解が成立しました。この基本合意に基づいて、新法をつくるべく、当事者参加の制度改革会議の中で議論をされてきたのではなかったかと思います。この経緯について確認をしたいと思います。
○中川国務大臣 お答えをしたいと思います。
まず、障がい者制度改革推進本部、これの設置なんですが、これは二〇〇九年の十二月八日に設置をされました。障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を集中的にやっていく、その中での改革ということを議論していくということと、それから、関係行政機関の相互の緊密な連携を確保しながら、障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るということ、これを目的にして設置をいたしました。
それで、それに続いて先ほどお尋ねの障がい者制度改革推進会議が設置をされたんですけれども、これは同年の十二月十五日に設置をされております。さまざまな先ほどの判決も含めた議論を踏まえて障害者施策の推進に関する事項について意見を求めて、それを総括していくということになるんですが、特に、障害当事者がここに参加をした形で障害者制度改革を推進していく、そういう前提で委員の構成等々を考えながら設置をしているということであります。
○高橋(千)委員 次の質問の前にもう一度確認をしますが、基本合意を当然踏まえているということでよろしいですよね。イエスかノーかで。
○中川国務大臣 それぞれ、裁判の推移を前提にしながら推進本部もあるいは推進会議も設置をされておりまして、同時並行的にということであります。
○高橋(千)委員 非常に言葉を選んでいるような気がいたしますけれども。
障がい者制度改革推進本部のもとに設置された総合福祉部会は、昨年八月に骨格提言を発表しました。新法を目指してと題した提言には、冒頭、基礎となったのは二つの指針であると。一つは、先ほど大臣がお答えになった障害者の権利条約である。そしてもう一つは、基本合意文書であるということです。そして、目指すべき六つのポイントとして、谷間や空白の解消、社会的入院や家族介護への依存など社会問題を解決すること、本人のニーズに合った支援サービスなど、六つのポイントを明記しています。
この骨格提言の全面具体化こそ求められていると思いますが、政府として、この骨格提言をどう評価し、同じ立場で頑張ると言えるのか、伺います。
○中川国務大臣 御指摘の骨格提言は、障がい者制度改革推進会議のもとで開催されている総合福祉部会、ここにおいて八月に取りまとめられたものであります。この提言は障害当事者の方々の思いが詰まっているものだ、そういう前提に、しっかりと受けとめる必要があるというふうに考えております。
現在、厚生労働省が具体的な制度設計及び法制化作業を行っている段階ということでありまして、障害者施策担当大臣としましては、でき得る限り障害当事者の方々の思いが踏まえられた内容となるということを希望しております。
○高橋(千)委員 全くなっていないと思います。思いが詰まっている、それは当たり前です。どんな思いでこの会議をやってきたのか、それをしっかり受けとめるとか、できる限り反映させればいいんだ、そういうものですか。
資料の一枚目に、当時の和解をしたときの記事を載せておきました。一月八日の東京新聞、当時の長妻厚労大臣が謝罪をして、握手をしている記事です。また、その下には、全ての和解、十四地裁で和解が成立して、総理が原告に、鳩山当時総理ですけれども、おわびをしている場面であります。
この記事の中で、広島県の秋保喜美子さん、全国最初の原告となった秋保さんが、法の問題点を世の中の人にわかってほしかった、法が障害者やその家族を苦しめている、今まで思いが伝わらなかったが、わかり合えて、すごく感動していますと声を絞り出したと書いてあります。厚労大臣は、心からの反省を表明します、多大な混乱を招き尊厳を傷つけたと述べたとあり、尊厳を傷つけた、この言葉が本当に重い意味を持っていると思うんですね。
それが、わずか二年後です。この基本合意が踏みにじられたと強い抗議が寄せられています。
資料の四枚目、4を見ていただきたいと思います。「国による基本合意の反故を許さない! 集団訴訟弁護団 共同抗議声明」であります。この前段のところにこう書いてあります。アンダーラインを私が引いておきました。
本年一月二十四日付「内閣提出予定法律案等件名・要旨調」の記載は「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案」であって、「法廃止」でも新法の上程でもなく、二月八日の総合福祉部会において、その実態は一部改正に過ぎず、「骨格提言」とは全く異なるものであることが明らかになった。
基本合意の根幹に反するものであって、明らかな約束違反である。
下の方を読みます。
国が訴訟上の和解で確認した基本合意を反故にする先例を見過ごすならば、今後、社会保障・薬害のみならずあらゆる政策分野の集団訴訟における基本合意が軽んじられることになり、和解による解決を妨げ、ひいては国民の司法への信頼をも失うことにもなりかねず、その悪影響は計り知れない。
基本合意は、政権や政治情勢の変動如何に関わらず国家として遵守すべき法的文書であり、訴訟上の和解の中心をなすものであることを、国は改めて銘記すべきである。
というふうに、薬害肝炎やハンセン病、原爆症、中国残留孤児、HIVなど、十三の訴訟団が共同で抗議声明を発表しています。
今読み上げたように、単なるマニフェスト違反、そういう類いのものではないんですね。国としての公的な約束なんだ。この重大性をどう受けとめているのか、官房長官に伺います。
○藤村国務大臣 高橋委員にお答えいたします。
今、厚生労働省が検討している法案において、障害者基本法を踏まえた基本理念を盛り込むとともに、法律の名称そのものも変えるというふうに検討していることを聞いております。
障害者自立支援法違憲訴訟原告団、弁護団の方々とは、先般二月九日に厚生労働政務官がお会いして、まず厚生労働省案の説明を行い、意見交換をさせていただいたと聞いておりますが、引き続き、基本合意にのっとった関係者の御理解が得られるよう努めなければならないというふうに考えております。
○高橋(千)委員 多分、今官房長官は途中の経過、政務官に説明をされたというところを聞いていることをお答えになったと思うんです。
これは、やはり一方の当事者が、約束したことと違うのだ、つまり、約束をしたことによって裁判を終わらせたわけですから、このことについて認められないと言っている、そういう重みについてどう考えるかということなんです。それが結果としてどうかということよりも、この基本合意の意味、国の約束なんだ、それはお認めになりますよね。
○藤村国務大臣 基本合意というのは大変重いものだと受けとめています。
○高橋(千)委員 そこで、資料の5、先ほどの次のページを見ていただきたい。これは、二月八日の総合福祉部会で、部会長の佐藤久夫氏が提出した「骨格提言における提言項目と厚生労働省案の関連整理」というものであります。
骨格提言がどのような構成になっているかというのがここでわかるんですけれども、六十項目あるわけですね。丸、三角、バツとなっていて、丸となっているのも一応「不十分ながら」です、あくまでも。「不十分ながら骨格提言を取り入れている事項」となっているものは、何と、見ていただければわかるように、六十項目中三カ所にしかないんです。全くないとほとんど近い。
これでも、厚生労働省の案は障害者自立支援法の廃止だと言うのですか。
○小宮山国務大臣 委員が御指摘の、今資料で提供されたものは、今回の厚生労働省案としての法律の中身だけが評価されているものだと思っています。このほか、これまでに予算措置ですとか運用改善によって対応している事項があるということ。また、平成二十二年の十二月に成立いたしました障害者自立支援法等の一部改正ですとか、昨年成立いたしました障害者虐待防止法等によって対応している事項、その事項についてはここでは表記をされていないというふうに思います。
厚生労働省としては、骨格提言についてはもちろん重要だと受けとめておりまして、これは段階的、計画的にしっかりと実現をしていきたいと考えています。そういう意味で、法律による対応のほか、報酬ですとか予算、運用などあらゆる政策手段を組み合わせまして、障害者施策の充実に精いっぱい取り組んでいきたいというふうに考えています。
○高橋(千)委員 聞かれたことに答えておりません。廃止ですか、また新法ですか、あわせて答えてください。
○小宮山国務大臣 今回の改正法では、障害者基本法を踏まえました理念を盛り込むことですとか、法律の根幹となります名称や目的規定を改正すること、こうしたことをしっかり盛り込んでおりますので、障害者自立支援法の廃止になるということだと思っています。
○高橋(千)委員 まず、名前を変えただけでは、例えば、後期高齢者医療制度が大変批判をされて長寿医療制度と変えたことがかつてありましたけれども、名前を変えただけで実体は伴わないわけなんですね。しかも、名前が今ないわけですから。
今、いろいろ予算措置が云々とおっしゃいました。でも、そういうこともひっくるめて新しい法律の骨格をつくるんだということで提言が出されているのに、その提言が全く反映されていないじゃないかという質問に対して、まともな答えになっていないんです。そのことをどう認めるかということなんです。
そこで、二月八日の総合福祉部会の席上で、厚生労働省の中島誠企画課長はこういう発言をしています。法律の廃止とは、新旧の法律の継続性を考慮する必要がない、または考慮してはいけない場合、今までの法的効果を全てなくしますという場合に思い切って廃止を行うものですとして、六万弱の事業所指定とか八十万弱の支給決定が一旦消えるから大変な混乱が生じるだろう、しかし、正直言って、こういったことは本気でやらないといかぬということにはならない、こう言っているんですね。
つまり、和解をしたけれども、約束をしたけれども、それは本気でやらなくていいと言ったことになるんですよ。これは重大な背信行為ではありませんか。大臣、これ、公の場で厚労省の課長が述べているんですよ。どうです。
○小宮山国務大臣 その発言につきましてはしっかりと調べまして、その発言は不適切だと思いますので、私の方からも注意をしたいと思います。
○高橋(千)委員 不適切ということだと。ですから、廃止、はなからできないと思っていたわけではないし、できなくてもいいと思っているわけではないということでよろしいですね。
では、ちょっと続けますよ。
忘れてはならないのは、全ての和解が成立したのは二〇一〇年の四月ですね。ところが、翌月にはもう障害者自立支援法の改正案、いわゆるつなぎ法案が自公民三党合意によって提出されて、一旦は参議院の委員会まで通りました。大変な全国の原告団、その時点でもう怒っているわけですよね。その時点でもう約束が破られたと。私たちは、これは事実上、自立支援法廃止じゃなくて延命だと言って反対をしました。でも、同法案は廃案になったんですが、結局、再提出されて、同じ年の十二月に成立をしているんです。こういう経過があったということを、まず一つ重大な問題として記憶をしなければなりません。
ただ、その同じ年に、その間に、資料の3ですね、六月二十九日、閣議決定がされております。「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」ということで閣議決定がされてあって、改めて、一番下のところを読みますけれども、「応益負担を原則とする現行の障害者自立支援法を廃止し、制度の谷間のない支援の提供、個々のニーズに基づいた地域生活支援体系の整備等を内容とする「障害者総合福祉法」(仮称)の制定」に向けて云々ということで、「平成二十四年常会」、まさに今ですね、「法案提出、二十五年八月までの施行を目指す。」とあります。
閣議決定違反でもないと明言できますか。
○小宮山国務大臣 先ほども申し上げましたように、今回の改正法では、障害者基本法を踏まえて、その基本理念を盛り込むということ、また、名称や目的規定を改正するということから、これは障害者自立支援法の廃止になりますので、閣議決定を踏まえた対応だと考えています。
○高橋(千)委員 あくまでも踏まえた対応だというお答えで、到底認められるものではないと思います。
では、新法の名前はどうなりますか。
○小宮山国務大臣 新法の名前につきましては、今、民主党のワーキングチームでも検討されていますので、検討を経て決定をしたいというふうに思います。
○高橋(千)委員 ですから、名前さえ決められずに、どういう旗を掲げてこの国会で新法を通すのかということが本当に問われると思うんですね。
二月八日、翌日の新聞各紙の報道を見れば、朝日、日経は、障害者自立支援法改正案と報じました。毎日も、「障害者新法」と書きましたが、「実態は「自立支援法改正案」と言える。」と報じています。読売は、「新たな障害者福祉制度について、」と書き出したものの、「民主党がマニフェストに掲げた同法の廃止はせず、法改正で対応」と報じています。これが事実だと思います。みんなが、もうこれは単なる改正にしかすぎないと言っているんです。
障害のある方たちが廃止を望んだ制度の根幹にあるもの、応益負担はなくなりますか。制度の谷間はなくなるんですか。
○小宮山国務大臣 障害者自立支援法で一番問題とされた今御指摘の応益負担につきましては、これは平成二十二年十二月の障害者自立支援法、それから児童福祉法等の一部改正によりまして、応益負担から応能負担にこれは改正をされているというふうに思っています。
今回の改正は、これまで御本人による努力、それへの支援を中心に据えていたのが障害者自立支援法でしたが、障害者基本法の改正を踏まえまして、日常生活、社会生活の支援を社会全体でしていこうということで、可能な限り身近な場所で受けられるということ、共生社会を実現すること、社会的な障壁を取り除くことを新たに理念として掲げるなど、法の理念としてこうした社会として支えるということを盛り込むなど、単なるつなぎ法の一部改正ということではない、しっかりと新しくつくるものだというふうに申し上げたいと思っています。
○高橋(千)委員 単なるつなぎ法の一部改正ではないと今答弁をされましたけれども、その単なるつなぎ法で応能負担になったから、今回の厚労省案は応益負担の部分は一言も触れていない。一番の根幹でありながら、そこには、もう終わったことだ、解決したことだという立場に立っているんです。そこがそもそもおかしいではありませんか。
確かに、基本合意の中で非課税世帯の無料ということが打ち出されましたので、そこが実現されたことは認めます。しかし、基本合意には配偶者も含めてとしているのに、そこも見送られました。自立支援医療についても見送られました。わずか百億から二百億円の予算措置が見送られて、今も定額の負担が、一応所得一定スライドがありますけれども、定額負担が残っているという実態ではありませんか。
制度の谷間もいろいろおっしゃいました。難病患者を入れるとも言っています。でも、その席上で、難病患者の団体の代表から、新たな制度のすき間が生まれる、そう指摘されているではありませんか。そのことに対して何にも答えていないのです。
骨格提言は、さらに、障害者福祉関連予算がGDP比〇・一九八%にすぎないということで、OECD諸国並みの予算の拡充を求めています。そこで、新法については、社会保障と税の一体改革素案では、言葉としては触れているんですけれども、増税して担保する社会保障四施策の中には障害者福祉は入っていないんですよね。そうすると、消費税増税ではない財源の確保を目指すんですか。それとも、新法のための新しい予算は必要ないという意味ですか。
○藤村国務大臣 今、社会保障・税一体改革のこととの関係の御質問だと思います。
新法は今現在検討中であることから、まだその財源確保についてはお答えしかねますが、いずれにせよ、障害福祉の予算というのは、これは高橋先生、ちょっと最近だけ言ってみますと、平成二十一年度五千五百十二億円が今二十四年度では七千八百八十四億円ということで、予算編成で常に適切に確保していくことが必要である、このように考えています。
○高橋(千)委員 要するに、当然、予算は少しずつ伸びています。今年度も一千九十七億円の増額。これはあくまでも自然増分なんですね。新しい法律に基づいて、新しい予算措置が必要だというのは、ここにも全然出てこないんですよ。先ほど大臣がいろいろおっしゃったんですけれども、財源的にも担保されていないんだと。ですから、一番肝心の部分も何も触れていないし、やはり、つなぎ法の一部改正という指摘、つなぎ法によって自立支援法が事実上残ると言わざるを得ないなということになるわけですね。
障害者自立支援法にかわる新法というのは、私は、公約破りが随分指摘されている民主党政権にとって最後のとりでではないか、そう思っているんですね。どんな思いで原告らが裁判を決意し、闘い、そして和解を決断したのか、そのことを本当に踏まえなければなりません。
違憲訴訟弁護団がまとめた「立ち上がった当事者たち」という本がございますが、その中で、和解を決断するまでの原告団、弁護団の思いが記されています。
少し読みます。「平成二十年十月三十一日に集団提訴したときには、「十年はかかるだろう。最後までしっかり頑張ろう!!」と腹を決めていましたが、平成二十一年夏の衆議院選挙で政権交代があり、早々に厚生労働大臣や総理大臣が「自立支援法は廃止します」と明言されたことに大きな期待を持ちました。」とあります。
そして、一月七日に、訴訟にかかわってきた人たちが会議をして、ずっと話し合うんですね。その場面を書いています。「原告たちの気持ちは大きく揺れていました。ここまで、裁判での勝利を目指して力を合わせて、一つになってやってきたのですから……。 誕生したばかりの内閣を信頼していいものなのか。それともあくまで裁判での結論が出るまで続けるのか。」一人でも和解に賛成できない人がいれば裁判を続けるべきだと考えて、みんなが思いのたけを話し合って、最後は全員の意見が一致して、その日のうちに基本合意の調印に臨む。
それで先ほどの新聞記事になるわけですけれども、そのときの胸のうちをこう書いています。「厚生労働省での出来事は感動の連続でした。言葉には言い表せぬ達成感と希望で、涙があふれ出ました。「障害があっても、その人らしく生き生きと生活していくことができる!」「先進国日本が、世界に胸を張れる新しい制度作りがスタートするんだ」と大きな期待を抱かせてくれました。」と記しています。
この同じ原告らが、わずか二年で、裏切られたと激しい抗議の声明をしなければならない事態になったとはどういうことでしょうか。今からでもまだ遅くありません。廃止条項を盛り込み、骨格提言に基づいて新法を目指すべきではありませんか。
○中井委員長 時間が来ましたので答弁はできないんですが、特別に、短く。その後、もう終わりですから。
○小宮山国務大臣 委員がおっしゃる気持ちは、私も同様な気持ちを持っています。
予算も、確かに自然増分しかとれていません。でも、予算と運用と法改正とあわせて、最初に申し上げたように、段階的、計画的に皆様の声にしっかりと応えていけるように最大限努力をしたいと思っています。
○高橋(千)委員 終わります。